自閉スペクトラム症はどんな発達障害?ASDとは?特徴や原因、診断基準についても解説!

公開日: 2024/01/09 更新日: 2024/05/22
ASDとは「自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)」のことを指します。 ASD(自閉スペクトラム症)は発達障害(神経発達症)のひとつです。 ASD(自閉スペクトラム症)と診断される当事者は社会生活において何かしらの困難さや、生きにくさを感じています。 皆さんは、自分や自分の子が発達障害だと診断されたらどのように感じますか? 中には悲しみを感じたり、受け入れたくないと思う人もいるかもしれません。 しかし、自分自身の生きにくさや困難さの元になる部分を知るということは、解決方法をみつけるために必要なことではないでしょうか。 障害として受け入れがたい方は、その人の持つ「特性」として理解してみてください。 特に子どもの場合は、幼少期からその子の発達における特性を理解し対応策をみつけることで、今後の社会生活での生きやすさが大きく変わってきます。 今回はこのASD(自閉スペクトラム症)について解説していきます。 今回の記事でわかること ・ASDの特徴 ・ASDの原因 ・ASDの診断規準 ・ASDの治療法 ・ASDに併発する疾患 自分の子ども、または自分自身がASDかもしれないとお悩みの方や、周りにASDの人がいてどのように対応して良いかわからないという方も是非参考にしてください。
目次

ASDとは

ASD(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)とは、発達障害のひとつです。

1970年代までは、自閉症というと知的障害が伴うという認識が一般的でした。

しかし、1979年にイギリスの児童精神科医ローナ・ウィングが、知的障害を伴わない自閉症のことを「アスペルガー症候群」と名づけたことにより、自閉症とアスペルガー症候群が区別されるようになりました。

以前はASDのことを「広汎性発達障害」と呼んでおり、更に下位分類として「自閉症」と「アスペルガー症候群」がありました。

広汎性発達障害

自閉症

アスペルガー症候群

・喜怒哀楽が乏しい

・特定のものやルールへのこだわりが強い

・知的障害を伴う

※知的障害が伴わない(IQ70以上)子は高機能自閉症と呼ばれていた。

・相手の気持ちを考えたり共感することが苦手

・空気が読めない

・特定のものやルールへのこだわりが強い

・知的障害は伴わない

その後、2013年にDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」アメリカ精神医学会作成)により、診断基準の改訂があり、以下の疾患を自閉スペクトラム(ASD;Autism Spectrum Disorder)に統合することになったのです。

  • 自閉症

  • 高機能自閉症(知的障害を伴わないIQ70以上の自閉症)

  • アスペルガー症候群

  • 特定不能の広汎性発達障害(自閉症やアスペルガー症候群のいくつかの特徴を持っていること)

「スペクトラム」とは「連続している」ことを指し、上記の疾患の境界が曖昧であることを意味しています。

したがって、現在は自閉症やアスペルガー症候群などの下位分類はされなくなっています。

ASDの特徴 -特性を理解する-

1979年にイギリスの児童精神科医ローナ・ウィングは、ASDを理解するための概念として「ウィングの3つ組」を提唱しました。

ASDの特徴として以下の3つが挙げられています。

  1. 社会性の質的な差異(社会性の障害)

  2. コミュニケーションの質的な差異(コミュニケーションの障害)

  3. イマジネーションの質的な差異(常同的・限定的な行動)

かつて自閉症と位置づけられていた自閉症は、このウィングの3つ組をもつ知的障害児のことでした。

そして、知的障害を伴う自閉症の場合、個々の特性に合わせて特別支援教育を受けることができたのです。

しかし、自閉症と同様の特性を持ちながら知的障害をもたない自閉症者も存在していました。

知的障害をもたない自閉症児は、勉強に遅れが出ていないが故に就学時に普通教育を受けることになります。

当事者は集団生活の中で様々な困難さを感じているにも関わらず個々の特性への配慮がされず、定型発達児と同様に扱われることになるのです。

その結果、就学時に周囲の人間と頻繁にトラブルを起こしたり、社会に出てから対人関係や仕事上で上手くいかないことが多くなります。

そこで、「自閉症」などの特定の疾患と断定するのではなく、知的障害を持たない高機能自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害など様々な特性が混在している状態をASDと位置付けました。

