【双極性障害とは?】症状と特徴について解説

公開日: 2024/01/08 更新日: 2024/05/22
「双極性障害ってどんな病気?」「双極性障害とうつ病の違いは?」 上記のように双極性障害とはどのような病気であるのか気になっている人も多いのではないでしょうか。 この記事を読んでわかること ・双極性障害とは ・双極性障害の原因と治療法 ・双極性障害とうつ病との違い 双極性障害の特徴や症状、双極性障害になりやすい性格についても解説しています。
目次

双極性障害とは?

双極性障害は躁うつ病とも呼ばれ、違いはなく同じ疾患のことを指します。

双極性障害とはどんな病気かというと「気分や感情が高揚し活力や行動性が増加する」躁状態と「抑うつや気分の低下、行動性の減少」といったうつ状態が反復する脳の病気で、統合失調症とともに二大精神疾患の一つとされています。

男女の発症率に差はなく20代〜30代前後で発症することが多いとされていますが、青年期から老年期までの幅広い年齢で発症する病気です。

海外では、うつ状態で病院やクリニックに受診している人の20%〜30%が双極性障害だといわれており、日本でもうつ病の人が双極性障害を発症する人が一定数いるとされています。

日本では本格的な調査がされていないため、双極性障害を発症している人の詳しい人数は分かりませんが、およそ「数十万人」いるのではないかと考えられています。

そのため双極性障害は決して珍しい病気ではありません。

双極性障害は遺伝性の病気ではないと考えられており、家族や親戚など身近に双極性障害の人がいても、双極性障害を発症することはないといわれています。

しかし、双極性障害が発症する原因は未だ明らかになっておらず、ストレスが影響しているのではないかと考えられ研究が進められている段階です。

双極性障害は一型と二型に分類されており、激しい躁状態とうつ状態があるものが一型、軽躁状態とうつ状態があるものが二型といいます。

双極性障害は、脳の機能の病気であることから、薬でコントロールするとともに心理療法なども取り入れながら回復にむけ治療がおこなわれます。

参考:「順天堂大学医学部/大学医学研究科気分障害分子病態学講座

双極性障害一型

近年まで双極性障害(躁うつ病)といわれていた病気は、「双極性障害一型」であるといわれています。

双極性障害一型の特徴は、日常生活や社会生活に支障をきたすほどの激しい「躁状態」を引き起こした状態をいいます。

「躁状態」とは、気分の高揚や活動(行動)活力があり、エネルギーの高まりが周囲からみても明らかな状態です。

躁状態では不要なものを大量に購入し、借金してまで買い物をするなど金銭感覚の変化や、易怒的になることで他人や周りの人とトラブルを起こし人間関係に問題が生じる傾向があります。

また、誇大妄想といって「自分は特別だ」という根拠のない思い込みをすることもあります。

エネルギーや活動性が増し、易怒的になることで生じる人間関係のトラブルや激しい浪費がある場合は双極性障害一型の特徴ともいえるでしょう。

双極性障害一型の場合、症状の程度によって申請をすることで障害者手帳の交付や障害年金を受け取れる可能性があります。

双極性障害は気分(感情)障害に分類されるため、障害年金を受け取るためには「気分(感情)障害」の認定基準を満たさなければいけません。

気分(感情)障害の認定基準は以下のとおりです。

障害の程度

(等級)

障害の状態

1級

高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の症状があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

2級

気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の症状があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の症状があり、その症状は著しくないが、これが持続又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

双極性障害では、症状が重いものを1級、症状が比較的軽いものを3級としています。

3級の場合、初診日に加入していた年金制度が厚生年金(共済年金)の方が対象です。

初診日に国民年金に加入していた方は、1級または2級に該当しないと障害年金が支給されません。

双極性障害患者が障害年金を受け取るためには、様々な基準を満たしている必要があるため、交付が必要な場合は事前に調べたうえで申請するとよいでしょう。

引用:「【詳しく解説】双極性障害(躁うつ病)と障害年金-NPO法人障害年金支援ネットワーク

双極性障害二型

双極性障害二型では、一型に比べて症状が軽く、日常生活や社会生活に支障をきたすほどの躁状態はありません。

双極性障害二型の診断基準は「軽躁状態が少なくとも4日以上持続し、抑うつ状態も2週間持続した状態」で、加えて躁状態と抑うつ状態がそれぞれ期間内に「ほぼ毎日、1日をとおして症状が現れている」場合に双極性障害二型と診断されます。

