肝膿瘍(かんのうよう)の特徴・症状や原因は?~肝膿瘍と診断された時の悩みについても解説!~

公開日: 2024/01/11 更新日: 2024/09/13
肝膿瘍は肝臓の中になんらかの原因で細菌、真菌、原虫などのバイ菌が入り込むことで感染が起こり、膿瘍(膿がたまった状態)を形成する疾患です。 病原体の種類が、細菌性かアメーバなどの非細菌性に分類されます。 今回は肝膿瘍の症状や原因、またその治療法について説明していきます。あまり聞きなれない疾患ではありますが、よくある質問を交えて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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肝膿瘍とはどんな症状?

肝膿瘍では、初期に寒気とふるえを感じ、その後38.5度を超える発熱が多いと言われています。

発熱は持続することが多く、10日以上持続することもあるそうです。

痛みとしては右側の横隔膜の高さの肋骨辺りの痛み(右季肋部痛)を感じ、右側腹部の腫脹感や下痢・嘔吐、食欲不振といった消化器症状がみられることがあります。

一般的な感染症の症状が出現するため、自覚する症状だけでは肝膿瘍と判断するのは困難です。その一方で急性期でなければ無症状で経過するといった報告もあります。

しかし、肝膿瘍が放置されてしまうことで全身の血液にバイ菌が流れてしまい、敗血症という重症な経過をたどってしまうこともあるため早期発見・早期治療が重要だと言われています。

肝膿瘍を代表する2つの原因

肝膿瘍とは、肝臓外から細菌などの病原体が肝臓組織内に侵入・増殖した結果、肝臓内に膿瘍が形成された状態であり、その原因は2つに分けられます。

  • 細菌性肝膿瘍

  • アメーバ性肝膿瘍

それぞれを説明していきます。

細菌性肝膿瘍とは?

いくつかの感染経路が存在していますが、最も多いものは胆石症や急性胆嚢炎/胆管炎が基礎にあることでの、胆道を経由した感染です。

胆嚢や胆管が細菌に細菌感染症を起こし、近くにある肝臓へ侵入してしまい、結果膿瘍があらわれてしまいます。原因菌はグラム陰性桿菌(大腸菌が最多)と言われています。

また、リスク因子として糖尿病の罹患も原因とされているため、重症化には注意が必要であると言えるでしょう。

アメーバ性肝膿瘍とは?

肝膿瘍のうち、アメーバ性肝膿瘍のことをアメーバ肝膿瘍とも呼びますが、赤痢アメーバ症の一部としても位置付けられています。

原因菌である赤痢アメーバが門脈(消化管を流れた血液が集まって肝臓に流れる静脈の血管)を経由し、感染することが原因です。

赤痢アメーバは水や食物を介して成熟嚢子の形で体内に侵入し、

小腸から大腸へと至り、そこでアメーバ性大腸炎として右下腹部痛やイチゴゼリー状粘血便といった消化器症状が出現し、腸管外へ波及することでアメーバ性肝膿瘍として症状が出現します。

アメーバ性肝膿瘍は早期診断・早期治療を行わなければ予後不良と言われる疾患です。

細菌性と比較し、アメーバ性はまれであり、輸入感染症及び性感染症として注目されています。

近年は海外渡航歴がなくても同性愛者間の患者が増加しており、2004 年以降は異性間性的接触による患者の増加が報告されていることが分かっています。

肝膿瘍の診断方法は?

肝膿瘍と診断するためには、採血による検査や腹部超音波検査、CT検査を行い鑑別診断を行います。

検査所見として

採血の検査で、白血球(WBC)の上昇、CRP 上昇、肝胆道系酵素上昇などの所見を認めます。

しかし、これらは感染による一般的な臨床所見なため、肝膿瘍に特徴的な所見とは言いきれません。

また、手術後では手術そのものの侵襲も重なり、痛みや体の反応としての発熱も見られるケースもあります。

そのため、採血などのデータのみで肝膿瘍の診断をつけることは難しいでしょう。

糖尿病などの易感染性となる基礎疾患や肝臓の血流障害・虚血など、多くの情報から肝膿瘍を疑うことが重要となります。

画像診断として

肝膿瘍の画像診断は腹部超音波検査(腹部エコー検査)が第一選択とされることが多いです。

理由としては、侵襲がなく、簡潔に行うことが出来るため、病棟でも迅速に検査が可能であることから、肝膿瘍を疑った時点でまずこの検査を行うことが多いです。

しかし、滲出液などの腹腔内液体貯留などにより観察不良となることもあり、確実な診断をつけるべく、術後変化や体液などの影響を受けにくいCTが必要となります。

造影剤アレルギーや腎機能障害などの問題がなければ造影CTが望ましいです。

CTなどの検査を行い、膿瘍が本当にあるのか・大きさや数はどれくらいあるのかなどを調べることにより判断することができるでしょう。

肝膿瘍の治療について

肝膿瘍では、細菌性かアメーバ性かによって治療方法や使用する薬剤が異なります。それぞれの治療方法や治療薬について解説していきます。

治療方法の違いとは?

