糖尿病の初期症状について解説!症状チェックリスト付き

公開日: 2024/01/08 更新日: 2024/05/22
生活習慣病のひとつとしてよく知られている「糖尿病」。 その症状は、ステージにもよりますが、全身にさまざまな症状がおこります。 今回は、初期から末期までの症状や原因、予防方法について解説します。「自分は糖尿病ではないか」と心配な方はぜひ自覚症状チェックリストで確認してみてください。

糖尿病とは

体内には膵臓から出されるインスリンというホルモンが存在します。

糖尿病とは、インスリンが不足したり、効きにくくなったりすることにより慢性的に血糖値が高い状態をいいます。

糖尿病になると、感染症や皮ふ病、歯周病、がん、認知症、白内障、骨粗しょう症、うつ病などあらゆる病気のリスクを上げるといわれている怖い病気です。

糖尿病は、発症の原因によって1型糖尿病と2型糖尿病、その他、妊娠糖尿病に分けられます。

今回は糖尿病のうち、およそ90%を占める2型糖尿病について解説します。

原因

食べ過ぎや、運動不足などの生活習慣、肥満、遺伝的な要因によるといわれています。

遺伝的要因とは、両親や親戚が糖尿病の人は、普通の人より糖尿病になる可能性が高いタイプです。

糖尿病は治るのか?

糖尿病と診断されたときには、すでに膵臓の機能はかなり落ちている状態が多いため、完治は難しいでしょう。

しかし、治療を受けずに放置してしまうと病期が進み、合併症と呼ばれるさまざまな症状がおきてしまいます。

治療を正しく受け血糖値が改善すると、合併症の進行を遅らせることができます。

軽症の合併症の場合には治ることがあるため、症状が出ても諦めてしまわずに治療と向き合いましょう。

糖尿病の治療は、食事や運動が基本です。

それでも血糖値に改善がないときは、薬での治療が開始されます。現在、治療薬には多くの種類があり、患者の状態により処方される薬が異なります。

膵臓からインスリンが出やすいかどうか、肥満があるかどうかなどを踏まえて薬が出されるでしょう。

薬が処方された場合には用法用量を守り、正しく使ってください。

糖尿病の治療薬には、ほぼすべてに低血糖という副作用があります。低血糖の初期症状は強い空腹感、イライラ、冷や汗や手足のふるえ、脱力感などです。

重症の場合には昏睡と呼ばれる意識障害がおこります。

低血糖は、薬を正しいタイミングで飲まないことも原因のひとつのため、用法用量を守るのはとても大事です。

糖尿病の初期症状~高血糖による症状

血糖値が非常に高い状態だと、のどが渇く、水分をよくとる、おしっこの回数が増える、体重が減る、疲れやすいなどの症状がおきます。

特に夏場によくみられるのが、のどが渇いたために、糖分が多く含まれている炭酸飲料やジュース、スポーツ飲料を大量に飲むことで高血糖をさらに悪化させるケースです。

ペットボトル症候群とも呼ばれますが、ジュースを飲むと高血糖になる、またのどが渇く、飲むを繰り返してしまいます。

日常的に清涼飲料水をよく飲む方は注意してください。

糖尿病の合併症による症状

糖尿病のこわいところは合併症です。症状が現れる身体の場所はさまざまで、治療を放置することで生活に影響がでるものが多いです。

なかには合併症が現れて、初めて糖尿病だと診断されるケースもあります。

いずれの病気も軽症の段階であれば、血糖値の改善で治ることが多いため、糖尿病と診断されたら定期的な受診を心がけましょう。

「眼」の病気~糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫

糖尿病網膜症は、高血糖が続くことで、眼の中にある網膜という部分の毛細血管がもろくなり出血したり、つまったりして視力の低下がおこります。

最初のうちは自覚症状はありません。

網膜症の病状が進んでいくと「目の中に煙のすすがたまっているように見える」や「赤いカーテンがかかる」などの自覚症状がでてきます。

悪化を防ぐには血糖の改善が必要です。また、レーザー治療などをおこない、出血を予防する方法もあります。

糖尿病黄斑浮腫は、黄斑という部位に水ぶくれができ、神経の感度が低下します。

「中心の部分がかすんで見えない」や「物がゆがんでみえる」、「小さく見える」などの症状が現れます。

これらの病気を早期に発見するために、糖尿病になったら、年1回は眼科で診てもらいましょう。

「腎臓」の病気~糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、高血糖が続くことにより、腎臓の中にある糸球体という部位の構造が変化し、腎臓の機能が落ちた状態をいいます。

