糖尿病で体重減少は要注意!体重が減る原因と糖尿病悪化のサインは?

公開日: 2024/01/03 更新日: 2024/05/22
糖尿病と密接な関係にあるのが体重です。 多くの方が「体重が増えると糖尿病になる」というイメージをお持ちではないでしょうか。 しかし実際には、糖尿病によって体重が減ることがあります。 そこで今回は、糖尿病における体重減少のメカニズムと、危険な目安、対策などについて解説します。 糖尿病による体重減少を放置することは、非常に危険です。 糖尿病の症状を学び、悪化させないよう対策をしましょう。
目次

なぜ糖尿病で体重減少が起こるのか?

糖尿病によって、体重が減ることがあります。

その原因に深く関与しているのが「インスリン」というホルモンです。インスリンの不足や感受性の低下によって、体重は減ってしまいます。

糖尿病による体重減少のメカニズムは?

インスリンは膵臓から出るホルモンで、血液中の糖を臓器や筋肉などの細胞に取り込ませる役割を果たします。

このインスリンがうまく働かないことで、食事から摂取した糖が細胞に取り込まれず、血液中の糖が過剰になった状態が糖尿病です。

インスリンがうまく働かないと、食事から摂った糖をエネルギーに変換できません。すると、脳は非常事態だと判断し、体内の脂肪や筋肉を分解することによってエネルギーを作ります。

そのため、食事をしっかり摂取していても体重が減ってしまいます。

インスリンがうまく働かない理由は?

インスリンがうまく働かない理由として、以下の2つがあげられます。

膵臓の機能低下や、何らかの刺激によってインスリンの分泌量が減ってしまう状態です。

この原因には、遺伝的体質や加齢が影響します。

十分な量のインスリンが作られているにも関わらず、効果を発揮できない状態を指します。インスリン抵抗性が高くなる原因は、食べ過ぎや運動不足などによる肥満です。

糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病に大別されます。1型糖尿病の原因の多くはインスリン分泌低下によるものです。

一方で、2型糖尿病の多くはインスリン分泌低下とインスリン抵抗性のどちらも要因になると言えるでしょう。

糖尿病による体重減少の危険の目安は?

前述したように、糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病に分けられますが、いずれも体重減少が起こる可能性があります。それでは、どのくらいの減量が危険の目安になるのでしょうか?

生活習慣を変えていないのに体重が減る時は要注意

1型糖尿病の特徴として、短期間に急激に体重が減ることがあげられます。個人差はありますが、1ヶ月に5〜10kg減量することもあります。

このように急激な体重減少が見られた場合は、早急に受診しましょう。

2型糖尿病では、6ヶ月間で体重が5%以上減ると危険だと言われています。

たとえば体重が60kgの人の場合、生活習慣を変えていないのに半年で3kg減ったら糖尿病の進行を疑いましょう。

もちろん、食事制限や運動などでダイエットした場合は、上記には当てはまりません。

しかし、BMI25以下の普通体型の人が半年で10%以上減量した場合、栄養失調の可能性があるので注意しましょう。

糖尿病で体重が減るのは重症化のサイン

体重が増加している場合は、糖尿病の初期段階だと考えられます。一方で、体重減少がみられる場合は、糖尿病が重症化しているサインかもしれません。

重症化すると、エネルギー不足により臓器や血管などのさまざまな器官がダメージを受け、エネルギーを取り込む力はどんどん弱くなっていきます。

その結果、体にたまっている脂肪を分解してエネルギーにするため、さらに体重が減ってしまいます。

糖尿病による体重減少が止まらないと合併症を引き起こす

「体重が減ってきたら末期」「余命が短い」というわけではありません。

しかし、体重減少を放置して糖尿病が悪化することにより、糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害などの合併症が引き起こされる可能性があります。

合併症が進行すると、さまざまな症状が発症し、今までのように日常生活を送ることが難しくなるかもしれません。

そうならないよう、糖尿病の末期になる前に治療を行うことが重要です。

糖尿病性網膜症

糖尿病が原因で目の中の網膜が障害を受け、視力が低下する病気です。

初期の段階では小さな出血が見られ、中期には視界のかすみなど自覚症状が現れることがあります。

末期になると飛蚊症や失明の可能性、さらには緑内障など他の病気を併発するかもしれません。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、高血糖状態が持続することで腎臓の内部の細小血管が障害を受け、発症する病気です。

悪化すると腎臓で尿が作られなくなり、人工透析が必要になる可能性があります。

糖尿病性神経障害

高血糖が原因で、運動障害・知覚障害・自律神経障害などさまざまな症状が引き起こされるのが糖尿病性神経障害です。

初期には手足の痺れや痛みを生じますが、障害が進行すると神経は働きを失い、感覚を感じにくくなります。

そのため傷を負っても気づかず、傷から細菌に感染して重症化すると、体の部分的な切断が必要になるかもしれません。

糖尿病の自覚症状はいつ、どんな症状が起こる?

