糖尿病治療中の低血糖について解説!原因や症状、対策は?

公開日: 2024/01/05 更新日: 2024/05/22
糖尿病は国内に1000万人の患者がいるとも言われ、誰もが知る生活習慣病です。 糖尿病の治療には血糖値を下げるための薬が使われますが、時に血糖値が下がりすぎる「低血糖」の原因になることがあります。 低血糖は放置して悪化すると命に関わることもある危険な状態です。 ここでは低血糖の原因や症状、対策について詳しく説明していきます。

低血糖とは?

低血糖とは血液中のブドウ糖の量が低くなった状態です。

体の細胞、特に脳はブドウ糖をエネルギー源として使用しますが、通常であればブドウ糖の濃度は約70〜110mg/dLの範囲に保たれています。

このブドウ糖の血中濃度が低くなると、細胞に必要なエネルギーが充分に供給できなくなり「低血糖」となるのです。

低血糖の基準についてですが、血糖値が70mg/mL以下であれば症状の有無に関わらず低血糖に該当します。

また、70mg/mL以上でも冷や汗や震えなどの低血糖症状が出ている場合も低血糖となります。

糖尿病の治療中に低血糖になるのはなぜ?その理由

低血糖の原因は、血糖値を下げるために分泌されるインスリンにより、血糖値が下がりすぎることです。

糖尿病は、高血糖が続くことで血管に負担がかかり、合併症と呼ばれる他の疾患を引き起こす病気です。糖尿病の合併症には腎障害や神経障害、視覚障害などがあります。

糖尿病の治療では、これらの合併症を防ぐために薬を使用して血糖値をコントロールしていきます。しかし、何らかの原因で薬が効きすぎると低血糖を引き起こすのです。

糖尿病の治療薬には様々な作用のものがあります。

なかでもインスリンを出して血糖値を下げるスルホニルウレア剤(SU剤)や、インスリンを補充するインスリン注射は、他の治療薬に比べて低血糖をおこしやすい傾向があります。

低血糖の症状は?

血糖値が下がると、初期症状として吐き気や動悸などの「自律神経症状」があらわれます。

これは血糖値を上げるために、体がアドレナリンなどのホルモンを分泌するためです。

一般的に、血糖値が約70mg/dL以下になると次のような自覚症状が出始めます。

  • 冷や汗

  • 吐き気

  • 発汗

  • 動悸

  • 震えなど

低血糖が進んで血糖値が約50mg/mL未満になると「中枢神経症状」があらわれます。

中枢神経症状として代表的な症状は以下のようなものです。

  • 頭痛

  • 目のかすみ

  • 脱力感

  • 生あくび(眠気)

さらに血糖値が低下し約30mg/dLになると異常行動や意識混濁がみられるなど、危険な状態となります。

無自覚性低血糖とは?

低血糖の初期には、冷や汗や動悸などの自律神経系の症状があらわれますが、無自覚性低血糖ではこのような自覚症状があらわれません。

血糖値が下がっても気づかずに対応が遅れるため、突然、意識が遠くなったり、痙攣をおこしたりします。

無自覚性低血糖の原因は、低血糖を繰り返すことです。何度も低血糖をおこすと、低血糖に気づく力が弱くなり無自覚性低血糖を起こしやすくなります。

無自覚性低血糖は重症低血糖につながりやすい危険な状態ですので、低血糖症状が現れたときは放置せず、すぐにブドウ糖をとるなどの対応をしてください。

糖尿病の治療中に低血糖になったら?その対処法

糖尿病の治療中に低血糖になった場合、すぐにブドウ糖10gをとるか、砂糖20gをとります。ブドウ糖を含むジュースなどでも構いません。

洋菓子やチョコレートは油分が多く吸収が遅いため、おすすめできません。

αグルコシダーゼ阻害薬を服用している方は、ブドウ糖以外の糖分だと吸収が遅れるため、必ずブドウ糖をとりましょう。

低血糖症状はブドウ糖などの糖分を摂取すれば、すぐにおさまります。もし、15分程度たっても症状が続く場合は、再度、糖分をとって様子をみてください。

低血糖がおこった場合、頻度や重症度によっては今後の糖尿病治療を見直す可能性があるため、必ず医師に相談しましょう。

低血糖はどんな時に起こりやすい?

血糖値はインスリンやグルカゴンなどのホルモンで調節されていますが、人の体に必要なインスリン量は常に一定ではありません。

糖尿病の方は、薬やインスリン注射で足りないインスリンを補っていますが、体に必要なインスリン量と補充しているインスリン量のバランスがくずれると低血糖になるのです。

低血糖が起きやすいタイミングには以下のようなものがあります。

  • 食事の量が少なかったとき

  • 食事の時間が遅れたとき

  • 運動量が多いとき

  • 飲酒

  • 入浴

その他、シックデイや夜間にも低血糖をおこすことがあります。

シックデイとは糖尿病の方が感染症にかかり、発熱や下痢、嘔吐、食欲不振などの症状が出ている期間のことです。

シックデイでは、脱水傾向になることで高血糖を起こしやすいと言われています。

しかし、体調が不安定なため血糖値が安定せず、低血糖につながることもあるので注意が必要です。

糖尿病治療中の方は、あらかじめシックデイの対応について、医師に確認をすると良いでしょう。

また、食事の間隔があく夜間にも低血糖を起こしている場合があり、これを「夜間低血糖」と呼びます。

夜間低血糖は睡眠中におこるため気が付かないことがほとんどです。こうして、低血糖を繰り返していると無自覚性低血糖となり、重度の低血糖を起こすリスクが高まります。

糖尿病で低血糖症状が起こった時の死亡リスクは?

