足がつりやすいのは糖尿病の影響?原因や対処法について徹底解説

公開日: 2024/01/06 更新日: 2024/05/22
夜中にやたら足がつる……糖尿病が進行しているのかもしれない……。 足がすぐにつるから痛くて大変!対処法や予防法は何が良いのかな?こういった悩みでお困りではないでしょうか。 日本糖尿病推進会議の調査では、「足がつる、あるいはこむら返りがある」と答えた糖尿病の患者は全体の35%と報告されています。[1] 糖尿病で足がつる原因や対処法を知っていれば、自分で予防ができたり、足がつったときに落ち着いてすぐ対処できるでしょう。 この記事では糖尿病で足がつる原因について説明しています。 足がつった時の対処法や予防法についてもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
目次

糖尿病で足がつる原因は?メカニズムをわかりやすく解説

糖尿病では足がつりやすいといわれています。足がつる原因は、筋肉が痙攣しているためです。

筋肉が痙攣するのは末梢神経が影響しています。足がつるとはどういった状態なのか、なぜ糖尿病だと足がつりやすいのか詳しく解説します。

糖尿病で足がつる原因とメカニズム

足がつっているとき、足の筋肉は痙攣を起こしています。ちなみに【足がつる】と【こむら返り】は同じ意味です。

医学用語では有痛性筋痙攣(ゆうつうせいきんけいれん)といい、筋肉に勝手に力が入り、痛みを伴う状態をさします。

ふくらはぎの筋肉で発生する有痛性筋痙攣が、一般的に言われる「足がつる」状態です。

正確なメカニズムはいまだ解明されていませんが、筋痙攣は神経の影響で異常収縮によって引き起こされます。[2]

血流や神経の流れが悪くなると、うまく筋肉に指令がいかず、筋肉の収縮をコントロールができないため足がつってしまいます。

糖尿病で足がつるのは末梢神経障害が影響

糖尿病3大合併症の一つに糖尿病性末梢神経障害があります。末梢神経障害は足がつる原因の一つです。

高血糖になると神経に直接影響し、足の筋肉に指令をだす神経へ伝わりにくくなります。一過性の血糖コントロール不良となると、異常感覚や筋痙攣が急速に悪化することが知られています。[3] 

加えて高血糖は末梢血管への血流に悪影響を及ぼすでしょう。血液は筋肉と神経の連絡に必要なミネラルを運んでいます。

血流が悪いと筋肉の収縮に必要なナトリウム、カルシウムが筋肉に届けられません。糖尿病性末梢神経障害で血流が悪くなる状態も足がつる原因の一つです。[4]

糖尿病で足がつるとしびれる?ふくらはぎが痛くなる原因と対処法は?

糖尿病で足がつるとしびれたり痛くなったりするのは末梢神経障害が原因と考えられます。糖尿病性の末梢神経障害は自覚症状が多彩だからです。

代謝障害により神経細胞の伝達をさまたげたり、血管障害により血管が細くなったりする状態が影響していると考えられています。[5] 

しびれや痛みの改善には、血管を広げる薬や神経の働きをよくする薬を飲むと良いでしょう。気になる方は、一度主治医に相談してみてください。

また、しびれや痛みに対して筋力強化も効果的です。[6]

ふくらはぎについている下腿三頭筋(かたいさんとうきん)を鍛えましょう。

寝ている状態であれば足の先を上下に動かしたり、立っている状態であればかかと上げの運動がおすすめです。

膝を伸ばして足先を反らせるふくらはぎのストレッチも、筋肉に刺激が入り、しびれや痛みが和らぎます。

夜中や寝ているときに足がつる原因は糖尿病かも

足がつりやすいのは夜寝ているときです。とくに糖尿病だと末梢神経障害があり、圧迫による足の痛みなどを感じにくいため、寝返りの回数が減ります。

体を動かさない時間が多いと筋肉が固くなり、痙攣をおこしやすくなるでしょう。足がつる原因は他にも運動不足や脱水、薬剤の副作用などが影響します。[7]

糖尿病の初期症状で足がつる?

