神田橋処方とは?|効く症状や効果をご紹介

公開日: 2024/01/10 更新日: 2024/05/22
「神田橋処方」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 精神疾患の一つであるPTSDやフラッシュバックなどに対し漢方薬を調合したものを服用することにより、症状の改善が見られることが精神科医の神田橋條治医師により発見されました。 専門医も治療をすすめる「神田橋処方」とは一体どのようなものなのでしょうか。 神田橋処方の効果だけでなく、副作用についても解説しますので是非参考にしてみてください。

神田橋処方とは?

神田橋処方とは、漢方薬を取り入れたメンタル疾患に対して積極的に利用されている治療法です。

PTSDやフラッシュバックといった飲み薬での治療が困難な病気に対し、漢方薬で治療を行います。

フラッシュバックやPTSDなどの症状は「生死を彷徨う経験をした」「会社の上司にパワハラをされた」「友人同士の喧嘩」「陰口を言われた」など、自分がトラウマになっている出来事をパッと思い出してしまうのです。

以前までは、心理的療法で治療を行うのが主流でしたが、神田橋処方が発見されメジャーな治療法になりつつあります。

メンタル系の病気と漢方薬は関係ないように思えますが、意外なことに漢方薬の組み合わせによって改善が認められました。

この発見をしたのは有名な精神科医である神田橋條治先生で、その名前から神田橋処方と名づけられました。

神田橋処方はどんな症状に効くのか?

神田橋処方は、様々な精神疾患に有効です。

  • フラッシュバック

  • ASD

  • PTSD

精神疾患だけに関わらず、脳に関する疾患にも有効だという事が分かりました。

ASDや自閉症などの脳の疾患である病気にも適用しているため、神田橋処方の名を知る人も多いかもしれません。

精神疾患は、トラウマや辛い出来事に似た状況の時に現れる症状がほとんどです。症状が現われる頻度や度合いによって、治療法が変わることもあります。

神田橋処方は、どんな症状にも効果があるわけではありません。

専門医と相談しながら、治療法を決めていくと良いでしょう。

フラッシュバック

フラッシュバックとは、自分の記憶に鮮明に残るほどの辛い記憶を、突然「ハッ」と思い出してしまうことです。

トラウマとなっている体験や出来事があり、日常生活の中でそのトラウマに似た状況や連想させる出来事があった場合に現われます。

当時の恐怖や不安感を蘇らす症状がほとんどなので、心身共に大きなダメージを与えることも少なくありません。

神田橋処方は、フラッシュバックの症状がある人に最も有効だと言われています。

漢方薬を使用して治療することによって、フラッシュバックの頻度を軽減させることが目的です。

ASD

ASDとは、自閉スペクトラム症のことです。

ASDの人は、人より強いこだわりがあることや人間関係が苦手なことが特徴です。

おおよそ1歳頃に目と目を合わせられない、笑いかけても反応しないなどの症状が現われ、そのまま大人になると社会的な苦痛を経験する可能性があります。

大人になったASDは、「相手の事を考えて行動する」ということが苦手になり、強いこだわりがあるので、融通が利かないと思われがちです。

そういった症状を改善するため、神田橋処方を使用し症状の緩和を導きます。

PTSD

PTSDとは、心的外傷後ストレス障害のことです。

死の危険を体験した後、その体験を自分の意思ではなく勝手にフラッシュバックさせます。

また睡眠中でも悪夢にうなされたりして、緊張や不安が大きくなり辛すぎて現実感がなくなることも多いです。

フラッシュバックと症状が似ていますが、PTSDは強いストレスを受けることによって発症します。

生死を彷徨う経験をしたあと、意図しない場面や状況で発症しますが、フラッシュバックはトラウマとなっている状況、境遇などに居合わせたときに発症します。

PTSDの治療法では、過去は過去、現在は現在と認識と区別をハッキリすることでPTSDの症状は改善されるでしょう。

改善の手助けをするために、神田橋処方を用いて治療する事が多いです。

神田橋処方のエビデンスとは?

