高血圧を疑う時はどうすればいい?初診で行う検査や費用について解説

公開日: 2024/01/05 更新日: 2024/05/22
もしかしたら自分は高血圧かも?と思っても、初めての病院に行くのは勇気のいることですよね。 この記事では高血圧の成り立ちや初診からの診察、治療の流れ、費用などについて説明します。 あなたの不安な気持ちが解決されることを願っています。 ぜひ最後までお読みください。
目次

高血圧とは?

血圧とは血液が血管に流れるときにかかる圧のことです。その血圧が高くなった状態を「高血圧」と言います。

血圧とは「心臓が血液を送り出したときの圧(収縮期血圧)/心臓が膨らんで心臓の中に血液をため込んだ時の圧(拡張期血圧)」であらわされ、それぞれ「140以上/90以上 mmHg」になると高血圧となるのです。

2019年のガイドラインでは、現在

「我が国の高血圧者数は約 4300 万人と推定されるとされ、そのうち 3100 万人が管理不良である。このうち、自らの高血圧を認識していない者1400 万人,認識しているが未治療の者450 万人,薬物治療を受けているが管理不良の者1250 万人と推計される」

と記載されています。

生活習慣病の中でも高血圧は最も多い病気となっており、それに関連する入院も最も多いとなっています。

つまり、高血圧は現在の日本で決して珍しい病気ではなく、多くの人が罹る可能性のある疾患の一つなのです。

ここでは高血圧について、指摘された時どうすれば良いか、診察の流れやかかる費用などについて解説していきます。

高血圧の原因は?

血圧とは

血圧は何によって上下するのでしょうか。

  1. 心臓の血液を送り出す力

  2. 大動脈の弾力性

  3. 末梢血管抵抗

  4. 血液の量

  5. 血液がドロドロかどうか(血液の粘着度)

上記の5つが、主に血圧を決める要素となります。

では、順番に見ていきましょう。

まず「心臓が血液を送り出す力」これが十分であれば血圧を保てますが、心臓の血液を送り出す力が落ちてしまっている場合、血液を身体中に送り出して巡らせることが不十分になりますし、血圧も下がってしまいます。

2つ目に大動脈の血管が硬くなってしまった場合、さらに動脈硬化などで血管の一部が細くなってしまった場合は通常の血液の量であっても細く硬い管を無理やり通る形になるため血圧が上がってしまいます。

3つ目の末梢血管抵抗とは毛細血管を血液が通るときの抵抗です。抵抗が強ければ強い力で血液を流さなければならないため血圧は上がります。

この抵抗は毛細血管がどのぐらい広くなれるか、狭くなっていないか、などに左右されます。

そして細い管を通るとき、同じ量の血液でもより細ければ血圧は上がってしまうのです。

イメージでは、ホースから水を出すとき、ホースの出口を手でつまんで細くすると勢いよく水が出ていく、という状況と同じです。

また、血液がドロドロとして細いところを通る時に流れにくくなっていないかということも末梢血管抵抗をあげる一因です。

4つ目の血液量ですが、これは単純に血管や心臓を流れる血液の量が多くなればその分血圧は上がり、出血などで血液の量が減ってしまうと血圧は下がります。

イメージとしては「風船を水で膨らませるとき、量が多ければ中からの力が強くなり風船は膨らみますが、少なければ膨らまない」という状況です。

5つ目の血液の粘着度についてですが、これは上記の通り、血液がドロドロかどうかです。血液がドロドロになってしまった場合、血液が血管を通りにくくなってしまいます。

そのため、心臓が血液を長そうとより強く収縮し、結果として血圧が上がってしまうのです。

このように血圧は主にこの5つの要因が様々に作用しあって左右されています。

血圧が高くなるのはなぜ?

これらの要因がどうなると血圧が高くなるのでしょうか。

例えば、先述のとおり、大動脈の弾力性がなくなって硬くなってしまうと、血液の量が一時的に増えても血管は伸びたり縮んだりという対応が出来にくくなるため血圧は上がりやすくなってしまいます。

また、プラークなどができた場合は血管自体が細くなるため、血液の量が減らなくても通る道が細いため血液の渋滞を起こし、血圧は上がってしまうのです。

そのほか、血液がドロドロになった場合でも、細い血管を通る時にサラサラの血液よりも摩擦が起きて通りにくくなるため血液の渋滞を起こし、血圧が上がってしまいます。

このように血圧自体がいろいろな要因で左右されるため、そのどこかが悪くなった場合は血圧も上がりやすくなってしまうのです。

高血圧の原因は?

