糖尿病の指先の痛みやしびれの原因、治療法について解説!

公開日: 2023/12/31 更新日: 2024/05/22
糖尿病の治療中、指先に痛みやしびれが出ると心配ですよね。 もしかしたらその症状は糖尿病神経障害によるものかもしれません。 軽度だからと放置しておくと、症状が進行してしまったり壊死して切断を余儀なくされる場合もあるため、違和感を感じたらすぐに医師に相談することが重要です。 この記事では糖尿病神経障害の原因や予防法、治療法をご紹介いたします。 痛みやしびれ以外にも、ひび割れや変色についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次

指先に痛みやしびれを引き起こす「糖尿病性神経障害」とは?

糖尿病は、腎臓や神経、目など体のさまざまな部位に障害を引き起こします。

糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害は、糖尿病の3大合併症といわれており、中でも手足の神経に異常が起きることで、手足の指に痛みやしびれなどの異常をきたす糖尿病神経障害が最も多くみられる合併症です。

また糖尿病性神経障害は比較的早期に現れやすく、全身の筋肉を動かす運動神経、体温や血圧、内臓の働きを調整する自律神経、触覚や痛覚などの皮膚感覚を伝える感覚神経などの末梢神経に障害をきたします。

糖尿病神経障害で現れる症状は、血糖をコントロールしていくことで緩和していく可能性が高いため、早期に発見することが重要です。

放っておくことで痛みが慢性化したり、進行して潰瘍や壊疽を引き起こしたりすることもありますので、自覚症状がある場合はなるべく早めに医療機関を受診するようにしましょう。

糖尿病性神経障害の原因について

糖尿病性神経障害が起こる原因についてはまだはっきりとは分かっていませんが、高血糖状態が続くことで、ソルビトールといわれる物質が神経細胞内に蓄積して神経障害が起きるのではないかという説が有力です。

また高血糖状態が続くことで、末梢血管の周りの毛細血管の血流が悪くなり、神経細胞に必要な酸素や栄養が不足してしまうために障害が引き起こされるという説も考えられています。

高血圧や脂質異常症など糖尿病の他にも基礎疾患がある方や、喫煙、飲酒の習慣がある方は症状が悪化しやすい傾向にあるため注意する必要があります。

糖尿病性神経障害の症状について

糖尿病神経障害は、比較的早い段階から自覚症状が現れます。

先端になればなるほど血管が細く血流や栄養が届きにくくなるため、最も早期に症状が現れやすい部位は両足だと言われています。

そのため、糖尿病性神経障害を発症した際には手の指の痛みや指のこわばりというより足に違和感を感じて発症を自覚することの方が多い傾向にあるでしょう。

気になる主な症状としては足の裏や指先が痺れる、ほてる、よくつるようになる、砂利の上を歩いているような感覚があるなどの症状が見られます。

また同様に、手や腕などの部位に症状が出る場合も先端部から症状が出始めます。

症状があってもそのまま放置しておくと、次第に痛みやしびれなどの感覚がなくなり、足にひび割れや傷を負っても気づきにくくなってしまいますが、その傷から細菌感染が起こり、足の細胞が壊死して切断しなれければならないケースもあるようです。

また糖尿病神経障害によって自律神経が障害された場合、下痢、便秘、胃のもたれ、頻尿、失禁、勃起障害、発汗異常、起立時のふらつき、低血糖時に自覚症状がないなどさまざまな症状が現れます。

はじめは軽い症状であっても、違和感があれば早めに医師に相談することが重要です。

糖尿病性神経障害の診断方法について

症状の問診だけで糖尿病神経障害であると診断される場合もありますが、自覚症状がないときや他の病気と区別がつかないときには各感覚の検査が行われます。

その感覚の検査の一例は以下の通りです。

  • アキレス腱反射検査

両足のアキレス腱をハンマーで軽くたたいて反射を調べます。運動神経や感覚神経の機能が分かります。

  • 触覚検査

モノフィラメントという道具で足の裏などを軽く触り、感覚があるかどうかを確かめます。

  • 振動覚検査

音叉という器具を震わせ、それをくるぶしに当てて、振動の感じ方を調べます。

  • 心電図検査

心電図で心臓のリズムを調べ、自律神経の障害を疑う所見がないかどうかを確認します。

また、その他ほかの疾患の可能性がないかどうか確かめるために、ABI(足関節上腕血圧比)といって足と腕の血圧を測定する検査や、CTやMRIなどの検査が行われる場合があります。

ABIは、足の付け根から膝にかけての血管が細くなってないかを判断するために行われるものです。

糖尿病性神経障害の治療について

糖尿病性神経障害の治療の基本は血糖コントロールですので、HbA1cや血糖値、体重などをしっかり管理することが重要です。

食事療法や運動療法をはじめ、喫煙や過度の飲酒なども糖尿病神経障害の発症に関係しているため生活指導が行われますが、それでも神経障害の症状が改善しない場合は、痛みやしびれ、消化器症状や起立性低血圧などそれぞれの症状にあった薬が処方されます。