その結果、今まで生きにくさを感じていたにもかかわらずそれぞれの診断基準からはじかれてしまっていた人々が、個々の発達特性や困難に配慮した教育を受けられるようになったのです。

ASDの特性 ①常識的な行動や人間関係の構築が苦手

①社会性の質的な差異(社会性の障害)

  • 知能年齢相応に相手の都合を考えることが困難

  • 他者との関係を良好に築きたいと思う、またはそのために振る舞うことが困難
    (人との関わりが一方的、もしくは受身)

  • 場の空気や世間一般の常識を獲得することが困難
    (場にふさわしい行動を取ることが苦手)

ASDの特性 ②コミュニケーションの取り方がわからない

②コミュニケーションの質的な差異(コミュニケーションの障害)

  • 知識としての語彙と実用される語彙に差がある
    (例:一方的な発話、伝える意図のない独り言、話題の偏り等)

  • 表情や声色などから相手の言葉の裏にある感情を読み取ることが困難

ASDの特性 ③ルーティン化された作業が得意・臨機応変な対応が苦手

③イマジネーションの質的な差異(常同的・限定的な行動)

定型発達児は、発達とともにイマジネーション=想像力を発達させることで、自分の予想に反した事柄を受け入れることができるようになる。

しかし、ASDではイマジネーションに偏りがあることで、感情や行動、思考を柔軟に変えることが困難になるため、同じ行動や表現パターンを繰り返したり特定のものに執着するいわゆる「常同的・限定的な行動」がみられる。

ASDの特徴 子供は1歳半健診〜3歳児健診で気付きやすい!

ASD(自閉スペクトラム症)の症状は、乳幼時期から認められます。

早ければ1歳半検診の時点で指摘される場合もありますが、基本的には3歳までに診断されることが多いです。

ただし、知的障害を伴わない場合には言語発達が良好であることが多く、就学後や成人になってから診断を受ける場合もあります。

乳児期に気付くきっかけとして多いサイン

  • 視線が合わない

  • 表情が乏しい

  • 名前を呼んでも反応しない

  • 抱っこを嫌がる

  • 後追いしない

  • 母親(主に世話をしている人)と他者の区別がない(人見知りをしない)

  • おむつやミルク、環境を整えても激しく泣き続ける

幼児期に気付くきっかけとして多いサイン

  • 言葉の遅れ

  • こだわりが強い

  • 予想に反したできごとにパニックを起こす

  • 1歳半健診や3歳児健診などで指摘される

  • 習い事や保育園/幼稚園などの集団生活の場に馴染めない、あるいは他児とトラブルになることが多い

ASDの特徴 大人は仕事への影響で気付きやすい!

子どもの頃から症状があっても、それが大きな障害にならず知的能力も平均以上の場合は、社会人になってからASD(自閉症スペクトラム障害)に気がつく人もいるのです。

このように、大人になってからASDと診断されることを大人のASDと言います。

仕事で臨機応変な対応ができなかったり、空気を読むことを苦手とするため対人関係でのトラブルに発展しやすくなります。

仕事でよくあるトラブル

  • 計画的に順序立てて仕事を進められない

  • 仕事で使用する物を良く無くす

  • 場の空気が読めず、報告や相談をするタイミングがわからない

  • 電話やメール、指示の内容を的確に理解することができない

また、中には自分の特性を自覚しておらずASDであることに気がつかずに生活している人もいるのです。

このような人のことを“隠れASD”といいます。

隠れASDの人は、周囲から「変わってる」「おかしな人だ」と思われる行動を起こしても、自分自身は特性を自覚していないため“自分は間違っていない”と思う傾向にあります。

その結果他者とのトラブルを起こしやすくなるのです。

ASDの原因は脳機能障害 偏食や癇癪は育て方のせいじゃない!

