PMDD(月経前不快気分障害)とは?症状と治療法を解説

公開日: 2024/01/20 更新日: 2024/01/20
生理前に「イライラしたり情緒不安定になったりする」「どうしようもない不安におそわれ、何もやる気が起きない」などという症状はありませんか?生理前だけとはいえ、自分でもコントロールできないイライラを家族や友人にぶつけていると、関係がこじれてしまうこともあります。 生理前のイライラは月経前不快気分障害(PMDD:​​​​Premenstrual Dysphoric Disorder)が原因かもしれません。 PMDDはうつ病の一種と考えられるため、適切な治療が必要です。 この記事では、PMDDの症状や診断方法、治療法について解説します。 セルフチェックやセルフケアの方法についてもご紹介するので、生理前の不調が気になる方は参考にしてください。

PMDDとは?PMSとの違いについても解説

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)」という言葉を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

PMDDは生理前の精神的な不調がひどい状態のことをいい、生理前の不調全般をあらわすPMSとは区別されています。

PMDDについて、PMSとの違いも含めて理解しておきましょう。

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)とは

PMSとは生理前に起こる精神的・身体的な不調のことで、月経のある女性の約80%は何らかの症状があると言われています。

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PMSの主な症状

精神的症状    身体的症状・イライラ

・落ち込み

・不安感

・眠気

・集中力の低下

・意欲の低下

・不眠

・過食

・​頭痛

・肩こり

・腰痛

・乳房の張りや痛み

・むくみ

・体重増加

・腹痛

・お腹の張り

・吐き気

・便秘

・下痢

・肌荒れ

・だるさ

PMSの症状は多岐にわたりますが、生理開始とともに軽減していくのが特徴です。

月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder)とは

PMDDは、PMSのなかでも精神面の不調がとくに強く現れる状態をいい、うつ病の一種と考えられています。

月経のある女性の3〜8%にPMDDの症状があるといわれ、(2

・気分の落ち込み

・不安や緊張

・情緒不安定

・イライラ

など著しい精神面の不調があらわれます。

PMDDの症状が生理3〜10日前から現れ、生理開始とともに軽減していく点はPMSと同じです。

社会生活や人間関係に重大な影響を及ぼすこともあるため、PMDDの症状がある人は自分に合った適切な対処法を知っておく必要があります。

PMDDを発症する原因

PMDDやPMSの原因は、主に月経周期による女性ホルモンの変動が関係していると考えられていますが、完全には解明されていません。

ここでは、PMDDの原因となる女性ホルモンの月経周期による変動、女性ホルモンが精神状態に与える影響について説明します。

女性ホルモンの月経周期による変動

女性ホルモンには以下の2種類があり、卵巣から分泌されます。

エストロゲン(卵胞ホルモン)

プロゲステロン(黄体ホルモン)

エストロゲン(卵胞ホルモン)のはたらき    プロゲステロン(黄体ホルモン)のはたらき・神経系を活性化する

・子宮内膜を厚くして、妊娠に備える

 ・女性らしい体をつくる

 ・自律神経を安定させる

 ・肌の調子を整える

 ・血管、骨、関節、脳を健やかに保つ・神経系を抑制する

・子宮内膜を柔らかく維持し妊娠しやすくする 

・水分や栄養素をため込み、妊娠を維持しやすくする

 ・食欲を増加させる

 ・体温を上げる

これらの女性ホルモンは月経周期によって分泌量が変動し、女性の心や身体に影響を与えます。

月経周期の分類は以下のとおりです。

・月経期(生理初日〜生理終了)

・卵胞期(生理終了〜排卵前)

・排卵期(排卵日前後)

・黄体期(排卵後〜生理開始前)

PMSやPMDDは、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が減少する黄体期後半に起こるといわれています。