治療方法の違いに大きな差はありませんが、それぞれ説明していきます。

細菌性肝膿瘍の治療方法

細菌性では抗菌薬とドレナージが治療の基本と言われています。

ドレナージとは、体の中に溜まってしまった炎症産物・膿や滲出液などの不要な物質を体外へ排出する治療方法です。

画像診断上5 cm を超える膿瘍では抗菌薬単独での改善が困難な場合が多く、ドレナージが必要となります。

アメーバ性肝膿瘍の治療方法

アメーバ性の場合は抗菌薬のみで治療が可能と言われていますが、サイズが大きい場合や抗菌薬の効果が認められない場合ではドレナージを行うこともあります。

治療薬の違いとは?

治療薬に関しては、肝膿瘍の種類によって使用する薬剤の成分が異なるというのが事実です。治療期間なども設定されている薬剤もありますので、それぞれ説明します。

細菌性肝膿瘍の治療薬

抗菌薬として軽症例ではペニシリン系抗生物質のスルバクタム・アンピシリンまたはセフェム系抗生物質のセフメタゾールを使用し、重症例ではペニシリン系抗生物質のタゾバクタム・ピペラシリンを使用します。

投与期間は 4~6 週間を目安とすると言われています。

アメーバ性肝膿瘍の治療薬

抗嫌気性菌薬であるメトロニダゾールによる内服治療後に、寄生虫感染症の治療に用いられるパロモマイシンによる根治療法を行うことがあります。

ドレーン管理とは?

肝膿瘍では種類によって治療法が異なると述べました。

そのため肝膿瘍におけるドレーン管理では、原因となる菌の特定を目的としたドレナージ(体内に貯留した膿などの余分な体液を排出する方法)の他に、

膿瘍の排液や必要に応じ洗浄を行うことを目的としてドレナージを行います。

ドレーン挿入時は、X線透視室にて経皮的にドレーン挿入を行い、肝臓の脈管や胸腔内を避けるようにドレーンを留置することが一般的です。

抗凝固剤を内服されている方は中止することが望ましいですが、緊急時は実施しせざるを得ない状況もあります。

また、ドレナージが不良である場合や、膿瘍が破裂した場合には、外科的にドレナージを行うことが多いです。

肝膿瘍の予防方法は?

肝膿瘍は、肝臓外から細菌などの病原体が肝臓の組織内に侵入・増殖することが原因で生じます。

リスク因子として糖尿病や膵胆道系疾患(胆囊炎、肝硬変など)が原因ともされているため基礎疾患の予防や上記の疾患が重症化する前に治療をすべきでしょう。

また、赤痢アメーバを契機として生じる場合もあるため、海外渡航時汚染された飲食物を体内に摂取しないよう心がけることや不衛生な性行為を避けるべきでしょう。

肝膿瘍のQ&A

肝膿瘍と診断されたら?

肝膿瘍は、抗菌薬の投与やドレナージが必要となることがあるため入院が必要となります。

肝膿瘍の種類により治療法が異なるため、担当する医師に治療計画を確認してみると良いでしょう。

肝膿瘍はうつるのか?

肝膿瘍は自分の肝臓に微生物が入り込むことで症状が出現するため、診断されても周囲の人に移してしまうことはありません。

しかし、アメーバ性肝膿瘍であれば、体内に病原体が存在しており、糞便中に排泄されます。

メトロニダゾールでの治療終了1~2週間後に糞便の陰性検査を行うこともあります。

肝膿瘍の入院期間は?

肝膿瘍の治療として、抗菌薬の投与やドレナージが必要となり、抗菌薬の投与期間も決まっています。

しかし、肝膿瘍の程度や治療の経過もあるため、適宜担当する医師に経過を確認してみると良いでしょう。

肝膿瘍の予後は?再発率や後遺症は?

肝膿瘍は死亡率が高く予後不良な疾患でしたが、

画像診断の進歩により診断は容易となり穿刺ドレナージ技術の向上や強力な抗菌剤などの登場により治療成績及びその予後は改善してきています。

しかし、現在でも適切な処置が施行されない場合、敗血症や多臓器不全を併発し致死的となりうる可能性があるため、早期発見・早期治療を進めていくべきでしょう。

まとめ

  1. 肝膿瘍は肝臓の中になんらかの原因で細菌、真菌、原虫などのバイ菌が入り込むことで感染が起こり、膿瘍を形成する疾患。

  2. 肝膿瘍の症状は38.5度を超える発熱が多く、右側の横隔膜の高さの肋骨辺りの痛み(右季肋部痛)を感じ、右側腹部の腫脹感や下痢・嘔吐、食欲不振といった消化器症状がみられることがある。

  3. 肝膿瘍の原因は細菌性(化膿性)とアメーバ性に分けられ、細菌性の頻度が高いと言われている。

  4. 肝膿瘍の予防は糖尿病などの基礎疾患を予防し、胆囊炎、肝硬変などの膵胆道系疾患が重症化する前に治療を行う必要がある。

肝膿瘍は細菌性・アメーバ性とタイプが分かれていますが、実際のところは細菌性の人が多いです。

血液検査や画像診断を経て診断されるため、診断されるまで分からないと言われています。

症状が気になると思ったら早めに病院を受診しましょう。

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