ASD(自閉スペクトラム症)の原因は生まれ持った脳機能の障害(脳の機能の偏り)であると考えられています。

また、ASDは遺伝的な要因も影響していると言われています。

自閉スペクトラム症は、幼少期から集団生活において様々なトラブルが発生したり、外出先で癇癪を起こしたり他者に迷惑がかかるような行動をすることも多いです。

そのため、自分の育て方に問題があるのでは?と悩む保護者もしばしばいます。

しかし、育て方やしつけ、本人の性格は関係しないことがわかっています。

それでも、親としてはやはりトラブルが起こるたびに辛いものです。

そのため、子育て中に少しでも「この子は他の子と違うかも?」、「育てにくい」と感じるのであれば、ためらわずに専門の機関に相談しましょう。

発達障害はその子の特性です。

決して他者より劣っているというものではありません。

ASDによる二次障害について

ASDの人は、仕事での失敗や、対人関係でのトラブルが起こりやすいことがわかりました。

そしてこのトラブルが二次障害に繋がることが多いことも忘れてはいけません。

他者とのトラブルや仕事上での失敗は当然ストレスとなります。

このストレスから、二次障害としてうつ病や不安障害などの精神的な不調を起こす人も多いのです。

また子どもの場合、集団生活に馴染めないことでいじめや不登校などに繋がることもあります。

このことからも、早期発見と早期支援が重要となることがわかります。

ASDの診断 診断基準と診断方法・検査について

DSM-5におけるASDの診断基準は以下の通りです。

A群:複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる。

相互の対人的-情緒的関係の欠落:対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。

対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥:まとまりのわるい言語的、非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。

対人関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥:さまざまな社会的状況に合った行動を調整することの困難さから、想像上の遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。

B群:行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる。

常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し

同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、言語的・非言語的な儀式的行動様式:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求

強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限局したまたは固執した興味

感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音または触感に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する診断は、まず発達の経過を確認するところから始まり、次に、現在の症状や日常生活での困難さを確認していきます。

※ただし、医師はこの診断基準だけを基に診断するのではなく、患者の話やその他の検査や他疾患の診断基準などを参考にし、総合的に判断したうえで診断をします。

DSM-5に記載の各障害は認知的、情動的、行動的、生理学的過程が複雑にからみ合っているものであり、一般人が安易に自己判断には使用することはできません。

DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)とは?主な内容、診断基準としての使われ方、診断後に受けられる治療・支援を解説します | LITALICO仕事ナビ」より引用”