双極性障害二型は早口になったり、口数が多くなったりと人の話よりも自分の話を優先させるといった特徴もあります。

一型に比べると症状は軽いものの病気のコントロールがしにくく、うつ病を再発しやすいうえ、うつ病の期間も長引く傾向があるため重症化するケースが多いです。

本人は病気の自覚がなく、特に軽躁状態では「調子が良い」と感じてしまうため、家族や周囲の人が異常に気づくことが多いです。

双極性障害二型では、症状が比較的軽いため障害者手帳の交付や障害年金の受け取りが難しい場合があります。

双極性障害の診断基準

双極性障害の診断基準は、患者本人の生活や家族歴、病気の既往や服薬状況を総合的に判断するとともに、DMS-5のガイドライン「躁病エピソード」をもとに診断します。

双極性障害と診断された場合、双極性障害の診断書をもらうことも可能です。

双極性障害一型の診断は「躁病エピソードと抑うつエピソード」を、二型では「軽躁病エピソードと抑うつエピソード」の診断基準をチェックする必要がありますが、双極性障害の診断は難しいことが多いです。

躁病・軽躁病の区別は「社会的、職業的、日常生活上の著しい問題」があるかないかが大きなポイントです。

DMS-5においても躁状態と軽躁状態を以下のように区別しています。

 

相違点

躁病

社会的、職業的機能に著しい障害がある、もしくは自他への害が伴う

場合によっては入院が必要となる。

軽躁病

社会的、職業的機能の著しい障害がなく、自他への害も伴わない。

日常生活上の著しい問題もない。

双極性障害を疑い受診しても、うつ病や他疾患と診断されるケースもあるため、双極性障害と診断されないこともあります。

双極性障害と他疾患(精神疾患を含む)を鑑別するための主な検査・診察は以下3つです。

  • 血液検査(甲状腺機能検査を含む)

  • CT、MRI、脳波検査

  • 身体診察(神経学的所見を含む)

他にも、幼少期の発達歴や社会生活歴、統合失調症やパーソナリティ障害の有無に関しても注意深く問診する必要があります。

双極性障害は、統合失調症やうつ病、パーソナリティ障害との鑑別が難しい場合が多いだけでなく、併発疾患の頻度が高い傾向があるため正確な診断が必要です。

双極性障害を疑う場合は、幼少期の様子や社会生活の詳細などの情報も大切な指標になるため、問診の際には可能な限り正確に答えられるようにしておく必要があります。

診断が難しいとされている双極性障害ですが、珍しい疾患ではないため心療内科クリニックや精神科病院など専門の医師を受診をするとよいでしょう。

参考「日本うつ病学会診療ガイドライン双極性障害(双極症)2023

双極性障害の原因

双極性障害の原因は未だ明確に解明されていませんが、仕事や職場、家庭でのストレスや人間関係、養育環境も原因の一つとして関係しているのではないかといわれています。

一昔前、双極性障害で亡くなった患者さんの脳を調べ、双極性障害の原因を明らかにするために研究が盛んにおこなわれていた時期がありましたが「双極性障害と脳萎縮」の関係性は見つけられなかったそうです。

近年、研究技術が進歩し、以前にもまして詳しく脳の状態を調べることが可能になったことで双極性障害を引き起こす要因や脳への影響などが少しずつ明らかになってきています。

ある大学の研究で、双極性障害とうつ病の「脳体積」の差異をMRIを用いて比較研究したところ、双極性障害の患者のほうがうつ病患者よりも脳の2つの部位が小さいことが判明しました。

脳の2つの部位とは、感情や思考に関係する前頭葉という場所の「背外側前頭皮質」「前帯状皮質」です。

MRIを用いた研究結果は、双極性障害の直接的な原因の解明にはなりませんが、脳の仕組みを明らかにし双極性障害やうつ病の原因を解明するためのヒントになりうることが期待されています。

また、周産期障害、妊娠中のインフルエンザ感染や母親の喫煙など、周産期の要因が多いことが報告されています。

引用:「双極性障害とは-順天堂大学医学部/大学院医学研究科気分障害分子病態学講座」「双極性障害(躁うつ病)とうつ病の前頭葉体積の違いが明らかにーMRIにより判別が可能になることに期待ー

