熱中症の重症度レベルと症状|対応方法・暑さ指数の活用方法まで解説

公開日: 2024/08/13 更新日: 2024/09/13
炎天下の中でのスポーツや作業でクラっとしたり気分が悪くなった経験はありませんか? もしかして熱中症かも、と思っても具体的にどのような症状が熱中症で、どのように対処したら良いのか分からない方もいるのではないでしょうか。 熱中症には重症度レベルがあり、レベルに応じた適切な対応方法をとらなければ命にかかわります。 この記事では熱中症の重症度レベルと症状、それぞれの対応方法、さらに熱中症対策として有用な暑さ指数の活用方法について解説していきます。 熱中症は誰にでも起こり得る症状です。 最後まで読んでいざという事態に備え、適切な対応ができるようになりましょう。
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熱中症の重症度レベルと対応方法

熱中症の重症度レベルは3つに分かれます。

重症度レベル1は軽症、レベル2は中等症、レベル3は最重症の病状です。[1]

 

症状

対応方法

重症度レベル1(軽症)

グルグル目が回るような感覚、眠気がないときに出るあくび、立ちくらみ(失神)、大量の発汗、筋肉痛、足がつる

涼しい場所で安静にする、体の表面温度を下げる、水分と塩分をとる(経口補水液をとる)

重症度レベル2(中等症)

頭痛、嘔吐、倦怠感(けんたいかん)、力の抜ける感じ、集中力や判断力の低下

医療機関での診察

重症度レベル3(最重症)

意識障害、痙攣(けいれん)発作、40度以上の発熱、汗が止まる、ふらつき、普段と異なる言動

入院での治療が必要

症状が出現したら早い段階で気付けるよう、熱中症でよく起こる症状について知っておきましょう。重症度ごとの対応を知ることで早い受診につなげ、重症化を予防できます。

それぞれの重症度レベル別に症状と対応を詳しく解説していきます。

熱中症の重症度レベル1(軽症)|症状と対応

重症度レベル1(軽症)の症状は、以下のものがあげられます。

  • グルグル目が回るような感覚

  • 眠気がないときに出るあくび

  • 立ちくらみ(失神)

  • 大量の発汗

  • 筋肉痛

  • 足がつる

上記の症状の場合はその場で処置が可能で、具体的な対応は以下のとおりです。

  • 涼しい場所で安静にする

  • 体の表面温度を下げる

  • 水分と塩分をとる(経口補水液をとる)

軽度の症状では脱水が原因となることがほとんどです。涼しい環境で安静にし、水分と塩分をとることで症状が良くなります。

ただし応急処置をおこなっても症状が良くならない場合や、次に説明する重症度レベル2の症状が出現した場合は、すぐに医療機関を受診してください。

重症度レベル1は熱中症全体の52%程度を占めています。外で激しいスポーツをおこなう若者や身体を使う仕事をおこなう40~65歳の方に多く発生します。身体を使う仕事では激しい動作をしなくても熱中症になるため注意が必要です。[2]

熱中症の重症度レベル2(中等症)|症状と対応

重症度レベル2(中等症)の症状は、以下のものがあげられます。

  • 頭痛

  • 嘔吐

  • 体のだるさ(倦怠感)

  • 力の抜ける感じ(虚脱感)

  • 集中力や判断力の低下

基本的には医療機関での診察が必要になるため、急いで受診してください。

医療機関で体温管理、安静、十分な水分とナトリウムの補給をおこないます。直接水分をとることができない場合も、点滴治療をおこなえますので安心です。

頭痛や嘔吐などの症状が出ている中、自分の力で医療機関へ向かうことは難しいため、周囲の人に協力してもらうと良いでしょう。[1]

熱中症の重症度レベル2は何日で治る?

もし、熱中症の重症度レベル2と判断された場合、症状が治まるまでには数時間~数日かかります。

意識がしっかりある場合は安静にしたうえで、水分や塩分をとれば数時間で治ることがほとんどです。ただし、入院での治療が必要となった場合は平均的に入院後2日間はかかってしまいます。[2]

熱中症の重症度レベル3(重症)|症状と対応

重症度レベル3(重症)の症状は、以下のものがあげられます。

  • 意識がもうろうとする(意識障害)

  • ふらつき

  • 普段と異なる言動

  • 痙攣(けいれん)発作

  • 40度以上の発熱

  • 汗が止まる

このような症状が出ている場合は入院での治療が必要となります。急いで救急車を呼んでください。

意識障害の程度や体温、汗の量は、短時間で大きく変化するため注意が必要です。また、意識障害はレベル3でしかみられません。周囲の方は、とくに意識障害の程度にも注意しながら救急車が到着するのを待ちましょう。

重度熱中症では後遺症が残る?入院期間はどのくらい?

