糖尿病からくる皮膚トラブルはなぜ起こる?症状と原因、予防方法を解説

公開日: 2024/01/03 更新日: 2024/05/22
糖尿病になると、皮膚の異常が現れることがあります。 重篤な合併症である足壊疽だけではなく、糖尿病では皮膚の感染症や乾燥がみられる可能性があります。 そして、それぞれ糖尿病特有の原因があることを知っているでしょうか。 また、予防のために何をしたらいいのかわからない方もいるでしょう。 皮膚トラブルを予防するために大切なのは、血糖コントロールとともに皮膚症状が現れないような対策です。 この記事では、皮膚トラブルの原因や症状、予防方法を解説していきます。 糖尿病の皮膚症状について気になる方は、ぜひ最後までお読みください。
目次

糖尿病からくる皮膚感染症の種類と治療法・予防の重要性

血糖値が高いと免疫力が低下し、感染しやすくなります。

風邪や肺炎にかかりやすい状態と同じように、免疫力が低下した皮膚は感染しやすいです。

皮膚感染症によくみられる白癬(水虫)や蜂窩織炎(ほうかしきえん)について詳しく解説します。

皮膚感染症である白癬(水虫)や蜂窩織炎の症状と治療法

  • 白癬 (はくせん)

白癬(はくせん)とは、いわゆる水虫のことをいいます。白癬は、皮膚糸状菌という真菌に感染する病気です。皮膚や爪、髪にも寄生します。

足白癬が最も多く指の間に生息し、小さい水疱や赤みができてただれることがあります。

爪にできる白癬は、爪の色が白くなります。また、爪が厚くなり、進行すると自分で爪を切れないほど変形するのが特徴です。

治療は皮膚を清潔にし、塗り薬の抗真菌薬をきちんと塗れば治ります。[1]

白癬(水虫)は、糖尿病の人がかかりやすい皮膚感染症の1つです。

  • 蜂窩織炎(ほうかしきえん)

蜂窩織炎は、皮膚と皮下の脂肪組織に生じる細菌感染で起こります。足によく見られますが、体のどの部分にも起こる可能性があります。

感染した部分が赤く腫れ、発熱と痛みが出るのが症状の特徴です。

治療には、抗菌薬の点滴かのみ薬を使用します。

糖尿病は感染症を起こしやすく傷が治りにくい|予防と対策の重要性

糖尿病の特徴の1つに、細菌やウイルスに感染しやすいことがあります。

高血糖が続いていると免疫系に関わる細胞の機能低下が、感染しやすい状態になる原因です。

感染症にかからないために、予防が大切です。以下が予防の方法です。

  • 予防・対策方法

足の清潔を保つことが一番の予防と対策です。

小さな傷も見逃さないように、毎日足の観察をしましょう。傷を作らないのが一番の予防ですが、傷ができたとしても早期発見・早期治療が感染症にならないためにできることです。

小さな傷でも放置せず、病院を受診しましょう。

かゆみの原因は何?皮膚乾燥時のケアと予防法

糖尿病になると皮膚が乾燥し、白くカサカサになることがあります。乾燥からくる皮膚のかゆみは、糖尿病患者によくある症状です。

ここからは、皮膚乾燥の原因とケア・予防方法を紹介していきます。

糖尿病は皮膚乾燥が起こるのはなぜか?