1型糖尿病か2型糖尿病かによって、自覚症状を感じるタイミングが異なります。

早期に糖尿病に気づけるよう、いつからどんな症状が発症するのかチェックしておきましょう。

1型糖尿病の自覚症状と特徴

1型糖尿病は、比較的若い方に多く見られます。

すい臓のインスリン分泌機能が低い体質であったり、自己免疫などによってインスリンを出す細胞が破壊されたりすることで起こる糖尿病です。

自覚症状として、以下の症状が現れます。

  • のどの渇き

  • 頻尿

  • 急激な体重減少

  • ひどい疲れ

突然症状が現れるのが1型糖尿病の特徴です。

2型糖尿病の自覚症状と特徴

遺伝的要素や、運動不足、肥満、ストレス、加齢などが要因となり発症するのが2型糖尿病です。

10人に9人がこのタイプです。

2型糖尿病の初期段階では自覚症状はほとんどありませんが、高血糖状態が継続すると、以下のような症状が見られる可能性があります。

  • 疲労感

  • 空腹感

  • 皮膚の乾燥、痒み

  • 頻尿、尿量の増加

糖尿病は痩せると治る?

糖尿病は痩せたからといって治るわけではありません。そもそも、糖尿病は「完治する」という概念がない疾患です。

糖尿病の原因には、遺伝的要素と生活習慣が関係しています。治療によって血糖値が下がっても、インスリン分泌が少ない、またはインスリンが効きにくいという体質は変わりません。

そのため、治療をやめるとすぐに血糖値が上がる可能性があります。それゆえ、糖尿病と診断されたら、その後は血糖コントロールの継続が必要です。

しかし、肥満の糖尿病患者さんの体重が5%減ると、健康な人と同じ状態に近づくとも言われています。つまり、痩せることで糖尿病の悪化を防げる場合があります。

肥満や運動不足の人はインスリン抵抗性が高く、すい臓からインスリンが分泌されても十分に効果を発揮しません。

そのため肥満の人は、体重を減らしてインスリン抵抗性を改善することが大切です。その結果、糖をエネルギーに変換でき、血糖値を下げられるでしょう。

体重減少がみられる場合の糖尿病治療は?

糖尿病治療には、食事療法、運動療法、薬物療法の3つがあげられます。

しかし、基本的に痩せている糖尿病患者さんの治療は、運動療法と薬物療法の2本柱で行い、食事療法は行いません。

その理由は、食事療法で血糖値を下げられても、体重と共に免疫力や骨密度なども落ちてしまう可能性があるからです。

実際に、体重減少が見られる人は糖尿病が進行していることが多く、運動療法のみでの治療は難しいでしょう。

メインとなる薬物療法には、内服薬と注射薬があります。

インスリン分泌機能の低下が考えられる場合は、インスリン注射で外からインスリンを補充し、インスリンの不足を補うことが一般的です。

通常インスリン分泌は、食事の有無に関係なく24時間にわたって分泌されるインスリン(基礎分泌)と、食後の血糖値が上昇したときに合わせて分泌されるインスリン(追加分泌)からなります。

そのためインスリン療法では、インスリン分泌のリズムに合わせ、各個人に合った種類や量のインスリン注射を選ぶことが重要です。

飲み薬にはさまざまな効き方をする薬があります。

インスリン分泌機能低下とインスリン抵抗性の度合いや、患者さんの年齢や体型、生活スタイルなどを考慮し、使用する薬が選択されるでしょう。

また、服用後に副作用が出ていないかも注意深く確認しながら、血糖値をコントロールすることも大切です。

糖尿病にならないための対策は?