双極性障害の治療方法

双極性障害の治療方法は詳細に分けると6種類ありますが、大きく分けて3つの方法があります。

  • 薬物療法

  • 心理療法

  • 対人関係・社会リズム療法(IP-SRT)

また、双極性障害の治療は基本的に外来(通院)治療が主となりますが、症状によっては入院が必要となる場合もあります。

入院が必要な主な例は以下4つです。

  • 暴言や暴力がある

  • 金銭感覚の異常(乱費)がある

  • 身体的衰弱が著しい

  • 社会機能・日常生活機能に著しい障害がある

外来治療に限界がある場合は入院治療を検討することになりますが、基本は患者の苦しみに共感しながら必要に応じた治療を外来で進めていきます。

薬物療法

双極性障害では薬を使用して治療が進められる場合が多くあります。

症状によっては、双極性障害であっても薬なしで経過をみていく場合もありますが、薬を服用することで感情を安定させる働きや再発を予防する効果もあるため、薬物療法は重要です。

双極性障害の薬の一覧は以下のとおりです。

躁状態の改善

リーマス(一般名:炭酸リチウム)

デパケン(一般名:バルプロ酸ナトリウム)

テグレトール(一般名:カルバマゼピン)

うつ状態の改善

ジプレキサ(一般名:オランザピン)

セロクエル(一般名:クエチアピン)

ラミクタール(一般名:ラモトリギン)

エビリファイ(一般名:アリピラゾール)

再発予防

デパケン(一般名:バルプロ酸ナトリウム)

ラミクタール(一般名:ラモトリギン)

ジプレキサ(一般名:オランザピン)

セロクエル(一般名:クエチアピン)

薬をしっかりと内服しているにもかかわらず薬が効かない場合や薬の副作用が強く出てしまっている場合は、薬を変更することがあります。

薬を内服しなければいけない状況のなかで薬を内服しないと、症状が安定するまでに時間がかかってしまうため薬物療法は重要な治療法の一つです。

双極性障害で使用される基本的な薬は、リーマス(一般名:炭酸リチウム)です。

リーマスには、躁病の症状を緩和させる作用があり、感情の高まりや行動を抑えて気分を安定させる効果があります。

詳しい作用機序は明らかになっていませんが、躁病の症状を緩和させるだけでなく抗うつ薬の効果を高める作用もあります。

そのため、うつ病の治療効果を高めるためにリーマスを使用することも多いです。

リーマスの副作用の一つに「リチウム中毒」があり、過剰摂取してしまうとめまいや吐き気・嘔吐、手の震え、言葉のもつれなどの副作用が生じることがあるため慎重に服薬管理をする必要があります。

リーマスは、過量投与による中毒を起こすことがあるので、投与初期又は用量を増量した時には維持量が決まるまでは1週間に1回をめどに、維持量の投与中には2〜3ヶ月に1回をめどに、血清リチウム濃度の測定結果を基づき値を評価する必要があります。

血液検査により、血清リチウム濃度を定期的に評価していくため怖がるような薬ではありません。

しかし、食事摂取不足や脱水、非ステロイド性消炎鎮痛剤の併用などが要因となり血清カリウム値を上昇させる可能性があるため注意が必要です。

血清カリウム中毒の症状が出現した場合は、直ちに医師に相談するようにしてください。

引用:「リーマス錠200の基本情報

心理療法

認知行動療法(CBT)は、認知療法と行動療法が合わさってできた治療法で物事の解釈(=認知)と行動に働きかけて、生きづらくしている部分を見つけ出し少しずつ気持ちを楽にしていく治療です。