神田橋処方は、必ずしも改善される漢方薬ではなく、あくまで改善の手助けをする漢方薬です。

神田橋処方のエビデンスは低いとも言われており、必ずしも効果が現われるわけではありません。

しかし、フラッシュバックに悩まされている人などの症状を軽くするための方法として試してみるのもいいでしょう。

担当医師と相談し治療方針を決めるのも大事なことです。[1]

精神疾患と漢方薬は本当に関係しているのか、神田橋処方が多岐に広まり処方され説得力のあるエビデンスはあるのか、まだまだ解明されていないことも多いです。

しかし、神田橋処方で改善されている人も多いので、必要以上に警戒する必要はありません。

神田橋処方はどんな漢方を使っているのか?

神田橋処方の種類は、主に2つあります。

  • 四物湯

  • 桂枝加芍薬湯

この2種類の漢方を合わせて、1日2包程度服用することが基本です。

主にフラッシュバックやPTSDの症状に使用しますが、その他ASDなどの症状にも活躍します。

漢方薬は四物湯と桂枝加芍薬湯の2種類の漢方薬を使い、症状に合わせて漢方薬を変更する流れです。

四物湯

四物湯は、冷え性や乾燥肌のトラブルなどの症状に適応されることが多いです。

また軽度の貧血症状の人にも有効な漢方薬です。産前産後の疲労回復や月経不順などにも使用されます。

男性よりも女性向けの漢方薬で、血色良く、ホルモンバランスを整え、肌に潤いを与える効果が期待できます。

しかし副作用があり、主に食欲不振、胃の不快感、下痢などの症状を引き起こす場合もあるので注意が必要です。

桂枝加芍薬湯

桂枝加芍薬湯は、胃や便秘、下痢を繰り返す人に処方されることが多いです。

特に、下痢の症状に悩まされている人に有効な漢方薬です。胃や腸の運動を正常に戻し、過敏性腸症候群を改善させる効果があります。

しかし主な副作用として、発疹や皮膚の痒みなどが現われます。

酷くなる前に、医師や薬剤師に相談しましょう。

神田橋処方の変法とは?

神田橋処方は四物湯と桂枝加芍薬湯が基本的な組み合わせですが、副作用が強く生じる事があります。

四物湯では、胃に負担がかかり飲みづらいと言った場合に四物湯に変わる十全大補湯で補うことがあります。

同じように桂枝加芍薬湯でも、悪夢や不安感の強弱に合わせて桂枝加竜骨牡蛎湯に変えたり、細身の方や桂枝加芍薬湯の効果が過敏に反応する人には小建中湯に変更する場合も少なくありません。

神田橋処方の変法を使用しても基本の神田橋処方と同じく、2週間程度でフラッシュバックなどの頻度が軽減されます。

人それぞれの症状や効果に合わせて、処方を変えることも大事です。[2]

その際、飲み方や用法用量が異なってくるので注意しましょう。

神田橋処方は副作用もある

漢方薬に関しての副作用の症状は少ないですが、個人差があるので全くないとは言い切れません。

体調が悪くなったり、吐き気や不快感の症状も現われた人もいます。

フラッシュバックの症状で医師に相談すると、初めの治療は神田橋処方を勧められます。

1度、神田橋処方を試してみて合わない場合は、他の治療に切り替えましょう。

神田橋処方は効果がないのか?

神田橋処方は、全く効果がないわけではありません。

しかし症状の進行具合で、効果を得られるか得られないかが変わってきます。

例えば、トラウマとなっている状況を思い出した時、「何か嫌な感じ」と軽度に不安感や緊張が感じられる場合は効果的だと言われています。

しかし、トラウマの状況を思い出した時、激しい不安感や緊張感、吐き気などの症状の場合は効果が期待できません。

結果的に、軽〜中度のフラッシュバックには最も効果的ですが、高度なフラッシュバックになると効果が現われにくくなるのです。[3]

神田橋処方の市販薬はあるのか?

