ADHD(注意欠如・多動症)の症状や特徴、診断方法について解説!

公開日: 2024/01/08 更新日: 2024/05/22
ADHDは「Attention‐Deficit/Hyperactivity‐Disorde」の略語で、日本語訳では「注意欠如・多動症」、「注意欠如・多動性障害」あるいは「注意欠如多動症」ともいわれます。 発達障害のひとつですが、子ども特有の障害ではなく、大人になってからも症状が続く方や成人してから初めて障害に気づく人もいます。 近年ADHDについてメディアで取り上げられる機会が増えたことで、病気の認知度は高まってきていますが、実際に自分や子ども、周りの人がADHDかもしれないと思った時にどうしたらよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。 この記事ではADHDについて、症状や特徴、診断方法、治療法、治療薬について詳しく解説しています。

ADHDとは?

ADHDは子どものころに発覚する人もいれば、大人になってから症状が顕著になり、初めて診断名がつくこともある疾患で、7歳以前から不注意、多動性、衝動性の3つの症状が見られ、社会生活に支障をきたしているものをいいます。

「不注意」では期限を守れない、忘れ物が多いなどの症状が、「衝動性」では思いついたらすぐに行動に移してしまう、衝動買いが多いなどの症状が、「多動性」では落ち着きがなくじっとできないなどの症状が見られ、これらは誰にでも起こり得ることですが、症状の程度が強いまたは頻度が高いなどで、社会生活に支障をきたしていると判断される場合にADHDと診断されます。

大人になると社会的責任が大きくなり、周囲から許容されないことの範囲が増えてくるでしょう。

大人のADHDでは、ADHDの特性から社会生活がうまくいかなくなり、自己肯定感が薄れてしまったり、人間関係が悪くなるなどの問題が起きやすく、うつ病や不眠、パニック障害などの他の疾患を二次的に引き起こしてしまうこともあります。

ADHDの原因は?

ADHDを発症する原因について、現段階ではっきりとは分かっていません。

しかし長年の研究によって、脳の器質的・機能的な異常や神経伝達物質の異常、環境的な要因、遺伝的な要因などが複雑に絡み合っていると考えられています。

有力な説のひとつは、論理的に物事を考えたり、計画を立てたりするときに重要な、脳の前頭葉という部分の働きが弱いために起こるという説です。

また、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドパミンの量が少なく情報伝達がうまくいかないことで、注意力が散漫になったり、衝動的で落ち着きのない行動をしたりするなどの症状があらわれるのではないかという説も有力です。

親の育て方が原因だろうかと悩んでしまう方もいますが、育て方やしつけが原因だという説は否定されています。

ADHDの特徴や症状・種類について

ADHDの症状は、大きく分けて不注意、衝動性、多動性の3つに分類されますが、どの症状が強く現れるかについては個人差が大きく、周りの環境によっても異なります。

また子どものころに現れやすいADHDの症状は大人のADHDとは異なりますが、そういった年齢によるADHDの症状の違いや特徴、種類について詳しく解説していきます。

ADHDの症状や特徴①不注意

ADHDの3つの症状のうち「不注意」としては、以下のような症状が見られることがあります。

  • 金銭の管理ができない

  • 時間を守ることが苦手、締め切りに間に合わない

  • ものをなくしたり忘れたりしてしまう

  • ケアレスミスが多い

  • 物事を最後までやり遂げることが苦手

  • 整理整頓が苦手

  • 会議や仕事、授業や勉強に集中できない

  • 人の話を集中して聞くことができない

ADHDの症状や特徴②多動性

ADHDの3つの症状のうち「多動性」としては、以下のような症状が見られることがあります。

  • 貧乏ゆすりをしてしまう

  • 落ち着きがなく、じっとしていられない

  • 集中力が続かない、ほかのことに気を取られやすい

  • 自分のことばかり話してしまう

  • 人の話を最後まで聞けない

  • おしゃべりが止まらなくなる

ADHDの症状や特徴③衝動性

ADHDの3つの症状のうち「衝動性」としては、以下のような症状が見られることがあります。

 

  • 思ったことをすぐに口に出してしまう

  • 言いたいことが言えないと苛立つ

  • 衝動買いをしてしまう

子供と大人でADHDの症状の特徴に違いはあるの?

