マイコプラズマ肺炎の原因は?特徴はあるの?
マイコプラズマ肺炎の原因となるのはマイコプラズマ・ニューモニエ(=Mycoplasma pneumoniae)という細菌です。
一般的な細菌感染症の治療では、細菌が細胞壁を作るのを邪魔することで細菌を死滅させる、「細胞壁阻害剤」と呼ばれる抗菌薬を使用します。
しかし、マイコプラズマ・ニューモニエは細胞壁をもたないという特徴があるため、細胞壁阻害薬では死滅しません。[1]
そのため、マイコプラズマ肺炎の治療には細菌の蛋白質質合成を阻害して細菌を死滅させる、「蛋白質合成阻害剤」と呼ばれる抗菌薬が使用されます。[2]
また、マイコプラズマ・ニューモニエは、アルコールや界面活性剤(洗剤や石鹸など)に弱いという特徴もあります。
そのため、石鹸での手洗いやアルコールの手指消毒といった一般的な感染症対策で十分に予防効果を得ることができるのです。
マイコプラズマ肺炎はうつるの?感染経路は?
マイコプラズマ肺炎は細菌感染症であるため、人から人にうつります。
主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
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飛沫感染:感染者の唾液やくしゃみ、咳のしぶきを吸い込んで感染すること
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接触感染:感染者の唾液や分泌物が触れた場所に触れ、触れた手で口や鼻などの粘膜に触れることで間接的に感染すること
マイコプラズマ肺炎の感染力はそれほど強くないため、短時間の接触でうつることはほとんどありません。
感染の拡大は、主に家庭内や親しい友人間、施設などの閉鎖集団などで起こることが多く、感染には濃厚接触が必要と考えられています。
次に、マイコプラズマ肺炎の感染拡大を防ぐ方法について紹介していきます。
マイコプラズマ肺炎にかからない・うつさないためには
マイコプラズマ肺炎の感染を予防するためには、飛沫感染や接触感染といった感染経路を途中で断つことが大切です。
飛沫感染を防止するためには、マスクの着用が最も効果的でしょう。
感染者本人はもちろんのこと、家族など身近で過ごしている人もマスクを着用するようにしてください。
咳がでるときは、マスクをしていても口元をタオルで覆ったり、こまめな換気を行ったりといった咳エチケットを心がけましょう。
また、感染者と向かい合って食事をとることや、同じ食器を使うことは避けてください。
接触感染の防止には、石鹸での手洗いやアルコール消毒が効果的です。
マイコプラズマ肺炎は初期症状の段階では風邪と診断されてしまうことも多いです。
マイコプラズマに感染していることに気が付かないまま他者と接触すると、感染を広める可能性が高くなります。
そのため、一度風邪と診断されてもひどい咳が長引く時には、もう一度病院を受診することをおすすめします。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎は人にうつるの?症状や治療法についても解説」
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエ(=Mycoplasma pneumoniae)という細菌の一種によって引き起こされます。
感染者の年齢は6〜12歳が最も多いとされていますが、小さな子どもから大人まで幅広い年齢層で感染が認められている感染症です。[4]
年齢に問わず、重症化することはまれで発熱と気管支炎程度で済むことがほとんどです。
ただし、一般的に大人の方が重症化しやすく、子どもの方が軽症で済むと言われています。[4]
また、以前は幼児が感染した場合、風邪症状程度で自然に治ることが多く、肺炎にまで至ることはほとんどありませんでした。
しかし、最近は幼児でも肺炎に至るケースが増えてきているので、咳や呼吸困難感などの呼吸器症状には十分に注意しましょう。
かつては、周期的な流行をする感染症といわれており、オリンピックと同様に4年周期での全国流行がみられていました。
しかし、近年はこの傾向は崩れつつあり、1988年の大流行以降周期的な全国流行はみられていません。[4]