血糖値が50mg/mL未満になると中枢神経症状として目のかすみや生あくび、異常行動などが出始めますが、さらに症状が悪化すると昏睡となり命の危険が伴います。

特に「無自覚性低血糖」では冷や汗や動悸といった低血糖の初期症状が出ずに、突然、意識混濁などの中枢神経症状があらわれます。

初期症状がないため低血糖の進行に気づかず、重症低血糖に繋がりやすいのです。

無自覚性低血糖は、低血糖に対応せず放置することで自覚症状を感じにくくなることが原因です。

重症低血糖は命に関わる状態ですので、これを避けるためにも、低血糖を放置しないようにしましょう。

低血糖を予防するためには?

糖尿病の治療をしている方は、低血糖を予防するために注意したいことがあります。

まずは、食事についてです。食事の時間がいつもとずれたり、量が少なかったりすると低血糖をおこしやすくなります。

なるべく決まった時間に食事をとるとともに、極端に量を減らさないようにしましょう。

インスリンを使用している方は、インスリンを打つタイミングを理解して守ることが大切です。

インスリンの種類によって「食直前」「食事の30分前」など時間が決められています。

インスリンを打ったあとも食事をとらずにいると、非常に低血糖をおこしやすくなるため、インスリンを使用するタイミングを理解したうえで治療を進めていきましょう。

運動は糖尿病の改善に有効ですが、一時的に消費カロリーが増えるため、低血糖に注意が必要です。特に食事前の運動は低血糖を起こしやすくなるのでなるべく避けましょう。

食事後は血糖値が上がりやすいので、運動の効果が高く、低血糖になりにくいためおすすめです。

運動をするときはブドウ糖を携帯するなどして、低血糖に対応できる用意をしておきましょう。

Q&A

糖尿病で低血糖になるのはなぜ?

糖尿病では血糖値を下げるために飲み薬やインスリン注射を使用しますが、これらの薬が効きすぎると低血糖をおこします。

血糖値は常に変動しています。体はインスリンやグルカゴンなどのホルモンで、血糖値を一定の範囲に保つよう調節しています。

糖尿病の方は薬によってインスリンを補っているため、さまざまな要因によりインスリンの効果が強く出ることがあります。そのために低血糖を起こすことがあるのです。

低血糖になりやすい人の特徴は?

低血糖になりやすい人にはいくつかの特徴があります。

例えば、食事の時間がずれやすい人や食事量が一定でない人、激しい運動をする人、多量のお酒を飲む人などです。

低血糖は、糖尿病でない人でも起こりうる症状です。低血糖になりやすい人の例として女性が挙げられます。

女性は男性と比べてダイエットなどをする人が多いため食事量なども偏りがちです。

糖尿病治療中は、薬でインスリンの作用を補っているため、健康な方にくらべて低血糖を起こしやすい傾向があります。

低血糖は、糖尿病の人がなりやすいとはいえ、糖尿病以外でも起こる可能性は十分にあります。

低血糖になりやすい状況を理解して、なるべく低血糖を起こさないような対策をとりましょう。

低血糖になったらどうすればいいですか?

低血糖の症状を感じた時の治し方としては、すぐにブドウ糖10gか砂糖20gをとるのがよいでしょう。

αグルコシダーゼ阻害薬を服用している方は、ブドウ糖以外の糖分だと吸収が遅れるため、必ずブドウ糖をとってください。

低血糖を放置すると自覚症状が出にくくなり、突然、意識障害がでるなど、重症低血糖をまねくことがあります。

重症低血糖は、場合によっては命に関わる危険な状態です。これを防ぐためにも動悸や冷や汗など、低血糖の症状を感じたら、すぐに糖分をとりましょう。

糖尿病の低血糖を予防するにはどうしたらいいですか?

糖尿病治療中の低血糖を予防するためには、いくつかのポイントがあります。

まずは、食事の時間や量についてです。食事の時間が大きくずれたり量が少なかったりすると低血糖をおこしやすくなります。

食事はなるべく決まった時間にとること、極端な食事制限はしないことに注意しましょう。

また、過度な運動や空腹時の運動も低血糖の原因となります。

運動をするときは、血糖値が上がりやすい食後1時間程度の時間帯が、血糖を改善する効果もあり、低血糖もおこしにくいとされています。

まとめ

ここまで糖尿病の治療中におきる低血糖について解説してきました。

低血糖は初期に適切な対応ができれば大事には至りませんが、放置すると意識障害をおこすことがあります。

また、自覚症状がないままに低血糖が進行する「無自覚性低血糖」や睡眠中の「夜間低血糖」などもあります。

血糖値を正常範囲にコントロールするためには治療薬が欠かせませんが、時に低血糖の危険もあることを理解して適切な対策をとっていきましょう。

FastDoctor
ドクターの往診・オンライン診療アプリ
往診もオンライン診療も
アプリから便利に相談
App Storeからダウンロード
Google Playで手に入れよう
TOP医療コラム糖尿病治療中の低血糖について解説!原因や症状、対策は?