では、具体的にどのようなことが血圧をあげる原因となるのでしょうか。高血圧の原因は多種多様です。

食生活でコレステロールが上がったり、喫煙などで動脈硬化が進んだりしてしまえば血管の弾力性は無くなっていき、プラークもできるため血圧は上がりやすくなります。

生活習慣や食生活、タバコや運動不足など、様々な要因で血液がドロドロになっても血圧は上がってしまいます。

そのほか、腎臓や他臓器の働きが悪くなりで血液の量が多くなっても血圧は上がりますし、何らかの病気の症状として血圧が上がることもあるのです。

高血圧は何故治療が必要なのか。病院に行かないと何か危ないのか

血圧が高くなっただけでは自覚症状が出てくることはあまりありません。ではなぜ高血圧になると治療が必要となるのでしょうか。

高血圧の治療を行わないで放置した場合は動脈硬化が進行していき、眼が見えなくなったり、認知症になったり、腎臓に障害をきたしたりするリスクが上がるとされています。

実際、血圧が10mmHg上がるごとに腎不全になるリスクが30%上がるという研究結果も出てきているのです。

さらに血圧が高いと脳卒中、脳梗塞や心筋梗塞など冠動脈疾患といった重篤な病気にもなるリスクが高くなると報告されています。

これらの病気は血圧が低ければその病気での死亡リスクも低くなるということが研究で報告されているのです。

そうならないように、病院で定期的に血圧を確認しコントロールしていく必要があるのです。

また、それらの病気になっていないかなどを判断するためにも病院で定期的に検査を行うことも必要になります。

高血圧が疑われた場合はどうする?

受診、通院の目安は?

高血圧が疑われた場合、どの段階で病院へ受診すればよいでしょうか。

それにはまず、どのぐらい血圧が高ければ高血圧となるのか、というところから知らなくてはなりません。ここでは血圧の段階的な定義や受診の目安などを解説します。

血圧の基準は

高血圧は血圧が140/90mmHg以上と規定されていますが、それ未満であれば安心というわけではありません。

血圧はどのぐらいかによって分類が分かれており、120/80mmHg未満であれば至適血圧、130/85mmHg未満であれば正常血圧、140/90mmHg未満であれば正常高知血圧、140/90mmHg以上が続けば高血圧となります。

なお、自宅での血圧は高くないのに、病院でのみ血圧が上がる「白衣高血圧」というものがあります。この場合は血圧に対する治療は必要なく、様子を見ることが大半です。

病院で血圧を診ていても高めに出てしまうので、自宅で血圧を測定してもらい、その血圧を基準に診察を行っていきます(下記参照)。

「病院でだけ血圧が高いのであれば何もしないで放置でいいのではないか」と思う人もいるかもしれません。

しかしながらこの白衣高血圧になっている人は将来的に高血圧となる可能性が高い、白衣高血圧でない人に比べると脳卒中や心臓病のリスクが高いとも言われているのです。

そのため、生活習慣の指導などを定期的に病院で行っていく必要があるとされているのです。

家庭血圧とは

高血圧と指摘されていなくても何らかの機械に血圧を測ることがあるかもしれません。このように、自宅で血圧を測定する際の血圧を「家庭血圧」と言います。

家庭血圧では、実際の血圧よりも少し低めに出ることもあるため、「家庭血圧で135/85mmHg以上が続く」ようであれば、一度病院受診をして調べたほうが良いでしょう(なお、自宅での血圧は1週間を目安に続けて測定し、平均を見るのが良いとされています)。

血圧は軽い運動(少し歩くなど)やストレス、緊張などに影響を受けやすく、簡単に上がってしまうものです。

そのため家庭血圧ではできるだけ安静な状態でリラックスして測定します。朝は起床後1時間以内で薬を飲む前、座った状態で測定します。

1日のうち2回目の測定は夜になりますが、飲酒や入浴により血圧が左右されることもあるためその前に測定する方が良いでしょう。

実際の病院受診について

ともあれ、実際に高血圧に気づいていない段階では、毎日自宅で血圧を測っている人はあまりいないでしょう。そのような人は健診で高血圧に気づくことがあります。

検診などの機会で血圧が高いと言われたならば、「一時のものでしょう」「たまたまだから」などと思わず、病院を受診するか、血圧計を用意して自宅で血圧を測る習慣をつけるようにしてみましょう。

