認知行動療法(CBT)とは?セルフのやり方やカウンセリングの流れを解説

公開日: 2024/06/20 更新日: 2024/06/25
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)とは、その人の考え方や出来事への捉え方(認知)を柔軟にとらえ、自分らしい行動に導いていく精神療法(心理療法)の一つです。 うつ病・パニック障害・強迫性障害・統合失調症などの治療に効果があり、再発防止にもつながることが医学的にわかっています。 この記事では、認知行動療法の考え方・やり方についてわかりやすく解説していきます。 また、認知行動療法をセルフで行う方法やカウンセリングを活用したときの流れ、セルフとカウンセリングのメリット・デメリットについても解説します。
目次

認知行動療法(CBT)とは?

認知行動療法(CBT)とは、実際に起こった出来事の捉え方「認知」と、認知により起こる「行動」に着目した精神療法(心理療法)のことです。

 

物事をさまざまな角度から柔軟にとらえ、自分らしい考え方へ導いていきます。

 

はじめに、認知行動療法の考え方と効果について見ていきましょう。

認知をつくる自動思考とスキーマについて

 

物事をどのように捉えるか(認知)は、自動思考とスキーマによって決まります。

 

自動思考とは、目の前で起きた出来事に対して反射的に出てくる考えのことを指します。

自動思考は無意識に浮かんでは消えていくため、自分でコントロールすることは難しいでしょう。

 

スキーマとは、その人の「考え方(こころの法則)」のことです。過去の経験やトラウマ、成功体験などからつくられた考え方のパターンであり、自動思考にも影響を与えます。

 

どのスキーマが強いかは個人差がありますが、同じ人でも活性化するスキーマに差が出ることがあります。

 

例えば、元気なときは自分を認めてあげられるようなポジティブな考え方になれることが多いですが、元気のないときは「私はダメな人間なんだ」とどうしてもネガティブな考え方に陥ってしまうこともありますよね。

 

そして、ネガティブな考え方でいると、極端な出来事の捉え方をしてしまうこともあります。

認知の歪みをやわらげ感情と行動を変化させる

考え方(スキーマ)がネガティブにかたよっている場合、自動思考は悲観的になり、出来事の捉え方(認知)も主観的になってしまうことがあるでしょう。

これを「認知の歪み」と言います。

 

例えば、次のような認知の歪みによって、必要以上に不安や落ち込みを感じてしまうこともあります。

このような場合、柔軟な認知ができていると「ただ挨拶に気がつかなかっただけかもしれない」といったように、必要以上に落ち込んだり不安になったりすることは少ないでしょう。

 

認知行動療法では、認知の歪みを客観的に確認しながらやわらげていき、その人の感情や行動を良い方向へ変化させていきます。

精神疾患の治療や再発防止にも効果的

認知行動療法は、うつ病やパニック障害、強迫性障害、統合失調症などの治療にも効果的だということが医学的にわかっています。

 

これらの精神疾患を抱えているとき、人は普段よりネガティブな感情を持ちやすく、認知の歪みが大きくなっていることが多いです。

 

そこで、認知行動療法では、認知の歪みを確認しながら現実的で柔軟な認知のしかたを身に付けていきます。最終的には、自分自身で認知のしかたを選択し、必要以上に不安になったり落ち込んだりしない生活を目指していきます。

認知行動療法(CBT)のやり方

認知行動療法では、自身の状況や感情から認知の歪みを客観視し、認知の選択肢を広げていくためのスキルを身に付けていきます。

 

一般的な認知行動療法は「医師やカウンセラーによるカウンセリング」によるものです。ですが、最近では認知行動療法を自分で習得するための本やアプリもあるため、試しに活用してみるのも良いでしょう。

 