糖尿病の初期症状では、必ず足がつるわけではありません。糖尿病の神経障害は糖尿病が診断される前、血糖値が高い状態が続くと出やすいです。

そのため、初期症状で足がつる可能性はあります。[2]

頻回に足がつる方で運動不足や脱水などの原因が除外できる方は、受診して検査をしてみましょう。

糖尿病の神経障害について

糖尿病の神経障害は、糖尿病3大合併症の一つです。足がつる原因に糖尿病の神経障害が深く関わっています。糖尿病の神経障害について知識を深めていきましょう。

糖尿病性神経障害の重症度判定方法

糖尿病性神経障害の診断には、糖尿病性神経障害を考える会の簡易診断基準案が日常的に使われています。[8]

“糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準案

必須項目(以下の2項目を満たす)

1.糖尿病が存在する.

2.糖尿病性神経障害以外の末梢神経障害を否定しうる.

条件項目(以下の3項目より2項目以上を満たす場合を“神経障害あり”とする)

1.糖尿病性多発神経障害に基づくと思われる自覚症状

2.両アキレス腱反射の低下あるいは消失

3.両内果の振動覚低下(C128音叉にて10秒以下)

注意事項

糖尿病の神経障害に基づくと思われる自覚症状とは

1.両側性

2.足趾先および測定の「しびれ」「疼痛」「異常感覚」

3.上肢のみの症状は取らない

参考項目

(以下のいずれかを満たす場合は条件項目を満たさなくても神経症状ありとする)

1.神経伝導検査で 2 つ以上の神経でそれぞれ 1 項目以上の検査項目(伝導速度、振幅、潜時)の異常を認める

2.臨床的に明らかな糖尿病性自律神経障害がある(自律神経機能検査で異常を確認することが望ましい)

”:[8]  

末梢神経障害は多彩な自覚症状があるため、診断は難しいでしょう。

検査として、アキレス腱反射や神経伝達テスト(電気を流して、筋肉の電気の通りやすさを計測するテスト)、知覚検査(筆で触ったり、音叉が震えている時間を答えたりする検査)があります。

自覚症状と検査で得た結果をもとに重症度・病期を判定します。

糖尿病性多発神経障害の病期分類

病期

Ⅰ 

症候期

神経症状なし

症状期

無症状期神経障害

前期

中期

後期

簡易診断基準条件項目

自覚症状

アキレス腱反射低下と振動覚低下

前期

感覚障害

表在感覚低下

自律神経障害

起立性低血圧、発汗異常、頑固な便秘下痢のいずれか

運動障害

下肢の筋力低下、筋萎縮のいずれか

QOLの障害

なし

なし

なしー軽度

軽中等度

高度

簡易診断基準

満たさない

満たす

満たす

満たす

満たす

[9]

糖尿病の神経障害はいつから始まるか

糖尿病性神経障害は他の合併症と比べ、早期に出現しやすいといわれています。

糖尿病の診断を受ける前や境界型糖尿病(血糖値が高めの集団)でも足のしびれを訴える人が多いようです。[10]

糖尿病の神経障害は治らないの?

神経障害の発症・進行に関与しているリスクのうち、もっとも重要な項目は血糖コントロールです。

糖尿病の神経障害は血糖コントロールや生活習慣の見直しで軽快する可能性もあります。

1型糖尿病の場合、投薬による厳格な血糖コントロールにて神経障害の発症や進行を抑制可能です。[8]

適切な治療が行われなかった場合、糖尿病を患っている期間が長いほど治りにくくなってしまうため、早期から治療に取り組みましょう。[9]

糖尿病の自律神経障害とは

糖尿病の神経障害のうち、発汗の異常や起立性低血圧、便通異常などの症状を自律神経障害といいます。

具体的な症状は「立ちくらみ」「胃のもたれ」「おしっこが出にくい」「ED」です。14.0〜31.7%の糖尿病患者が自覚しているという研究結果があります。[11]

自律神経障害が軽度の場合は、血糖コントロールや生活習慣を行えば改善することが多いです。

しかし、自律神経障害が進行して日常生活に影響を与える場合はすぐに医師に相談しましょう。[8]

「足がつる」糖尿病以外の原因

「足がつる」原因は、糖尿病以外にもたくさんあります。「足がつる」経験のある人は一般の人でも59.7%と高い数値です。[12]

神経障害や血管障害、筋肉に影響がある病気などが足がつる原因となります。以下の表は足がつるのに加えてある症状と疑われる病気です。

しびれが強く、歩くと腰から痛みを伴う

脊柱の神経障害

足が冷たい

歩くと痛むけれど休憩するとまた歩ける

下肢静脈血栓

大量の汗をかく

体重の増減がある

甲状腺機能低下

全身が痙攣している

※ミネラルバランスが大きく崩れている可能性があるので救急車も検討

高度の脱水

血糖コントロールが良好で足が頻繁につってしまう人は、他の疾患を疑い、医師に相談してみましょう。[4][8]