検診は普段気づかない体のサインを拾ってくれる場です。せっかくのサインを見逃してしまうことがないようにしましょう。

何科に受診したらよいのか

高血圧で病院を受診するにあたり、何科を受診すればよいのかわからない人もいるでしょう。一般的に高血圧を診る専門科は循環器内科です。

ただ、高血圧は現在の日本で特に珍しい病気ではなく一般内科でも診察はできるため、近所のクリニックへの受診であれば一般内科のクリニックや病院への受診でいいでしょう。

それらの内科で診察、検査を行った結果、「脳やホルモンなど他の病気が原因で高血圧となっている」と判断される場合もありますが、その場合はその病気の専門科に紹介してもらえます。

どんな病院に受診するべきか

先述の通り、高血圧の場合、受診するのは内科、もしくは循環器内科の病院となります。

高血圧の専門は循環器内科ですが、一般内科(いわゆるクリニックなどの内科)でも診察することは可能です。

大きな病院の循環器内科などへの受診は時間も費用も掛かるため、初めはお近くのクリニックへ受診すれば十分でしょう。

クリニックへ受診し、そこで検査・治療を行い、治療しても血圧が下がらない、クリニックでできる検査の結果でさらなる精密検査が必要等となれば、さらに大きな病院へ紹介されることになります。

ただし、高血圧の中でも緊急性がある物があります。血圧が160mmHgを超え、頭痛や吐き気など他の症状も同時に出現している場合です。

これは「高血圧緊急証」と言い、血圧が高すぎることで脳や内臓にダメージを与えてしまっている状態である可能性があります。

そのため、そのような症状が出てきてしまった場合は急ぎ血圧を下げていく必要があります。夜間や休日であっても大きな病院の救急外来を受診しましょう。

病院受診後はどうなるのか

初診受診での流れは?

まず、初診では血圧を測定し、どの程度の血圧かを確認します。

ただし、血圧はストレスや運動などの刺激でも上がってしまうため、たまたまその時測定した血圧が高かっただけということもあります。

そのため、その一回では「高血圧である」と確定することはできません。

そのため、日を改めて再度受診し血圧を測定したり、健診などのデータと比べたりして血圧がずっと高いことを確認する必要があるのです。

また、病院などでのみ血圧が上がってしまう人もいるため、自宅など環境を変えての血圧測定を行い、普段どの程度の血圧なのかを見ていくこともあります(白衣高血圧の除外)。

また、高血圧が何らかの病気の症状の一つとして表れていることがあります(二次性高血圧)。

頻度が多い代表的なものは

  • 睡眠時無呼吸症候群

  • 腎実質性高血圧

  • 腎血管性高血圧

  • 原発性アルドステロン症

などといった病気です。その場合は血圧のコントロール以外にその病気の治療も必要となるため、それらの病気でないか、問診や身体診察、検査結果などを診ていきます。

何らかの病気が隠れている可能性がある場合にはその病気の専門家へ紹介し、それらの病気の治療を行っていくことになるのです。

なお、初診時にかなり血圧が高く、頭痛など何らかの症状も出てきている場合は緊急となるため、薬でとりあえず血圧を下げる治療を行うこともあります。

受診後の検査の流れについては?

まず、病院を受診後は血圧を確認します(ここで稀に受診した時にすでに血圧が高く、頭痛や吐き気などの症状が出ている緊急の方がいますが、その場合は血圧を下げる薬で対応します)。

そして、受診の時にすでに何らかの臓器へ障害が起こっている可能性もあること、他の病気の位置症状として高血圧が出ている可能性があることから、それらの症状の有無も確認し、身体診察を行った上で検査を行います。

問診

診察でははじめに問診を行います。

高血圧は普段の生活習慣にも起因するため詳細な問診、例えば

  • 薬を飲んでいるならその内容

  • 食生活や運動をどの程度しているか

  • 睡眠の状態

  • 飲酒や喫煙をしているか

  • ストレスの有無

  • 何か他に気になる症状がないか

などを行います。

何かの病気が原因で高血圧が起こっていないか、高血圧が原因ですでに何かの障害が起こっていないかなども問診でチェックしていきます。

その一部として具体的な例として

  • 夜間の頻尿があるか

  • 家族から寝ている時にいびきがひどい、息が止まっているなど言われたことがあるか

  • 早朝の頭痛があるか

  • 昼間の眠気があるか

  • 集中力の低下していないか

  • 動悸や胸の痛みなどの症状があるか

  • 息切れなどがあるか

などが挙げられます。

身体診察、検査

問診の後、身体診察を行い、同時に一般的な検査でも身体の状態を確認していきます。

  • 血液検査

  • 尿検査

  • 胸部レントゲン

  • 心電図

などを行いますが、健診で指摘されている場合は健診の結果を参考とする場合もあります。

その他、病院以外での血圧も治療や診断に必要なため、自宅での血圧測定を指示されます。

精密検査の内容は?

