糖尿病で目がかすむのはなぜ?その原因と治療法を解説!

公開日: 2024/01/05 更新日: 2024/05/22
糖尿病は高血糖が続くことで、さまざまな合併症を引き起こす病気です。 その合併症の症状のひとつにかすみ目があげられます。 しかし、かすみ目は糖尿病以外の方でも珍しくはない症状で、ドライアイや疲れ目が原因となることもあるため軽く考えられがちです。 しかし、糖尿病によるかすみ目は失明にもつながる重大な症状です。 ここでは、糖尿病によるかすみ目の原因や治療法、放置しては行けない理由について詳しく解説していきます。
目次

糖尿病の症状で目がかすむ理由

糖尿病による目のかすみにはさまざまな原因が考えられますが、そのひとつに糖尿病網膜症があげられます。

糖尿病腎症や糖尿病神経障害とともに糖尿病の三大合併症にも数えられる糖尿病網膜症。糖尿病網膜症は、進行すると失明にもつながる恐ろしい合併症です。

糖尿病網膜症は、初期にはほとんど自覚症状はありませんが、進行すると症状の一つとしてかすみ目が現れます。

しかし、充血や眼痛などのわかりやすい症状は起きにくいため、見逃されやすいのが問題です。

高血糖が続くと血管に負担がかかり傷がついていきますが、目の血管はとても細いため、高血糖の影響を受けやすいのです。

糖尿病により血管が傷つくと、血管のつまりや出血がおこり、必要な栄養や酸素が十分に行き渡らなくなります。すると、新しい血管を作り出して栄養を補おうとします。

しかし、新しく作られた血管(新生血管)はもともとの血管にくらべてとてももろく、出血しやすいという欠点があるのです。この新生血管が出血すると視力障害につながります。

糖尿病性網膜症の他にも糖尿病で目がかすむ原因はあるの?

糖尿病による目の障害には、糖尿病網膜症の他にも次のような原因が考えられます。

  • 糖尿病性白内障

白内障は一般的には加齢により水晶体が濁ることで発症しますが、糖尿病性白内障は20代〜30代の若い世代でも発症するのが特徴です。

また、進行の速度も通常の白内障よりも早いとされています。

  • 糖尿病黄斑浮腫

黄斑とは視細胞が密集している、視力に最も重要となる部分です。

糖尿病による黄斑浮腫は、黄斑にむくみが生じることで、ものが見えづらくなります。

  • 血管新生緑内障

糖尿病により血管障害が進行すると、それを補うために新生血管が作られます。

この新生血管ができる場所によっては房水の流れを阻害し、眼圧を上げる要因になります。眼圧が高くなると視神経が障害を受けて視野が狭くなります。

糖尿病で目がかすむとどんな感じ?どのような症状がでるの?

糖尿病による目のかすみは、一部がかすんで見える、全体がぼやけて見える、ピントが合わない、白っぽく見えるなど人によって症状が異なります。

また、病気の種類や進行度によって見え方に特徴が出ることがあります。糖尿病によるかすみ目の原因として、まず考えられるのは糖尿病網膜症です。

糖尿病網膜症は重症度の低い順から単純糖尿病網膜症、増殖前糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症に分けられます。

