蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは?症状や特徴について解説!

公開日: 2024/01/10 更新日: 2024/05/22
蜂窩織炎(ほうかしきえん)という疾患名を聞いたことがありますか?医療関係者以外の方は聞き馴染みがないかもしれません。 普段私たち人間は細菌やウイルスが体内に侵入しないよう、皮膚でバリア機能を保っています。 しかし蜂窩織炎は悪化して酷くなった場合、擦り傷などから皮膚の下に細菌が入り込み、皮膚の赤みや腫れ、痛み、発熱を伴い最悪の場合死に至ることもある怖い病気です。 ここでは蜂窩織炎の特徴や治療などについて解説しますので是非参考にしてみて下さい。
目次

蜂窩織炎の初期症状は皮膚の赤みや腫れなどから始まる!

初期症状としては患部が虫に刺されたように細かく赤く腫れ、熱感、痛みが出現し急速に広がります。 発熱や倦怠感などを伴うことも多いです。

足のすねの部分や甲によく発生しますが、同時に複数の部位に発症することはありません。その後悪寒、発熱、頭痛、関節痛と全身に症状が広がっていきます。

蜂窩織炎は赤みや熱感が引いてくれば治りかけ

蜂窩織炎は重症でない限り、2、3日で改善していきます。

抗菌薬をメインに治療し、赤みや熱感が引いてくれば順調な経過を辿っていると言えます。

基礎疾患がある高齢者は蜂窩織炎の症状に注意!

高齢者に限ったことではありませんが、特に基礎疾患がある高齢者は発熱や倦怠感により食事が摂れず、意識レベルの低下のリスクがあります。

また、糖尿病の方は感覚が鈍くなっていることが原因で発見が遅れたり、最悪の場合足の切断に至ることもあるので日頃からの観察がとても大切です。

病院、介護施設などで生活している抵抗力の弱った高齢者に感染しやすいので注意が必要です。

心臓または血管手術で伏在静脈を除去した後に生じた瘢痕は再発性蜂窩織炎の好発部位と言われています。特に足白癬がある方は再発の確率が高いため注意しましょう。

蜂窩織炎は皮膚科以外の選択肢はあるの?

蜂窩織炎の診断は一般的に皮膚科が推奨されています。

しかし、外科的処置や入院のケースもあるため、内科、外科、整形外科、小児科でも正しい診断と治療を受けることができます。

蜂窩織炎は発症から半日から2日程度で急速に広がるので、まずは近くの病院を受診しましょう。

蜂窩織炎の原因とは?

主にブドウ球菌とレンサ球菌が皮膚の下の脂肪組織という場所に入り込むことが原因と言われています。

他にも大腸菌や緑膿菌などの多くの細菌が蜂窩織炎の原因です。

人間は体内に菌が侵入しないように皮膚で守っていますが、ひっかき傷、熱傷、水虫などによってできた小さな傷から侵入し発症します。

また、皮膚が弱っていたり何かしらの感染症で細菌が侵入することで傷のない皮膚にも起こる場合があります。

蜂窩織炎の細菌感染以外の原因

糖尿病やステロイド治療など、免疫を低下させる要因があると皮膚が正常でも発症することがあります。

またリンパ浮腫などむくみがみられる人はリンパの流れが悪く免疫機能が低下しているため、わずかな細菌でも蜂窩織炎になりやすいと言われています。

蜂窩織炎の皮膚の赤みや腫れ以外の見分け方

皮膚の赤みや腫れ以外としては感染部分の痛み、盛り上がりやくぼみ、点状出血(点状の赤み)、水泡(水ぶくれ)といった症状が見られることもあります。

水泡は破れる場合があり、皮膚が壊死することもあります。

蜂窩織炎の恐ろしさとは?放置すると重症になることも!

蜂窩織炎は通常2~3日で改善することが多いです。

しかし放置すると菌血症や壊死性筋膜炎から敗血症に発展する恐れもあります。

糖尿病など持病を持っている高齢者は治りが遅くなるケースがあるので、皮膚の赤みや痛みを発したら早めに受診、治療が必要です。

菌血症・壊死性菌膜炎・敗血症については以下の通りです。

  • 菌血症・・・血液中に菌が侵入する病気。無症状ですが敗血症に発展するケースがあります。

  • 壊死性菌膜炎・・・細菌が筋膜に沿って増殖し、皮膚や皮下組織に急速な壊死が拡大する感染症。進行すると四肢切断の必要性が生じたり、敗血症に発展する場合もあります。治療に緊急手術(デブリードマン)を要するため、必ず入院が必要となります。

  • 敗血症・・・細菌などの病原微生物が体内で繁殖することで臓器や組織を傷害する病気です。  治療が遅れると低血圧や意識障害によるショックを引き起こし、最悪死に至ります。

蜂窩織炎の診断基準は?