問診や身体診察、一般検査などで他の病気が原因として疑われる場合(二次性高血圧)や、高血圧が原因ですでにどこかの臓器にダメージが出てきている場合はさらに詳しく検査を行っていきます。

検査の内容としてはその一部として

  • 心臓超音波検査

  • 腹部超音波検査

  • 血管超音波検査

  • 血液検査もしくは尿検査での詳細検査

  • 夜間の呼吸検査(夜間経皮酸素分圧モニタリング、睡眠ポリグラフィー)

  • ホルモンの負荷試験

  • CT検査(造影CT検査も含む)

  • MRI検査(脳、腹部など)

  • 眼底検査

などが挙げられます。

もちろん、ここに挙げている検査は一部のものであり、他にも必要な検査があれば、必要時に必要な検査を行っていくのです。

これらはどの部分にダメージが出ているか、またはどんな病気での高血圧を疑っているかなどによりどの検査を行うかを決定していきます。

臓器へのダメージに関しては初めの診断以降も出てくる可能性があるため、定期的に血液検査などを行い確認していく形となります。

これは初めの検査結果が出てから行うことも多いため、2回目以降の診察もしくは呼吸器内科や腎臓内科、内分泌内科、脳神経外科/内科など、専門科へ紹介した後で行われることが多いでしょう。

高血圧の治療について

高血圧の治療には生活習慣の改善、他の病気であればその病気の治療といったような「非薬物療法」と、血圧を下げる降圧薬で血圧をコントロールする「薬物療法」の2つに大きく分かれます。

ここではそれぞれについて解説していきます。

まずは生活習慣の改善を

まず、そこまでひどくない高血圧の場合や、高血圧の診断に満たないものの血圧が高めである「正常高知血圧」の人は、いきなり飲み薬ではなく、生活習慣の改善を行い、それに伴いどのぐらい血圧が改善するか診ていくことがあります。

生活習慣の改善では、減塩を中心とする食事療法や肥満改善,適度の有酸素運動や飲酒の制限などを行っていきます。

【生活習慣の目標】

  • 食習慣:塩分は一日6gまでに抑える。
    また、野菜や果物、低脂肪乳製品を積極的にとり、コレステロールを下げるように肉類は減らす。
  • 運動:有酸素運動を毎日30分、もしくは週に180分程度行う
  • 肥満改善:BIM(体重(kg)/身長(m)2)<25を目標に減量
  • 節酒・禁煙

ある程度この治療を行っても血圧が改善しない、もしくは血圧がどんどん高くなってしまう場合は、内服薬での治療を検討していくことが必要となってくるのです。

なお、この生活習慣の改善は薬での治療が始まった後でも継続していくことになります。

薬での治療が始まってしまってもこの生活習慣の改善で血圧が良くなり、飲み薬がなくなる、もしくは減ってくることもあるのです。

決して薬を飲み始めたから治らないと思うのではなく、引き続き生活習慣を良くして治療していく、という意識が大事となるのです。

飲み薬での治療も必要

生活習慣の改善で血圧が改善しない場合、もしくは初診の時にすでにかなり高い血圧であった場合は血圧を下げるために「降圧薬」の内服を開始していきます。

降圧薬には現在多くの種類があり、基本的には少な目の量から開始し、血圧が下がらなければ量を増やす、もしくは種類を変更したり追加したりして少しずつ調整していきます。

血圧もただ下げればよいというわけではありません。降圧薬は血圧を下げる作用以外にも副作用があり、その副作用も出てくる可能性を考慮する必要があるのです。

仮に

「はじめから多くの薬を出してどのぐらい血圧が下がるかを試し、多ければ少な目の量を出して、血圧の下がりを診てその合間で調整…」

という形なら早くに調整できるかもしれません。

ただし、薬にはどんな薬でも副作用があり、大量の薬を飲んでしまうとその副作用が出てしまいますし、意識がなくなったり、他の臓器にダメージを与えたり、最悪命に関わったりということもあるのです。

また、ここでは高血圧を治療するため、薬で血圧を下げる必要があるということを述べました。

ただ、前述した通り血圧はむやみやたらに下げればよいというものではないのです。

高血圧ではすぐに症状が出ることはあまりありませんが、血圧は低ければ様々な症状が出たり(下記参照)、時には命に関わることもあります。

先述の例のように処方してしまうと、血圧が下がりすぎて倒れてしまう、意識を失う、命に関わることもあるのです。

そのため、血圧は安全に少しずつ下げていき、徐々に安定させていく必要があるのです。

なお、先述の例は極端なものを書きましたが、実際に「血圧がなかなか下がらないから少し多めに薬を飲んでみよう」と自己判断で2日分など飲んでしまう人はいるかもしれません。

ただ、このような場合でも副作用が出たり、血圧が下がりすぎてしまったりという症状が出るリスクがあります。

そのため決して自己判断で薬の量を変えたりせず、医師の指示の下で薬を服用しなければなりません。

どのぐらいの頻度で通院が必要?