糖尿病にならないため、または悪化させないためには、生活習慣を正す必要があります。健康的な生活習慣を身につけ、糖尿病対策をしましょう。

バランスのとれた食事

糖尿病対策には、食生活は重要なポイント。

年齢や性別、身体活動レベルに適したエネルギー量の、バランスの整った食事をとりましょう。

以下の点に注意すると良いですね。

  • 朝、昼、夕の3食を毎日決まった時間に食べる

  • 主食(米・パン・麺類)、主菜(魚・肉・大豆・卵)、副菜(野菜)を意識した食事

  • よく噛んで食べる、早食いはしない

  • 腹八分目で止める

食生活を整えることは重要ですが、あまり神経質になると続かなくなってしまいます。

もし食べすぎた日があれば次の日は少な目にするなど、ストレスをためないようにしながら毎日の食事を楽しみましょう。

適度な運動

糖尿病の人は、インスリン抵抗性を改善する有酸素運動と、筋力を増強する筋力トレーニングの2種類の運動がおすすめです。

運動をすることで血液中の糖が消費され、血糖値が下がります。

また、筋肉の増加はインスリンの働きを高める効果があるため、瘦せ型の糖尿病患者さんにも効果的です。

スクワット、腹筋、腕立て伏せなど、筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行います。

ダンベルなどを使った負荷の大きいトレーニングが難しければ、つま先立ちや、椅子に座って太ももを上げる動作など、負荷の小さいトレーニングから始めましょう。

体を大きく使って酸素を取り込む、ウォーキングやジョギング、水泳などの運動がおすすめ。

息が弾み汗をかく程度の運動を、毎週60分以上行うことが推奨されています。

一定時間適度なスピードで有酸素運動を続けることで、脂肪量を減少させる効果も期待できます。

定期的な検診

初期症状が出にくい糖尿病を早期に発見するために、定期的に健康診断や特定検診を受けましょう。

空腹時血糖とHbA1cを確認することで、糖尿病の疑いがあるかが分かります。

空腹時血糖は空腹時の血液中に含まれるブドウ糖の量です。126mg/dL以上で、糖尿病の疑いがあります。

また、HbA1cは血液中のヘモグロビンにブドウ糖が結合したものです。過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均を反映しており、HbA1c 6.5%以上で糖尿病の可能性があります。

Q&A

糖尿病による体重減少について、よくある質問をまとめました。

糖尿病でどのくらい痩せたら危険?

とくに食事制限や運動などのダイエットをしておらず、生活習慣が変わっていないのに体重が減ってきたら注意が必要です。

一般的には、6ヶ月間で5%以上の減少を体重減少といいますが、個人差があります。

体重減少の程度が進み、もとの体重から10%以上減少すると原因解明のために至急受診する必要があります。

体重が20%以上減少している場合、栄養障害や臓器障害などを起こしている可能性もあり、危険です。

糖尿病で体重が減少する原因は?

糖尿病の患者さんは、インスリンの不足やうまく働かないことが原因で、食事からとった糖をエネルギーに変換することができません。

この場合、体にため込んでいる筋肉や脂肪を分解してエネルギーを得ようとするため、食事をとっているにも関わらず、体重が減ってしまいます。

糖尿病の体重減少を放置するとどうなる?

糖尿病による体重減少を放置すると、糖尿病性ケトアシドーシスになる可能性があります。

脂肪が分解されて、エネルギーに変換されると同時に生産される物質が「ケトン体」です。このケトン体が蓄積し、血液が酸性に傾くことを糖尿病性ケトアシドーシスといいます。

糖尿病性ケトアシドーシスが悪化すると、呼吸困難や血圧低下、意識障害などを引き起こし、治療を行わないと昏睡や命に関わることがあるため、迅速な治療が必要です。

糖尿病の末期になるとどうなる?

糖尿病が末期になると、合併症を引き起こす可能性が高くなります。代表的なものは、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害の3つ。

糖尿病性網膜症は、目の中の網膜が障害され視力が低下し、失明する可能性があります。

糖尿病性腎症では、腎機能が低下して人工透析が必要になるかもしれません。

また、糖尿病性神経障害は感覚神経、自律神経、運動神経に影響を与えます。

その結果、痛みを感じなくなったり、低血糖状態に気づかずいきなり意識を失ったりします。

まとめ

糖尿病による体重減少は、あまり知られていないかもしれません。しかし、その状態を放置していると糖尿病が進行し、合併症が発症する可能性があります。

とくに症状がなくても健康診断で糖尿病の可能性を指摘されたり、糖尿病の診断を受けたりした場合、食事の見直しや運動の機会を増やしましょう。

また、血糖値が高く、体重が減少している場合は、インスリンが極度に不足している可能性があります。体重減少を甘く見ず、合併症予防のためにも早めに内科を受診しましょう。

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