マイコプラズマ肺炎の症状をチェック
マイコプラズマに感染すると、2~3週間の潜伏期間を経て、発熱や頭痛、全身のだるさ、痰を伴わない咳などのかぜに似た症状が現れます。
咳は最初の症状が現れてから3~5日ほど経ってから出始めることもあります。咳は徐々に強くなり、熱が下がったあとも3~4週間ほど続くのが特徴です。
大人の場合は痰を伴わない乾いた咳が湿った咳に変わるケースもあり、とくに年長児や青年では後期には湿った咳となることが多いです。
子どもの場合は湿った咳がみられず、乾いた咳が長引くケースもあります。
マイコプラズマ肺炎の主な症状は以下の通りです。[1]
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発熱
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頭痛
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倦怠感
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痰が絡まない乾いた咳
そのほかにも、以下の症状が現れることがあります。
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声のかすれ
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のどの痛み
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耳の痛み
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消化器症状(腹痛・吐き気・下痢など)
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胸痛
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皮疹
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喘鳴(呼吸をするときにゼーゼー、ヒューヒューと音がする)
マイコプラズマに感染してもほとんどの人が気管支炎ですみ、症状は軽いことが多いです。
しかし、一部の人では重篤な肺炎が起こり、入院が必要になることがあります。
また、胸膜炎や心筋炎、髄膜炎などの重い合併症を引き起こすこともあるため注意が必要です。[2]
関連記事:「マイコプラズマ肺炎は咳だけではない?症状や特徴についてチェック」
かぜとの症状の違いはあるの?
マイコプラズマ肺炎のかぜとの違いは、鼻水や鼻づまりといった鼻の症状が少ないことです。
ただし、幼児では鼻炎症状がみられることもあるため、鼻の症状だけで判別することはできません。
マイコプラズマ肺炎では、痰の絡まない乾いた咳が徐々にひどくなり、長期にわたり続くのもかぜとの違いです。咳は経過に伴い湿った咳へと変化することもあります。
また、感染したおよそ10%の小児には湿疹がみられ、マイコプラズマが耳に入ると中耳炎で耳が痛くなり、胃腸に入るとおう吐や下痢を起こすこともあります。
マイコプラズマ肺炎はかぜと判別が難しいため、治療を受けず様子をみてしまうことも少なくありません。
しかし、治療を受けないと咳が長引き、重症の肺炎や合併症を引き起こすこともあるため注意が必要です。
重症化を防ぐためには早期治療が重要です。症状を注意深く観察して「いつものかぜと少し違うな」と違和感を感じたら、早めに医療機関を受診して医師に相談しましょう。
子どもと大人で症状は同じ?
マイコプラズマ肺炎は子どもに多い感染症ですが、大人に感染することもあります。
症状は子どもとほとんど同じですが、大人のマイコプラズマ肺炎には以下のような特徴があります。
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乾いた咳が湿った咳に変わる
子どものマイコプラズマ肺炎では、痰の絡まない乾いた咳が長引くという特徴があります。大人の場合、気道の炎症により分泌物が増し、乾いた咳から痰が絡んだ湿った咳に変わることがあります。
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悪化しやすい
大人は子どもに比べて症状が悪化しやすいです。とくに高齢者は重症化して呼吸不全や胸に水が溜まる胸水貯留を起こし、危険な状態になる可能性があります。
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弛張熱(しちょうねつ)
弛張熱とは、最低体温が37度以上で、1日の体温差が1度以上あるものをいいます。
大人のマイコプラズマ肺炎では1日中熱が出ているわけではなく、熱が上がったり下がったりすることがあります。
大人は子どもより悪化しやすく、重症化して入院が必要になることもあります。上記の症状がみられたときは、医療機関で診察を受けるようにしましょう。
関連記事:「大人のマイコプラズマ肺炎の特徴とは?症状チェックシートでセルフチェック」
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は細菌の一種「マイコプラズマ・ニューモニエ」によって引き起こされる病気です。[1]
学童期や青年期に多いのが特徴ですが、幼児から成人まで幅広い年齢層にみられます。
幼児では肺炎にまで進むことは少なく、軽いかぜ程度で自然に回復することがほとんどですが、最近は幼児にも肺炎が見られるようになってきました。
一部の人は重症化し、一度感染しても十分な免疫ができないため、生涯にわたり何度も感染する可能性がある注意が必要な病気です。
マイコプラズマ肺炎は4 年周期でオリンピックのある年に流行を繰り返してきましたが、近年この傾向はみられず、1984 年と1988年の大流行以降、大きな流行はありません。
関連記事:「マイコプラズマについて知ろう」
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の原因は?感染経路や予防策についても解説」
マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は長い
マイコプラズマ肺炎は潜伏期間が2~3週間と長く、症状が現れるまでに時間がかかります。[1]
症状が現れるまでの2~3週間は感染に気付かず、症状が出ても軽いかぜだと思って普段通り仕事や学校に行ってしまうことがあります。
周囲に感染者が出たときは、しばらくの間は体調の変化をよく観察しましょう。
マイコプラズマ肺炎は合併症を引き起こすことも!
マイコプラズマ肺炎にかかっても軽症で済むことが多く、合併症を引き起こすことはまれですが注意が必要です。マイコプラズマ肺炎の合併症は以下の通りです。[1]
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中耳炎
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気管支炎
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重症肺炎
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無菌性髄膜炎
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肝炎
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膵炎
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心筋炎
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関節炎
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溶血性貧血
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ギラン・バレー症候群(手や足に力が入らなくなる末梢神経の障害)
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スティーブンス・ジョンソン症候群(眼、鼻、口唇・口腔、外陰部などの粘膜にただれが生じ、全身の皮膚に赤い斑点、水ぶくれなどが多発する病気)
マイコプラズマ肺炎は多くの合併症を引き起こす可能性のある病気です。合併症を起こさないためには早期発見・早期治療が重要になります。
マイコプラズマ肺炎が疑われる症状がみられたら早めに医療機関を受診しましょう。
マイコプラズマ肺炎はうつるの?