通院し始めたときは

高血圧の治療を開始してすぐの時期は比較的短期間での通院を繰り返す必要があります。

まずは生活習慣の改善から始めることもありますが、血圧の改善が認められない場合は再度医師からの指示がありますし、薬での治療が開始となった場合は薬の調整があるからです。

血圧を下げる薬は様々な種類があり、どの程度効くかはある程度の個人差があります。

先述の通り、降圧薬は少な目の量から徐々に増やして調整していきます。

しかし、治療開始の時の血圧やそのほかの状態から判断し、脳卒中や心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクが高いなどと判断された場合は、初めからある程度多めの薬であったり、数種類の薬を併用したりすることもあります。

血圧が下がりすぎるとどうなるのか

降圧薬の効果が出てくると血圧は下がってくるのですが、血圧が下がりすぎる場合は血圧が上がるときよりも困ったことになってしまうのです。

血圧がある程度高いだけであれば自覚症状はなく、他の症状もすぐに出ないことも多いのですが、血圧が低い場合は血液が十分に身体を巡りません。

めまいやふらつき、吐き気、時には意識を失ったりと様々な症状も認めますし、血圧が下がりすぎると命に関わることもあるのです。

そのため、血圧は一気に下げればよいというものではなく、徐々に安全に下げていくことが重要となります。

実際に通院する間隔は?

高血圧の治療では、血圧を下げる降圧薬を少な目の量から処方し、血圧がどの程度下がるか確認しながら薬を増減、もしくは薬の種類を調整していきます。

そのため、通院当初は1-2週間程度の間隔で通院していくことが多いのです。

そしてどのぐらいの薬でどのぐらいの血圧まで下がるのかということがわかり、血圧が安定してくれば通院間隔を伸ばすことができます。

そのため、薬が安定していこうは、長ければ1-3か月毎の通院で治療を行っていくことになっていきます。

高血圧で受診した時の費用について

「高血圧」は現状日本で良くある病気の一つであり、もちろんその検査、治療は保険適応となります。

では高血圧の一般的な検査、及び精密検査の費用はどれくらいかかるのでしょうか。

日本の保険診療での診察、検査、治療は全て点数であらわされており、その医療行為ごとに「1点=10円」で計算していきます。

そのため、その時の診察でどんな検査を行ったか、薬がどの種類、どの程度出ているかなど、診療の内容によって毎回費用が変わってくるのです。

ただし、医療行為に対する点数は全国どこでも変わることがないため、どの医療機関を受診しても同じ内容の診療であれば費用は変わりありません。

検査にかかる費用は?保険適応になる?

先述の通り、高血圧での病院受診は保険適応となります。

そのため、保険診療として検査にもそれぞれ費用が点数という形で定められており、年齢などによりかかった金額の1~3割が自己負担となるのです。

高血圧の検査費用について具体的な一般的/精密検査例では、

  • 血液検査:1000-3000点(内容によっても異なる)
  • 心電図:390点
  • 心臓超音波検査:2640点
  • 胸部レントゲン:630点
  • 頸動脈エコー:1050点
  • 血管伸展性検査(ABI):300点

などと検査によって異なります。

高血圧の診察、検査では、その時に必要な検査を適宜行っていくので、検査の金額は診察の時期や身体の状況によって変わっていくでしょう。

上記はあくまでも一部の例であり、他の検査であればその検査それぞれに費用は掛かります。

また、高血圧以外(例えば高コレステロール血症や糖尿病などにも罹っている場合など)に検査が必要であれば、その分金額は上がっていきます。

治療にかかる費用は?