ASD(自閉スペクトラム症)の人は、知的能力障害を始めとする他の神経発達症やうつ病、双極性障害、不安症や統合失調症、てんかんなどを伴うこともあります。

そのため、状況に合わせて知能検査や脳波検査などを行うことも多いです。

また、ASD(自閉症スペクトラム障害)と診断される人の中には軽度の人もいます。

特徴としては、以下の2つが挙げられます。

  1. 特性は弱いが日常生活に支障がある

  2. 特性はあるものの、特性とうまく付き合えており日常生活にそれほど支障が出ていない

このことから、発達障害は特性がある場合を指すのではなく、特性がありなおかつ生活に支障をきたしている場合を指すことがわかります。

ASDの診断はどこでできる?精神科の病院で良い?子供と大人の違い

子供の場合、小児科や児童精神科、小児神経科に受診すると良いでしょう。

大人の場合は、精神科や心療内科を受診してください。

実際に困っていることや気になる症状など、些細なことでも違和感を感じる部分を事前にメモしておくとスムーズに相談することができます。

しかし、発達障害を診ることができる医療機関は少ないのが現状です。

そのため、発達障害に詳しい医療機関の情報を事前に調べた上で受診することをおすすめします。

これらの情報は各自治体の障害福祉課や発達障害支援センタ―などで調べることができます。

最近では、発達が気になる子どもに対して早期療育を行うことが多いです。

これは、生活の質を向上させると共に二次障害の予防にも役立ちます。

発達障害の診断を受けていない子供や、診断を受けるほどではないが困りごとのある「グレーゾーン」の子供でも利用できるサービスもあります。

このようなサービスについても各自治体や施設に問い合わせてみてください。

ASDは障害者手帳がもらえる?

ASD(自閉スペクトラム症)の場合、「療育手帳」や「精神障害者保健福祉手帳」を取得することができます。

知的障害がある場合には「療育手帳」、知的障害を伴わない場合は「精神障害者保健福祉手帳」の申請対象となります。

参考リンク「さまざまな支援 | 自閉スペクトラム症 | すまいるナビゲーター | 大塚製薬

 

知的障害療育手帳

精神障害者保健福祉手帳

対象

知的障害により日常生活に支障が生じており、何らかの特別な支援を必要としている人

※自治体によって異なるが基本的にはIQ70~75以下

うつ病、統合失調症、パニック障害などの精神障害や自閉スペクトラム症などの発達障害によって、日常生活や社会生活に支障をきたしている人

申請する人

本人または保護者

申請場所

各自治体の福祉事業所または障害福祉担当窓口

必要なもの

児童相談所(18歳以上は知的障がい者更生相談所)での心理判定員もしくは医師による判定

医師による診断書

写真

申請書

再判定

自治体によって異なる

原則として2年ごと

 

障害者手帳を取得するメリットは以下のとおりです。

  • 就労支援を受けることができる

  • 一般企業における障がい者枠での就職がしやすくなる

  • 税金の控除や減税を受けられる

  • 公共施設利用料の減免などが受けられる

また、必要がなくなった場合には返納することも可能です。

ASDは治療で治るのか 治療薬はある?

ASD(自閉スペクトラム症)は前述したように脳の機能の障害が問題となっています。

そのため、完治させる治療薬や治療法はありません。

病気としてではなく、生まれ持った特性として受け入れ、必要なサポートを行うことが最善の対処法と言えます。

主な治療法は以下の4つです。

  • 療育(治療教育)

  • ソーシャルスキルトレーニング

  • 認知行動療法

  • 対症療法

ASD 子供の治療と大人の治療に違いはある?

子供と大人では、日常生活における困りごとが異なります。

そのため、治療方法の違いというよりも、対処方法や周囲の人の接し方に違いが出てくるでしょう。

子供のASDの対処法

  • 失敗を否定するのではなく、できたことを褒める(できることを伸ばす)

  • 伝え方を工夫する(文字だけでなく絵で伝えるなど)

  • 単一的な遊びに没頭していても、無理に他の遊びをさせようとせず見守る

大人のASDの対処法

  • 作業のマニュアルやチェックリストを作成する

  • 大切な予定は箇条書きのメモで伝える

  • 指示はひとつずつ具体的にする

いずれにしても、自分自身の特性を理解することと周囲の理解・協力を得る事が重要になります。

参考リンク「大人のADHD、ASD、SLD。子供の場合とどう違う? | 福祉.tv NEWS

また、ASDに併発する疾患についても同時に配慮が必要な場合があります。

例えば、感覚過敏のある人に対しては以下のような配慮をしましょう。

  • 突然大きな声で話しかけない

  • 静かな環境で話す

  • 芳香剤や匂いの付いた柔軟剤の使用を避ける など

ASDの治療 ①療育(治療教育) 何歳から始めると良い?