最初のうちは症状がありません。末期の状態ではじめて体がむくむ症状が現れます。

血糖値の改善で、腎臓の機能低下を遅らせることができるでしょう。放置してしまうと、腎臓がまったく機能しなくなります。

将来的に透析という体外で腎臓を補助する機械を日常的に使用しながらの生活となってしまいます。

血液検査や尿検査では早期より徐々に異常が出るため、糖尿病治療とあわせてフォローしていきましょう。

「しびれ」~糖尿病神経障害

糖尿病の方が最も高頻度でおこる合併症が神経障害です。

神経障害とは、手足のしびれや痛みをはじめとした全身の神経に影響を及ぼします。

神経障害による症状は、以下の表の通りです。

感覚神経

しびれ、痛み、冷感、感覚が鈍くなる、こむら返り(足がつる)

運動神経

筋肉の萎縮、筋力低下、足の変形

脳神経

眼球の動きが悪くなる、顔面神経麻痺

自律神経

汗をかかない、乾燥肌、起立性低血圧(立ちくらみ)、食欲低下、胸やけ、吐き気、便秘、下痢、排尿生涯、勃起障害、低血糖に気づきにくい、不整脈

「血管」の病気~動脈硬化

高血糖により動脈硬化が進むことで血管がもろくなったり、つまりやすくなったりします。

結果、狭心症・心筋梗塞などの心臓の病気や、脳梗塞などの脳の病気をおこします。

心筋梗塞に関しては、前述の神経障害の影響により胸の痛みが起きにくく、治療が手遅れになる可能性があるでしょう。

予防には、血糖値だけでなく、血圧や中性脂肪、コレステロールの数値も改善する必要があります。

「足」の病気~糖尿病性足病変

糖尿病性足病変は、糖尿病の合併症が複合的に影響することで進行する病気です。

まず、動脈硬化により、足に血が巡りにくくなることで、しびれや足が冷たく感じる、足がだるく休みながらでないと歩けない、などの症状がおきます。

さらに、神経障害のため、足の感覚低下や変形によりケガ・やけどに気づきにくくなります。

ケガ等に気づかず、感染が広がってしまい、結果的に潰瘍や壊疽(えそ)になり、足が赤く腫れたり、黒ずんでしまうこともあるでしょう。

壊疽(えそ)とは細胞が死んでしまう状態をいいます。

壊疽は広がってしまうこともあるので、状態がひどい場合には黒ずんでいる部分を切断をしなければなりません。

糖尿病と診断されたら、1日1回は足をよく観察し、ケガや腫れがないか確認するようにしてください。

感染を防ぐために爪の切り方や、うおのめの処置にも注意が必要です。

糖尿病の症状における男女のちがい

糖尿病は男性と女性でちがいはあるのでしょうか。

糖尿病の発症メカニズムは男性と女性で異なることがわかっており、現在も研究が進められています。

将来的に性別を配慮した糖尿病治療が行われるようになるかもしれません。

現在わかっている糖尿病のリスクや症状における性差について解説します。

男性の場合

2型糖尿病は、女性より男性がなりやすいと言われています。

2020年に厚生労働省が公開している国民健康・栄養調査の中で、糖尿病が強く疑われる者の男性の割合は13.8%、女性は7.7%[1]でした。

この差は糖尿病の原因のひとつと考えられている、肥満が男性に多いことが影響しています。

また、症状における男女差として、男性の糖尿病患者は、合併症である神経障害になると勃起障害を起こすことがあります。

女性の場合

女性は、男性に比べ40代以降に糖尿病の発症が増えていきます。

その理由は、女性ホルモンのエストロゲンの減少です。エストロゲンにはインスリンを助ける働きがあることがわかっています。

更年期を境にエストロゲンが減少していくために糖尿病のリスクが上がります。

20代や30代は、エストロゲンの分泌が多いために比較的糖尿病のリスクは低いですが、妊娠した場合には妊娠糖尿病への注意が必要です。

胎盤の影響により、インスリンが効きにくい身体に変化し、血糖値が上がりやすくなるためです。

妊娠糖尿病は、糖尿病の家族歴がある人や肥満、35歳以上でなりやすいといわれています。

妊娠糖尿病は、出産後に治ることが多いですが、将来的に糖尿病やメタボリックシンドロームになるリスクが上がります。

妊娠・出産が終わったあとも定期的な検診や生活習慣の見直しが大切です。

症状における男女差としては、女性の糖尿病患者は膀胱炎や膣カンジダを繰り返し発症する傾向があります。

なぜなら高血糖になると免疫の役割を果たす細胞の機能が落ち、感染症にかかりやすくなるためです。

また、糖尿病性網膜症は女性の方が発症リスクが高いことがわかっています。

糖尿病かもと思ったら~自覚症状チェックリスト

