適応障害はどんな病気?症状や治療方法について解説

公開日: 2024/06/20 更新日: 2024/06/25
「仕事に行かなくてはいけないのに、体が重くて朝起きられない」 「新しい環境に上手くなじめなくて落ち込む」 「最近、ストレス発散のためにたくさんお酒を飲んでしまう」 このような辛い悩みは、適応障害の症状かもしれません。 適応障害は、ストレスが原因となり、心身のバランスが崩れて生活に支障が生じている状態です。 こころや体、行動面に多彩な症状が出てきます。ストレスの原因(ストレッサー)から離れると症状が改善していきます。 就職・昇進・部署異動・進学・結婚・出産など、ポジティブに捉えられるようなライフイベントが原因で起きることもあります。 無意識ながらに新しい環境に慣れようとした結果、それがストレスとなり、不安感や不眠などの症状が出てしまうのです。 この記事では、適応障害の原因と症状、診断基準、治療方法について解説します。 また、すでに適応障害で悩まれている方に向けて、自宅からビデオ通話等で気軽に診察が受けられるオンライン診療についても解説します。

適応障害ってどんな病気?

適応障害は、ストレスが原因となって心身のバランスが崩れた結果、日常生活に支障が出ている状態のことです。

適応障害はストレスの原因から離れたり、ストレスを和らげたりすることで改善していきます。

まずは、適応障害の原因・症状・診断基準を見ていきましょう。

 適応障害の原因

適応障害の特徴は「ライフイベントのような日常生活の変化で発生したストレス」によって心身のバランスが崩れ、症状が出てくることです。[1]

 

心身のバランスを崩す原因として、仕事が忙しい・人間関係が悪化した・離婚や失恋を経験したなどの辛いことを想像する方が多いでしょう。

ですが、就職・部署異動・昇進・進学・結婚・出産・引っ越しなどのような、一見するとポジティブなライフイベントがストレスを引き起こし、適応障害を発症する場合も多いです。[2]

 

次の表は、ライフイベントごとのストレスの度合いを点数化したものです(50点以上のみ)。

点数の合計が260点以上なら黄色信号(ストレス過剰気味)、300点以上なら赤信号(対応必須の状態)です。

点数の合計を出して、最近ストレスが過剰になっていないかチェックしてみましょう。

引用:夏目誠の公式ホームページ「勤労者の年代別ストレス点数(夏目らによる、1630名の勤労者を対象に調査)」

このような環境の変化にストレスを感じているにも関わらず、無理に適応しようと頑張りすぎたり、セルフケアが十分でなかったりすると、心身のバランスが崩れてさまざまな症状を引き起こしていきます。

 

日々生活を送っていると多くのライフイベントを経験しますが、こまめに休息をとってこころや体が疲れないように労わってあげることが心身のバランスを保つためには大切です。

「無理をしているな」と気がついたら、早めに休んで気分転換をしてみましょう。

適応障害の症状

適応障害で起きる症状は非常に多彩ですが、大きく「気分の症状」「身体症状」「行動の変化」に分けられます。[3]

気分の症状

  • 憂うつな気分になる、気分が落ち込む

  • 不安感や焦りがある

  • 怒りっぽくなる、攻撃的になる

  • 緊張しやすくなる

  • 恐怖心

身体症状

  • 食欲がない、もしくは食欲が異常に増す

  • 眠れない、もしくは寝すぎてしまう

  • 胃の不快感、便秘や下痢などの消化器症状

  • 体がだるく疲れやすい

  • 頭痛や肩こり

  • 動悸、めまい

行動の変化

  • 飲酒や喫煙の量が増える

  • 仕事や学校を無断欠勤する

  • 仕事や学校の遅刻・休みが増える

  • 人と会うのを避ける

  • 喧嘩が増える

仕事や学校がストレスの原因(ストレッサー)に関連している場合、業務や勉強に集中できず、周りから「怠けている」と誤解されることもあります。

また、適応障害の大きな特徴として、ストレッサーから離れると症状が軽減するため、休日になると症状が軽くなる・無くなるという方も多いです。

適応障害の診断基準

適応障害ではさまざま症状が見られるため、適応障害の診断をするときには「はっきりとしたストレス因があるかどうか」「ストレス因があったあとに症状がでてきているかどうか」が大切なポイントになります。

アメリカのDSM-5という診断基準によると、適応障害は次のように表されます。

 


A. はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現。

B. これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。

(1) そのストレス因子に暴露されたときに予想されるものをはるかに超えた苦痛

(2) 社会的または職業的(学業上の)機能の著しい障害

C. ストレス関連性障害は他の精神疾患の基準を満たしていないこと。すでに精神疾患を患っている場合には、それが悪化した状態ではない。

D. 症状は、死別反応を示すものではない。

E. そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない。


出典:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引

 