蜂窩織炎は主に3つの診断方法があります。

  • 問診

  • 触診

  • 血液検査

それぞれ詳しく説明していきます。

問診

問診は生活背景や自覚症状などを把握するための情報です。

  • どんな症状か・・・発熱、痛み、皮膚の赤み、腫れの有無、左右差など。

  • 最近怪我をしたか・・・あれば部位の確認をします。

  • 持病の有無 ・・・糖尿病、水虫、リンパ浮腫などの確認。

  • 妊娠の有無 ・・・生理的浮腫との判別のためです。

  • 常用薬の有無など・・・免疫抑制ステロイド薬など普段使用している薬を確認します。

触診

触診は客観的判断のために行われる情報です。

  • 体温、脈拍、血圧、呼吸状態。

  • 酸素飽和度(SpO2)・・・血液中の酸素量(正常値:96~99% 90%以下で呼吸不全)。

  • 皮膚の温度・・・患部は熱感を伴っていることが多く左右差も確認します。

  • 痛みやしびれ、触感・・・糖尿病やリンパ浮腫があると感覚が鈍くなりやすいです。

血液検査

蜂窩織炎は細菌が皮膚の下に侵入し、炎症がおこることでCRPや白血球が増加します。

血液検査をすることで具体的な値が分かり、診断や治療方針に役立ちます。 

  • CRP・・・感染症や炎症性疾患などの存在が分かります。                        正常値:0.3mg/㎗以下 10mg/㎗以上で入院の目安と言われています。

  • 白血球・・・体内に侵入してくる細菌やウイルスを攻撃し排除する役割があります。             正常値:4,000~9,000個/mm 

蜂窩織炎の入院基準は?

蜂窩織炎は抗菌薬で通院治療できますが下記のような状態だと入院の適応となります。 

  • 抗菌薬で改善しない。

  • 高熱や痛みが続くなどで日常生活に支障が出ている。 

持病により重篤化のリスクが高まります。特に糖尿病や免疫不全の方は早期入院が必要となる場合があります。先述した診断基準が入院基準の重要な判断材料です。

蜂窩織炎の治療は薬以外にあるの?

蜂窩織炎の原因は細菌なので、通常は抗菌薬を1~2週間投与で治療します。膿瘍ができる場合は切開して膿を出すこともあります。

また熱感のある部位をアイスノンで冷やしたり、むくみを取るために下肢を挙上することも有効といえるでしょう。

予防法としては皮膚を清潔にして皮膚のバリア機能を保ち、細菌の侵入を防ぐことが大切です。

蜂窩織炎は自然治癒しないので治療が必要!

蜂窩織炎は皮膚の深部の炎症なので自然治癒しない病気です。

皮膚の赤みや腫れなどの症状が現れたら早期に受診し、治療を開始する必要があります。

痒くて掻いてしまうと傷口から菌が侵入し悪化するので、掻かずに冷やすなどの対応が必要です。

蜂窩織炎が長引くことで現れる症状

蜂窩織炎は大抵数日間の抗菌薬投与で治まっていきますが、人体の免疫反応が継続することで発熱、頭痛、関節痛、などの症状が長引くことがあります。

長引くことで高齢者などは体力が低下し廃用症候群のリスクが高まるので早期発見、治療が大切です。

発熱、頭痛

菌を退治しようとすることで免疫反応が起こり結果発熱、頭痛が起こります。アイスノンでクーリングしたり抗菌薬、解熱剤を使いながら治療します。

特に高齢者は発熱が続くと、食欲不振や運動不足などにより体力が低下し、結果ADL(日常生活動作)低下のリスクが高まりやすいです。

関節痛

先述の通り免疫反応の影響で関節痛が起こります。また患部側の下肢をかばう様に歩いていると負荷がかかりやすくなり、健康な側の下肢関節痛が起こる場合もあります。

痛み止めや湿布などで冷やすことで一時的に痛みを和らげることができますが、高齢者の場合だと転倒のリスクが高まるので注意が必要です。

蜂窩織炎のよくあるQ&A

ここでは蜂窩織炎についてよくある質問についてまとめてみました。ご参照ください。

蜂窩織炎は入浴していいの?

入浴は禁止ではありませんが血行が促進されることで悪化するケースがあります。

炎症が落ち着くまでシャワー浴をしましょう。

蜂窩織炎はどんな人がなる?

蜂窩織炎は誰でも起こりうる病気です。

しかし免疫が弱い方(ステロイド治療中、抗がん剤使用中など)、アトピーなど皮膚が弱い方、リンパ浮腫などで日頃からむくみがみられる方は発症しやすいと言われています。

蜂窩織炎はうつるの?

蜂窩織炎は感染症ですが、空気感染や患部に触れることでうつることはありません。しかし膿を触ると感染の危険があるので触らないようにして下さい。

まとめ

  • 蜂窩織炎は皮膚の下で炎症が起こる感染症

  • 問診・触診・血液検査などを行い、場合によっては入院の可能性もあり

  • 治療は自然治癒はしないため抗菌薬を使用

  • 持病があると菌血症・壊死性菌膜炎・敗血症などの重症化リスクが高まる

  • 免疫力が低下している高齢者・リンパ浮腫の人も発症しやすい

  • 高齢者は特に長期化するとADL低下のおそれがある

  • 赤みや痛みがあらわれたら早めに受診を

蜂窩織炎は傷口などから細菌が侵入することから始まる疾患です。

通院で治療は可能ですが、場合によっては入院の可能性もあるため早めの受診をおすすめします。

また、免疫力が低下した人だけでなく誰にでも発症する可能性があるため、症状があらわれたら早めに近くの病院を受診しましょう。

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