ASDの基本的な対応は、日常生活における支障を軽減するために行うサポートとして「療育」(治療教育)を行うことです。

療育とは発達支援のことを指します。

療育では、発達障害と診断された子どもや発達障害の可能性のある子どもに対して、個々の発達の状態や障害特性に応じた支援を受けることができるのです。

そうすることで、現在困っていることを解決し、将来の自立や社会参加を目指します。

療育を開始できる年齢は施設によって異なりますが、基本的には3歳前後から利用が可能となる施設が多いです。

かかりつけの医師や幼稚園・保育園、または学校などと相談しながら開始時期を検討しましょう。

ASDの治療 ②ソーシャルスキルトレーニング(SST)って何?

対人関係や社会性に対する障害に関しては、ソーシャルスキルトレーニング(SST)という方法を用います。

これは、具体的な社会的行動をロールプレイで学ぶ認知行動療法のひとつです。

SSTは、ASDの特性による日常生活での困りごとや生きづらさを軽減させるために行われます。

更に、SSTの技法を発展させ、成人しているASDの人に対して実施しているショートケア(デイケア)プログラムを実施している医療機関もあります。

ASDの治療 ③認知行動療法 効果はある?

認知行動療法とは、認知(考え方や物ごとの受け止め方)に働きかけて精神的な負担を軽減する心理療法のひとつです。

この方法は、ASDにおける中核症状ではなく、中核障害からくる不安などの二次障害の改善を目的としています。

実際に、子どもの恐怖や不安障害に対する心理療法をレビューした研究では、個人または集団に対する認知行動療法がおそらく有効であるとされる心理療法に分類されています。

参考リンク「認知行動療法とは|発達障害あるある「認知の歪み」の対策

ASDの治療 ④対症療法について

対症療法とは、病気に伴う症状を和らげる、あるいは症状を消すための治療です。

例えば、興奮や自傷行為、パニック、不眠などの症状が見られる場合、対症療法として症状改善のための薬が処方されます。

ASDは他の疾患と併発することもある?

ASDは他の発達障害や精神疾患と併発する場合があります。

自閉スペクトラム症以外の主な発達障害は以下のとおりです。

注意欠如・多動症(ADHD)-不注意、衝動性、多動性といった行動面の特性がある

  • 忘れ物が多い
  • 人の話を最後まで聞くことができない
  • 注意力が散漫で落ち着きがない
  • 衝動性が高く、カッとなりやすい

限局性学習症(LD)-ある特定の学習能力が著しく劣っている

  • 読む、聴く、話す、書く、推論する、計算するなどの機能のうち、1つ以上の領域に遅滞を認める

発達性強調運動症(DCD)

  • 運動が極端に苦手
  • 手先を使った細かい作業が苦手
  • 行進などの協調性のある動き、リズムを合わせる動きが特に苦手

知的能力症(知的障害)

  • 知的能力が低い ※軽度、中等度、重度に分けられる

ASDと診断を受けた人の中には、ASDの特性だけを持つ人もいればADHD(注意欠如・多動症)や、LD(限局性学習症)など、他の発達障害の特性を持ち合わせている人もいます。

他にも、うつ病や双極性障害、統合失調症などの精神疾患が併発する場合もあります。

ASDに併発する疾患と特性 ①感覚過敏

感覚過敏もASDの人によくみられる特性のひとつです。

感覚過敏とは、「聴覚」「視覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」などの五感から受け取る刺激を過剰に感じる状態のことをいいます。

大きな音、食べ物や芳香剤のにおい、衣類の肌触りなどに敏感です。

また、偏食が強く現われる子も多くいます。

音やにおいの刺激にはできる限りの配慮をしましょう。

また、偏食に対してはしつけとして無理やり食べさせたりしかりつけるのは逆効果です。

一般的な好き嫌いとは異なり、味覚や嗅覚が過敏に反応していることが原因となっています。

栄養面での心配は医師と相談しながら見守りましょう。

食そのものに興味を示さない人も多いため、特に小さいうちは家族の中で楽しく食事する体験を繰り返すことが大切です。

ASDに併発する疾患と特性 ②adhd ASDとの違いは?