体調面や行動面で日常生活に支障が出る変化がある場合、まずは「3ヶ月以内で何かストレスと感じることやライフイベントはなかったか」を振り返る必要があるでしょう。

うつ病など他のメンタル疾患との違い

適応障害の症状を見て「うつ病や他の精神疾患と何が違うの?」と感じる方もいるかもしれません。

 

基本的に、適応障害と他の精神疾患を区別するときは「症状が続いている長さ」や「症状が起きる原因の内容」を重視していきます。

ここでは、例としてうつ病・PTSD(心的外傷後ストレス障害)・急性ストレス障害と適応障害の違いを見てみましょう。

 

適応障害とうつ病との違い
  • 適応障害:ストレス因がはっきりしていて、そこから離れると症状が軽減する

  • うつ病:原因が明らかでないことも多く、ストレス因から離れても症状が続く(例:仕事が休みの日でも気分の落ち込みがよくならない)[4]

※適応障害だから軽症、うつ病だから重症というわけではありません。

 

適応障害とPTSD・急性ストレス障害との違い
  • 適応障害:日常生活でのライフイベントによるストレスが原因となる

  • PTSD・急性ストレス障害:災害・犯罪・戦争に巻き込まれた場合など、非日常的でとても強烈な出来事が原因となる

 

このように、症状の持続期間や原因の違いで精神疾患を診断していきます。

適応障害にはどんな治療方法がある?

適応障害の治療では、ストレスの原因(ストレッサー)を同定することから始め、まずは心理的・物理的に離れることが最優先されます。

そしてストレッサーへの適応力(ストレス・コーピング能力)を高めたり症状を一時的に和らげるお薬を服用したりすることで、こころに栄養を与え、再発予防へつなげていきます。[3]

ストレスの原因(ストレッサー)から離れて休養する

適応障害では、症状が起こる引き金となったストレスの原因(ストレッサー)がはっきりしているため、ストレッサーを除去して休養を取ることが重要です。

 

ストレッサーとは、ストレスの原因となる外部からの刺激のことです。

適応障害では、職場や家庭における不安・緊張・恐怖など、心理的・社会的なストレッサーが原因になることが多いです。

また、寒暖差や気圧などの環境の要因もストレスとなることがあります。[2]

 

適応障害の治療では、これらのストレッサーを除去するために日常生活の環境を調整していきます。

例えば、職場において何らかのストレッサーがある場合、上司や産業医に相談し、一時的に休職することや部署異動を検討することもあります。

 

人によっては、ストレッサーから離れるだけで体調が戻っていく場合もあります。

精神療法で適応力を習得する

ストレッサーが変えられなかったとしても、ご自身がストレスへ適応できるスキルを持っておくと、適応障害の治療や再発予防に役立ちます。

 

適応障害の症状が出ても、すぐに休職できなかったり、家族がいる方は自分の意思で環境を変えられなかったりする場合もありますよね。

そんな場合は、自分がストレッサーに対応していく適応力をつけていく方が症状改善への近道となるでしょう。

 

ストレッサーへの適応力をつけるために、認知行動療法などの精神療法が有効であることが知られています。

精神療法は病院での診察時に行うこともあれば、診察とは別にカウンセリングとして行うこともあります。

薬物療法

 
適応障害では、薬物療法は必要なときにだけ行います。
症状が辛く、休養のために早く改善したい場合に、医師の判断のもと、その人の症状に合ったお薬を服用する場合もあります。
お薬の例
症状薬の種類薬の特徴
満足に眠れない睡眠薬
漢方薬
「寝付けない」「途中で起きてしまう」など症状に応じて薬を使い分ける
緊張・不安を強く感じる抗不安薬
漢方薬
神経の高ぶりを落ち着かせる
症状が出るときだけ服用することもできる
吐き気・胃の痛みなど制吐薬
胃薬
胃の動きを調整して症状を和らげる
頭痛鎮痛薬痛みの原因物質が増えるのをおさえる
気分の落ち込み抗うつ薬依存性がなく、ストレスの感じ方を和らげる

 

適応障害の治療にオンライン診療でできること

「適応障害かもしれないけど、いきなり病院へ行くのには抵抗がある」
「病院へ行きたいけど、仕事を休めない」
そんな方は、精神科・心療内科を取り扱っている医療機関のオンライン診療を受診してみてはいかがでしょうか。

精神科・心療内科のオンライン診療では、適応障害の診断と治療が受けられます。

スマホやPCからビデオ通話で受診できるため、ご自宅で診察が受けられます。

ここでは、適応障害の治療のためにオンライン診療でできることを、メリット・デメリット・オンライン診療の流れとともに解説します。

オンライン診療のメリット

心療内科・精神科のオンライン診療で適応障害の治療をするとき、メリットと感じられるのは次のような特徴でしょう。

  • スマホやパソコンがあれば診察予約・診察・会計までオンラインで完結できる
  • 土日祝や夜間でも受診できる
  • 自宅のようなリラックスした環境で診察してもらえる