神田橋処方の市販薬は、ありません。

四物湯や桂枝加芍薬湯の単品での販売はあるようですが、神田橋処方としては出回っていないようです。

だからと言って、自分で調合して服用するのは大変危険です。必ず医師に処方してもらい、用法用量を守って服用しましょう。

Q&A

神田橋処方の服用期間はどれくらいですか?

神田橋処方は、四物湯と桂枝加芍薬湯を使用するのが基本です。

変法として、四物湯を十全大補湯と、桂枝加芍薬湯を小建中湯や桂枝加竜骨牡蛎湯などと入れ替えるものがあります。

2 週間くらいでフラッシュバックの頻度が減ってきます。

桂枝加芍薬湯は保険適用ですか?

桂枝加芍薬湯は、保険適用になっています。

桂枝加芍薬湯の他にも、約150種類の漢方薬が保険適用となっており、胃腸の弱い人や便秘、下痢の症状の人に適応されます。

ふだんから胃腸が弱い、体力がない人には向いていない漢方薬です。

桂枝加芍薬湯は、飲み合わせなどに注意しましょう。

同じ漢方薬である芍薬甘草湯などと一緒に服用する場合は、偽アルドステロン症になる可能性があるので注意が必要です。

偽アルドステロン症とは「四肢に力が入らない」「高血圧」「筋力低下による歩行困難」などの症状があります。

使用の際は、十分に気をつけましょう。

四物湯と桂枝加芍薬湯の効果は?

四物湯の効果は、月経不順、冷え性やしもやけ、肌が乾燥する人にも効果的です。

どちらかというと女性向けの漢方薬で、貧血気味な人や顔の血色が悪い人、更年期障害にも使用します。

桂枝加芍薬湯の効果は、 胃の不調や腹痛です。過敏性腸症候群の改善を目指す目的があります。

腹部の膨満感や排便時の異常を起こしているときに使用します。ふだんから下痢や便秘の症状、胃腸が弱い、体力が低下している人に向いています。

PTSDに効く漢方薬は?

柴胡加竜骨牡蠣湯、柴胡桂枝乾姜湯、甘麦大棗湯など多くあります。

PTSDがどんな出来事によって現われるのかで、使われる漢方薬の種類が異なります。

PTSDとは、外傷後ストレス障害(PostTraumatic Stress Disorder)を略した言葉で、強力な精神的ストレスを受けたことが原因となる精神疾患です。

主に治療法としては、心理療法を中心に行うことも多いですが、薬物療法でも効果があり有効であるケースも少なくありません。

漢方薬が使われることもありますが、PTSDの治療で率先して使われる薬はSSRIと呼ばれる、選択的セロトニン再取り込み阻害薬をよく使います。

セロトニンは、気分をコントロールして不安やうつ状態を改善します。

まとめ

神田橋処方は、PTSDやフラッシュバックのような難しい精神疾患に対する治療薬です。

これまで、PTSDやフラッシュバックに対する治療の中に薬物療法は存在しませんでした。

しかし神田橋処方の考案者である神田橋篠治先生が、漢方薬の調合で改善へ導けると発明されました。

精神科医ネットワークでも有名になっており、漢方で治療を受けた患者さんにも変化が出てきているようです。

効果が現れる人と現れない人がいますが、その時は他の治療法を試してみましょう。

専門医と相談し、自分に合った治療をしていくことが最優先です。

参考文献

[1]PTSDに処方された抗てんかん薬

[2]フラッシュバックへの神田橋処方

[3]精神科領域における漢方治療の可能性

 

FastDoctor
ドクターの往診・オンライン診療アプリ
往診もオンライン診療も
アプリから便利に相談
App Storeからダウンロード
Google Playで手に入れよう
TOP医療コラム神田橋処方とは?|効く症状や効果をご紹介