認知症で一人暮らしはできる?高齢者の一人暮らし【リスクと対応策】

公開日: 2024/01/20 更新日: 2024/01/20
高齢化の進む日本。 2020年の報告では、65歳以上の高齢者の割合は28.6%にのぼり年々増加しています。 同じ調査では一人暮らしをする65歳以上の男性は8人に1人、女性は5人に1人と報告されていてその数は毎年増えています。 高齢になると認知症を発症する可能性が高まりますが、認知症を抱えながら一人暮らしをする高齢者の数は少なくありません。 物忘れや性格の変化、多岐にわたる症状を抱える認知症の高齢者は一人暮らしができるのでしょうか。 本記事では、認知症のある方の一人暮らしについて、どのような生活になるのか、リスクと対応策について含めて解説します。 順に解説します。

認知症の一人暮らしは難しい

結論からお伝えすると、一般論として認知症のある方が一人暮らしを続けることは簡単なことではありません。

もちろん認知症の程度にもより、症状が重くない時期であれば、問題なく一人暮らしができるでしょう。

しかしながら、症状には個人差があるものの、基本的に時間の経過とともに認知症の症状は重くなります。

症状が重くなることで、金銭の管理、火の始末、食事や買い物、ごみの始末、身だしなみなど安全で自立した生活を一人で送ることが困難になってしまうのです。

認知症の症状と潜在的リスク

一般的に認知症の方は、次のような症状が現れます。

記憶障害同じことを繰り返し聞く 食事をしたことを覚えていない 持ち物をしまった場所や自宅の場所などを忘れる 火を消し忘れたりする
見当識障害時間や場所がわからなくなる 家族など大切な人がわからなくなる
理解・判断力の低下言葉が出てこない つじつまのあわない会話になる 相手の話が理解できない
実行機能障害リモコンや電話などの電化製品が使えない 段取りができない 同じものを買うなど、買い物がままならなくなる
注意障害集中力が低下する 車や火など危険なことがわからない

また認知症にはBPSD(行動・心理症状)という、患者さん本人の性格や素質、環境や心の状態によって現れる症状があります。

不安行動や言動に確信が持てなかったり自信を失ったりして、不安が強くなる
焦りできないことや不安感、未充足感から焦ってしまう
うつ状態自信を失い落ち込んでうつ状態になる
幻覚・妄想見えないものが見えたり、聞こえないことが聞こえたりする
徘徊今いる場所や今すべきことがわからず、目的なく歩き回る
興奮・暴力感情や行動のコントロールができない
不潔行為便や尿などをオムツに排泄した不快感から、便をいじったりしてしまう 入浴の必要性が理解できず、入浴を拒否する

BPSD(行動・心理症状)は体調や環境・相手によって大きく変化し、認知症を抱える方の一人暮らしを一層困難にさせます。

たとえば、自宅を忘れてしまったり、自分や家族の名前を忘れてしまったりすれば、自宅に帰ることも難しくなるでしょう。

火が危険だということがわからなくなり、もし火を消し忘れてしまったら火事をおこしてしまうかもしれません。

このように認知症を抱えながらの一人暮らしには、さまざまなリスクが潜んでいるのです。

認知症の一人暮らし対応策

認知症を抱えながら一人暮らしをするためには、認知症の症状や重さに応じて、次のような対応策を取り入れる必要があります。

    社会的サービスを活用し一人の時間を減らす

    (ヘルパー導入、デイサービス・ショートステイの利用)

  • 支援者・介護者と同居する
  • 施設入所
  • 順に解説します。

    社会的サービスを活用し一人の時間を減らす

    たとえば、生活支援や見守り・買い物等の介助をおこなう介護ヘルパーの導入や、体調を管理する訪問看護師の導入。

    さらには、施設に通って次のようなサービスを受けることで一人で過ごす時間を減らし、異常の早期発見・対処、リスク回避をおこなう対応策があります。

    ショートステイ数日や数週間の短い期間、施設で生活し食事や入浴などの日常生活のサポートをおこなうデイサービス(通所介護)集団で食事や入浴の支援を受ける。

    レクリエーションや運動・リハビリなどもおこなうデイケア(通所リハビリ)自宅から施設に通って、身体機能の維持・回復につながるリハビリをおこなう

    支援者・介護者と同居する

    家族や近親者など認知症を抱える方の生活のサポートを担う方と、完全同居もしくは近隣同居し一人暮らしを支える対応策があります。

    近隣同居とは認知症の一人暮らしの方の近くに住み、食事や日常生活などをサポートする対応策です。

    完全同居は同じ家庭で一緒に生活を送ることを意味します。

    そのため、認知症を抱える方は一人で暮らす訳ではなくなり多くのリスクが回避されます。

    しかし、同居したからといって認知症がよくなるわけではありません。

    リスクが回避される反面、支援者・介護者の負担が増えてしまうことも問題です。同居すれば問題の全てが解決する訳ではない点に、注意が必要です。

    施設入所

    さまざまな対応策を取り入れても一人暮らしが難しくなった際には、施設への入所も候補に挙がります。

    認知症を抱える方が利用できる施設には、次のようなものがあります。

    介護老人保健施設(老健)日常生活の支援だけでなく、リハビリや医療的にも手厚く支援し、自宅に帰れるようなサポートをおこなう特別養護老人ホーム(特養)自宅で生活することが難しい人向けの施設。

    生活の場として、医療・介護・看護ケアをおこなうグループホーム (認知症対応型共同生活介護)認知症の人がスタッフのサポートを受けながら、数人で集団生活を送る 料理や掃除・洗濯など、一人ひとりの能力を活かしながら自立心と自尊心に配慮した生活をする

    お一人おひとりの認知症の症状や持病、体調によって利用できる施設はことなります。

    費用負担にも差がありますので、詳しくは、ケアマネジャーや役所の福祉関係者に確認してください。

    まとめ

    認知症を抱える方の一人暮らしは、症状が重くなればなるほど難しくなります。

    また患者さん自身にも、周りの家族にとっても負担になりえます。

    生活の質を維持しつつ、安全な環境を確保するためには、さまざまな対応策を活用することが必要です。

    家族や支援・介護者との綿密なコミュニケーションを通じて、患者さん一人ひとりに合った生活プランを立てることが、安心して一人暮らしを続けるために重要です。

    お困りの際には、かかりつけ医やお近くの医療機関へご相談ください。

    参考資料

    一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調査 結果報告書

    https://www.soumu.go.jp/main_content/000892181.pdf

    令和2年国勢調査人口等基本集計 結果の要約  総務省

    https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/summary_01.pdf

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