双極性障害とはどんな病気?症状のセルフチェック法や診断基準も解説

公開日: 2024/01/08 更新日: 2024/05/22
双極性障害は、どのような病気か詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか? 双極性障害という病名はあまり聞いたことがないかもしれませんが、以前躁うつ病と言われていました。 統合失調症とならんで、二大精神疾患のひとつです。 日本では、500人に一人がなるとされ、珍しい病気ではなく、自分や家族、同僚など誰もがなり得る病気です。 双極性障害は、治らない病気ではありません。薬を飲むことによってコントロールでき、普通の生活をおくることができます。 そのために、双極性障害を知り、セルフチェックをすることや周囲の人が発症のサインに気づき、医療機関へ受診できることが重要です。 この記事では、双極性障害の症状やセルフチェック法、治療などについて解説します。 自分や家族が双極性障害ではないか心配な方は、ぜひ最後までお読みください。
目次

双極性障害とはどんな病気?Ⅰ型とⅡ型の違いとは

双極性障害とは、ある期間でうつ状態と躁状態が交互に繰り返される気分障害のひとつです。以前は躁うつ病と呼ばれていました。

うつ病と混同されることが多いですが、違う病気です。

気分の波が極端に変化し躁状態のときは、気分が良く、意欲がある状態です。しかし、うつ状態は、憂うつで気分が落ち込み、意欲がなくなる状態になります。

双極性障害には、Ⅰ型とⅡ型の2つのタイプがあり、躁状態の程度により分けられています。

双極性障害Ⅰ型は、躁状態とうつ状態が交互に現れる状態です。

双極性障害Ⅰ型の躁状態は、社会生活に支障をきたすほどの、極端な興奮や高揚感、無謀な行動、自己肯定感の高まりが現れます。

一方で、うつ状態は極度の憂うつや絶望感、自殺願望などが現れます。

双極性障害Ⅱ型は、うつ状態と軽い躁状態が交互に表れる状態です。軽い躁状態は、社会生活に支障をきたさない程度の躁状態のことです。

極端な興奮や高揚感ではありませんが、楽観的な気分や活力の増加などの変化があります。

双極性障害のセルフチェック方法|診断基準も解説

うつ状態になった後、極端に調子が良くなって、活発になる時期がある場合、双極性障害かもしれません。

ここでは、双極性障害のセルフチェック方法と診断基準について解説します。

セルフチェック方法

気分の変動を自覚していて、自分が双極性障害ではないかと心配な方は、セルフチェックで症状を確認してみて下さい。[1]

セルフチェックの質問

ほぼ1日中、4日以上にわたって、普段と違って気分が高揚して爽快に感じる。

または、怒りやすくなるが、目標に向かって活動性が高まっている時期がある。

(この質問にあてはまる時期がある方は、その時期に以下の質問のような症状があるかチェック)

自分は何でもできると思ったり、とても偉くなった感じがしますか?

徹夜したり、いつもよりずっと睡眠時間が短くても、元気だったことがありますか?

話したくて仕方なくて抑えられず、しゃべり続けたことがありますか?

新しい考えやアイデアが浮かんで、頭の中で考えが競いあっているような感覚がありましたか?

一つのことに集中できず、すぐにほかのことにきが散ってしまうようなことはありましたか?

仕事や学業・対人関係などで、目標に向かって活動的になったり、じっとしていられなかったりすることがありましたか?

あまり必要ないものや高額なものを買ってしまったり、やりたいことへの衝動をおさえられなくなったりしたことがありましたか?