初期にはほとんど自覚症状がないため、かすみ目などの症状が現れる頃にはかなり進行している可能性があります。

ここではかすみ目の主な原因となる糖尿病網膜症について、進行の段階と見え方を説明していきましょう。

単純糖尿病網膜症

糖尿病網膜症の初期段階です。自覚症状はまったくありません。細い血管に障害が現れ始め、小さなコブのような血管瘤や小さな出血が見られます。

進行した糖尿病網膜症では網膜の状態を改善することはできませんが、この段階であれば血糖コントロールや薬物治療により改善することができます。

増殖前糖尿病網膜症

単純網膜症よりも進行した状態です。血管の閉塞のほか、網膜のむくみ(浮腫)や静脈の異常が認められます。

この段階まで進行すると、かすみ目などの視覚異常を感じる方が増えてきますが、まだ自覚症状が出ないケースもあります。

増殖糖尿病網膜症

糖尿病網膜症で最も進行した段階です。視力の低下や飛蚊症が見られます。増殖糖尿病網膜症では、網膜に多くの新生血管がつくられています。

新生血管はとてももろく、出血することがありますが、この出血により視力障害が起こるのです。

また、繊維性の増殖組織が形成され、これが網膜を引っ張ることで網膜剥離に繋がります。

網膜剥離の治療には手術が必要となることがありますが、ここまで進行した状態だと日常生活に支障がない程度の視力回復は難しくなります。

糖尿病で失明するの?失明の前兆は?

糖尿病による失明の主な原因は糖尿病網膜症です。糖尿病網膜症は、緑内障と網膜色素変性症に次いで、成人の失明原因の第三位となっています。

失明の前兆となる症状には、目のかすみや視力の低下などがありますが、このような自覚症状が現れたときには、かなり深刻な状態であることも珍しくありません。

糖尿病網膜症は初期症状がほとんど無いため、定期的な眼科検診を受けていなければ発見が遅れてしまいます。

また、進行した糖尿病網膜症では網膜の状態が完全に治ることはなく、症状を悪化させないための治療がメインとなるのです。

糖尿病が原因となる失明は、糖尿病網膜症の他に新生血管緑内障もあります。新生血管緑内障は眼圧が高いことで視神経が障害を受けて失明に繋がる病気です。

急激な進行があれば、目のかすみや眼痛がおこる事がありますが、ゆっくり進行すると自覚症状はほとんどありません。

一度、障害をうけた視神経の機能を改善させることはできないため、糖尿病網膜症と同様に症状を悪化させないための治療が主になります。

このように糖尿病は失明にも繋がる病気ですが、失明の直接の原因となる糖尿病網膜症や新生血管緑内障には初期の自覚症状がほとんどありません。

さらに、糖尿病により大きく低下してしまった視力を改善させる治療法はないのが現状です。

糖尿病による視力低下や失明を防ぐためには、定期的な眼科検診を受けて、目の異常を早期に発見することが大切です。

糖尿病によるかすみ目の検査

眼底検査

眼底検査は瞳孔から眼底を観察し、網膜や血管、神経の状態を確認する検査です。一般的には、目薬などで瞳孔を散大させて写真を撮影します。

糖尿病網膜症や緑内障、黄斑変性、眼底出血などの病気がわかります。糖尿病による目の病気の多くは初期の自覚症状がありません。

定期的な眼底検査が目の異常の早期発見につながります。

蛍光眼底造影検査

蛍光眼底造影検査では、腕から造影剤を注射して眼底の血管を調べます。進行した糖尿病網膜症で行う検査です。

腕から注射した蛍光造影剤は、全身の血流をめぐります。この状態で眼底写真を撮ると、血管や血液が白くはっきりと写るのです。

通常の眼底検査ではわかりにくかった新生血管や血流の状態、血管から漏れた血液などを観察するのに有効です。

蛍光眼底造影検査は新生血管に対するレーザー光凝固術を行うかどうかを検討したり、どの部分に行うかを確認したりするためにも使われます。

光干渉断層計(OCT)