マイコプラズマ肺炎は麻疹ウイルスのように、一度発症すると生涯免疫を獲得するものではありません。
一度かかっても、生涯免疫は獲得できず、何度もかかることがあります。
数日や数か月で再びかかることは基本的にありませんが、1年程度で再感染した例もあるため、身近に感染者がいるときは注意しましょう。
関連記事:「マイコプラズマとは?風邪や一般的な肺炎との違いを解説 」
マイコプラズマ肺炎の症状
マイコプラズマ肺炎に感染しても、2~3週間は潜伏期間といい、症状が出現しない期間があります。
その後、発熱や頭痛、全身のだるさ、気管支炎などの症状が現れはじめます。
咳症状が出現するのは、発熱後3〜5日程度経過したころです。
痰の絡まない乾いた咳が特徴ですが、幼児や10歳代の子どもの場合、後期には痰がらみの咳となることも多くあります。
発熱や気管支炎などの初期症状の時点では、風邪と診断されることも少なくありません。
マイコプラズマ感染症は本来自然治癒も可能な感染症なので、風邪症状のみで次第に症状が落ち着き、自然と治癒する可能性も十分にあります。
しかし、中には重い肺炎に至る人もいるため、最初に風邪と診断されても、数日以上咳が続いている時や息苦しさがある時、高熱が続いている時などは、再度受診することをおすすめします。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の症状は?かぜとの違いを解説 」
マイコプラズマ肺炎の診断方法
マイコプラズマ肺炎の診断には、マイコプラズマ抗原迅速診断キットを使用することが多いです。
細い綿棒で咽頭をぬぐい、専用のキットでマイコプラズマ感染症の有無を調べます。
ただし、発熱や咳、だるさなどがあっても、全ての人がマイコプラズマ肺炎の検査をするわけではありません。
症状だけでなく、周囲の感染者の有無や、肺の音、胸部レントゲンによる肺炎の所見などをみて、検査の有無を決めます。[6]
マイコプラズマ肺炎の治療方法
一般的に細菌感染症の治療では、細菌が細胞壁を作るのを邪魔することで細菌を死滅させる、ペニシリン系やセフェム系などの細胞壁阻害剤と呼ばれる抗菌薬(抗生剤)を使用します。
しかし、マイコプラズマ肺炎の原因菌は、細胞壁をもっていないため、細胞阻害剤では治療効果がありません。
マイコプラズマの第一選択薬は、クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬で、この薬は細胞の蛋白質の合成を阻害することで細菌を死滅させます。
マクロライド系抗菌薬で治療効果が得られなかった場合、キノロン系やテトラサイクリン系の抗菌薬を使用することもあります。
(※テトラサイクリン系抗菌薬は8歳未満では原則禁忌)
呼吸困難がみられている場合には、ステロイド薬を投与するなど、個々の症状に合わせて必要な治療も行われます。[5]
まとめ:マイコプラズマ肺炎の原因を知り、感染拡大を防ごう!
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエ(=Mycoplasma pneumoniae )という細菌が原因の細菌感染症です。
マイコプラズマは感染力がそれほど強くなく、感染経路は飛沫感染と接触感染であるため、日々の感染症対策によって十分に予防することができます。
マイコプラズマ肺炎にかからない、うつさないためには日頃から手洗いやうがいなどの感染症対策を行うことが大切です。
また、家庭内や親しい友人間などの濃厚接触では、感染の確率が高くなります。
自分が感染している時はもちろんのこと、身近に感染者がいる時には周囲の人もマスクの着用をおすすめします。
一度風邪と診断されても、実はマイコプラズマ肺炎だったということもあります。
知らず知らずのうちに感染を拡大してしまわないように、熱が下がった後でも咳が続いている時にはマスクを着用するなどの感染対策を継続してください。
また、ひどい咳が長引いている時や息苦しさがある時、または高熱が続いている時には、再度医療機関を受診しましょう。
参考文献
[1]マイコプラズマ肺炎 Mycoplasma pneumonia | 東京都感染症情報センター