休職中のお金が不安な方へ。傷病手当金を知っていますか?

公開日: 2024/08/20 更新日: 2024/08/20
「体調が良くないから仕事をしばらく休みたい」 「けど、休んでいる間のお金が不安だな」 このようなお悩みを持っている方でも、健康保険に加入している場合は「傷病手当金」という制度を利用できる場合があります。 病気やケガで仕事ができずに休職をする場合、休職期間中の給与については企業に支払い義務はありません。 傷病手当金は、休職期間に十分な給与をもらえなかった人の生活を保障するための健康保険による制度です。 傷病手当金を受給するためには、いくつかの条件があります。 また、正式な手続きが必要となるため、受給条件をしっかり把握しておくことが大切です。 この記事では、傷病手当金の受給条件や申請の流れについて解説していきます。
目次

傷病手当金とは?

傷病手当金とは、健康保険に加入している人が病気やケガで仕事を長期間休む場合の生活を保障するための制度です。

休職期間中、職場から十分な給与が支払われなかったときに申請できます。

傷病手当金を申請できるのは健康保険の加入者のみのため、国民保険の加入者や健康保険の扶養に入っている人は対象外です。

傷病手当金は休職期間だけでなく、条件を満たせば退職後にももらうことができます。

休職中に傷病手当金を受給するための条件や制限

ここでは、休職中に傷病手当金を受給するための条件を協会けんぽを例に解説します。
加入している健康保険により条件が異なりますので、ご自身が加入している健康保険窓口へご確認ください。

傷病手当金を受給する条件

傷病手当金をもらうためには4つの条件があり、以下の①〜④を全て満たしている必要があります。

条件①業務に関連しない病気やケガの療養のため仕事を休んでいた

治療・療養には保険を使ったかどうかは関係ありません。

自費(10割負担)で医療機関を受診した場合でも支給対象です。
ただし、業務上の病気やケガの場合は労災保険の対象となるため、傷病手当金はもらえません。

また、美容整形のような病気・ケガ以外の理由に関しても傷病手当金はもらえません。

ポイント:明らかに職場が原因の病気やケガの場合には、傷病手当金ではなく労災保険を申請しましょう。

条件②仕事ができない状態である

①にあてはまる病気・ケガで仕事ができない場合に傷病手当金がもらえます。

仕事ができない状態であるかどうかの判定は、療養を担当した医師が行い、傷病手当金申請書に仕事ができない理由を記入をします。

ポイント:傷病手当金の申請には医師による診察と傷病手当金申請書の記入が必要です。

条件③連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない

①の病気・ケガを理由に3日間連続して仕事を休む「待機期間」の後、4日目以降の仕事を休んだ日に対して傷病手当金が申請されます。

ポイント:待機期間が3日間ないと傷病手当金はもらえません。

また、待機期間は有給休暇の消化でも問題ありません。

条件④休職期間中に給与の支払いがない

基本的に、①の病気・ケガで休職している間に給与が支払われない場合に傷病手当金がもらえます。

ただし、給与が支払われても傷病手当金より少ない額の場合には、給与と傷病手当金の差額分をもらうことができます。

傷病手当金の計算方法(協会けんぽの例)

1日当たりの支給金額=【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額(※)】÷30日×(2/3)

(※)支給開始日までの期間が12ヵ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。
     ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
     イ 30万円(支給開始日が平成31年4月1日以降の場合)

⚫️支給開始日:一番最初に傷病手当金が支給された日

参考:傷病手当金について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会

ポイント
給与の支払いがある場合でも、傷病手当金との差額分をもらえることがあります。
有給休暇を消化した日に関しては、給与の支払いがあると判断されます。

支給期間について

傷病手当金をもらえる期間は、支給を開始した日から通算して1年6ヶ月です(※)。

例えば、支給開始された後に出勤した日があった場合、この日は1年6ヶ月にはカウントされません。

 

いつまでに申請が必要?

傷病手当金をはじめとした健康保険の給付を受ける権利は、2年で時効を迎えます。

そのため、支給対象の日から2年以内に傷病手当金の申請が必要です。

例えば、2024年4月15日に休んだ分の傷病手当金は、2026年4月14日まで申請できます。

傷病手当金が制限(調整)されるケース

次のケースにあてはまる場合、傷病手当金の支給を中止または支給額の調整が行われます。

  • 傷病手当金と出産手当金が両方支給されるとき
  • 健康保険の資格喪失後に老齢(退職)年金が受けられるとき
  • 障害厚生年金もしくは障害手当金が受けられるとき
  • 労災保険から休業補償給付を受けている、または過去に受けていたとき

上記のように、傷病手当金と同時期に別の保障が受けられる場合には傷病手当金が支給されないことがあります。

また、これらの保障金額が傷病手当金より低い場合、傷病手当金との差額が調整分として支払われることがあります。

退職した後も傷病手当金は受け取れる?

休職期間を経てそのまま退職する場合にも、傷病手当金が受け取れます。

これを正式には「資格喪失後の継続給付」と呼びます。

退職後に傷病手当金をもらうためには次の条件を満たしていることが必要です。

条件①

資格を喪失した日の前日までに継続して1年以上被保険者であったこと

条件②

資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていた、又は受けられる状態であること

 

条件②の「傷病手当金の支給を受けられる状態」とは、具体的には、退職日の前日の時点で「業務に関連しない病気・ケガで休んでいた」「仕事ができない状態」「連続する3日間仕事を休んでいた(待機期間があった)」場合に、今まで傷病手当金をもらったことがなくても退職してから傷病手当金をもらえるようになります。

退職後に傷病手当金をもらう場合には、一度働ける状態になったら傷病手当金の申請はできない点には注意しましょう。

退職後に日雇いや短期のアルバイトをすると、この日以降の傷病手当金は申請できません。

 

傷病手当金を申請するには?