黄体期(排卵から次の生理までの期間)の前半に、エストロゲンとプロゲステロンは一度分泌量が上がり、のちに後半にかけて急激に低下します。

このように、女性ホルモンの変動によって脳内のはたらきや自律神経に異常をきたしてしまう結果、心身の不調となってあらわれるのがPMSやPMDDなどの月経前症状です。

セロトニン分泌の低下

セロトニンは、心を安定させるはたらきをもつ脳内神経伝達物質です。

セロトニンが低下すると

・気分が落ち込む

・疲れやすくなる

・イライラする

・攻撃性が増す

などの症状が起こります。

プロゲステロンの低下はセロトニンの分泌を抑えるため、プロゲステロンが減少する黄体期の後半に精神面での不調が起こりやすくなります。

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GABA感受性の低下

GABA​​​​(γ-アミノ酪酸)は、ストレスを和らげるはたらきをもつ神経伝達物質です。

プロゲステロンの合成体はGABAの反応を抑えるため、黄体期の後半に精神面の不調を引き起こす可能性があります。

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ストレスや環境

ストレスのたまりやすい環境睡眠不足なども、ホルモンバランスの乱れを引き起こすためPMDDの原因になるといわれています。

月経前の不調を和らげるためには、適度にストレスを処理し、しっかりと休息を取るように心がけることも大切といえるでしょう。

PMDDの症状とは

PMDDの症状がどのように現れるかは個人差も大きいのですが、以下の共通点があります。

精神面での不調がひどい

症状は生理前に始まり、生理開始後に軽快していく

PMDDの症状と症状があらわれる期間について、詳しくみていきましょう。

PMDDの症状

PMDDは心身にさまざまな不調が起こるPMSのなかでも、精神面での不調が著しい状態をさします。

PMDDの症状としては、

・ゆううつな気分になる

・イライラして怒りっぽい

・怒りを自分でコントロールできない

・激しい不安に襲われる

・集中できない

・やる気がおきない

・死にたくなる

などがあり、社会生活や日常生活に支障をきたすケースも多いため、放置せずに対処することが大切です。

また身体的な症状としてPMSと同様、

・乳房の腫れや痛み

・むくみ

・体重増加

などがある場合もあります。

PMDDの症状が現れる期間

PMDDやPMSの症状が現れはじめる時期は、エストロゲンやプロゲステロンの分泌量が急激に低くなる生理3〜10日前です。

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生理開始から数日かけてだんだん症状はおさまり、通常の精神状態に戻るため、月経周期による変動がない精神疾患とは区別されます。

PMDDの診断方法とセルフチェックについて

生理前の症状がひどくて病院を受診した場合、何をもってPMDDと診断されるのでしょうか。

最終的には医師がそれぞれの状態を見ながらPMDDの判断をすることになりますが、判断のもととなる基準があります。

基準を知っておくことで治療がスムーズにいくこともあるので、目を通しておきましょう。

セルフチェックの方法も紹介するので「私ってPMDDかも?」と思ったら、当てはまる項目があるかチェックしてみてください。

病院でのPMDD診断方法

PMDDの診断は、アメリカ精神医会によって2013年に定められた基準を参考におこないます。

月経前に症状が悪化し、月経開始後から軽快すること

症状の程度は日常生活に影響するほど重いこと

がポイントです。


月経前不快気分障害の診断基準(DSM-5 日本語版より転載)

A.ほとんどの月経周期において、月経開始前最終週に少なくとも 5 つの症状が認められ、月経開始数日以内に軽快し始め、月経終了後の週には最小限になるか消失する

B.以下の症状のうち、1 つまたはそれ以上が存在する 

(1)著しい感情の不安定性(例:気分変動:突然悲しくなる、または涙もろくなる、または拒絶に対する敏感さの亢進)

(2)著しいいらだたしさ、怒り、または対人関係の摩擦の増加 

(3)著しい抑うつ気分、絶望感、または自己批判的思考 

(4)著しい不安、緊張、および/または”高ぶっている”とか“いらだっている”という感覚

C.さらに、以下の症状のうち 1 つ(またはそれ以上)が存在し、上記基準Bの症状と合わせると、症状は 5 つ以上になる 

(1)通常の活動(例:仕事、学校、友人、趣味)における興味の減退

(2)集中困難の自覚

(3)倦怠感、易疲労性、または気力の著しい欠如

(4)食欲の著しい変化、過食、または特定の食物への渇望

(5)過眠または不眠

(6)圧倒される、または制御不能という感じ

(7)他の身体症状、例えば、乳房の圧痛または腫脹、関節痛または筋肉痛、“膨らんでいる”感覚、体重増加

D.症状は、臨床的に意味のある苦痛をもたらしたり、仕事、学校、通常の社会活動または他者との関係を妨げたりする(例:社会活動の回避;仕事、学校、または家庭における生産性や能率の低下)

E.この障害は、他の障害、例えばうつ病、パニック症、持続性抑うつ障害(気分変調症)、またはパーソナリティ障害の単なる症状の増悪ではない(これらの障害はいずれも併存する可能性はあるが)

F.基準Aは、2 回以上の症状周期にわたり、前方視的に行われる毎日の評価により確認される(注:診断は、この確認に先立ち、 暫定的に下されてもよい)