マイコプラズマ肺炎は、患者の咳のしぶきを吸い込んだり、患者と身近で接触したりすることにより感染すると言われています。
感染しない・させないために、うつる期間や確率について知っておきましょう。
関連記事:マイコプラズマ肺炎は人にうつるの?症状や治療法についても解説 (fastdoctor.jp)
マイコプラズマ肺炎がうつる期間、確率は?
マイコプラズマ肺炎は濃厚接触で感染すると考えられており、うつる確率はそこまで高くはありません。[1]
感染拡大の速度は遅く、保育園や学校などでの短時間の接触により感染が拡大する可能性も高くありません。
しかし、マイコプラズマ肺炎は家庭内ではうつりやすいため注意が必要です。うつる期間は症状のある間がピークですが、保菌は数週~数か月間持続します。
咳などの症状があるうちはマスクをするなどして周囲にうつさないように配慮する必要があるでしょう。
関連記事:マイコプラズマ肺炎は人にうつるの?症状や治療法についても解説 (fastdoctor.jp)
マイコプラズマ肺炎の診断方法
マイコプラズマ肺炎の診断では問診や視診、胸部聴診、血液検査、抗原検査が行われます。確定診断には、患者の咽頭拭い液や喀痰よりマイコプラズマを分離する方法が有用です。[3]
しかし、この方法では結果が出るまでに早くても1 週間程度かかるため、通常の診断として使われることはほとんどありません。
医療機関では血液検査を行い、血液中のIgM抗体(細菌に感染した時に作られる抗体)の上昇をみて診断されることが多いです。
ただし、感染初期の検査では陰性が出ることがあり、回復期(初回の採血から2~4週間後)の血清とペアで検査を行う場合は診断に時間がかかります。
そのため、最近では抗原キットを使用した抗原検査も診断に用いられるようになりました。患者の咽頭拭い液でかんたんに検査ができ、15分程度で検査結果が出ます。
抗原キットでは菌の増殖部位である下気道からの検体採取が困難であるため、あくまで診断材料の1つとされています。現時点では、血液検査が確定診断に最も有用です。
マイコプラズマ肺炎の治療方法
マイコプラズマ肺炎は抗菌薬での治療がメインです。マイコプラズマ肺炎はほかの肺炎に使用されるペニシリン系やセフェム系抗菌薬は効果がなく、マクロライド系抗菌薬などが用いられます。[1]
マクロライド系抗菌薬で改善しなければ、キノロン系やテトラサイクリン系(※8歳以上に限る)を使用します。
マイコプラズマ肺炎にかかっても軽症ですむ人がほとんどですが、重症化すると入院して専門的な治療が必要です。
呼吸困難がある場合、ステロイド薬の点滴での投与が行われます。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の治療薬について解説 子どもにも使える市販薬はあるの?」
入院となることもあるの?
軽症の場合は1週間程度外来で治療すれば回復しますが、重症の場合は入院が必要です。
重度の肺炎で呼吸困難がみられる場合や合併症を起こした場合は、1か月以上の入院治療が必要となることもあります。
多くの場合は軽症で済むため過度に心配する必要はありませんが、早期に適切な治療を受けることが大切です。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の入院の目安、入院中の治療などについて解説」
まとめ:マイコプラズマ肺炎の症状を理解し、正しく対処しよう
マイコプラズマ肺炎の症状は多岐にわたります。
適切な治療を受ければ重症化することは少ないため「咳が止まらない」「普段のかぜと違うような咳が出る」といった症状があるときは、早めに医療機関を受診して医師に相談することが大切です。
2020~2023年の間はコロナ禍でしばらく流行がなかったため、マイコプラズマに対する免疫が低下しており、日本でも急激に流行が拡大する可能性があります。
重症化を予防するためには早期発見・早期治療が重要です。マイコプラズマ肺炎の症状を理解し、正しく対処しましょう。
マイコプラズマ肺炎の症状の特徴
発熱やだるさ、頭痛、痰を伴わない乾いた咳などの症状がみられます。咳は少し遅れて出始めることが多いです。
マイコプラズマ肺炎の最大の特徴は、咳が長引くことです。咳は熱が下がったあとも3~4週間程度続くこともあります。
マイコプラズマに感染してもほとんどの人が軽い症状ですみますが、一部の人は重症化する可能性があるため注意が必要です。
また、子どもは軽症で済むことがほとんどですが、大人は悪化しやすいです。とくに高齢者は重症化リスクが高いため注意しましょう。
マイコプラズマ肺炎にかからない・うつさないためには
マイコプラズマ肺炎にかからないためには、日頃から感染対策を意識することが大切です。
マイコプラズマ肺炎の感染経路はかぜやインフルエンザと同じなので、外出後は手洗い・うがいをする、人混みを避ける、十分な休養・栄養摂取により免疫力を高めるなど一般的な感染対策が基本となります。
マイコプラズマ肺炎にかかったときは、感染拡大を防ぐために咳エチケットを心がけることが大切です。
咳やくしゃみが出るときはマスクを着用しましょう。
咳やくしゃみが出るときにマスクがない場合は、口と鼻をティッシュや腕の内側などで覆い、顔をほかの人に向けないようにしてください。