インスリンを自己注射する時の注射器とは?種類や使用方法を解説

公開日: 2024/01/05 更新日: 2024/05/22
インスリンを自己注射する方にとって、日々の生活に欠かせないインスリン専用の注射器。 注射器にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴があることをご存じですか? そして、特にインスリン製剤を初めて処方された方にとっては疑問点や不安に思うことも多々あるでしょう。 ご自身で使用する注射器は使用前から使用後、廃棄までの取り扱いを理解しておく必要があります。 誤った方法で使用した場合、事故につながるリスクも高まります。 では、インスリンの注射器を取り扱ううえで何を理解しておけば良いのでしょうか? 初心者でも分かるよう、注射器の種類や使用方法、廃棄方法まで説明します。
目次

インスリン注射器の種類や名前の違いは?

インスリン注射器の自己注射用は大きく分けて以下2種類に分類されます。[1]

  • ペン型注射器

  • インスリン専用シリンジ

自己注射器はより負担が少ないものへと改良が進んでいます。

処方されたインスリン注射器は、どのような種類・特徴があるのかを知識として知っておくと扱いやすいでしょう。

インスリン注射器はペン型が主流

自己注射用のインスリン注射器はペン型注射器が主流です。

ペン型注射器はカートリッジタイプのインスリン製剤を使用するための専用注射器で、使用するインスリン製剤は機種によって異なります。

一見、キャップをしたマジックペンのようなので、見た目からペン型と呼ばれます。ペン型もいくつかの種類に分類されますが、主に使用されるのは以下2種類です。[1]

  • プレフィルドタイプ

  • カートリッジ交換タイプ

プレフィルドタイプ

プレフィルドタイプは、既にインスリン製剤がセットされた状態でペン型の注射器と一体になっているのが特徴です。

使い捨てタイプなので、製剤を取り替える必要はありません。持ち運びしやすく、災害時にも役立つといわれています。

カートリッジ交換タイプ

カートリッジ交換タイプはインスリン製剤が入ったカートリッジをその都度セットして使用するタイプです。

インスリンがなくなれば、新しいカートリッジに交換する必要があります。

その際、ペン型注射器に対して専用のカートリッジの組み合わせが決まっているので、処方された通りに必ず同じメーカーの製品を使用しましょう。

万が一間違えて使用した場合、低血糖や高血糖などの副作用が生じた事例が報告されています。[2]

インスリン専用シリンジ

従来からインスリン投与専用注射器で投与する方法があります。インスリン専用シリンジは目盛りが「ml」ではなく「インスリンの単位」で表示されています。[3]

一般的な注射器でインスリンを誤って過剰投与した事例も報告されているため、インスリン投与の際は必ず専用シリンジを使用しましょう。

また、一般的な注射器よりも大きく目盛が表示されているため、見やすく作られているのが特徴です。

インスリン専用シリンジには複数の規格があるため、それぞれ目盛りの最小単位や針の太さが異なります。インスリン専用シリンジを使用する際は、必ず詳細を確認してください。

インスリンを自己注射する時の注射器の使い方は?

インスリンをペン型注射器で自己注射する際の手順は以下の通りです。[4]

  • 手洗い・注射器や消毒綿を準備

注射器を扱う前に手を洗い清潔な状態にしましょう。その後、注射器や製剤カートリッジ、消毒綿を準備します。

この時、インスリンが濁っている場合は注射器を回転させて乳白色になるまで混ぜておきましょう。

  • 針をセットして空打ちをする

針をセットしたら空打ちをして、針先までインスリンが満たされているか確認します。針先から1滴はインスリンがでることを確認しましょう。

  • 単位をセットする

ペン型注射器の場合は投与するまでダイヤルを回しセットをします。

  • 消毒後に穿刺する

穿刺部位を消毒して、穿刺します。皮膚に直角に穿刺すると痛みが少ないです。

  • 注入し最後まで注入されるのを待ちましょう

注入ボタンを押したまま、ゆっくり数を数えます。製剤や投与量によって、秒数は異なりますので、指示された秒数をゆっくり数えましょう。

  • 針を廃棄します

注射針は基本的に1回のみの使いきりです。使用後は速やかに廃棄しましょう。

インスリン注射器で自己注射する場所は?