心理療法は、病気の理解と薬物療法における作用や副作用、再発の兆候を本人や家族が把握・共有することで、病気の増悪を予防し治療効果を高める役割があります。

双極性障害は、病気であるためカウンセリングによって心の悩みを相談するだけでは病気を治すことはできません。

まずは双極性障害という病気を理解することからはじまり、病気によって引き起こされる心の変化にしっかりと目をむける必要があります。

双極性障害は再発しやすい病気であるため「再発の最初の兆候はなにか?」を本人や家族が十分に理解しておくことが非常に重要です。

双極性障害が再発した場合、治療をおこなわずに放置してしまうと、病気である自覚が薄れてしまいます。

自覚がないと通院しなくなるため、そのまま病状が悪化してしまうケースが非常に多く見受けられます。

病状が悪化してしまうと、治療期間が長くなってしまうため再発の兆候がみられたら放置せず早急にかかりつけの医療機関を受診することが大切です。

また、心理療法では双極性障害を増悪させない方法についても検討していきます。

双極性障害は躁状態と抑うつ状態が反復する疾患のため、気分の変化による思考や認知、行動パターンに注目し考え方のクセを見つけていくことで、症状を最小限に抑えられるように意識していきます。

双極性障害が再発するきっかけとなる要因を事前に予測し、ストレスとなる原因を排除したり、対処法を学ぶことも良いでしょう。

対人関係・社会リズム療法(IP-SRT)

「対人関係療法」と「社会リズム療法」を組み合わせた治療が「対人関係・社会リズム療法」です。

対人関係・社会リズム療法を取り入れるタイミングは、治療意欲が高まっているとされる「うつ病の急性期」や「躁状態もしくは混合性エピソードの回復期」に導入することが望ましいとされています。

対人関係療法と社会リズム療法はそれぞれうつ病の治療に取り入れられている治療法で、2つを組み合わせた「対人関係社会リズム療法」は双極性障害に対して非常に有効的だといわれています。

対人関係療法は、患者にとって重要な他者との関係を見直し再構築を図るものです。

対人関係のストレスを軽減し、家族や学校・職場の人間関係を回復させるための方法をロールプレイなどで練習していきます。

良い対人関係を築くことで周囲の人に病気を受け入れてもらいやすく、サポートを受けることができるため、治療を受けやすい環境ができ症状の緩和が期待できます。

一方、社会リズム療法は、自分の生活リズムがどのようなものかを記録することで自分がどのような時に社会リズム(生活)の乱れが生じるのかを可視化する治療法です。

社会(生活)リズムの乱れを記録し、可視化することで、どんな時に社会(生活)リズムが不規則になりやすいかを知ることができるため、症状が出現した時に対策・修正がしやすいことが特徴です。

生活リズムを記録するだけではなく、生活リズムを整え改善することも同時におこなわれます。

生活リズムを整えるために重要となるのは「概日リズム」です。

概日リズム(睡眠・覚醒リズム)とは簡単にいうと「体内時計」のことで、睡眠や覚醒は自律神経系や内分泌ホルモン系などと同様に体内時計によって約1日の周期をもつリズムに調節されています。

人間の体内時計は25時間ですが、食事や運動などの日常生活、仕事などの社会的活動等の様々な刺激を受けることで体内時計が24時間になると考えられています。

概日リズムが崩れ、24時間周期を修正できずにいると睡眠障害が生じやすくなり、入眠したくても望ましい時間に眠ることができなくなるため覚醒時間もまばらになりやすいです。

双極性障害は、生活リズムの乱れが病気を悪化させてしまう要因となることから、概日リズム(睡眠・覚醒リズム)を崩さないように概日リズムを整えることも治療の一貫になります。

概日リズムを整えるポイントは、朝の日差しを浴びることです。

朝日を浴びると、脳の松果体(しょうかたい)と呼ばれるところから眠気を誘う物質である「メラトニン」の分泌が一時的に止まります。

メラトニンは目覚めてから15時間前後で再び分泌され、徐々に分泌が高まると休息に適した眠気を感じます。

朝日を浴びてメラトニンの分泌を抑制すると、概日リズムが整い夜間になると自然な眠気を感じるようになるため、生活リズムを整えるために朝日を浴びるようにすると良いでしょう。