注:基準A〜Cの症状は、先行する1年間のほとんどの月経周期で満たされていなければならない


引用:日本産科婦人科学会|産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020,p174

セルフチェック方法

「私ってPMDDかも?」と思ったら、PMDD診断基準を参考にセルフチェックをしてみましょう。

以下のような症状が生理3〜10日前に悪化し、生理が始まると軽くなる場合はPMDDの可能性があります。

・突然悲しくなる

・涙もろくなる

・イライラが激しくなる

・気分が落ち込む

・自分には価値がないと思う

・「死んでしまいたい」と思うときがある

・やる気が起きなくなる

・不安が強くなる

・衝動的に行動してしまう

・趣味に興味がなくなる

・疲れやすくなる

・食欲がなくなる、または過食になる

・眠れなくなる、または寝すぎる

・乳房の腫れや痛みがある

・関節痛や筋肉痛がある

・体重が増加する

PMDDは人間関係や社会生活に大きな影響を与えてしまいます。症状がつらいときは、1人で抱えこまずに受診しましょう。

下記のようなPMDDのセルフチェックができるサイトもあるので、気になる方は試してみてくださいね。

月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)チェック | 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ|厚生労働省研究班監修

PMDDの治療法

PMDDの主な治療方法は、以下の3つです。

抗うつ薬

低用量ピル

漢方薬

また近年では、カウンセリングを基本とした認知行動療法も注目されています。

ここでは、それぞれの治療方法について解説します。

抗うつ薬

うつ症状を抑える薬として「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:​​​​​​Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)」が用いられます。

SSRIは、心を安定させるセロトニンのはたらきを高めることにより、うつ症状を改善する薬です。

PMDDの治療に推奨されるSSRI

・セルトラリン

・エスシタロプラム

・パロキセチン

・フルボキサミン

SSRIがうつ病に用いられる場合は、効果が現れるまでに2〜4週間毎日服用する必要があるのに対し、PMDDの場合は黄体期(排卵後〜生理前)のみの服用で効果があるといわれています。

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うつ病の場合はセロトニンが長期にわたり減少しているのに対し、PMDDではセロトニンの減少が一時的であるからです。

ただし黄体期のみの服用で効果がみられない場合や、月経が不規則な場合は、継続してSSRIを服用することもあります。

SSRIの副作用としては、主に

・吐き気

・嘔吐

・下痢

・便秘

などの消化器症状があります。

ほかにも

・眠気

・めまい

・頭痛

などの神経症状があらわれる可能性があるため、運転や危険をともなう作業には注意が必要です。

SSRIを服用して効果が得られない場合は、異なるSSRIを試したり、別の種類の抗うつ薬を使用したりすることもあります。

低用量ピル

低容量ピルは少量の女性ホルモンが含まれ、服用することで脳に「十分な女性ホルモンが分泌されている」と錯覚をおこさせて排卵を止める飲み薬です。

排卵を止めることにより女性ホルモンの変動が抑えられるため、PMDDやPMSの治療に効果を発揮します。

低容量ピルはほかにも、避妊や生理痛の軽減、子宮内膜症や子宮筋腫の治療に用いられます。

低容量ピルの服用における注意点は、副作用として血栓症のリスクがあることです。

35歳以上で喫煙をする女性ではとくにリスクが高まるため、服用を控える必要があります。

また低容量ピルは排卵を抑えるため、妊娠を望む女性には使えません。

服用するリスクをふまえた上で、自分に合った薬を選びましょう。

漢方薬

治したい部分に直接アプローチする西洋医学に対して、「人」に焦点を当てて不調を改善するのが漢方薬を用いる東洋医学です。

東洋医学では、以下の3つの要素が体を構成すると考えられています。

気(エネルギー)

血(血液)

水(血液以外の液体)

3つのうちどれかが不足したり滞ったりしてバランスが崩れることにより、心身の不調が起きてしまいます

PMDDやPMSの症状が出やすい生理前は、子宮の血液循環が変化するため「血」に異常が生じやすいのが特徴です。

さらに黄体ホルモンの水分を貯め込む作用により「水」のめぐりが滞り、ストレスにより「気」が不足することで、3つのバランスが乱れて心身の不調があらわれます。

漢方薬には数種類の生薬(薬としての効きめをもつ天然由来のもの)が配合されており、体質や状態に応じて使い分けられます。

PMDDやPMSなどの月経前症状によく用いられる漢方薬

・当帰芍薬散(​​「血」を増やし、流れをうながす)

・桂枝茯苓丸(「血」の流れをよくする)