休職期間中の傷病手当金の申請方法について解説します。

ここでは具体的な例として、ファストドクターメンタルクリニックを利用した際の流れを紹介します。

①職場に休職する旨を報告し、傷病手当金申請書を取り寄せる

まずは、業務外の病気・ケガにより長期的に仕事を休むこと・傷病手当金を申請したいことを報告しましょう。

そして、職場で加入している健康保険から「傷病手当金申請書」を取り寄せます。

休職に必要な手続きについてはこちら

②医師に傷病手当金申請書の「療養を担当した者」が書く欄を記入してもらう


診察時に傷病手当金申請書を記入してもらいましょう。

傷病手当金の申請期間や提出先、申請書の書式などを診察前にあらかじめ伝えておく必要があります。

傷病手当金申請書の記入を依頼してから記入が完了するまで日数を要する場合もあるため、余裕をもってご依頼ください。

※ファストドクターメンタルクリニックでは、傷病手当金申請書は初診では発行できません。ご希望の方には、初診時に次回受診時までに必要な手続きをご案内します。

③傷病手当金申請書の「被保険者」が書く欄を記入する

医師の記入が終わったら、ご自宅に傷病手当金申請書を返送します。

「被保険者」の欄にご自身で必要な情報を記入してください。記入を間違えた場合は二重線で消してから書き直し、訂正印を押しましょう。

④職場に「事業主」が書く欄を記入してもらう

職場の人に「事業主」欄に勤務状況や給与の支払い状況を記入してもらいましょう。

⑤完成した傷病手当金申請書を提出する

傷病手当金申請書が完成したら、健康保険へ提出します。

職場から提出してもらう場合と、ご自身で提出する場合があります。

⑥支給通知決定書を受け取る

提出された傷病手当金申請書は、傷病手当金を支給するかどうかが審査されます。

支給される場合には、支給金額や支給日などが記載された支払通知決定書が届きます。

支給日は数週間〜数ヶ月後の場合もあります。

傷病手当金申請書を記入する際の注意点

最後に、傷病手当金申請書についての注意点を解説します。

傷病手当金は、申請書に不備があると書類の差し戻しや再審査があるため、記入も慎重に行う必要があります。

病院により記入条件がある

病院によって、傷病手当金申請書の記入に条件がある場合が多いです。

例えば、ファストドクターメンタルオンラインでは次のような条件で傷病手当金申請書を記入しています。

  • 申請期間(労務不能期間)は初診日〜最後の診察日までなら記載可能
  • 申請期間(労務不能期間)中、必ず月に一度は受診していること
  • 傷病手当金申請書の記入事項を診察の1週間以上前にメールにて提出いただくこと
  • 記入後の傷病手当金申請書は、予約時にご登録いただいた住所に郵送すること

傷病手当金は事後申請である

傷病手当金申請書には仕事を休んだ証明を職場や医師が記入するため、基本的に事後申請となります。

 

傷病手当金は、支払われなかった給与を補てんするための保証です。

そのため、給与の支払いと同じように1ヶ月ごとの申請がおすすめです。

1年分をまとめて申請することもできますが、その分支給される時期も後ろ倒しになる点には注意してください。

 

傷病手当金申請書の支給に時間がかかる

ここまで解説したように、傷病手当金申請書は医師・職場・自分が記入する必要があり、医師や職場の記入には時間を要することが多いでしょう。

 

また、傷病手当金申請書を提出してからの審査や傷病手当金の振込までにも数週間〜数ヶ月と時間がかかります。

傷病手当金申請書はすぐもらえるものとは考えないようにしておきましょう。

まとめ

休職中の生活を保障してくれる傷病手当金について解説しました。

休職中の賃金の支払いについては法律で定められていないため、職場によっては給与が振り込まれないこともあります。

そんなときには、傷病手当金の申請を行いましょう。

ただし、傷病手当金の申請には条件があり、手続きにもかなりの時間を要します。

なるべく早めに傷病手当金を受け取れるようにするためには、申請内容に不備がないように手続きを進めていくことが大切です。

この記事では、傷病手当金の申請についてファストドクターメンタルオンラインを利用した際を具体例にして解説しましたが、加入中の健康保険によっては流れが異なる場合があります。

実際に申請の手続きをする際には、事前に職場と加入中の健康保険に手続きの流れを確認しておきましょう。

休職について詳しく知りたい方はこちら

※メディカルカウンセリングではカウンセラーによるカウンセリングを受けられます。医師による診察や診断書の発行をご希望の場合は、ファストドクターメンタルクリニックをご利用ください。

 

参考資料(記事全体)


[1]全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
[2]厚生労働省「こころの耳」第8回 退職後、傷病手当金の仕組みはどうなっているの?

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    • 自分を傷つけたいと思う
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  • 身体疾患が強く疑われる場合
    • 高熱がある
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    • 意識がない
  • 緊急性が認められる場合
    • ここ数日の間で急激に状態が悪化している
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