治療を行う上でかかってくるのは主に「病院の診察でかかった費用」と「薬局などでもらう処方薬の費用」です。

ある保険組合の調査した結果では45〜49歳の高血圧症患者の1日あたりの医療費は6430円であったとのことです。

また、他の保険組合の調査では1か月あたり1万6,600円程度であったという報告もあります。

ただし、これらの保険組合ではそこに所属している人が対象となっているため、どのような保険組合かによっても偏りが出てしまいます。

また、高血圧の医療費は近年上昇傾向となっており、2017年の厚生労働省による報告から計算すると、一人当たりの高血圧の治療費は28000円程度にも上がってきています。

金額を見ると不安になるかと思いますが、患者負担は合計の医療費の1-3割となります(自己負担額の割合は患者さん本人がどの保険の適応になっているかにより異なります)。

なお、高血圧の人は糖尿病や脂質異常症など他の病気も合併していることがありますので、その治療は別となります。

つぎの章からは、診療及び処方薬にかかる費用について詳しく述べていきます。

少し細かいため、大まかには

  • 診察だけでも医療行為のため費用が掛かってくる
  • 検査など診療行為が増えるとその分費用が掛かってくる
  • 検査項目が増えると費用も増える
  • 処方薬には高いものと安いものがあり、薬の量が増えるとそれだけ費用も増える

という程度に分かればいいでしょう。

診察でかかる費用について

病院に行った場合、たとえ検査を行わなくても、薬を出していなくても、診察を受けたのであれば診察に対する費用が掛かってきます。

これが初診料、再診料となり、それぞれ初診料:288点、再診料:73点となります。

病院を受診すれば処方箋を発行されますが、この処方箋にもさらに費用が掛かってしまうのです。

また、高血圧の場合は国の定める特定疾患となるため、再診の際にはそれぞれ特定疾患療養管理料(225点)、特定疾患処方管理加算(66点)が毎回かかってきます。

つまり、何も検査などを行わなくても受診の費用だけで

再診料73点+外来管理料52点+特定疾患療養管理料225点+処方箋料68点+特定疾患処方管理加算66点=484点(4840円)

となるのです。

ここから年齢などそれぞれ適応になっている保険に沿って1~3割の自己負担となるため、実際の負担額はおおよそ500~1500円程度となるでしょう。

その他にも、高血圧治療の一環として、生活習慣の改善を目的として栄養士に食事などを指導してもらう「栄養指導」を行った場合にもその費用が掛かります。

また、高血圧の原因を調べ、他の病気が原因などと疑われた場合はその専門科に紹介という形をとりますが、クリニックなどでは調べきれない場合、大きな病院への「紹介状」をもらうことになります。

この「紹介状」にも費用は掛かってくるのです。

【主な診療報酬】

  • 初診料:288点(1割負担:290円、3割負担:860円)

  • 再診料:73点(1割負担:73円、3割負担220円)

  • 外来管理加算※1:52点(1割負担:50円、3割負担:160円)

  • 特定疾患療養管理料:225点(1割負担:230円、3割負担:680円)

  • 処方箋料:68点(1割負担:70円、3割負担:200円)

  • 特定疾患処方管理料:66点(1割負担:70円、3割負担:200円)

  • 外来栄養食事指導料(初回):260点(1割負担:260円、3割負担:780円)

  • 外来栄養食事指導料(2回目以降):200点(1割負担:200円、3割負担:600円)

  • 診療情報提供料:250点(1割負担:250円、3割負担:750円)

  • 診療情報提供料(セカンドオピニオン):500点(1割負担:500円、3割負担:1500円)

※1 外来管理加算:検査や一定の処置を必要しない場合、説明や計画的医学的管理などを行う場合に発生する

※2 窓口で支払う医療費は10円未満の金額を四捨五入することになります(健康保険法第75条より)。

これが病院にもよりますが月一回の診察であれば毎月かかってくることとなり、さらに定期的な検査があればその分の金額も増えることになるのです。

薬局などでもらう処方薬についての費用

薬自体の費用

高血圧で医師から処方箋を受け取った場合、その後薬局(調剤薬局)に行き実際に薬をもらうことになります。

高血圧に対する薬は現在多く出ており、また、後発品がある薬もあるため、どの薬を使用するかによって薬自体の金額は変わってくるのです。

高血圧の薬はおおよそ1錠40~100円程度であり、それぞれ「薬価」と言って値段が決まっています。

そのため、どこの薬局でもらっても処方内容が同じであれば金額は変わりません。

ただし、高血圧がひどい場合、薬を何種類か同時に飲んだり、同じ薬でも内容量の多いものもしくは数錠を飲まなければならない場合もあります。

そのため、人によって薬剤の料金は異なってきます。

薬以外に必要な費用

実際に調剤薬局から薬をもらう場合、単純に薬自体の代金を支払っているのではありません。

実は薬の代金以外にも「薬剤調整料」「調剤基本料」「薬剤服用歴管理指導料」「かかりつけ薬剤師指導料」などがかかってきます。

【薬局でかかる費用】

  • 薬剤調整料:薬を調剤することに対する費用(薬剤師の技術料)
  • 調剤基本料:薬局の設備などを使用することに対する費用
  • 調剤管理料:処方された薬に間違いがないか、適切に処方されているかを確認し判断することに対する費用
  • 服薬管理使用料:現在使用している薬を管理することに対する費用