チェックリストに挙げた項目は、糖尿病の典型的な症状といわれています。

複数該当する場合には早めに病院を受診しましょう。

  •  肥満である(BMI 23kg/m2以上(BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))
  •  異様にのどが渇く
  •  たくさん水分をとる
  •  糖分が多く含まれている炭酸飲料やジュース、スポーツ飲料をよく飲む
  •  トイレが近い
  •  食べているのに、最近体重が減った
  •  疲れやすい
  •  ものがゆがんで見える、かすむ、視界に黒いものまたは赤いものが被る
  •  手足がしびれる、足がつる
  •  (男性)勃起障害がある
  •  (女性)膀胱炎や膣カンジダ症を繰り返す

以下に該当する場合には、糖尿病が強く疑われるため、すぐに病院に行きましょう。

  • 健診で血液検査項目の空腹時血糖126mg/dL、またはHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)6.5%以上

糖尿病の予防

食事や運動の習慣は、糖尿病の予防と関連していることがわかっています。

糖尿病予備群では、2kg程度やせることで発症リスクを減らす報告があります。

糖尿病が気になる方は自分の食習慣を見直し、運動を日々に取り入れてはいかがでしょう。

また、健診で健康をチェックすることも生活習慣病の予防に繋がります。

健診は、会社や自治体の制度を活用することでお金を多くかけず受けることができます。

是非、調べてみてください。

糖尿病のリスクを上げる要因は、以下の表の通りです。

  • BMI 23kg/m2以上(BMI=体重(kg)/身長(m)/身長(m))
  • テレビ視聴や座り仕事の時間が長いこと
  • 1日の歩行時間が30分未満
  • 飲酒
  • 砂糖や人工甘味料を含む飲み物
  • 受動喫煙を含む喫煙
  • 不眠、昼寝のしすぎ
  • ストレス
 

Q&A

糖尿病に関するよくある疑問をまとめました。

糖尿病の前兆サインは?

糖尿病予備軍や、糖尿病初期には症状はありません。

膵臓の機能が落ちて血糖値が高くなってくると、のどが渇く、水分をよくとる、おしっこの回数が増える、体重が減る、疲れやすいなどの症状がおきるといわれています。

糖尿病になったらどんな症状が出るの?

のどが渇く、水分をよくとる、おしっこの回数が増える、体重が減る、疲れやすいなどの症状がおきるといわれています。

なかには、病状が進み合併症の症状がでてから、糖尿病と診断されることもあります。

神経障害(しびれや痛み)や心筋梗塞、脳梗塞で受診や入院がきっかけで糖尿病であるとわかることもあります。

糖尿病になるとどこかかゆくなる?

特徴的にどこか痒くなることはありませんが、湿疹や皮ふ炎、皮ふのかゆみがみられるといわれています。

また、糖尿病により免疫力が下がるため感染症になりやすく、水虫や性器カンジダ症が原因のかゆみが出ることがあります。

糖尿病の見分け方は?

自覚症状だけで糖尿病かどうか見分けるのは困難です。

病院やクリニックに受診し、血液検査のHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)や血糖値を参考に確定診断を行います。

まとめ

本記事では、糖尿病の症状や原因、自覚症状のチェックリストも含め紹介しました。

糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンが相対的に不足することで発症します。初期には自覚症状はほとんどありません。

しかし、のどが渇く、水分をよくとる、おしっこの回数が増える、体重が減る、疲れやすいなどの症状があれば注意しましょう。

また、進行すると眼や腎臓、神経、血管に合併症として症状がでる怖い病気です。

2型糖尿病の原因は、主に過食と運動不足といわれています。

健診で血糖値が高いと指摘を受けた方、症状チェックリストにあてはまる症状があった方は早めの受診とライフスタイルの見直しを行いましょう。

出典

[1]厚生労働省.国民健康・栄養調査/令和元年国民健康・栄養調査.

参考文献

日本糖尿病学会.「糖尿病診療ガイドライン2019」.公益財団法人 日本医療機能評価機構.

日本糖尿病療養指導士認定機構.「「糖尿病療養指導ガイドブック2023」

─糖尿病療養指導士の学習目標と課題─」.株式会社メディカルレビュー社

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