ADHDとは注意欠如・多動症のことを指します。

ADHDの特徴は「ASDは他の疾患と併発することもある?」をご参照ください。

ASDとは自閉スペクトラム症のことを指しています。

かつての「自閉症」や「高機能自閉症」、「アスペルガー症候群」、「広汎性発達障害」などの特性をまとめてASD(自閉スペクトラム症)と呼びます。

ASDの特徴については「ASDの特徴 -特性を理解する-」「ASDの診断 診断基準と診断方法・検査について」をご参照ください。

ASD 得意なことを活かすには

ASDといっても、人により様々な特性があり、その人の特性に応じて、必要な配慮は異なります。

そのため、家庭や教育機関、専門機関などその人を取り巻く全ての環境から早期支援を行うことが重要です。

特性は、場面によっては「困りごと」となる場合と「得意なこと」となる場合があります。

例えば、イレギュラーな場面で臨機応変に対応できないことをプラスに考えると、ルールやマニュアルを守った作業が得意とも言えます。

このように、考え方を少し変えることで特性を活かした仕事をみつけることも可能です。

Q&A

ASDは何の略?

ASDはAutism Spectrum Disorderの略です。日本語では、自閉スペクトラム症や自閉症スペクトラム障害と呼ばれています。

ASDは薬で治るの?

ASD(自閉スペクトラム症)は前述したように脳の機能の障害が問題となっています。

そのため、完治させる治療薬はありません。

病気としてではなく、生まれ持った特性として受け入れ、必要なサポートを行うことが最善の対処法と言えます。

主な治療法は「ASDは治療で治るのか 治療薬はある?」をご参照ください。

ASDの人に向いてる仕事はある?

自分の特性をよく理解すると、得意なことや苦手なことがわかってきます。

臨機応変な対応は苦手で、マニュアルやルールに沿って行動するのが得意な人は、マニュアルやルールに沿って仕事が出来る職種を選びましょう。

全国のハローワークや障害者職業センター、発達障害者支援センターなどでは、発達障害の特性に合った職業相談・就職支援を行っているため、そのような機関に頼るのもおすすめです。

ADHDとASDの違いは何ですか?

ADHDとは注意欠如・多動症のことを指します。

主に行動面に特性が出やすく、「不注意」「衝動性」「多動性」がみられます。

ASDは自閉スペクトラム症のことです。

「社会性」「コミュニケーション」などの対人関係を苦手とし、「特定のものやルールへのこだわりが強い」といった特性がみられます。

ASDと自閉症の違いは何ですか?

典型的な「自閉症」には、「ウィングの3つ組」にプラスして知的障害が伴います。

そのため、言葉の発達が遅れ、相互的なコミュニケーションをとるのが難しいといった特性が顕著に現れることが多いです。

しかし、知的障害を伴わない「アスペルガー症候群」では、「ウィングの3つ組」という共通の特性がありながら、言葉の遅れがなく、比較的コミュニケーションが取りやすい傾向にあります。

現在は、自閉症とアスペルガー症候群を区別して診断することはなく、ASD(自閉スペクトラム症)として診断されます。

ASD(自閉スペクトラム症)は上記の疾患には連続性があり、なおかつ境界が不明瞭であることから名付けられました。

したがって、ウィングの3つ組における特徴がある場合、知的障害の有無を問わずまとめてASDと診断されることになります。

大人の女性のASDの特徴は?