双極性障害の治療は、薬物療法や心理療法に加えて生活リズムを整えることも非常に重要です。

急に生活リズムを変えることは難しいですが、生活が乱れないように意識しながら少しずつ生活リズムを改善していくとよいです。

参考:「体内時計と睡眠のしくみ|体内時計を調節するホルモン、メラトニン」「双極性障害の対人関係-社会リズム療法(IPSRT)による治療〜その4・社会リズム療法

入院治療

双極性障害は外来治療が基本ですが、状態によっては入院が必要となる場合があります。

病状が非常に不安定なことに加えて、家庭で療養するための環境が整っていない場合や外来でおこなう薬物治療や精神療法がいきづまった場合なども適応となります。

双極性障害は、他疾患の影響により自殺や他害のリスクがあるため、入院中は薬物療法や精神療法をおこないながらリスクのコントロールをしていく場合も多いです。

また、生活リズムの乱れが双極性障害の再発や悪化を招く要因となるため、入院中は患者の生活リズムに配慮しながら生活リズムが乱れないように経過を観察していきます。

入院中であっても症状の緩和が図れない場合は、やむを得えず一時的に隔離室で休養させる必要があります。

患者や家族の意向も聴いたうえで対応していきますが、緊急性があり身体的・社会的安全を守れない場合は隔離室で対応をする場合が多いです。

双極性障害とうつ病の違い

双極性障害とうつ病の違いは、うつ病は気分の落ち込みや不眠などの症状が見られますが、双極性障害は気分が高揚する「躁状態」と気分の落ち込みが生じる「うつ状態」を繰り返す疾患であるため、双方の違いは明確で似て非なるものです。

つまり双極性障害は躁状態とうつ状態を繰り返す病気で、うつ病はうつ状態のみが症状として現れるという特徴があります。

そのため、双極性障害とうつ病は、全く別の病気であり治療方法や使用する薬も異なります。

双極性障害は一般的に「躁うつ病」と言われており、うつ状態が出現することからうつ病と勘違いされるケースも多いです。

双極性障害とうつ病は発症原因も違います。

双極性障害の発症原因は、明確にはわかっていませんが仕事や職場、家庭でのストレスや人間関係、養育環境が発症のきっかけになると考えられていますが、直接的な原因ではありません。

神経伝達物質の機能の変化や周産期障害、ゲノム要因の関与も大きいとされています。

一方、うつ病の発症原因はストレスです。

うつ病を発症しやすいストレス要因は、家族や大切な人(モノ)を失う喪失感、環境の変化、人間関係です。

ストレス耐性は個人差があり、同じ状況であってもあまりストレスを感じない人もいますが「ストレスを感じやすい」性格の場合、うつ病を発症する可能性があります。

ストレスを感じやすい性格を「メランコリー親和型」といい、生真面目で責任感が強く几帳面という特徴があります。

また、仕事熱心で完璧主義であったり一人で悩みを抱えてしまう人もメランコリー親和型性格です。

ストレスを感じやすい性格で、うつ病になりやすい傾向がありますが、必ずしもうつ病を発症するわけではないため必要以上に心配する必要はありません。

双極性障害とうつ病では、発症要因が異なり症状の出現方法も違う点が多く全く別の疾患です。

双極性障害と発達障害の違い

双極性障害と発達障害は全く異なる疾患ですが、症状が似ている点が多くあるため「どちらの疾患なのか」しばしば鑑別に悩むケースがあります。

双極性障害とは「躁状態」と「うつ状態」が繰り返し出現し、発症原因は明確にわかっていませんが、後天的な疾患でストレスや生活の乱れなどの環境要因が大きく関係しているといわれています。

一方、発達障害は生まれつき脳の一部に機能障害があると考えられていますが、同じく原因については研究が進められている段階です。

双極性障害と症状が似ているADHDという発達障害は、多動性や多弁、落ち着きのなさなどが双極性障害の症状と非常に似ています。

診断する際は、双極性障害とADHDの診断基準は、DMS-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)やICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)をもとにそれぞれエピソードが当てはまるかどうかを検討し、慎重に診断していきます。

双方、似た症状が出現することがあるため、鑑別に悩むケースがありますが似て非なる疾患です。

双極性障害と向き合うコツ

双極性障害と診断されたら、医師より処方される双極性障害の治療薬や抗精神病薬などをきちんと内服し、症状を安定させることが重要です。

また、双極性障害が発症する原因の1つにストレスが関係していると考えられているため、家族や周囲の人の理解と協力を得ながら時間をかけて治療していくことが大切です。

双極性障害は児童や若者、高齢者など広い年代に発症するため、各年代やライフステージごとに配慮すべき点も異なります。

小児・青年期の患者への配慮

発達段階にある小児や青年期の若者は、教育や職業訓練など必要に応じて支援をおこなう必要があります。

双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す疾患であるため病状によっては学習が思うように進まなかったり、仕事のストレスなどが要因となり病気が再発する可能性も考えられます。