糖尿病神経障害の治療で行われる血糖コントロール、薬物治療、生活指導についてもう少し詳しく解説します。

血糖コントロール

血糖コントロールのために行われる治療法は大きく分けて食事療法、運動療法、薬物療法の3つです。

食事療法にはさまざまなものがありますが、炭水化物の量を決めて測る、規則正しく栄養バランスを考えて食事を摂る、食物繊維を積極的に摂るなどがあります。

また運動療法として有酸素運動と筋力トレーニングを並行して行うことで、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効果を高めることができます。

運動を行っているからといって食事療法を怠らないようにしましょう。

血糖コントロールを良好に保つためにはどちらか一方が欠けてもうまくいきません。

また薬物療法は、インスリンや糖の吸収を抑制する薬などさまざまな薬がありますが、糖尿病の程度や症状に合わせて主治医と相談しながら行われます。

薬物治療

糖尿病性神経障害で使用される薬について説明します。

  • アルドース還元酵素阻害薬

神経障害が起きる原因の一つとして、神経細胞にソルビトールという物質が蓄積することが関係しているといわれています。

アルドース還元酵素阻害薬は、ソルビトールが細胞内に蓄積するのを防ぐ効果があります。

  • 神経障害性疼痛に対する治療薬

三環系抗うつ薬や抗てんかん薬、SSRI、抗不整脈などが使用されます。

ただしこのとき、急激に血糖を下げすぎると、治療後有痛性神経障害という痛みが生じることがあるので、徐々に血糖を下げていきます。

治療中に痛みが強くなったり新たに痛みが生じる可能性があるということを理解し、途中で自己判断で治療をやめないように注意が必要です。

  • 自律神経障害に対する治療薬

消化管の動きが鈍い場合は、消化運動を促進する薬を使用したり、便秘の薬や下痢止めの薬を使用したりします。

また排尿力低下、勃起不全に対してはPDE-5阻害薬といったように、それぞれの症状に合った薬を使用します。

生活指導

糖尿病性神経障害で現れているそれぞれの症状に合わせて生活指導が行われます。

起立性低血圧の場合は、降圧剤の服用をやめたり、急に立ち上がったりするなどの体位の変化で血圧が下がりやすいので、ゆっくり動くように心がけたり弾性ストッキングを着用するようにしましょう。

また消化管の動きが鈍い場合は、食事を少量ずつ分けて食べたり、脂肪や繊維の多い食べ物を控えたりする、無自覚性低血糖の場合は、低血糖が起きやすいタイミングを確認し、心配な場合はこまめに血糖測定を行ったり、適切に間食を摂るなどして低血糖を避ける工夫をするなどで症状が緩和する事があります。

またこのほかにも、手足に傷がないかを定期的にチェックやマッサージをする、できる限り禁煙や禁酒をすることが大切です。

糖尿病性神経障害の予防方法について

糖尿病性神経障害の予防としては、血糖値をコントロールすることが最も重要です。

主治医による糖尿病の治療を受けながら、運動療法、食事療法などの生活習慣の改善を行いましょう。

糖尿病性神経障害の手のしびれや足の痛みは治療によって改善する?いつ治る?

糖尿病性神経障害による手足のしびれは改善するのか、糖尿病神経障害の足の痛みはいつ治るのかについては、症状の進行度によって変わります。

軽度の場合であれば、痛み止めの内服や血糖コントロールを行うことで改善することがあります。

いつ治るのかについては数週間の場合もあれば数年かかることもありますが、適切な治療を受けることでほとんど痛みを感じなくなる場合もあり、できるだけ改善するためには、早い段階で医師に相談する事が重要です。

糖尿病性神経障害になったら生活で注意すべきことは?

糖尿病性神経障害で手足の感覚が鈍ると怪我をしても気づかないことがあり、そこから細菌感染を起こしたり、壊疽してしまったりすることがあるのでこまめに足の傷がないかどうかを確認するようにしましょう。

また飲酒や喫煙は症状を悪化させるため、できるだけ控えることが大切です。

神経障害により起立性低血圧の症状が出ている場合は、立ちくらみによる店頭に注意が必要なので、急に立ち上がらない、長風呂をしないなどを心がけましょう。

糖尿病神経障害で指先の痛みやしびれを感じにくい場合がある?

糖尿病性神経障害が進行すると血流が悪くなり、神経細胞の数が少なくなります。

それによって、痛みやしびれなどの症状が鈍くなり、けがをしていても気づきにくくなるため、その傷口から細菌が侵入して感染症を起こすことがあります。

最悪の場合、壊死して切断を余儀なくされるケースもあるため注意が必要です。

糖尿病で指先にひび割れが起きることがある?