これらの料金はどのような病院で薬をもらうかなどにより変わってくるのです。

例えば、わかりやすい例では「院内薬局」と「院外薬局」が挙げられます。

例えば院内薬局での調剤基本料が70円なのに対して院外処方での調剤基本料は420円と高くなっている場合があります。

ただし、院内薬局が良いのかというと一概には言えません。

そもそも院内処方と院外処方では費用負担などに対する考え方も異なり、それぞれ取っている加算(○○料という項目)も異なるため、簡単に比較はできません。

また、近年では院内処方はなるべくしないような体制ができてきており、院内処方を行っている病院のほうがかなり少ないということあります。

その他、3か月以内に同じ薬局でお薬手帳も持参し薬をもらいに行った場合は薬剤服用歴管理指導料が450円となるものの、お薬手帳を持参しないなどそれ以外の場合では590円となってしまう、などのケースもあります。

また、個人の薬局では調剤基本料が420円かかる一方で、大きな病院の前にあるような調剤薬局(門前薬局)であれば調剤基本料が260円と安く済む、ということもあります(チェーンの薬局であれば160円、210円、320円など)。

費用のみで薬局を選ぶのは?

突き詰めれば費用を抑えるように薬局を選んで処方してもらうことも可能にはなりますが、それだけで薬局を選ぶのはお勧めしません。

それぞれの薬局には専門の資格を持った薬剤師がおり、医師と連携しながら患者さんの状態を把握したり、様々なアドバイスを行ったりします。

医師と同じで自身をよく見てくれる薬剤師のいる薬局を選ぶ方が良いでしょう。

また、あまり遠すぎる薬局を選んでしまうと、何か別の病気などで急遽病院受診した時など、なかなかそこまで行くのも大変、となることがあります。

そのためできるだけ自分の活動範囲に近い場所で、自分にとって良い薬剤師のいる薬局を選ぶことが大事になってくるのです。

1か月、年間の医療費の目安はどの程度?

先述の通り月にかかる治療費の目安は、1万6,600円~28000円程度と考えられます。

もちろん検査をどの程度行うか、どの薬剤をどのぐらい使うかなどにより、治療費は変わってきます。

2017年のものではありますが、厚生労働省による「国民医療費の概況」によると、高血圧の患者数は993万7,000人程度存在し、年間医療費は1兆7,907億円にも上ることです。

そのため、一人当たりの年間の医療費はおよそ33万9,900円程度となり、3割負担の場合は自己負担額が年間101,970円程度となってくる計算となります。

また、一人分の年間治療費はこの程度なのですが、高血圧は現代の日本ではかなり多く、さらに高血圧の人口も増加しているため、全体の医療費は増加傾向です。

我々が病院に行き、窓口で払うのは治療費の1~3割となっていますが、その残りの7~9割については自身の加入している国民健康保険やそれぞれの保険組合から支払われています。

もともとそのお金も自身が保険組合に支払っているものです。

そのため、「3割だけだから」「1割だから安く済んだ」などと考えるのではなく、それぞれの治療費についてもしっかりと考えることが必要となのです。

医療費を抑えるには?