そのため、心身ともに発達段階にある小児や青年期の若者に対する支援は、教育はもちろん職業訓練の機会を与えられるよう、教育機関や支援機関と連携することが重要です。

労働年齢の患者への配慮

労働年齢にある患者への配慮では「職場との連携」が必要であるかどうかを検討する場合があります。

日本うつ病学会診療ガイドラインによると「職場関係者からの情報収集は診断上も重要であるため、職場が本人の治療・回復作業に協力的と見込まれる場合には、本人の同意を得た上で連携を図る。」と記されています。

労働者にとって職場は1日の中でも多くの時間を過ごす場所です。

本人の生活があるため「病気だから」と簡単に退職することが難しい場合もあるでしょう。

躁病エピソードにより、易怒性の出現や逸脱した言動が出現し社会的立場が危ぶまれる場合は休職をすることになります。

休職する場合、休職開始前に以下2つを確認しておくと良いでしょう。

  • 休職している期間のお給料(支払われる額や期間、傷病手当金の有無)

  • 休職・退職日の期日

労働年齢の患者にとって、職場に協力を得て業務をする場合や休職・退職をする場合は自身の環境が変わるため一時的に精神的な負担が大きくなる可能性があります。

周りの協力が必要なことや休まなくてはいけない状況であることを伝えることで、本人の精神的負担を軽減させる関わりも必要です。

老年期の患者への配慮

老年期(高齢者)は、認知機能の低下により内服薬の飲み忘れや過剰摂取が生じやすい傾向があるため服薬管理は十分注意する必要があります。

服薬管理が難しい場合は、訪問看護師や家族などが連携し患者が薬を正しく飲めるように支援することが必要です。

認知機能がしっかりしている場合であっても身体機能の衰えにより指先が動かしにくくなっていたり、細かい作業をすることが困難となっている場合があるため、薬のヒート(薬が入っているシート)から薬を取り出すことが難しい場合があります。

薬の取り出しにくさが原因で、うまく内服することができない場合は薬剤師に相談するとよいでしょう。

薬が取り出しやすいように工夫してもらえる可能性があります。

また、高齢者は加齢とともに身体機能が衰えていくため双極性障害の治療薬を内服すると、薬の副作用が生じやすい傾向があります。

使用する薬の種類によって出現する副作用は異なりますが、処方された薬の説明書をよく読み「注意すべき副作用」を知っておくことで副作用が出現した場合、すぐに医師に相談することができるでしょう。

双極性障害は、薬による治療が重要であるため、高齢者の服薬管理はきちんとおこなえるように支援することが大切です。

引用・参考「日本うつ病学会診療ガイドライン双極性障害(双極症)2023

日常生活の過ごし方

双極性障害の症状を悪化させる要因の1つに生活リズムの乱れが考えられています。

双極性障害を悪化させないためのコツは以下の4つです。

  • 十分な睡眠をとる(徹夜は避ける)

  • リフレッシュ方法を知る

  • 規則正しい体のリズムを作る

  • 適度な運動を心がける

また、双極性障害が再発する前兆を自身や家族が把握しておくと早急に対応することができるため、日常生活においてストレスを感じることや体調の変化があった際はメモなどに記録をしておくと良いでしょう。

家族や周囲のサポートが不可欠

双極性障害は治療期間が長くなりやすく、再発しやすい疾患であるため家族や周囲の理解とサポートが必要になります。

患者だけでなく家族が双極性障害の理解を深めて病気と向き合うことを目的としている「家族療法」という治療方法もあります。

家族療法は、薬物療法や認知療法とともに再発を予防するためにとても重要な治療の一つです。

参考:双極性障害(双極症)ABC

双極性障害になりやすい性格は?

双極性障害になりやすい人は、社交的で人と関わることが好きな性格の人や共感力や創造性がある人(循環型の性格)です。

「双極性障害の人は頭がいい」と聞いたことがある人もいるかもしれませんが、双極性障害を患っている人の中に優れた能力をもち、天才的なレベルに達している人が比較的多い傾向があるといわれています。

理由ははっきりとわかっていませんが、共感力や創造性が高いことが影響していると考えられています。

参考:「躁うつ病(双極性感情障害)と共感・想像力:「一流の狂気とは 」

よくある質問Q&A

双極性障害の行動の特徴は?