インスリン注射は、皮下注射で皮膚の一番薄いところと筋肉の間に打ちます。[5] 

自己注射の場合、お腹、太もも、おしり、腕などが一般的な穿刺部位です。

ただし、インスリン吸収速度が穿刺部位によって異なるので、接種箇所は医師の指示に従いましょう。

同じ部位ばかりに注射していると、皮膚が赤くなったり硬く盛り上がったりすることがあります。なるべく穿刺部位を変えると良いでしょう。

注射器でインスリン自己注射する時の刺入角度は?

基本的には90度で、直角に穿刺すると痛みが少ないといわれています。[6]

皮下脂肪が薄い方は、30度から45度程度で刺入してもかまいません。

また、上腕など筋肉層が比較的薄い部位は、筋肉をつまんだ状態で45度程度の角度をつけて刺入すると良いでしょう。

ただし、最も大切なのは皮下脂肪にインスリンを注射することですので、90度にとらわれすぎないようにしておきましょう。

注射器によって異なる?インスリンの単位や目盛りの見方は?

インスリンを投与する注射器は一般的な注射器とは単位が異なり、目盛がインスリン専用の単位になっています。[7]

インスリン注射では、1単位が0.01mlと定められ、通常の注射器よりも少ない単位で取り扱います。つまり、10単位が0.1mlで100単位が1mlです。

医師から指示された指示単位をしっかり確認して投与しましょう。

また、インスリン注射器の製造メーカーや種類によって、単位表示が異なります。複数のメーカーやさまざまな種類の注射器を使用している方は混同しないように注意しましょう。

インスリン注射器の保管方法

インスリン製剤または一体型の注射器は保存方法や使用期限が異なります。[8]

まず、使用開始前のインスリン製剤は冷蔵庫 (2~8℃) で保管してください。

ただし、凍結した場合インスリンの性状が変化する恐れがあるため、直接冷風のあたらないドアポケットでの保管がおすすめです。

凍結により注射器が故障することもあるため、使用開始前の保管も慎重に行いましょう。使用開始して一度開封した注射器は遮光して室温で保管しましょう。

ただし、約37℃を超えるとインスリンが変性するため、夏場は自動車内など高温になる場所に置いたまましないようにしてください。いずれも各注射器の保管方法を確認しましょう。

インスリンの自己注射器を旅行に持って行くときの保管方法

インスリンの自己注射器を旅行に持参するときは温度管理に気をつけて保管してください。[9]

先述した通り、インスリンは約37℃を超えると変性してしまいます。夏場は高温になりやすいので、持ち運ぶ際は保冷バッグなどに入れておくと良いでしょう。

直射日光を避け、高温になりやすい自動車内に置いたままにすることは避けてください。

逆に冬場はインスリンの凍結に注意しましょう。凍結の可能性がある場合は、タオルで包んで持ち歩くなど対策をしてください。

インスリンの自己注射器は飛行機に持ち込み可能?

インスリン自己注射器は手荷物として飛行機に持ち込み可能です。[10]

貨物として預けてしまうと、貨物室で凍結してしまう恐れがあるので手荷物で持ち込みましょう。

日本国内の場合、処方箋や糖尿病患者用IDカードを携帯して、飛行機搭乗の際に内容を明示できるようにしておくとスムーズです。

また、海外の空港を利用する際は英文表記の証明書を持参しておくことをおすすめします。

基本的には保安検査場での自己申告となり事前申告は不要ですが、心配な場合は一度利用する航空会社に問い合わせておきましょう。

インスリン注射器の使用期限

インスリン注射器の使用期限はメーカーや販売元、注射器の種類によって異なります。[11]

インスリンの箱やペン本体にも期限が明記されているので、確認しましょう。万が一、使用期限が過ぎているものについては使用を中止し新しいものに変更してください。

また、開封後はさらに使用期限が設定されます。インスリン製剤ごとに異なりますが、4週間〜8週間程度です。処方される際に、使用期限についてもしっかり確認しておきましょう。

インスリン注射器は自分で購入できるの?

糖尿病患者の方は医師の処方箋をもとに、インスリン注射器を調剤薬局で購入するのが基本です。注射薬や注射針は保険適用となります。

ただし、注射針のみを処方してもらう場合は保険適用外で、全額費用を自己負担となります。主治医と相談して注射器と注射針を処方してもらいましょう。

インスリン注射器(シリンジ)を通販で買っても大丈夫?