認知行動療法で身に付けられるスキルには、次のようなものがあります。

行動活性化

気分が変わるような行動を実際に起こしてみることで、その後の感情も変化させていくスキル。

いつもと違う行動を選択したとき、その後の感情や気分がどのように変化していくか、観察していきます。

アサーションスキル

自分と相手両方を尊重しながら自己表現を行うスキル。

主語を「自分」に置き換えて話したり、相手が行動しやすい前向きなお願いをしたりすることでコミュニケーションを取る方法です。

職場や教育現場でも有効です。

認知再構成法

捉え方を柔軟にしていくスキル。

歪んでいる認知について、理由などを考え客観視したうえで行動し解決に導きます。

リラクセーション法

体と向き合うスキル。

不安やストレスにより緊張している筋肉をほぐす呼吸法やストレッチ、マッサージなどをおこないます。

マインドフルネススキル

感情を冷静に客観視していくスキル。

自身の呼吸や感覚に注意を集めて、徐々に思考や感情に焦点をずらし観察していきます。

エクスポージャー法

不安や恐怖の原因となることに徐々に慣れていくスキル。

負担を感じない程度に軽い刺激に触れ、成功体験を増やしていきます。

スキーマの修正

認知が歪んでしまう原因となるスキーマに気づき、考え方を変えていくスキル。

バランスの取れた考え方に修正していくことで、前向きな感情や行動へ変化させていきます。

 

これらのスキルは全て習得する必要はありません。

ご自身の状況に合ったスキルを1つから複数身に付けていきましょう。

 

精神疾患で通院中の方は、治療薬で症状を改善させながら、再発を防止するために認知行動療法を取り入れることもあります。

認知行動療法を試してみたい方は、一度主治医に相談してみても良いでしょう。

 
 
 

オンラインカウンセリングは、自宅や職場からでも受けられるのがメリットです。ファストドクターでは、オンラインで認知行動療法を身につけるカウンセリングプログラムを提供しています。詳しくはこちら

認知行動療法(CBT)を受けるタイミングは?

認知行動療法は「色々な出来事を必要以上にネガティブに考えてしまっているな」と感じたら、早めに受けてみると良いでしょう。

 

認知行動療法は精神疾患の治療にも用いられるため「病気にかかってからするもの」と思われやすいです。

 

しかし、実際に精神疾患にかかっているときは、睡眠不足や身体の症状によって、認知行動療法をするエネルギーが無いことも多く、ゆっくり休養することや薬による治療がまず優先されます。

 

そのため、精神疾患の診断を受けていなくても「最近悩みごとが絶えない」「不安になることが多い」「前向きに生活していきたい」と感じたら、認知行動療法を試してみましょう。

 

また、精神疾患で通院中の方は、ご自身が認知行動療法を始めて良いタイミングかどうかを、まずは主治医に確認してみることをおすすめします。

認知行動療法(CBT)はセルフでできる?

認知行動療法は、基本的にはカウンセリングを通しておこないます。

ですが、最近では認知行動療法のスキルを紹介している本やアプリもあります。

 

ここでは、セルフでできる認知行動療法と、そのメリットとデメリットについて解説します。

セルフで認知行動療法を行う方法

セルフで認知行動療法を行う場合、本・アプリ・e-ラーニングを活用してみると良いでしょう。

 

ご自身でスキルを実践する場合には、カウンセラー向けの専門書ではなく、イラストが多い本を選ぶと良いでしょう。

ノート形式になっていて、書き込みながらスキルを身に付けられる本もあります。

 

認知行動療法に特化したアプリでは、音声にしたがってマインドフルネスやリラクセーションのスキルを実践できます。

また、そのときの気持ちを吐き出して振り返る機能がついているアプリもあるので、スマートフォンで感情の波を可視化したい方におすすめです。

 

厚生労働省が運営している「こころの耳」では、e-ラーニングで認知行動療法を学べます。

「15分でわかる認知行動変容アプローチ1・2」では、認知行動療法の考え方やご自身で実践できるスキルが紹介されています。

 

このように、ツールを利用して認知行動療法をすぐ実践できます。

セルフ認知行動療法のメリットとデメリット

セルフで認知行動療法をする場合、考えられるメリットとデメリットは以下のとおりです。

 

メリット

  • すぐに始められる

  • 費用が少なくて済む

  • 気がついたときに実践できる

デメリット

  • 認知の歪みに気づきにくい

  • 自分に合ったスキルを見つけるのに時間がかかる

  • スキルが身につかないまま中断してしまう恐れがある

 

1番のメリットは、費用が少なく済み手軽に始められることでしょう。

かかるのは、本を購入したりアプリ内で課金したりするための費用だけなので比較的安価におこなえます。

先ほど紹介した厚生労働省のe-ラーニングは無料で観ることができます。

 

