皮膚の病気「とびひ(伝染性膿痂疹)」について解説

公開日: 2023/12/27 更新日: 2024/09/13
「とびひ」という疾患を聞いたことがありますか? 「とびひと言われたけど、どうしてなるの?そもそもどんな病気?」 「とびひは子どもがなるやつだよね?大人もなるの?」 こうした疑問を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 とびひは「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」が正式病名で、細菌による皮膚の感染症です。 「伝染性」という言葉から気づいた方もいるかもしれません。 とびひは子どもも大人も誰でもうつる可能性があります。 では、とびひはどのようにして発症するのでしょうか。 また、保育園や学校はいつから行けるようになるのか、この記事ではそんな疑問にお答えします。
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「とびひ」ってどんな病気?

とびひは、細菌による皮膚の感染症です。

火事のときの「飛び火」のように全身に広がったり、周囲にうつったりすることから「とびひ」とよばれるようになりました。

医学的な正式名称は「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」です。

水ぶくれができる「水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)」と、厚いカサブタ(痂皮:かひ)ができる「痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)」にわかれます。

水泡性膿痂疹の場合は、水ぶくれが破れてじゅくじゅく(ただれ)しやすいです。

そのため、全身に広がりやすい傾向にあります。

人にうつることはある?

結論からいうと、とびひは人にうつります。

とびひは健康な人の皮膚や鼻などに常に存在している「常在菌(じょうざいきん)」が原因です。

そのため、原因菌がほか人の皮膚の表面にくっつくだけでは特に問題にはなりません。[1]

しかし皮膚を守る力が弱まっていると、容易に感染してしまいます。

水疱の中やかきこわした皮膚、じゅくじゅくしたところは特に細菌が多いです。

その部位を触り、その手を介して細菌がほかの人の傷などに付着することで感染が広がります。

とびひは感染力が非常に強い疾患です。

皮膚表面に傷がなくても、肌を守る力が弱まっている部位から感染することがあります。

もし家族がとびひになった場合は感染対策を怠らないようにしましょう。

とびひの症状

前述したように、とびひは2種類のタイプにわけられます。

水疱(すいほう)ができる「水泡性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)」と、厚いカサブタができる「痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)」です。

以下は2つのタイプを比較したものです。

 

水疱性膿痂疹

痂皮性膿痂疹

症状の特徴

  • 水ぶくれ

  • じゅくじゅくしやすい

  • 赤みやかゆみをともなう

  • 膿疱

  • 厚いカサブタ

  • 痛みをともなう

  • 発熱やのどの痛みがでることもある

発症時期

夏に多い

通年

なりやすい年齢

乳児や幼児に多い

年齢を問わない

原因菌

黄色ブドウ球菌

A群β溶血性連鎖球菌

水疱性膿痂疹は、赤みやかゆみをともなう水ぶくれができます。[2]

水ぶくれは簡単に破れ、ただれ(じゅくじゅくした感じ)やすくなります。

水ぶくれの中は細菌が多く、ほかの皮膚に付着しやすいことから全身に病変が広がりやすいです。

一方、痂皮性膿痂疹の場合は最初に赤みが出始め、膿疱(のうほう)とよばれる膿をもった小さな水ぶくれができます。

膿疱が破れてその部位がただれ、「厚い」カサブタになることが特徴です。[2]

痂皮性膿痂疹は炎症が強く、痛みをともなうことがあり、皮膚症状だけでなく発熱やのどの痛みを訴える方もいます。

一般的に、水疱性膿痂疹は小さなお子さんで夏場に多く発症しやすいです。

痂皮性膿痂疹の場合は年齢問わず、通年でなりやすいと言われています。

とびひの原因

とびひの原因は、どんな人でも常にもっている「常在菌」です。

とびひを引き起こす細菌の多くは黄色ブドウ球菌で、水疱性膿痂疹の主な原因です。

痂皮性膿痂疹の場合は、A群β溶血性連鎖球菌が主な原因とされています。

ではなぜ常に存在している細菌が悪さをするのかというと、皮膚のバリア機能が弱まっているためです。

皮膚バリア機能とは、体外のさまざまな異物が皮膚の中に侵入しようとするのを防ぐ機能のことです。

皮膚のバリア機能が弱まる原因として、以下が関係していると言われています。[3]

  • アトピー性皮膚炎

  • 虫刺されやあせも、湿疹などの掻きこわし

  • 乾燥肌

  • 紫外線のダメージ

  • 摩擦

つまり、肌に刺激をあたえることが、皮膚のバリア機能低下を招きます。

乾燥肌や紫外線のダメージなど、普段から気にかけないとならないものもあるため、とびひにならないためには日頃のケアがとても大切です。

ストレスが原因でも起こるの?