双極性障害の基本的な症状は「躁状態」と「抑うつ状態」が交互に出現します。

躁状態では、金銭感覚が狂い借金をしてまでギャンブルや買い物をしたり、人の意見や話を聞かず喋り続けるなどの症状がみられやすいです。

抑うつ状態では、気分が塞ぎ込みや意欲の低下が出現しやすい傾向があります。

また、双極性障害幼少期の症状も成人と大差はなく、躁状態と抑うつ状態が交互に出現します。

症状の出現や程度に関しては個人差があるため、自身の行動の特徴を知っておくことは、治療をするうえで非常に重要です。

参考:「MSDマニュアル家庭版そうにと青年における双極性障害(躁うつ病)

双極性障害1型と2型の違いはなんですか?

双極性障害一型は、躁状態とうつ状態どちらも症状が重く、気分の落ち込みと高揚の落差が激しいという特徴があります。

日常生活や社会生活に支障をきたすほど症状が激しく、症状によっては自他に傷害を与える可能性もあります。

日常生活や社会生活に著しい支障が出現している場合や傷害を与える可能性がある場合、外来での治療効果が芳しくない場合は入院が必要です。

一方、双極性障害二型は一型に比べて比較的症状が軽い傾向があります。

症状が軽いため自分や周りが症状に気づきにくいことが特徴です。

双極性障害二型は症状は軽いものの、うつ病の期間が長引く傾向があり重症化するケースが多いです。

双極性障害とうつ病の違いはなんですか?

双極性障害は「躁状態」と「うつ状態」が反復する疾患ですが、うつ病は「うつ状態」が持続的にある疾患です。

双極性障害とうつ病は似ていますが、発症要因も異なります。

双極性障害の発症要因は、明確にわかっていませんが職場や家庭でのストレスや人間関係が発症のきっかけと考えられていますが、直接的な原因ではありません。

神経伝達物質の機能変化や周産期障害、ゲノム要因が大きく関与しているのではないかとされています。

一方、うつ病の発症要因はストレスです。

家族や大切な人(モノ)の喪失や、環境の変化、人間関係などで強いストレスを感じると、ストレスがきっかけとなりうつ病を発症することがあります。

うつ病の種類に「仮面うつ病」といって、一見元気で抑うつ気分がほとんど目立たないタイプのうつ病もあるため、双極性障害と鑑別する際は慎重に診察がおこなわれます。

双極性障害の行動パターンは?

双極性障害の主な行動パターンを以下の表にまとめました。

躁状態

・多弁

・些細なことで気が散る(注意散漫)

・睡眠欲求の減少

・過活動(気の向くまま無計画に作業をする)

・ギャンブルや不要なものを大量に買う

など

うつ状態

・気分の落ち込み

・意欲低下(活動性の低下)

・動作がゆっくりになる

双極性障害の特徴を理解することは、疾患を理解するうえで重要です。

双極性障害の有名人は?

双極性障害と公表している有名人は岡村隆史さん、遠野なぎこさん、丸岡いずみさんなどがいます。

ブログや出版した本などで自身が双極性障害であることを公表しています。

まとめ

双極性障害は躁状態と抑うつ状態が反復する病気です。

双極性障害には一型と二型があり、二型は一型と比べると比較的症状が軽い傾向があります。

双極性障害の主な治療方法は、薬物療法をはじめ、認知行動療法や対人関係・社会リズム療法といったものがあり、症状の緩和と再発予防を目的として治療が進められていきます。

また、症状の緩和と再発予防のために、日常生活に気をつける必要があり、ストレスとなる原因から距離を置いたり生活リズムが乱れないようにしたりするなどの対策が必要です。

双極性障害は、多弁や注意散漫、意欲低下や無気力感といった症状が交互に出現するため当人はもちろん、周囲の人も戸惑うことがあることでしょう。

双極性障害は回復するまでに時間がかかるため、家族や周囲の理解や協力が必要不可欠です。

焦らずゆっくり治療していきましょう。

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TOP医療コラム【双極性障害とは?】症状と特徴について解説