これまでADHDの症状は、年齢を重ねると治まる傾向にあるとされてきましたが、最近の研究では約60%の人が成人してからも症状が残るという報告もあるようです。

ADHDの症状については個人差が大きく、周りの環境によっても異なりますが、一般的に子どものときには多動性が目立ち、大人になると「多動性」が外面的には目立たなくなるため、相対的に「不注意」が目立つようになるといわれています。

また子どものころにADHDと診断された方は、成長するにつれて症状が軽くなる場合や、自分の特性を理解して対処方法を学ぶことで、うまく社会生活を乗り越えている場合もあります。

例えば、子どものころは授業中に立ち上がってしまう、じっとできないなどの多動性の症状がみられていたのが、大人になりあまり見られなくなったという場合、これはADHDの多動性そのものが治ったというわけではなく、社会生活を送る中でルールを学んだり、その行動をとることで不利益になるということを学習した結果、問題となるような行動が減ったということです。

また、ADHDの人は感情が爆発しやすいという傾向もありますが、子どもと大人ではこの特性による問題行動の現れ方や社会生活への影響の出方が異なります。

子どもの場合は、学校でいじめの加害者、被害者のどちらにもなりやすく、先生との関係もうまくいかなくなって不登校になってしまうというケースがあるのに対して、大人では、職場や家庭内での暴言、暴力が目立ったり、学校で親として先生たちと対立したりすることがあるようです。

ある対象に集中してしまう傾向については、その対象が子どもではインターネットやゲーム、大人の場合は加えてアルコールやギャンブル、買い物などへの依存となることがあります。

ADHDの診断について

次にADHDの診断について、診断方法や基準について詳しく説明していきます。

ADHDの診断方法は?

ADHDの診断は、問診や心理検査、行動観察などで総合的に行われます。

問診では、出生時に高リスク出産でなかったかどうかや、性格、子ども時代にいじめや不登校の経験がなかったか、職場の人間関係はどうかなどの聞き取りが行われ、心理検査では知能検査や発達検査などの検査が行われます。

医療機関によってはほかの病気と鑑別するために、補助的にCT・MRI・脳波検査・血液検査などの生理学的検査を行う場合もあるようです。

診断基準や検査法はある程度確立されていますが、それでもADHDの診断は容易ではなく、時間がかかってしまうのが現状です。

これには他の発達障害との判別の難しさ、複数の発達障害が併存しているケース、複数の検査結果やデータを総合的に検討しなければならないなど、さまざまな背景があります。

ADHDの診断基準は?

ADHDの診断では一般的に、アメリカ精神医学会が作成するDSM-5という基準が使われており、この基準では、ADHDの症状18項目のうち5つ以上が6か月以上持続している場合にADHDであると診断するとされています。

またそれらの症状のうちいくつかが2つ以上の状況で存在すること、社会生活に支障をきたしていること、ほかの精神疾患等に起因するものでないことも基準になっており、さらに大人のADHDの場合、症状のうちいくつかが12歳前の時点で存在していることという項目も追加されています。

ADHDの診断テストについて

ADHDの診断についてインターネットで検索すると、全部で50問の問いに答えることでADHDの可能性があるかどうか簡単に診断できるものや、子どものADHDをセルフチェックできる診断テストなどさまざまありますが、これはDSM‐5などの医学的な診断基準に基づいているもの、また医学的な根拠のあるものだとは限りません。

あくまでも、ADHDの傾向があるかを簡易的に知るものに過ぎないということを理解したうえで使用するようにしましょう。

また、チェックをするかしないかに関わらず、ADHDが疑われる場合には医療機関を受診し、医師による診断を受けるようにしましょう。

また一部の医療機関によっては、診断の際に診断基準とは違うチェックリストのようなものを使用する場合がありますが、症状やその重症度などを把握するための指標として用いられます。

これは診断の際、決定的なものとなるわけではなく、補助的な意味合いで使用されます。

ADHDの治療法は?

ADHDの治療法について①環境調整②心理療法③薬物療法の3つに分けて解説します。

ADHDの治療目標は、自分の特性を理解して対処法や症状をコントロールする方法を知ること、職場や学校、家庭などの生活環境への問題を減らしたり、豊かな社会生活を送れるようにすることです。

また、ADHDの症状により社会的問題が積み重なると、精神的に辛い状況となり、うつ病などの他の精神疾患を併発するなど、二次的な問題につながる可能性があるため、それを予防することも目的のひとつとなります。

①環境調整

家庭、職場、学校などで何らかの困難を感じている場合、本人を取り巻く環境の改善すべき点や工夫する点を明確にして、過ごしやすいように環境を調整していくことを「環境調整」といいます。