一方で、認知行動療法のスキルを習得するためには、繰り返し実践をすることが大切です。

すぐに効果を感じられないことが多いため、セルフで行うと、スキルが身に付かないまま中断してしまう可能性があり、大きなデメリットと言えるでしょう。

 

また、自分の感情を客観視できないときには、認知の歪みに気づきにくく、自分に合ったスキルを見つけるのに時間がかかってしまうでしょう。

 

セルフで認知行動療法を行うデメリットが心配な方は、次にご紹介するカウンセリングがおすすめです。

認知行動療法(CBT)のカウンセリングとは?

認知行動療法は、一般的にはカウンセリングによって進めていきます。カウンセリングは医療機関やカウンセリングルーム、オンラインサービスなどで受けられます。

 

ここでは、カウンセリングで認知行動療法を行う流れと、メリット・デメリットについて見ていきましょう。

 

 認知行動療法をカウンセリングで受ける場合の流れ

認知行動療法のカウンセリングでは、医師やカウンセラーと一緒にご自身の状況や認知の歪みを観察し、必要なスキルを身に付けていきます。

 

従来のカウンセリングでは30分間/回を16〜20回続ける場合が多いですが、ファストドクターのメディカルカウンセリングは3回程度から始めることができます。

サービスにより異なるので、ご自身の状況や目的に合わせてお選びいただくと良いでしょう。

 

ファストドクターのメディカルカウンセリングでは、1つのスキルを2〜3回のカウンセリングで習得できるようプログラムを設定しています。

 

希望によりカウンセリングの回数を増やすことも可能です。

 

【オンラインで受けられる◎】メディカルカウンセリングを予約する



また、認知行動療法では次回のカウンセリングまでにホームワーク(宿題)が出ることがほとんどです。

 

ホームワークを行うことによって、カウンセリングで説明されたスキルを日常に落とし込んでいきます。

カウンセラーと話し合いながら、無理のない範囲で行うと良いでしょう。

カウンセリングのメリットとデメリット

認知行動療法のカウンセリングを受けるにあたって考えられるメリットとデメリットには次のようなものがあります。

 

メリット

  • 認知の歪みに気づきやすい

  • 自分に合ったスキルを教えてもらえる

  • 効果的にスキルが身に付く可能性がある

デメリット

  • 費用がかかる

  • 全ての医療機関が認知行動療法をしている訳ではない

  • すぐに予約できない可能性がある

 

認知行動療法を始めるときやネガティブになっているときは、なかなか自分を客観視できないものです。

 

そのため、カウンセラーと話をしていくうちにご自身で新たな気づきを得られることも多いでしょう。

また、カウンセリングやホームワークを通して、スキルを効果的に身に付けられます。

 

ただし、カウンセリングを受ける場合は、セルフで行う場合よりも費用がかかります。

医療機関でカウンセリングを受ける場合、条件によっては保険が適用されることもあるため、通院中の方は主治医に相談してみましょう。

 

現在通院していない方は、認知行動療法をおこなっているカウンセリングルームやオンラインサービスを予約するのがおすすめです。

費用やカウンセリング内容はさまざまなので、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。

まとめ

認知行動療法は、出来事の捉え方(認知)や行動の幅を広げて、必要以上の不安や落ち込みを無くしていく精神療法です。

 

うつ病やパニック障害などの精神疾患の治療や再発防止、発生防止に役立ちます。

極端にネガティブな考えになり認知が歪んでいると、強い落ち込みや不安を感じやすいです。

認知行動療法のスキルを取り入れて認知の歪みをやわらげ、本来の前向きな気持ちに導いていきましょう。

 

認知行動療法は本やアプリを使ってセルフで行うこともできますが、ご自身の認知の歪みに気づきやすいカウンセリングもおすすめです。

 

ぜひご自身に合った方法を取り入れてみましょう。

参考資料

[1]厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」 うつ病の認知療法・認知行動療法 (患者さんのための資料)

[2]認知行動療法 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[3]厚生労働省 こころの耳 eラーニングで学ぶ15分でわかる認知行動変容アプローチ1

 

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