・加味逍遥散(「気」を落ち着かせ「血」を補う)

・桃核承気湯(「気」「血」の流れをよくする)

・抑肝散加陳皮半夏(「気」「血」の流れをよくする)

漢方薬は月経に関連する症状や女性の不調などによく用いられていますが、PMDDの症状は基本的に重いため、漢方薬以外のアプローチが必要になるケースも多いのが現状です。

認知行動療法

認知行動療法とは、カウンセリングによって考え方(認知)を直し適切な行動を身につけられるようにする方法で、PMDDを改善する可能性があることがわかっています。

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さまざまな精神疾患に対する認知行動療法のマニュアルが厚生労働省から発行されており、治療法は広く知られるようになりました。

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認知行動療法では、自分がどのような症状や感情に困っているのかを客観的に見つめ「その困難をどうとらえれば感情によい影響を与えるか」に焦点をおいて行動の計画を立てます。

考え方や行動の改善により、気分が向上することを目指すのが認知行動療法です。

PMDDのセルフケア

PMDDの根本改善のためにはセルフケアも大切です。

忙しいからと自分のケアを後回しにせず、できることからはじめてみましょう。

カフェインを減らす

カフェインは神経を興奮させるはたらきがあるため、とりすぎるとイライラや緊張を高め、不安を強めてしまう可能性があります。

カフェインがよく含まれるものは、

・コーヒー

・紅茶

・緑茶

・コーラ

・栄養ドリンク

などです。

また月経前はプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で頭痛になりやすくなります。

カフェインは適量であれば片頭痛を和らげることもありますが、とりすぎると頭痛の悪化をまねきます。

生理前はカフェインのとりすぎに注意しましょう。

十分な睡眠をとる

十分な睡眠をとることは、心を安定させます。

PMDDやPMSの症状に「なかなか眠れない」または「眠くて眠くてしかたがない」などの睡眠障害があります。

睡眠の質が低下しがちな生理前こそ、意識して睡眠をとることが大切です。

適度な運動をする

適度に体を動かすことは、ストレスを軽減したり、生理前のむくみや痛みを軽減したりすることにつながります。

ウォーキングなどの軽い運動は、セロトニンを増やすのに効果的です。

無理に激しい運動をする必要はないので、自分が心地よく感じる運動を続けてみてください。

リラックスする

自分なりにリラックスできる方法を見つけておくことはとても大切です。

生理前に辛いなと感じたら、思い切ってゆっくり休んでみましょう。

何も考えない余白の時間をつくるだけでも、症状が改善する可能性があります。

生活リズムを整える

生活リズムの乱れは、ホルモンバランスに影響を与えストレスが増えやすくなり、PMDDの症状を悪化させる可能性があります。

食事時間がバラバラだったり、夜ふかしをすることが多かったりする人は生活リズムを整えることを意識してみましょう。

PMDDに効果的な栄養素

PMDDやPMSの症状改善に効果があるといわれている栄養素をご紹介します。

ただし特定の栄養ばかりをとっていても、健康になれるわけではありません。

バランスのよい食事にプラスすることを意識して、日々の食生活に取り入れてみてくださいね。

カルシウム

カルシウムは、PMSやPMDDなどの不調に効果があるといわれています。

PMS症状のある女性は、症状のない女性と比較して黄体期(排卵後〜生理前)のカルシウム値が低いとの報告があります。

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カルシウムを多く含む食品は

・乳製品

・小魚

・大豆製品

・モロヘイヤ

・小松菜

などです。

カルシウムは骨や歯を丈夫にし、血液や筋肉で重要なはたらきをする健康に欠かせない成分です。積極的にとるようにしましょう。

トリプトファン

PMDDの原因のひとつが、心を安定させる「セロトニン」の不足です。

セロトニンはトリプトファンとよばれるアミノ酸を原料としてつくられるため、トリプトファンを多く含む食材を積極的にとることでPMDDの症状を改善できる可能性があります。

トリプトファンを多く含む食材

・大豆製品(豆腐、納豆、味噌)

・乳製品(チーズ、牛乳、ヨーグルト)

・米

・赤身の肉類

・レバー

・魚(サバ、カツオ、鮭など)

・バナナ

トリプトファンはなじみのある食材によく含まれているので、日頃からバランスのよい食生活を心がけることが大切です。

ビタミンB6

ビタミンB6セロトニンの合成をサポートするはたらきがあります。

ビタミンB6を多く含む食材

・赤身の魚(カツオ、マグロなど)

・脂身の少ない肉類(鶏胸肉、ささみなど)