基本的に、男女問わずASDにおける特性は同じです。

しかし、一般的に女性は男性に比べて集団での行動や、共感を求める会話が多い傾向にあります。

そのため、以下のような場面で困難さを感じることが多い傾向にあります。

  • 共感することが苦手なため女性同士の会話が苦手

  • 女性特有の集団行動が苦手

  • 家事や育児などが苦手(マルチタスクを同時にこなす、子どもの予測できない行動などに対応することが難しいと感じる)

ASDのある女性は、うつ病などの二次障害を発症する可能性が高いようです。

また、女性は子どもの頃に発達障害と気づいてもらえないことが多く、大人になってから気付くことも多いようです。

これは、幼少期における特性の現れ方が男女で異なる場合が多いことが原因と考えられます。

例えば、男の子の場合は授業中に立ち歩いたり友達に手を出してしまうといった目に見えて目立つ特性が現れることが多いです。

しかし、女の子の場合は忘れ物が多い・片付けができないなどの他者からはわかりにくい特性が強く現われることが多いのです。

これらの目立ちにくい特性は、保護者でもそれほど気に留めないことが多く早期支援に結び付きにくい傾向にあります。

ASDの苦手なこととは?

ASDの人は、文脈や声色から相手の言葉の裏にある感情を読み取ることが苦手です。

またこだわりや執着が強いため、臨機応変に対応することを苦手とします。

具体的には、「ASDの特性 ①常識的な行動や人間関係の構築が苦手」「ASDの特性 ②コミュニケーションの取り方がわからない」「ASDの特性 ③ルーティン化された作業が得意・臨機応変な対応が苦手」の章をご参照ください。

ASDの人は空気が読めないって本当?

ASDの特性のひとつとして「社会性の障害」があります。

相手の言葉の裏にある感情を読み取ることができなかったり、報連相を行うタイミングがわからないといった場面が多くみられます。

この様な場面で空気が読めないと思われることが多いです。

ASD 大人になって診断される人もいるの?

子どもの頃から症状があっても、それが大きな障害にならず知的能力も平均以上の場合は、社会人になってからASDに気がつく人もいます。

このように、大人になってからASDと診断されることを大人のASDと言います。

ASDの特徴 大人は仕事への影響で気付きやすい!

自閉症とアスペルガー症候群の違いは?

自閉症とアスペルガー症候群の主な違いは、知的障害の有無です。

自閉症が知的障害を伴うのに対し、アスペルガー症候群は知的障害を伴いません。

ASD(自閉症スペクトラム障害)は自閉症やアスペルガー症候群を区別せず、連続したものとして捉えています。

まとめ

ASD(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)とは、従来の

  • 自閉症

  • 高機能自閉症(知的障害を伴わないIQ70以上の自閉症)

  • アスペルガー症候群

  • 特定不能の広汎性発達障害

を連続したものと捉え、それぞれを区別せずに診断するものであることがわかりました。

そして、「社会性の障害」「対人関係の障害」「常同的・限定的な行動」といった3つの特性を持ちます。

現代では、1歳~3歳の幼児期にASDの可能性を指摘されることも多いようです。

発達障害と指摘されると、落ち込んでしまう保護者もいます。

しかし、早いうちに個々の特性を理解し、必要な支援を受けることで今後の社会生活に良い影響を与えることができます。

そして何より、社会生活において「困り感」や「生きにくさ」を感じている当事者にとってトラブルや辛い経験を回避するための道しるべにもなるでしょう。

また、ASDの治療のひとつである「療育」は診断を受けてない子や、グレーゾーンの子でも利用することができます。

子どもの発達で少しでも気になることがあるのであれば、まずはかかりつけの小児科で相談してみましょう。

そして、子どもの頃に発達障害と言われたことがない人でも、仕事や生活に支障が出て辛いという方は1人で悩まずに医療機関で相談することをおすすめします。

ASDは治すものではありません。

自分自身の特性として受け入れ、得意なことを伸ばすことができれば自分に合った生活や環境、仕事を手に入れることができます。

参考文献

宮尾益知, ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 女の子の発達障害 “思春期”の心と行動の変化に気づいてサポートする本, 株式会社河出書房新社, 2016.

市川宏伸, これでわかる自閉スペクトラム症, 成美堂出版,2020.

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