糖尿病になると皮膚が乾燥しやすくなったり、足の血管が動脈硬化を起こすことで血流障害が起き、末端まで酸素や栄養が十分に送られなくなることでひび割れが起きてしまったりします。

また糖尿病に罹患していると免疫力が低下するので、細菌感染などが起きやすい状態になりますが、足にひび割れや傷ができていても、感覚が鈍くなることで気づきにくくなってしまうため、知らないうちに悪化して壊死してしまう場合もあります。

ですので、定期的に足の状態を確認することが重要です。

糖尿病で指先が変色することがある?

特に足の指の血管はとても細いのですが、末梢血管障害を認めると指先が紫色になったり、足が冷たく感じたり痛みが出たりするなどの症状がでることがあります。

さらに進行すると足の指先から黒く変化し、壊疽を起こすことがあります。

Q&A

糖尿病の手や足の痛みやしびれについてよくある質問にお答えします。

糖尿病性神経障害が進行するとどのような症状が出るのですか?

糖尿病神経障害は、末梢神経の代謝異常によってソルビトールが蓄積したり、神経に酸素や栄養を与える血管が損傷して血流が悪くなることが原因ではないかと考えられていますが、末梢神経のどの神経が障害されているかによってあらわれる症状が変わります。

末梢神経は、全身の筋肉を動かす運動神経、体温や血圧、内臓の働きを調整する自律神経、触覚や痛覚などの皮膚感覚を伝える感覚神経がありますが、それぞれの神経が障害されることで以下のような症状があらわれます。

  • 運動神経の異常

こむら返り、足の変形、太ももやおしりの筋肉の萎縮

  • 感覚神経の異常

 痛み、しびれ感、痛みなどの感覚を感じない

  • 運動神経の異常

こむら返り、太ももやお尻の筋肉の萎縮、足の変形

  • 自律神経の異常

便秘、下痢、吐き気、立ちくらみ、頻尿、汗をかかなくなる

糖尿病の指の症状は?

糖尿病に罹患している人は、糖尿病神経障害による指のしびれや痛みの他、ばね指などの腱鞘炎や、手根管症候群、デュプイトラン拘縮などの障害が起きることがあります。

指の先ではなく関節だけに痛みが生じているときは、糖尿病性関節炎の症状である可能性があります。

糖尿病に罹患している方は手の指が腫れる、痛みやしびれを感じる、指がこわばるなどの症状がないかどうか定期的にチェックするようにしましょう。

糖尿病で指先がピリピリするのはなぜですか?

指先のピリピリ感は糖尿病性神経障害の可能性があります。

糖尿病性神経障害が起きる明確な機序はわかっていませんが、高血糖状態が続くことで、障害の原因となるソルビトールが神経に蓄積したり、血流が悪くなり、酸素や栄養が神経に行き渡らなくなることが原因と考えられており、指先にピリピリ感や、チクチクするような痛みを感じることがあります。

糖尿病になると指先の感覚は鈍くなる?

指先や手足など体の末端部分は特に、糖尿病によって神経障害が起きて感覚が鈍くなることがあります。

はじめはしびれや痛みを感じていたものが、そのままにしておくことで徐々に感覚が鈍くなっていき、ケガしていても気づきにくくなります。

そのため、知らないうちに傷から細菌感染を起こし、やがて指先壊死に繋がる場合もあり注意が必要です。

糖尿病で足の指先がしびれるのはなぜですか?

糖尿病性神経障害は、毛細血管の血流が悪くなることで、神経細胞に必要な栄養や酸素がいきわたらなくなるため痛みやしびれなどの症状が出るといわれています。

特に足などの体の末端部分は、血管が細いため症状が現れやすくなります。

糖尿病性神経障害の足の痛みや足のしびれはどんな感じですか?

糖尿病神経障害の手足のしびれや痛みの特徴として、手足がピリピリする、手足の先が痛む、足の裏に紙が張り付いたような感覚がある、足の感覚が鈍い、じんじん痛むような感じがあると訴える方が多いようです。

また、糖尿病神経障害の足のしびれは片足だけに現れるのではなく、多くは左右対称で、手よりも足に先行して症状が出現します。

まとめ

糖尿病神経障害は、糖尿病の合併症の中でも特に起こりやすいといわれています。

しびれや痛みが軽度だからと放置しておくと、症状が進行してしまったり壊死して切断を余儀なくされる場合もあるため、違和感を感じたらすぐに医師に相談することが重要です。

また、日頃からフットケアなどをし、ひび割れがないかや傷がないかなどを確認したり、清潔に保つなどして細菌感染などが起きないように注意しましょう。

足のしびれなどを感じたらマッサージや保湿をするなどのフットケアをすることも効果的です。

糖尿病の合併症を防ぐために最も重要なのは、血糖値をコントロールすることです。

日頃から適度な運動をする、食事はバランスよく摂るなど生活習慣から見直していきましょう。

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