ストレスを軽減し、症状の改善や再発を防止するために行われる治療法ですがその際、職場の上司や家族、学校の教師等と相談しつつ調整していく場合が多いようです。

具体的な環境調整の例としては、社会制度や福祉制度を利用して、社会参加や就労を促進する、仕事量を減らす、配置転換を行うなどが行われます。

②心理療法

心理療法として、ソーシャルスキルトレーニング(SST)やペアレントトレーニングがあります。

実施される内容についてはその機関によって異なりますが、概ね以下のような内容になっています。

  • ソーシャルスキルトレーニング

様々なプログラムを通して対人関係を円滑にし、社会生活を送る上で適切な行動をとれるようトレーニングしていきます。

プログラムの内容の一例としては、実際に学校や職場などで困った場面に遭遇したときに、その解決方法を見つけていき、次に同じ場面にあったときに適切に振る舞えるようにするなどのロールプレイが行われます。

  • ペアレントトレーニング

保護者がADHDの子どもとの関わり方や、子育ての工夫の仕方を学ぶものです。

注意の仕方、子どもの行動に対するアドバイスの仕方、本人の自己肯定感を育む褒め方など、子どもとの接し方を中心に学びます。

③薬物療法

ADHDの治療は一般的に、環境調整や心理療法などの治療が優先して検討されますが、この治療法だけでは生活が改善しない場合に薬物療法をあわせて行っていきます。

またADHDの薬物療法は、病気自体を根治する目的ではなく、特性を軽減して生活を改善するために使用します。

つまり薬を使ってADHDの症状を抑えることで、ADHDの患者本人が生活しやすい環境を作るということです。

薬物療法を行う上で、薬の種類やその効果、副作用や値段などが気になる方も多いと思いますので、詳しく説明していきます。

また、ADHDの薬については子どもが服用する場合も多く不安な点も多いと思いますので、少しでも疑問に思うことがあれば医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

薬の種類は?

ADHDの治療に使われる薬は、ストラテラ、コンサータ、インチュニブ、ビバンセの4つです。それぞれの薬の特徴について説明します。

  1. ストラテラ(アトモキセチン)

脳内のアドレナリンという神経伝達物質の働きを強める作用があります。依存性の心配がほとんどなく、効果の持続時間が長い薬です。

飲み始めに副作用(吐き気など)が出やすく、効果が出るまで時間がかかるとされています。

  1. コンサータ(メチルフェニデート)

中枢神経を刺激する薬で、 脳内の神経伝達物質であるドパミンとノルアドレナリンの働きを強める作用を持ち、1日1回の服用で約12時間効果が持続します。

副作用として、頭痛、腹痛、食欲の低下、寝つきが悪くなる、てんかんの憎悪などが報告されていますが、不眠の副作用を防止するため、原則午後の服用を避けることとなっています。

依存リスクがあるため、アルコールや薬物への依存がある人には処方するべきでないとされる薬です。

  1. インチュニブ(グアンファシン)

脳の前頭前野の機能を高めて不注意や多動性、衝動性を改善する薬です。効果発現まで時間がかかる薬ですが、1日に渡って効果が持続する薬です。

眠気、頭痛、血圧低下、徐脈など副作用は投与初期に目立ちやすいとされています。

  1. ビバンセ(リスデキサンフェタミン)

神経伝達物質の働きを活性化して、ADHDの症状を改善するというコンサータの作用に加えて、セロトニンという人間の衝動性に関わる成分を増加させる作用も持っています。

また内服してから10時間ほど持続する薬なので1日1回の服用で済みます。なお、ビバンセは6〜18歳の小児のADHDに対してのみ適応がある薬です。

ADHDの薬の中でもコンサータとビバンセは、不適正な使用による依存や乱用のリスク、不適切な流通が懸念されていることから、コンサータを扱うことが出来る医師や薬剤師は「ADHD適正流通管理システム」という国が認めたシステムへの登録が必須になっています。

また、患者さんも同様に登録が必要です。

薬の副作用は?

主に現れやすい副作用については、消化器症状、神経症状、循環器症状の3つがあります。

  1. 消化器症状・・・吐き気、嘔吐、食欲低下

  2. 神経症状・・・頭痛、不眠、幻覚、めまい

  3. 循環器症状・・・動悸、血圧上昇

また、交感神経を刺激する薬は眼圧を上昇させる場合もあり、緑内障の方は服用できないこともあり注意が必要です。

ADHD予後は?