重度熱中症では後遺症が残る場合があり、入院期間は11日以上となる割合が多いです。

熱中症で起きる後遺症は主に脳や脊髄(せきずい)への障害です。

脳や臓器など体内部の体温が高くなり、高度の意識障害や血圧低下がみられた場合に多く後遺症が残ります。[1]

重症度レベル3の熱中症の場合、脳や脊髄への障害は、以下のものがあげられます。

  • 歩行時のふらつき

  • 手足の運動障害

  • しゃべる言葉がぎこちなくなる

  • 眼球が意図せずに動いてしまう

  • パーキンソン病に似た運動疾患が出現するパーキンソン症候群

退院時までにこのような症状が良くならない場合はその後1年経っても症状が残る場合が多いとされています。

重症度レベル2の熱中症の場合も脳や脊髄への障害があらわれます。短い期間での記憶を忘れてしまったり、姿勢が安定せずにぐらぐらしたりする症状が出ますが、これらの症状は 3〜6か月後には良くなる場合が多いです。

後遺症の重症度は、来院したときに体温が高かったかどうか、意識障害がひどいか、体温を下げるまでに時間がかかったかどうかの影響を受けます。体調が悪そうな方を見かけたら、早い段階で判断して医療機関へ患者を送り届けることが大切となります。

重症度レベル3の熱中症と診断された場合、入院期間は11日以上が大半です。 入院後2日で退院となる場合もありますが、重症であればあるほど入院期間は長くなる傾向があります。そのため、いかに重症度レベルが上がる前に医療機関を受診できるかが鍵になります。 [2]

熱中症の4つの症状分類

熱中症を臨床症状から分類すると4つになります。熱失神、熱痙攣(熱けいれん)、熱疲労、熱射病です。

まず1つ目の熱失神とは立ちくらみのことを指します。立ちくらみが起こる原因は一時的に脳へ血液が届かなくなることです。暑い環境に長時間いると熱を発散させるために血管が拡張し血流の増加が起こります。増えた血液が脳へ届かず足先へ流れていくため立ちくらみがあらわれるのです。

2つ目の熱痙攣とは筋肉のつりや筋肉痛を指します。原因は大量の汗で失われた塩分を補給しないまま水分だけをとることによる体内塩分濃度の低下です。

3つ目の熱疲労とは、重症度レベル2の状態で、頭痛や吐き気が起こります。熱失神や熱痙攣よりも脱水が進行して、全身の血液量が減るため全身に症状があらわれます。その場で対処せずに医療機関へ受診することが望ましいです。

4つ目の熱射病とは重症度レベル3の状態です。放置しておくと命にかかわり、脳や脊髄(せきずい)、内臓の機能に異常が出ます。具体的な症状としては意識障害や普段と違う言動やふらつき、体温の上昇などがあらわれます。[3][4]

 

原因

症状

対処方法

重症度レベル

熱失神

一時的な脳への血流不足

立ちくらみ、めまい

その場で応急処置

レベル1(軽度)

熱痙攣(熱けいれん)

汗をかくことによる体内の塩分の減少

手足や腹部の筋肉痛、こむら返り

熱疲労

脱水がすすむ

頭痛、嘔吐、体のだるさ、やる気が起きない、集中力や判断力の低下

医療機関へ受診

レベル2(中等度)

熱射病

脳や脊髄、内臓の障害

意識障害、痙攣(けいれん)発作、40度以上の体温、汗が止まる、ふらつき、普段と違う言動

入院での治療

レベル3(重度)

押さえておくべき熱中症緊急時の対応フローチャート

家族や近くの人に熱中症を疑う症状があらわれた場合に対応できるよう、フローチャートにまとめました。参考にしていつでも対処できるようにしておきましょう。

1.意識の有無を確認

→意識がなければ、すぐに救急車を呼び救急車が到着するまで2の応急処置をおこなう

→意識がある場合は2の応急処置をおこなう

2.応急処置

・涼しい場所へ移動(クーラーの効いた室内や車内、屋外であれば風通しの良い日陰へ)

・衣服をゆるめ、身体を冷やす

【身体を冷やす方法】

太い静脈がある首元、脇の下、太ももの付け根を保冷剤や自動販売機で買ってきた冷たいペットボトルにタオルを巻いて当てる。または、タオルを濡らして身体に当て、扇風機やうちわ等で風を送り、身体を冷やす。

・塩分と水分補給のできる飲み物を飲ませる(経口補水液が一番良い)

→吐き気があり水分と塩分がとれない場合は医療機関を受診する。

3.様子を観察

回復するようであればしばらく安静にして十分に休息をとる。

回復しない、症状が悪化するようであれば医療機関を受診[5]

熱中症にかかってしまった場合の対応方法はもちろん重要ですが、同時に熱中症の予防も大切です。暑い時間帯には屋外へ出ないことや室内にいてもエアコンをつけるなどの対応で予防できます。

次に熱中症対策のために参考にしたい指標について解説していきます。このような指標を参考にしながら屋外での活動予定を立てましょう。

熱中症予防のために参考にすべき2つの指数

熱中症予防のために参考にすべき指数は暑さ指数WBGT(湿球黒球温度)と熱中症警戒アラートです。

このような指数を用いることで暑さが数値化、視覚化されてより暑さの程度が分かるようになります。

それぞれについて説明していきます。

暑さ指数WBGT(湿球黒球温度)