インスリン注射器のシリンジタイプは通販サイトで販売され注文も可能です。

ただし、さまざまな種類を販売しているため単位や目盛表示など見分けがつきにくく、医師から処方されたものと同一のものか判断が難しいです。

自己判断で購入せず、医師の処方のもと購入しましょう。

また、ペン型のインスリン注射器は医療関連施設登録をしている人のみ購入可能なため、一般の人が直接購入することはできません。[12]

基本的に、糖尿病患者の方は医師の処方箋をもとに調剤薬局で購入しましょう。

インスリン用注射針の購入は薬局でできる?

インスリン用注射針は医師の処方箋をもとに調剤薬局で購入するのが基本です。注射薬と針を一緒に処方してもらう場合は保険適用となります。[13]

もし穿刺に失敗して針だけ不足してしまった場合、針だけの処方は保険適用外となり自費で支払う必要があります。

インスリン注射器の捨て方は?ゴミに出せる?

インスリン注射器の廃棄方法は、医療機関や自治体によって異なる場合があります。[14]

医療機関や調剤薬局で回収する場合は、回収先に持参し指示に従ってください。自分で廃棄する場合は、処方されたインスリン注射器の廃棄方法を確認しましょう。

廃棄方法の記載があるものは指示に従ってください。また、市区町村によって廃棄方法が異なりますので、詳しい廃棄方法はお住まいの行政窓口に問い合わせましょう。

Q&A

インスリン注射器を普段使用している人やこれから使用予定の人は、気になることも多いものです。インスリン注射器に関するQ&Aは以下の通りです。

インスリン注射の針には何種類ありますか?

インスリンの注射針はさまざまなメーカーから多種の針が存在します。インスリン専用の注射針の長さは一般的に3mm~8mmで針の太さは、30Gから34Gです。[15]

インスリン注射はつままない方がいい?

必ずしもインスリン注射の際に穿刺部位をつまんで注射する必要はありません。[16]

インスリンは皮下注射で皮膚と筋肉の間に注射をすることが重要です。

針先が筋肉に刺さらないようにするために、注射部位をつまんだり針を45度傾けて穿刺したりする方法があります。

皮膚をつまみあげることで正しく皮下組織に穿刺しやすくなります。ご自身に合った方法で自己注射を行いましょう。

インスリン注射はどこに打つのがベストですか?

注射部位として主に使用されるのは、以下の部位です。[5]

  • 腹部

  • 大腿部

  • 臀部

  • 上腕

注射する部位によって体内に吸収され作用を発揮するまでの時間が異なります。主治医に指示された場所に注射をするようにしましょう。

インスリン注射針の一般名は?

インスリン注射針の一般名は「インスリン注入器用注射針」です。

まとめ

今回はインスリン注射器の種類や使用方法、廃棄方法までを解説しました。

現在インスリン注射器を使用している人やこれから使用予定の人も疑問に感じることを再確認できたのではないでしょうか。

インスリン注射器は自己判断で使用せず、医師から処方された注射器を使うことが基本です。

注射器といっても従来のように面倒な手順を取らなくても、簡単に自己注射できる注射器が普及しています。

保管方法や廃棄方法はメーカーや注射器の種類によっても異なりますので、処方時に確認が必要です。

それぞれの種類や特徴を理解し、使用している注射器の取り扱い方法を詳しく理解しておくことで、不安なく治療と向き合えるでしょう。

改めて家族とも注射器の種類や保管方法を共有しておくと良いですよ。

参考文献

[1]糖尿病サイト|インスリン注入器の種類

[2]糖尿病ネットワーク|ニュース

[3]糖尿病リソースガイド|インスリン注入器

[4]cocofump|糖尿病のインスリン注射とは?打ち方や種類・使用時の注意点まで解説

[5]糖尿病サイト|正しい注射方法

[6]公益社団法人日本糖尿病協会|インスリン自己注射ガイド

[7]再生医療ONLINE|インスリン注射の打ち方とインスリンの注意すべき単位とは

[8]糖尿病サイト|注射薬の保管方法

[9]糖尿病ネットワーク|インスリンの夏場の保管に注意 インスリンは高熱に弱い

[10]糖尿病情報センター|糖尿病の方の旅行

[11]六日市病院|インスリン製剤の使用期限と保管温度

[12]再生医療ONLINE|インスリン注射の針の取り扱い方|購入から廃棄まで

[13]望星薬局|注射の針について

[14]公益社団法人日本糖尿病協会|在宅医療廃棄物

[15]糖尿病サイト|注射針の種類

[16]糖尿病ネットワーク|インスリン自己注射ガイド

 

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