ADHDの予後については適切な診断がされたかや治療方法などによって個人差が大きくなりますが、小児期にADHDの治療が適切に行われなかった場合は、成人期に移行してからアルコールの過剰摂取や自殺のリスクが高くなるというデータがあります。

また、小児と大人のADHDの症状の違いについては先に触れていますが、一般的には子どものときにはどちらかというと多動性が目立ち、おとなになると多動性が外面的には目立たなくなるため、相対的に不注意が目立つようになるといわれています。

早めに治療を開始し、自分の不注意という特性について理解し対処法を学ぶなどすることで、症状が緩和されたりすることがあるようです。

ADHDは見た目でわかる?顔の特徴は?

インターネットでは、ADHDの人に多い外見の特徴として、実年齢より若く見られる、歯並びが悪い、目が離れている、エラが張っていて四角型の顔で目が細い、彫の深い顔立ちである、色白であるなどと記載されているものもありますが、医学的な根拠はありません。

ただしADHDの専門医であれば、ADHDの人は外見的にこういう特徴があることが多いなど感じる場合もあるかもしれません。

ADHDの大人の男性と女性とで症状の特徴に違いはある?

ADHDの男女比率については様々なデータがありますが、男性、女性の比率は1.5〜2.5:1 程度といわれています。

傾向としては、幼少期に診断される割合が男性のほうが多く、男性の比率が大きくなるようですが、大人になるにつれてその差が小さくなっています。

また、男性のADHDの方には、「多動」や「衝動性」の特徴が、女性のADHDの方では、「不注意」の特徴が強く表れる傾向が多いようです。

これは、ADHDの症状のうち「不注意」の症状は小児期には見つかりにくく、女性は大人になってから症状がでてくるということが多いためです。

ADHDの症状があっても仕事はできる?

ADHDの方でも、特性にあった職業を選択したり、仕事内容を調整することで仕事をすることは可能です。

ADHDの人は、自分の興味のあることに没頭する傾向にあるので、自分の関心の持てる職種を選ぶ、多くの人と関わりながら進めていく仕事よりも個人のスキルなどが要求される仕事のほうが力を発揮できるでしょう。

反対に、複数の業務を並行して進めていくような仕事は苦手なことが多いです。

Q&A

ADHDについてよくある質問についてお答えします。

ADHD とはどんな症状ですか?

ADHDの症状は、1不注意 2多動性 3衝動性の3つがあります。11

それぞれ以下のような症状が現れます。

  1. 不注意

忘れ物が多い、集中力がない、注意力が散漫、ミス1が多い

  1. 多動性

じっとできずそわそわする、落ち着きがない、一方的にしゃべり続ける、貧乏ゆすりをする

  1. 衝動性

自分の考えをすぐに口に出してしまう、よく考える前に行動してしまう、順番が待てない

どの症状が強く出るかについては個人差が大きく、その人が置かれている環境によっても大きく異なります。

ADHDの行動の特徴は?

ADHDの人は不注意、多動性、衝動性の特性をもち、そのうちどの特性が行動に強く現れるかは個人差がありますが、落ち着きがない、時間を守れない、よく考える前に行動してしまう、衝動買いしてしまうなどの特徴があります。

また、話しかけても作業に没頭して反応しない、コミュニケーションがうまく取れないなどの症状も現れることがあります。

ADHDの軽度の特徴は?

症状については個人差が大きいため、一概にこの程度であれば軽度であるという判断はできません。

重要なのは、症状の程度を区別することではなく、日常生活にどれぐらい影響が出ているのかを把握して、環境調整を行ったり治療を行っていくことです。

ADHDの話し方の特徴は?

ADHDの場合、自分の興味のあることに集中してしまう傾向があるので、自分の話したいことを相手の反応はおかまいなしに話し続けてしまうことがあります。

また、空気が読めないような発言をしてしまう、細かい部分にこだわってしまう、論理的になってしまうなどの特徴があります。

また、成長が未熟な小児期で多いことですが、自分の考えと他人の考えが違う可能性があるということに気づかず自分の考えを主張することに集中してしまうこともあるようです。

まとめ

ADHDの認知度は年々高まってきていますが、まだまだ病気の特徴や治療法については理解が不足している傾向があります。

ADHDの人は、自分の特性と向き合いながら環境調整を行ったり、適切な治療を受けたりすることで症状をコントロールし、周囲にADHDの人がいるという場合にはその特性を理解することで、どの立場の人も豊かな社会生活を送ることができるのではないでしょうか。

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