糖尿病で足がつったときの対処法3つ

糖尿病で足がつったときにすぐできる対処法を3つ説明します。簡単にできるのでぜひ試してみてください。

足のストレッチをする|膝の裏、足の指を伸ばす

足がつったときは、膝の裏や足の指を伸ばすストレッチが有効です。膝をしっかり伸ばして足の指先を膝に向かって反らせるようにして引っ張ります。

ふくらはぎがピンと突っ張ったように感じていればOKです。15〜30秒程度おこないましょう。

ふくらはぎを温める|やけどに注意

ふくらはぎを温めるのも効果的です。神経障害がある場合は温度を感じにくく、やけどの危険性があるため、手先で温度を確認しましょう。

ゆっくり温まるホッカイロも長時間使用すると低温やけどの可能性があるため注意が必要です。

軽くふくらはぎをほぐす|糖尿病でマッサージは禁忌?マッサージ器は?

ふくらはぎのマッサージも、足がつった際の対処法の一つです。

しかし、感覚障害を伴う神経障害を患っている場合、強い刺激になりすぎて皮下出血をおこしてしまう危険性があります。

マッサージ器などは医師の許可や自分以外の人に強度を確認してもらうと良いでしょう。自分で行うマッサージであれば調整できるので問題ありません。

糖尿病で足がつるのを予防するには?

糖尿病で足がつるのを予防するために、おすすめの方法を5つ紹介します。

体操をする|足上げぶらぶら体操

足がつるのを予防するには体操が効果的です。下肢の血流が悪いと足がつりやすいため、適度に足を動かしましょう。

  1. 仰向けになって両足を持ち上げます。
    股関節と膝関節が90度になるように注意しましょう。

  2. 足の指先を大きく上下に動かします。
    ふくらはぎの筋肉を使うよう意識してください。

  3. 踵を太ももにたたきつけるように膝を曲げ伸ばしします。
    膝の裏を動かしましょう。

疲労物質である乳酸が足にたまると足がつりやすくなります。足にたまった疲労物質をながし、下肢の血流を改善して足がつるのを予防しましょう。

湯船にしっかりつかる|温めて循環をよくしておく

体が冷えていると筋肉が硬くなり、足がつりやすくなります。シャワーで済ませるのではなく、ゆっくり湯船につかって体を温める行為も足がつる予防につながります。

水分をしっかりとる|冬はとくに注意

脱水状態になると血流が悪くなり、神経が筋肉に伝わりにくくなるため足がつりやすくなってしまいます。水分補給をしっかりするようにしましょう。

とくに冬は暖房などで乾燥し、脱水状態になっていても汗をかかないため気が付かない可能性があります。積極的な水分摂取を心がけてください。白湯の摂取がおすすめです。

足がつる予防として摂取する、コーヒーやアルコールなどの飲料は利尿作用があるため向いていません。

足がつる・こむら返りを予防する薬を飲む|糖尿病でも服用できるもの

糖尿病性神経障害によって足がつる場合、処方されるのはアルドース還元酵素阻害剤、 筋弛緩薬、抗不安薬、 ビタミン剤などです。

アルドース還元酵素阻害薬は神経障害の原因となる物質の蓄積を防ぐことで、糖尿病で遅くなった神経速度を改善させます。[13]

芍薬甘草湯も糖尿病で足がつる患者様に処方されています。[14]

足がつりにくい食事にする|マグネシウムやカルシウムを意識

筋肉がスムーズに動くためにはミネラルの摂取が重要です。マグネシウムやカルシウム、カリウムを多く含む食品を摂取し、足がつりにくい体づくりをしましょう。

マグネシウムは海藻類や豆類に、カルシウムは乳製品や小魚に、カリウムは果物類に含まれています。糖尿病で腎機能障害がある人の果物の摂取は医師に相談してください。

Q&A

糖尿病で足がつる方や、足が頻繁につってお悩みの方に多く聞かれる質問について回答します。

糖尿病の症状で足がつる原因は何ですか?

糖尿病で足がつるのは、糖尿病性末梢神経障害による筋肉の痙攣が原因です。神経障害がおこると、筋肉に指令が届きにくくなるため、筋肉に痙攣がおきやすい状態になります。

足がやたらつるのはなぜですか?