・レバー

・バナナ

・にんにく

トリプトファンと一緒にとることで、より効率的にセロトニンを合成できるため、PMDD症状の改善に役立つでしょう。

PMDDになりやすい人の特徴

月経のある女性なら誰でもPMDDになる可能性はありますが、発症するリスクの高いタイプの人は注意が必要です。

また、近年では発達障害との関係性も研究されています。

PMDDになりやすい人とは

以下に示すのが、PMDDを発症しやすい人のもつ特徴です。

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・環境からの刺激やストレスに弱い

・社交性や活動性が低い

・ストレスの多い環境にいる

・夜勤をしているなど生活リズムが乱れやすい

・産後うつやマタニティブルーの経験がある

・うつ病や双極性障害になったことがある

PMDDはうつ病と関連があり、ストレスが引き金となって発症する可能性があることがわかります。

ただし上記に当てはまるからといって、必ずしもPMDDを発症するわけではありません。

逆に「PMDDになりやすい人」の条件に当てはまらない人が発症するケースもあります。

PMDDはさまざまな要因が複雑に絡み合って発症するため「PMDDになりやすい人」を明確に定義するのは難しいのが現状です。

PMDDと発達障害の関係

自閉症の女性は一般女性に比べて、PMSやPMDDなどの月経前症状が出やすいとの報告があります。

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これには、自閉症の特性である感覚過敏が関係していると言われています。

自閉症の女性がPMDDのつらい症状や生きづらさを持ちながらも、安心して健やかに暮らすためには、家族や周囲が月経前症状について理解することが大切です。

PMDDは何科を受診する?受診するときのポイント

「PMDDを診察してもらうには何科を受診すればいいの?」という疑問にお答えします。

受診するときは、ほかの精神疾患と区別するために、症状が現れる時期を把握しておくことも大切です。

ポイントをおさえてしっかりと自分の症状を伝えましょう。

精神科と婦人科のどちらを受診する?

「自分はPMDDかもしれない」と思ったときに受診を検討するのは、以下の2つが多いでしょう。

・精神科

・婦人科

どちらでも治療は可能ですが、PMDDは心の病気であるため、精神科の受診が望ましいとされています。

ホルモンバランスによる体の不調や月経困難症などをともなう場合は、婦人科での治療が必要なケースもあります

まず婦人科を受診し、PMDDと診断されれば精神科に変わるという選択肢もあるので、症状がつらい場合は1人で悩まずに通いやすい病院を受診してみましょう。

受診するときのポイント

受診するときは

・どんな症状があるのか

・月経周期による症状の変動があるか

を把握しておくことが大切です。

とくに「月経前に症状が悪化し、月経開始とともに軽快するかどうか」がPMDDを診断するために重要なので、最低でも2ヶ月分は記録をつけておくことをおすすめします。

Q&A

PMDDはうつ病ですか?

PMDDはうつ病の一種として認められています

PMDDの歴史は比較的新しく、1990年代に診断名がついてからさまざまな研究がなされ、2013年に初めてアメリカ精神医学会が発行する「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)」に診断基準が記載されました。

ピルが効かないときはどうすればよい?

PMDDやPMSはさまざまな要因が絡みあって発症するため「ピルを服用して女性ホルモンの変動を抑えると必ず改善する」という単純なものではありません。

実はPMDDの治療において、低用量ピルが効かないケースは珍しくないのです。

ピルを服用しても効果が得られないときは、他の治療法が合っているかもしれません。受診して医師とよく相談してみましょう。

PMDDが辛くて仕事に行けない…診断書や障害者手帳は発行できる?

PMDDが辛くて社会生活や人間関係に影響を与えてしまうときは、休息することも大切です。

PMDDは精神疾患のひとつとして、診断書や障害者手帳を発行できます

ただし、どちらも医師の診断が必要なので、症状の程度によっては発行できないケースもあります。

まとめ

PMDDやPMSなどの月経前症状に悩まされる女性はたくさんいるのにも関わらず、まだまだ理解が足りず我慢をしてしまうケースも少なくありません。

女性の体のしくみについて理解し、適切な対処をすることはとても大切です。

PMDDはうつ病の一種として認められており、さまざまな治療法が提案されています。

「気持ちの問題だから」と放置せずに、心の病としてきちんと治療にとりくみましょう。

PMDDの症状が改善されれば、笑顔で過ごせる日々が増えるはずです。

1人で抱えこまず、できることから実践してみてくださいね。

参考文献

[1]日本産科婦人科学会|産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020,p174

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