赤外線を使用して網膜の断面を撮影する検査です。

眼底検査や蛍光眼底造影検査では、網膜の表面しか観察できなかったのに対し、光干渉断層計では網膜の内側の状態を観察できます。

これにより、網膜のむくみの程度や神経線維の状態をより詳細に確認できるのです。また、解像度も非常に高いので眼底写真ではわからなかった病変の発見に役立ちます。

糖尿病網膜症をはじめとし、緑内障や黄斑変性など、網膜のさまざまな病気の検査に使われます。

糖尿病によるかすみ目の治療

かすみ目初期の治療

糖尿病による網膜の疾患では、初期から目のかすみなどを感じることはありません。見え方に異常を感じたときは、すでに症状が進行している状態と考えられます。

しかし、定期的に眼科で診療を受けて異常を早期に発見できれば、血糖のコントロールにより網膜の状態を改善することも可能です。

血糖のコントロールは、HbA1cを7.0%未満に保つことが有効とされています。

レーザー光凝固術

糖尿病網膜症が進行して新生血管が作られるようになると、レーザー光凝固術による治療を行います。

レーザー光凝固術では、病変部にレーザーを照射して新生血管が増えるのを防いだり、出血を防いだりします。

視力を改善させる効果はありませんが、網膜症の進行予防のために必要な処置です。治療中には人によって多少の痛みを感じるほか、レーザー光による眩しさを感じます。

病状により、1回で終わることもあれば、数回に分けて行うこともあります。

入院の必要はなく、治療自体は15分程度で終わるため、患者さんにとっては負担が少ない治療です。

抗VEGF薬

糖尿病網膜症からくる黄斑浮腫に有効な治療です。黄斑浮腫はVEGF(血管内皮増殖因子)と呼ばれるタンパク質により引き起こされます。

VEGFは新生血管を作ったり、網膜のむくみを発生させたりする作用があります。黄斑浮腫では、網膜のむくみが黄斑で生じるために見えにくさを感じるのです。

黄斑浮腫の治療に使われる抗VEGF薬は、VEGFの作用を抑える薬ですが、眼内に注射をすることで効果を発揮します。

注射自体は目薬による麻酔下で行われるため痛みはありません。最初は1ヶ月おきに3回の注射をします。その後は効果を見ながら必要に応じて使用されます。

硝子体手術

硝子体出血や網膜剥離、黄斑浮腫に適応となる手術です。とても繊細で難易度の高い手術とされています。硝子体とは眼球の内側の大部分を占めている透明なゼリー状の組織です。

糖尿病網膜症が進行すると、硝子体に出血が広がって見えにくくなったり、硝子体が網膜を引っ張って網膜剥離が起きたりします。

硝子体手術では、白目の部分から非常に細い手術器具をいれ、出血した硝子体の除去や網膜の治療を行います。

多くの場合で入院が必要となるうえ、術後は合併症の危険もあることから患者さんにとっては負担がかかる治療と言えるでしょう。

薬物療法

糖尿病による目のかすみは、原因によっては目薬や内服薬で治療することがあります。

糖尿病によるかすみ目の原因のひとつは、糖尿病性白内障です。糖尿病性白内障は水晶体の濁りにより、目のかすみや見えにくさを感じる疾患です。

進行予防のためには、ピレノキシン製剤や グルタチオン製剤の点眼薬が使用されます。また、糖尿病性網膜症の初期には内服薬が使用されることもあります。

糖尿病網膜症は、血管のつまりにより血流が悪化することが特徴です。この血流を改善するためには、網膜循環改善薬と呼ばれる内服薬が有効です。

糖尿病によるかすみ目の予防法は?

糖尿病のかすみ目は、高血糖により引き起こされる血管障害が原因となります。これを予防するためには血糖のコントロールが最も重要です。

さらに、血圧とコレステロールも血管の状態に影響を与えることがわかっているため、生活習慣病を総合的に改善する必要があります。

  • 血糖のコントロール

血糖値が高い状態が続くと、血管壁に傷がついて血管のつまりを引き起こします。

特に毛細血管は高血糖の影響を受けやすいため、毛細血管が集まる網膜は合併症が出やすい部位です。血管の障害を進行させないためには血糖値を適切に保つ必要があります。

血糖のコントロールの目安として、HbA1cを7.0未満に保つことが有効とされています。糖尿病網膜症と診断されても、初期の段階であれば進行を食い止めることが可能です。