暑さ指数WBGTとは、熱中症予防を目的として1954年にアメリカで導入された指標です。

熱中症の危険度を判断でき、気温の他に湿度や太陽の光によって生じる熱、地面、建物、人体などから出ている熱を用いて計算されます。

日常生活を送るときの目安と運動するときの目安で分かれていますので、それぞれ表で説明します。

日常生活に関する指針

暑さ指数

(WBGT)

注意すべき

生活活動の目安

注意事項

危険

(31以上)

全ての生活活動で

起こる危険性

外出は避けて涼しい屋内にいること

厳重警戒

(28以上31未満)

・外出時は炎天下を避ける

・室内では気温が上がりやすくなっているため注意

警戒

(25以上28未満)

中等度以上の生活

活動で起こる危険性

運動や激しい作業は定期的に休憩する

注意

(25未満)

強い生活活動で

起こる危険性

激しい運動や重労働時に発生する危険性があるため注意

運動に関する指針

気温

(参考)

暑さ指数

(WBGT)

熱中症予防運動指針

35℃以上

31以上

運動は原則中止

基本的には運動を中止する

31℃以上

35℃未満

28以上

31未満

厳重警戒

(激しい運動は中止)

・激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける

・10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給をおこなう

28℃以上

31℃未満

25以上

28未満

警戒

(積極的に休憩)

・積極的に休憩をとり、水分・塩分を補給する

・激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる

24℃以上

28℃未満

21以上

25未満

注意

(積極的に水分補給)

・熱中症の初期症状に注意

・運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する

24℃未満

21未満

ほぼ安全

(適宜水分補給)

・水分・塩分の補給をおこなう

・マラソンなどでは暑さ指数が21未満でも熱中症が発生するので注意

WBGTをチェックし、指針に基づいた行動をとることで、熱中症を予防できます。環境省 熱中症予防情報サイト(https://www.wbgt.env.go.jp/graph_ref_td.php?region=10&prefecture=83&point=83216)から

WBGTの目安が分かるので参考にしましょう。[6]

熱中症警戒アラート

熱中症警戒アラートとは、危険な暑さが予想される場合に、暑さへの「気付き」を促し熱中症への警戒を呼びかけるものです。

熱中症の危険性がかなり高くなると予想される日の前日17時頃または当日朝5時頃の1日2回発表されます。令和6年(2024年)4月からは、熱中症警戒アラートの一段上である熱中症特別警戒アラートの運用が新たに始まりました。

熱中症警戒アラートは暑さから自分の身を守るためのアラートです。

熱中症特別警戒アラートが発表された場合は過去に例のない危険な暑さとなる恐れがあるため、自分の身だけでなく家族や周囲の人の健康も守るために行動してください。[6]

熱中症警戒アラート

・他人事と考えず、暑さから自分の身を守る

・室内でエアコンをかけるなど涼しい環境で過ごす

・こまめな休憩や水分・塩分補給をおこなう

・熱中症にかかりやすい高齢者や乳幼児の体調に注意する

・暑さ指数(WBGT)を確認し、涼しい環境でなければ、運動を中止する

熱中症特別警戒アラート

・危険な暑さから、自分の身を守るためだけでなく、自分の周りの人の命も守る

・とくに高齢者や乳幼児など全ての人が涼しいを感じる環境で過ごす

・組織の管理者は、全ての人が熱中症対策を徹底できているか確認し対策できていなければ運動や作業の中止、変更を考える

熱中症の症状を理解してそれぞれにあった対応ができるようになろう

炎天下にいたあとに起こる体調の変化は全て熱中症の可能性があります。

具体的な症状と対処法について知っておくことは命を守ることにつながります。

グルグル目が回るような感覚、立ちくらみの症状は軽度の熱中症です。涼しい環境で安静にし、水分・塩分をとりながら様子を観察しましょう。

体のだるさ、やる気が起きない症状は中等度の熱中症です。基本的に医療機関での診察が必要になるため、急いで受診してください。

意識障害は重度の熱中症です。救急車を呼び、急いで医療機関へ受診してください。

重度の熱中症では早く処置を始めなければ命にかかわったり、後遺症が残る可能性があります。そのため熱中症を疑った場合には最初に意識障害があるかどうかに着目しましょう。

熱中症の症状や対応を理解すると同時に熱中症予防も重要です。

暑さ指数や熱中症警戒アラートという指標を活用しながらスケジュールを組むことで、身近な人が熱中症にかかるリスクを軽減できます。

熱中症予防をおこないながら、今一度、熱中症の症状と対応方法を確認して、いざというときに身近な人を助けられるようにしましょう。

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参考文献

[1]熱中症診療ガイドライン2015

[2]本邦における熱中症の実態

[3]職場のあんぜんサイト 厚生労働省

[4]千葉県熱中症対策について

[5]熱中症環境保健マニュアル2022

[6]環境省 熱中症予防情報サイト

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