ほとんどのオンライン診療では、受診の予約から診断書や会計まで、すべてオンラインで完結します。

スマホアプリやWebサイトから24時間いつでも予約でき、予約の枠が空いていれば当日でも診察可能です。症状が辛いときにすぐ診察してもらえることが大きなメリットですよね。

また、ファストドクターメンタルクリニック(オンライン診療)では、土・日・祝でも受診可能です。

平日昼間は仕事や学校の授業を受けているという方も多いですよね。

仕事や学校へ通いながら治療を進めていきたいという方は、オンライン診療を検討してみると良いでしょう。

オンライン診療では、自宅のようなリラックスした環境で受診できることが大きなメリットです。

症状が出てくるまでの経緯や辛いことを、自分のペースで話すことができますよ。

オンライン診療のデメリット

一方で、心療内科・精神科のオンライン診療では次の点がデメリットと感じるかもしれません。

  • 顔を見せながら落ち着いてビデオ通話できる環境が必要

  • 対面診療を勧められる場合がある


オンライン診療では、患者さんの話す内容に加えて、顔色や表情も見たうえで病状を判断していきます。

そのため、患者さんの顔が見えない状態でのオンライン診療はできないため注意しましょう。

また、心療内科・精神科でも、身体の状態を把握するため患者さんの体に触れる「触診(しょくしん)」や、心音や呼吸の音を聴く「聴診(ちょうしん)」など、身体の病気がないか調べるための検査をすることがあります。

オンライン診療ではその場でこのような検査ができないため、必要に応じて対面診療を勧める場合があります。

 心療内科・精神科のオンライン診療の流れ

ここでは、ファストドクターのメンタルクリニックを例に、心療内科・精神科のオンライン診療を受ける流れについて解説します。

 

①予約

予約サイトにある「診察予約する」または「予約する」を押して、画面の表示にしたがって必要情報を入力します。入力後に届く仮予約メール到着後、30分以内にURLをクリックすると予約が完了します。

 

②事前問診

予約完了画面に問診ボタンが表示されるので、画面の表示にしたがって保険証やお薬手帳の画像をアップロードしていきましょう。

 

③診察

診察時間の30分前にビデオ通話用URLがメールで届きます。診察時間になったらURLをクリックして入室します。

まずは診療前相談をした後、診察がスタートします。

※診察前相談の結果、オンライン診療を行わない場合は診療費用は発生しません。

 

④お会計

診察の翌日以降、お会計についてのメールが届きます。クレジットカードで支払いをします。

※クレジットカードを持っていない場合は、口座振込での支払いも可能です。相談してみると良いでしょう。

 

職場などへ診察を受けた証明を提出する必要がある場合、診断書を発行することもできます。

医師と相談したうえで、休職を希望する場合は、診断書や傷病手当金申請書など、各種申請書・証明書の発行も対応しています。

 

当院指定書式の診断書を希望された方にはご診察後3日以内を目安に【PDFファイル形式(メール添付)】にてお送りします。

ご希望の場合は事前問診および診察時にその旨をお知らせください。



※当院指定書式以外の診断書を希望される場合には、診察希望日の7日以上前までにinfo_mental@fastdoctor.jpにPDFファイル形式で当該のフォーマットをお送りください。事前相談なく診察当日に依頼いただいても対応できかねますのでご留意ください。

 

※最終的な発行可否は医師の医療的判断によります。書類によっては継続的な診察を通して発行可否を判断するものもございますため、初診時に発行できない場合もございますことをご了承ください。

まとめ

この記事では、適応障害の原因・症状・診断基準・治療方法について解説しました。適応障害は日常生活にあるストレッサーによって心身のバランスが崩れ、日常生活に支障が出る病気です。

新しい環境に慣れようと頑張りすぎてしまうと、適応障害の症状が出やすくなります。

ストレッサーからうまく距離を取り、適応力を身に付けていくと改善しやすいでしょう。

早めの対策が大切なので、辛いなと思ったら医師に相談してみましょう。

参考資料

[1]厚生労働省『e-ヘルスネット』適応障害

[2]厚生労働省『e-ヘルスネット』ストレス

[3]日本福祉教育専門学校『精神保健福祉士養成学科ブログ』深田恭子さんも公表した「適応障害」とは?

[4]社会政策学会誌『社会政策』第12巻第2号日本における「適応障害」患者数の増加―メンバーシップ型雇用からの考察―池田 朝彦 p103

 

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  • 身体疾患が強く疑われる場合
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    • 意識がない
  • 緊急性が認められる場合
    • ここ数日の間で急激に状態が悪化している
    • 食事や水分をとることができない
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