しかし、初期には自覚症状がほとんど無いため、目に異常を感じた時には、かなり進行した状態であることも珍しくありません。

糖尿病網膜症を早い段階で見つけるためには定期的な眼科受診が必須となります。最低でも年に1回は眼科を受診するようにしましょう。

  • 血圧の管理

高血圧は血管に負担をかけて網膜症を進行させる要因となります。血圧は文字通り、血管にかかる圧力のことを指します。

高血圧により血管に強い圧力がかかり続けると、血管が次第に厚く固くなるのです。

これが網膜で起こると、血流が悪化して網膜に十分な栄養を送れなくなるため、網膜症を悪化させます。

  • コレステロールの管理

コレステロールとは脂質の1種です。血液中のコレステロールが増えすぎると血管の壁に入り込み、動脈硬化の原因となります。

動脈硬化は大動脈で起こりやすいとされていますが、網膜などの毛細血管でもおこるのです。

動脈硬化が進むと、血管が狭く、固くなります。その結果、血流が悪化して網膜に悪影響をあたえます。

Q&A

糖尿病の初期症状は目のかすみですか?

糖尿病は高血糖が続くことで血管が障害され、合併症を引き起こす疾患です。

しかし、高血糖に自覚症状はなく、健康診断や他の病気で受診した時に見つかるケースがほとんどです。

糖尿病の患者さんで目のかすみが出ている場合、糖尿病網膜症や糖尿病性白内障、血管新生緑内障などが考えられます。

このような目の病気は高血糖が長く続いた結果として現れるもので、糖尿病がかなり進行した状態と言えるでしょう。

糖尿病のめのかすみはどんな感じ?

糖尿病網膜症の場合、初期に自覚症状はありません。しかし、網膜の障害が進むと見え方に変化が現れます。

見え方の表現は、視界がかすむ、ぼやける、目がチカチカする、白いモヤがかかっているなど、人によってさまざまです。

また、糖尿病網膜症では進行度合いにかかわらず、網膜がむくむことがあります。これが黄斑で発生すると黄斑浮腫となります。

黄斑は視神経が集中している部分のため、黄斑浮腫になると視野の中心に異常が現れるのです。具体的には、ものが歪んで見えたり、コントラストが低下して見えます。

目に白いモヤがかかるのは糖尿病ですか?

目に白いモヤがかかったように感じる場合、白内障やドライアイ、網膜剥離、虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎などが考えられます。

白内障や網膜剥離は糖尿病が原因で発症することがあります。

しかし、白内障は加齢によるものもありますし、網膜剥離は加齢のほか、外傷によるものもあるので糖尿病が原因とは断定できません。

また、ぶどう膜炎の主な原因は、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病などの自己免疫疾患です。かすみ目だけではなく、突然の眼痛や充血を伴うことがあります。

目に白いモヤがかかったように感じる時は、原因によって治療法が異なりますので、受診をして医師の判断を仰ぎましょう。

糖尿病は何年で失明しますか?

糖尿病網膜症は糖尿病になってから、数年〜10年程度で発症すると言われています。

初期であれば自覚症状はなく、血糖のコントロールや眼科の治療で進行を食い止めることができます。

しかし、視力障害が出るほどに進行してしまうと、もとの視力を取り戻すことが難しいのです。

糖尿病と診断されたら、網膜症を始めとする合併症を予防し、失明率をさげるためにも、血糖値をしっかりとコントロールしていきましょう。

まとめ

ここまで糖尿病による目のかすみについて解説してきました。

糖尿病によるかすみ目の多くは糖尿病網膜症が原因ですが、他にも糖尿病性白内障や血管新生緑内障などがあげられます。網膜の症状は、初期には自覚症状がほとんどありません。

気づかないうちに進行し、かすみ目などを感じて受診した時にはかなり悪化していることもあります。網膜症は初期に適切な対応をすれば、視力障害を防ぐことができます。

一方で、進行した網膜症を改善することは難しいのが現状です。視力障害を防ぐために、最も大切なのは定期的な眼科受診です。

糖尿病と診断されている方は、年に一回は眼科を受診して、目の異常を早期発見できるように努めましょう。

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