糖尿病になると、のどが渇いたり、尿の回数が増えたりする症状が現れます。

血糖値が高くなると、血液中の高血糖を改善するため、体の中の水分が使われます。そのため脱水状態になり、脱水症状として出てくるのがのどの渇きです。

また、脱水症状があると皮膚の水分も少なくなり、皮膚が乾燥してかゆみを伴います。

皮膚が乾燥したときのケアと予防方法

皮膚の乾燥の改善には血糖値の安定が最も重要です。さらに乾燥した皮膚が傷になって感染を起こさないようなケアが必要です。

ここから、ケアの方法と予防方法を説明していきます。

皮膚が乾燥していると、バリア機能が低下して湿疹やかゆみの原因となります。

皮膚本来の機能を維持するために、保湿が必要になります。保湿剤の使用が有効です。保湿剤の中でも保湿力の高いクリームタイプを選ぶとよいでしょう。

ただし、自分で塗れない部分にはスプレータイプやミストタイプの保湿剤を併用して使うのがおすすめです。

保湿剤で一時的に皮膚の乾燥が改善されても、保湿剤の使用を中止しないようにしましょう。

皮膚の清潔を保ち、皮膚の状態を毎日観察することが大切です。

かゆみが強く、傷になっている場合は自己判断で中断せず、主治医に相談または受診をしましょう。

糖尿病合併症にもつながる糖尿病足病変とは

糖尿病の人は動脈硬化で足の血管が狭くなることと、末梢神経障害からくる感覚が鈍くなることで潰瘍(かいよう)ができやすくなります。

潰瘍(かいよう)とは皮膚の傷が悪化し、皮下組織にまで及ぶ皮膚欠損の状態です。

また、糖尿病は感染しやすい状態にあり、細菌感染や真菌感染から足にトラブルを生じる可能性があります。

細菌や真菌が傷に感染して進行することが、潰瘍や壊疽につながる原因です。糖尿病患者の足に生じるトラブルのことを、総称して「糖尿病足病変」といいます。

糖尿病からくる足潰瘍と足壊疽の原因

糖尿病性の足潰瘍と足壊疽は、主に以下の3つの障害が重なることが原因だと考えられています。

  1. 血行障害:糖尿病を長期間患っていると動脈硬化を起こします。
    動脈硬化になると血管内が狭くなり血流が悪くなるのが血行障害の原因です。
  2. 感染症:高血糖が続いていると体の防御機能の低下により、感染症を起こしやすくなります。
    足はとても汚れやすい部分で、とくに指の間は感染しやすい場所です。
    小さな傷でも感染すると、急速に悪化する場合があります。
  3. 末梢神経障害:糖尿病の合併症として神経障害があります。
    神経障害は感覚が鈍くなり、痛みを感じにくくなります。
    そのため、傷ができても自覚症状がなく発見が遅れ、悪化してからでないと気づかないことがあります。

糖尿病足病変のリスクが高い人とはどんな人?

糖尿病と診断された人が、すべて糖尿病足病変になる訳ではありません。

では、足病変になるリスクが高い人はどんな人でしょうか?

  • 血糖値が高く血糖コントロールができていない人

  • 糖尿病による末梢神経障害がある人

  • 糖尿病による末梢動脈が狭いと診断された人

  • 足潰瘍や足壊疽になったことがある人

以上の人は、糖尿病性足病変になるリスクが高い傾向にあります。

上記の項目に当てはまらない人でも糖尿病は自覚症状を感じにくいのが特徴です。

また、ゆっくり進行する特性があるため足の清潔を保ち、足の観察を行いましょう。

足潰瘍と足壊疽の症状の違いとは

  • 足潰瘍の症状

末梢神経障害がある方は、痛みをあまり感じないでしょう。

よって、小さな傷から悪化し、気づかないうちに傷が大きくなっていることがあります。

皮膚が赤く炎症を起こして腫れがみられる場合、出血や浸出液などの汚染があることによって気づくときもあるでしょう。

  • 足壊疽の症状

足壊疽は足がしびれる、冷たく感じるといった症状から現れます。小さな傷からでも悪化し、気づかないうちに傷や皮膚の変色が大きくなっていることがあります。

糖尿病が進行して末梢神経障害があると感覚が鈍くなるため、はじめは痛みをあまり感じないでしょう。

壊疽は組織が死んでしまう病変であり、皮膚が黒く硬くなるのが特徴です。

糖尿病足病変の治療法

糖尿病足病変の治療は症状により、以下のように治療を行います。

  • 水虫、細菌感染:真菌薬や抗生物質により感染症の治療を行う。

  • 傷や潰瘍:傷の処置をし、体重や圧をかけないようにする。

  • 壊疽:細胞が死んでしまっている部分は削り、傷が治るように処置を行う。

    

足壊疽が進行し、壊疽が広範囲になっている場合は、命を守るために足を切断しなければならない場合もあります。[4]