ストレスは、とびひを発症させる要因のひとつです。

その理由は、ストレスが「免疫力の低下」と「肌のバリア機能の低下」を招くことにあります。

身体がストレスを感じると自律神経が乱れます。

自律神経は、身体を病原体から守る免疫細胞のはたらきにかかわっているため、そのバランスが崩れて免疫力が下がるのです。[4]

また、自律神経の乱れによって肌の温度が下がり、皮膚のターンオーバー(肌の生まれ変わり)が乱れ、バリア機能が低下します。[4]

ストレスによって起こる自律神経の乱れが「免疫力の低下」と「肌のバリア機能の低下」を引き起こし、とびひを発症しやすくさせます。

とびひの治療・対処方法

とびひの治療の基本は、抗菌薬の入ったぬり薬です。

全身に症状が広がっている場合は、ぬり薬と合わせて抗生剤を服用します。

とびひは強いかゆみをともない、掻きむしることで病変が広がりやすい疾患です。

かゆみがひどい場合はかゆみを抑えてくれる抗ヒスタミン薬が内服薬で処方される場合もあります。

薬の効果が得られれば、4~7日ほどで治癒します。[5]

2〜3日経過しても改善が見られない、悪化している場合は、薬が効いていない可能性があるため、医師に相談しましょう。

とびひは、毎日洗浄して、患部を清潔に保つことが重要です。

湯船には雑菌が多く、症状が悪化する可能性があります。

治癒するまではシャワーで済ます方が良いでしょう。

洗浄の際にせっけんを使用しても問題ありません。

使用するときは、よく泡立てて優しく洗うことがポイントです。

とびひは感染力が強く、家庭内感染も容易に引き起こします。

感染を広げないためにも以下を守りましょう。[6]

  • タオルや衣類は共用しない(洗濯は同じでも問題ない)

  • 一緒に湯船に入らない

  • 手洗い、消毒を徹底する

  • 処置をする方は手袋を装着するとなお良い

  • ガーゼや包帯は患部が見えないようにしっかり覆う

保育園には行っていいの?

とびひになったからといって登園停止になることはありません。

とびひは学校保健安全法で第三種(その他の感染症)に指定されています。[7]

医師の診察を受けて患部をガーゼや包帯などで保護するなど、正しい処置がなされていれば、登園は可能です。[7]

ただし、とびひは感染力が強く、集団感染を起こす可能性もあります。

園によって方針が異なりますので、事前に対応を確認しておきましょう。

大人にうつることはあるの?

とびひは大人にもうつる可能性があります。

特に高齢者の場合は、皮膚のバリア機能が低下しているため、とびひを発症しやすいです。

基礎疾患を持っている方や免疫を抑える薬を飲んでいる方も同様に、免疫力が下がっていることから、傾向的にとびひを発症しやすいです。

大人は痂皮性膿痂疹になりやすく、皮膚に赤みが現れることから始まり、症状がひどくなると発熱やリンパの腫れなどがみられます。

とびひだと気付かず放置してしまうと、細菌が血液の中に入って重症化する「菌血症(きんけつしょう)」や「敗血症(はいけつしょう)」につながりかねません。

もしとびひになったとしても、正しい処置を行えば長くても1週間で治癒します。

症状が軽いうちに、いかに早く治療をするかが非常に重要です。[8]

まとめ:ひどくなる前にしっかりお肌のケアを

とびひは皮膚のバリア機能が低下して起こる皮膚の感染症です。

子どもに多い疾患と認識されていますが、大人も発症するリスクはあります。

とびひにならないために、日頃からの正しい肌のケアで皮膚のバリア機能を低下させないことが大切です。

もしとびひになってしまったら、毎日洗浄し患部が見えないようにガーゼや包帯でしっかり覆いましょう。

適切な処置や予防を徹底することで集団感染や家庭内感染を防ぐことができます。

ただの肌荒れと甘く見ず、少しでもおかしいと感じたら早めの皮膚科受診をおすすめします。

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参考文献

[1]「とびひ」について|たばた小児科

[2]とびひ(伝染性膿痂疹:でんせんせいのうかしん)|第一三共ヘルスケア

[3]肌バリア機能が低下する原因は何?回復方法を知って美肌を手に入れよう|ドモホルンリンクル

[4]ストレスは免疫力低下の原因に!ストレス解消と免疫力アップの方法とは?|自然免疫応用技研

[5]とびひ|マオメディカルクリニック

[6]とびひの治療や管理方法!うつらない方法は?運動や栄養の関係|村田クリニック

[7]とびひ|日本皮膚科学会

[8]【写真画像あり】とびひはうつる?とびひの原因と治療について解説|ひまわり医院

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