このように話すと、血圧の治療では年間でかなりの金額がかかってくるとわかります。この金額を少しでも抑える方法はないのでしょうか。

「病院を変える?」「検査を減らす?」「通院の頻度を減らす?」など考える方もいるかもしれません。ただし、きちんとした治療を受けるのであればそれはできません。

例えば何か品物を買うなどした場合は店によって金額が異なります。しかしながら医療ではそのようなことができないように細かく決められています。

先述の通り、診察で何点、この検査で何点、この薬は1錠何円などのように決められ、その受診の時に行った検査や診察、薬の種類や数により決定されるのです。

そのため、どの病院を受診しても内容が同じであれば金額も同じになります。

では検査を減らすのはどうでしょう。

ある程度医師と相談して検査を減らすことはできるかもしれませんが、基本的に医師も必要な検査を必要なタイミングで行っています。

そのため、検査を減らすことはあまりできないということが多いでしょう。通院でも同じです。ある程度血圧が落ち着いてくれば受診の間隔をあけていくことが多いでしょう。

ただ、あまりにも長期間受診しない状態であると、その間に変化が起こっていても医師が気づけません。

血圧が上がって薬が効かなくなっていたり、何かの病気を発症したり、とトラブルが起こることもあります。

そのため、ある程度の期間での定期的な受診を行い、医師が体調を含めチェックすることが重要なのです。

結局は生活習慣の改善が必要

では何か方法はないのでしょうか。唯一あるとすれば薬を減らすことです。

とはいえ、医師が処方している薬は必要な分を出しているため、自分の判断で勝手に減らしたり辞めてしまうと治療の意味がなくなってしまいます。

その結果として血圧が高くなり何らかのトラブルが起こる可能性も高まります。

血圧がそのままの状態であれば薬も処方されている量を飲まなければなりません。ただし、逆に言うと血圧が薬に頼らずともよくなれば薬の量も自然と減っていきます。

薬に頼らず、血圧が良くなるというのは、先述の「生活習慣の改善」ということにつながるのです(何か他の病気が原因での高血圧は除きます)。

なので、結局薬で治療を行う前でも行っているときでも「生活習慣の改善」ということは重要になってくるのです。

Q&A

高血圧の治療費は平均していくらくらいですか?

2017年の厚生労働省による報告より計算すると、高血圧の治療費は年間でおおよそ一人当たり33~34万円程度であり、月々の金額では28,000円程度となります。

実質の自己負担額はその1-3割程度ですので、2800~8400円程度となります。ただし、近年高血圧に対する医療費は増加傾向のため、今後上昇していく可能性は否定できません。

高血圧の薬の月額費用はいくらですか?

高血圧の薬は1錠当たり40-100円程度のものが多いため、毎日薬を1錠内服したとしても30日間で1200~3000円程度の計算になります。

窓口で支払う自己負担額はその1~3割となります。

ただし、もちろんではありますが処方された薬の種類によっては値段も異なってきますし、薬をどの程度の量内服するかなどによっても金額が異なってくるでしょう。

高血圧の薬の医療費はいくらですか?

高血圧の薬は1錠あたり40~100円程度のものが多く、降圧薬を毎日1錠内服したと仮定しても1か月の費用は30日間で1200~3000円程度の計算になります。

ただし、薬の医療費となると他にも費用が掛かってきます。薬局を利用することにより薬剤師の技術料や指導料などです。

窓口での自己負担はそれらの合計に対する1~3割程度です。

ただし、どの薬を飲んでいるか、何種類飲んでいるかなどで金額は異なってきます。

また、同じ種類の薬でも何錠かまとめて飲む、朝夕飲むなど一日の内服量が多ければその分薬の代金は上がります。

どのような薬局で薬をもらっているかなどでも費用が少し変わることがあります。

高血圧での初診診察では何するのですか?

初診診察では問診及び血圧測定を行い、血液検査や尿検査、レントゲンや心電図検査などの各種検査を行います。

初診の時点ですでに高血圧による身体(特に内蔵)のダメージがないかの確認を行うのが目的の一つです。

もう一つの目的は高血圧が何かの病気の位置症状として出ている可能性があるので、何か病気が隠れていないかを調べていくのです。

まとめ

ここでは高血圧に対して、その成り立ちや初診からの診察、治療の流れ、費用などについて説明しました。

細かく解説しましたが、結局は

  • 「高血圧は現代の日本でありふれている病気だけれども放置してしまうと恐ろしい結果にもつながりかねない」ため、治療が必要である
  • 「高血圧になる理由は何らかの病気が原因でなければ生活習慣に起因する」ため、生活習慣の改善が最も必要である

ということに帰結します。

治療になってしまった場合の費用などについても触れましたが、実際に必要な費用が年間30万を超えてくる(自己負担額は健康保険によっておおよそ3~11万程度)と聞くと驚く人もいるかもしれません。

基本的に血圧は薬を飲むことでコントロールしていきますが、それでは根本的解決にはならず、やはり生活習慣を改善させ、血圧が上がっている根本の原因をよくする必要があるのです。

なるべく高血圧にならないように、普段から生活習慣に気を配り予防すること、なってしまった場合もさらに生活習慣を改善させ、高血圧を治す努力が必要になってくるのです。

参考文献

高血圧治療ガイドライン2019

日本医師会HP

厚生労働省 第一 医科診療報酬点数表

平成29年厚生労働省 診療報酬(調剤技術料)説明資料

日本生活習慣病予防協会HP

令和元年度 生活習慣関連疾患医療費に関する調査

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