糖尿病の患者で足がやたらつるのは、血糖コントロールが不良になっているかもしれません。

血糖コントロール不良となると、神経症状が悪化している可能性があります。脊柱や血管の病気が隠れている危険性もあるため、病院を受診しましょう。

糖尿病の足の初期症状は?

末梢神経は先にいけばいくほど細くなり、障害を受けやすいです。初期症状として足のしびれや違和感が出るケースがあります。足がつることもあるでしょう。

足がつるのを予防する食べ物は?

足がつるのを予防するにはマグネシウムやカルシウムを多く含む海藻類や豆類を摂取すると良いでしょう。具体的にはわかめやひじき、アーモンドや納豆です。

まとめ

糖尿病で足がつるのは、糖尿病の合併症である末梢神経障害が大きく影響しています。神経障害によって筋肉に指令が伝わりにくく、筋肉が痙攣しやすいからです。

糖尿病の場合は、血管も障害を受けるため血流が悪くなります。糖尿病の方は、血流障害による筋肉のミネラル不足でも足がつりやすくなります。

血管や神経は末梢につれて細くなり、糖尿病による影響を受けやすいです。そのため、糖尿病の初期症状として足がつる可能性もあります。

痛みやしびれをともなうケースもあるのでストレッチやマッサージで対応しましょう。

糖尿病の神経障害は自覚症状やアキレス腱反射などの検査によって診断や重症度の分類がされています。血糖コントロールが不良になれば悪化するため、早期に治療が必要です。

自律神経も障害されるため、日常生活に支障が出る場合は服薬の調整を医師に相談してください。

糖尿病によって足がつったときの対処法はストレッチが良いでしょう。ふくらはぎがしっかり伸びるように膝を伸ばし、足先を手前に反らせて引っ張ります。

軽いマッサージやふくらはぎを温めるのも効果的です。

足がつるのを予防するには足を動かす、湯船につかるなどの血流をよくする行為や、脱水を防ぐために水を飲んだり、ミネラルを摂取できるひじきや納豆などを食べたりするのがおすすめです。

糖尿病で足がつるのに困っている方はぜひ試してみてください。

引用

[8]糖尿病診療ガイドライン2019|10.糖尿病(性)神経障害 p170

参考文献

[1]日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌/16 巻 (2012) 3 号/一大学病院の糖尿病患者における足部の実態調査―インターナショナル・コンセンサスのリスク分類に基づいて―

[2]糖尿病/34 巻 (1991) 10 号/糖尿病患者にみられる有痛性筋痙攣 (こむらがえり) の特徴

[3]日本内科学会雑誌/98 巻 (2009) 2 号/医学と医療の最前線 糖尿病と末梢神経障害

[4]NHKトップ|NHK健康トップ| 病名・症状から探す |熱中症 熱中症の予防・対処 足がつる・こむら返り原因・対処法、効果的な漢方薬

[5]糖尿病/27 巻 (1984) 1 号/糖尿病性末梢神経障害に対するPGE1の治療効果の検討

[6]リハビリテーション医学/28 巻 (1991) 6 号/末梢神経障害のリハビリテーション

[7]MDSマニュアルプロフェッショナル版/ 07. 神経疾患 / 神経疾患の症状 / 筋痙攣

[8]糖尿病診療ガイドライン2019|10.糖尿病(性)神経障害

[9]日本内科学会雑誌第101巻第8号|II.糖尿病と脳神経疾患|1.糖尿病性末梢神経障害(糖尿病多発神経障害,局所性・多巣性糖尿病神経障害,有痛性糖尿病神経障害)p2174

[10]厚生労働科学研究成果データベース|糖尿病神経障害・糖尿病足病変の診断ガイドラインならびに管理法の確立

[11] 糖尿病/46 巻 (2003) 4 号/首都圏糖尿病患者における糖尿病性神経障害の実態調査

[12]公益社団法人鳥取県医師会|県民の皆様へ|医療情報健康なんでも相談室|夜間および早朝の下肢有痛性筋痙攣(こむら返り)を主訴とする症例のQ&A

[13] 糖尿病性神経障害に対するアルドース還元酵素阻害薬 (エパルレスタット) の効果

―2群間クロスオーバー比較試験による検討―/糖尿病/48 巻 (2005) 8 号/

[14]日本東洋医学雑誌/49 巻 (1998-1999) 5 号/糖尿病性神経障害による有痛性筋痙攣 (こむらがえり) に対する芍薬甘草湯の効果

 

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