壊疽の部位が小さい場合に行われるのが、一部の壊死組織を削る処置です。しかし、進行が早く壊死部分の範囲が広い場合は足を切断する可能性もあります。

はじめは小さな傷でも、急速に悪化することがありますので、かかりつけを早めに受診しましょう。

糖尿病足病変にならないために|フットケアについて

糖尿病足病変は予防が大切です。足を良い状態に保つためのフットケアのポイントを紹介します。

足を洗うときは皮膚を傷つけないよう、強くこすらず優しく洗いましょう。とくに足の指の間は、汚れやすいため、洗い忘れのないようにしてください。      

皮膚が乾燥している場合は保湿剤を塗り、皮膚が切れたり割れたりするのを防ぎましょう。

うおのめ、たこ、腫れている部分や傷がないか毎日チェックしましょう。

また、皮膚の色も意識して見るようにし、青っぽくなっている場合や赤くなっているなど、皮膚の色が悪い場合は要注意です。

うおのめやたこも潰瘍の原因になりますので、見つけた場合は受診をおすすめします。

足の爪は皮膚を傷つけないように、丸く切らずまっすぐに切りましょう。

爪を丸く切ろうとすると、皮膚を傷つけることがあるので注意が必要です。爪を切ったあとは軽くやすりをかけておくことをおすすめします。

深爪にはならないように注意してください。

視力の低下などで自分で爪を切るのが困難な場合は、家族や医師に相談してみましょう。

合わない靴をはいていると、靴擦れや傷の原因になります。

足は夕方になると多少むくみが出ます。

新しい靴を買う場合は、夕方に買うといいでしょう。

室内でも足を傷つけないためにも靴下をはくことをおすすめします。

足をしめつけないように、ゆるめで通気性のよい素材を選びましょう。

合併症である末梢神経障害があれば、足先は感覚が鈍くなり、熱さも感じにくくなります。

暖房器具やカイロなどは直接肌にあてないようにしましょう。

Q&A

糖尿病からくる皮膚トラブルに関する4つのQ&Aについて解説します。

糖尿病の皮膚症状は?

糖尿病になると様々な皮膚症状があらわれることがあります。

4つの代表的な症状を紹介します。

  • 水虫(足白癬) 皮膚症状の中でも水虫が一番多い

糖尿病を長い期間患っていると免疫力が落ち感染しやすい状態になります。足は汚れやすい部分であり、感染しやすい状態にあることから真菌感染して水虫を発症します。

  • 皮膚の乾燥 高血糖が続くと体が脱水状態になりやすい

皮膚が乾燥し、かさつき・かゆみが起こります。保湿剤を塗って乾燥を防ぎましょう。

  • 蜂窩織炎(ほうかしきえん) になりやすい

細菌が皮膚の中に入り込み炎症を起こすことで起こる病気です。皮下の中で炎症を起こし、発熱や腫脹、痛みを伴います。

  • 足潰瘍と足壊疽

糖尿病を長期にわたって患っていると、末梢神経障害を起こす感覚が鈍くなることが原因で小さな傷の痛みを感じることができず、傷があることに気づくのが遅くなります。

小さな傷から細菌が入ることが、潰瘍や壊疽の原因です。

どの症状も足の清潔を保ち、毎日足を観察することで早期に異常を発見でき、予防に繋がります。

糖尿病の皮膚炎の特徴は?

糖尿病の人が起きやすい皮膚の炎症はいくつかあります。

原因は様々ですが、いちばん多いのは脱水からくる皮膚の乾燥です。皮膚の乾燥はかゆみが生じるため、掻き傷が原因で炎症を起こす可能性があります。

保湿剤をこまめに塗って、乾燥を防ぐといいでしょう。

糖尿病の人は免疫力が低下するため、小さな傷でも感染を起こしやすく潰瘍や壊疽につながります。とくに足は汚れやすく、感染しやすいです。

皮膚を清潔に保ち、観察を行うことが潰瘍と壊疽の予防となります。毎日欠かさず行いましょう。

糖尿病で皮膚にブツブツができるのはなぜですか?

糖尿病で高血糖が続いていると、体は脱水状態となり、皮膚は乾燥します。

乾燥性湿疹は乾燥に炎症が加わることでできる湿疹です。

皮膚は乾燥した状態になると、肌本来のバリア機能が低下し、刺激を受けると炎症を起こして赤みのある湿疹になります。

皮膚の異常が出た場合は、早めに受診しましょう。

糖尿病の皮膚はなぜかゆくなるのですか?

糖尿病患者の皮膚のかゆみの原因は、高血糖による脱水からくる皮膚の乾燥です。

血糖値が高くなると、それを改善しようと多くの水分が必要となります。体は血糖値を下げようと尿と一緒に余分な糖を排出するため、尿量が多くなります。

尿が多く出た体内は、水分が不足し脱水状態となり皮膚が乾燥するのがかゆみの原因です。

血糖コントロールと、皮膚の保湿が重要になってきます。

まとめ

糖尿病で高血糖になると、さまざまな皮膚症状が出現します。

  • 皮膚の乾燥

  • 皮膚感染症(水虫や蜂窩織炎)

  • 皮膚感染による足潰瘍と足壊疽

上記の3つが代表的な症状です。

いずれも糖尿病の高血糖が原因となり、発症します。

糖尿病の方は、免疫力の低下で感染しやすく、傷が治りにくいのが特徴です。

毎日のフットケアや観察を行うことで糖尿病足病変の予防や早期発見ができます。重篤な足壊疽や足潰瘍にならないよう、フットケアをすることが大切です。

また、一番重要ともいえる血糖コントロールや、定期的な受診を心がけましょう。

参考文献

[1] 公益社団法人 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 白癬(水虫・たむし)

[2]兵庫医科大学 皮膚科 蜂窩織炎

[3]国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 糖尿病足病変 フットケア

[4]国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 糖尿病足病変

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