上記の表の質問が、3つあてはまる方は、双極性障害の躁状態の可能性があります。

医療機関の受診をおすすめします。

診断基準

双極性障害の診断基準は、ICDとDSMという基準が使用されています。

ここでは、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5を紹介します。

躁病と診断される基準

A.異常に高揚した気分が続いたり、開放的になったり、怒りっぽくなったり、といった形で、いつもと違う状態が1週間以上続く。

社会生活上、著しい問題を引き起こし、自分や他人に害を及ぼすことを防ぐため、入院を要する状態。

B.Aの期間中、以下の症状のうち3つ以上が続く

1.「自分はすごい」といった風に、自尊心が過大になる

2.「少ししか寝なくても元気」といった形で、睡眠欲が低下する

3.いつもよりやたらと多く言葉を発し、しゃべり続けようとして止まらない

4.考えが次から次へと浮かぶが、連続性に欠け、会話もまとまらない

5.一つのことに集中し続けることができず、簡単にあちこちにそれてしまう

6.仕事・学校・性的活動などにおいて異常に活発になったり、焦ったりする

7.悪い結果になりそうな行動に熱中する(例:浪費、性的に奔放な行動、勝算の無い事業に投資する、など)

C.物質(例:薬物乱用、医薬品、または他の治療)の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。

[2]

軽躁と診断される基準

A.異常に高揚した気分が続いたり、開放的になったり、怒りっぽくなったり、といった形で、いつもと違う状態が4日以上ほぼ毎日、一日中続く。

社会生活上は著しい問題を引き起こすレベルではなく、入院が必要なほどではない。

B.Aの期間中、以下の症状のうち3つ以上が続く

1.「自分はすごい」といった風に、自尊心が過大になる

2.「少ししか寝なくても元気」といった形で、睡眠欲が低下する

3.いつもよりやたらと多く言葉を発し、しゃべり続けようとして止まらない

4.考えが次から次へと浮かぶが、連続性に欠け、会話もまとまらない

5.一つのことに集中し続けることができず、簡単にあちこちにそれてしまう

6.仕事・学校・性的活動などにおいて異常に活発になったり、焦ったりする

7.悪い結果になりそうな行動に熱中する(例:浪費、性的に奔放な行動、勝算の無い事業に投資する、など)

C.症状のない時のその人固有のものではないような、疑う余地のない機能的変化と関連する。

D.気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。

E.物質(例:薬物乱用、医薬品、あるいは他の治療)の生理学的作用によるものではない。

[2]

抑うつと診断される基準

以下の症状のうち5項目以上が、同じ2週間の間に存在し、症状が出現する前に比べて、生活機能が低下している。

うつ病の診断のためには、少なくとも1.または2.を含む必要がある。

1.悲しかったり虚しかったり絶望感にさいなまれたり、涙を流していたりするような抑うつ気分が、ほとんど1日中、ほとんど毎日みられる。

なお、子どもや青年では、怒りっぽい気分になることもある

2.ほぼ1日中、ほとんど毎日、すべてもしくはほとんどの活動に対する興味や喜びが著しく低下している

3.ダイエットなどの食事制限をしていないにもかかわらず、1か月で5%以上の体重減少が起こるような食欲低下。

あるいは、1か月で5%以上の体重増加が起こるような食欲亢進

4.ほぼ毎日の不眠や過眠

5.ほぼ毎日にわたる焦燥や思考のスピードが遅くなったり、返答が遅くなったりする

6.ほぼ毎日の疲れやすさや気力低下

7.ほぼ毎日、自分に価値がないように感じたり、不適切かつ過剰に自分を責める

8.思考力や集中力の低下、あるいは決断力の低下がほぼ毎日にわたって認められる

9.自殺について繰り返し考える

C.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

D.物質の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。

[2]

双極性障害の症状|話し方や行動の特徴と初期症状について解説

双極性障害の症状は、躁状態とうつ状態に分けることができます。

それぞれに特徴のある話し方や行動があり、初めて関わると戸惑いを感じることがあるでしょう。その症状は、初期症状や再発のサインかもしれません。

ここでは、躁状態、うつ状態のときの特徴と接し方について解説します。

躁状態のときの話し方や行動の特徴と接し方

躁状態のときの話し方には4つの特徴があります。

  • 話がせわしなくなる

  • 会話を強く求める

  • 思いつくままに言葉を発する

  • 早口になる

話し相手や周囲の人は、何を伝えたいのかが、わからなくなってしまいます。

また、行動の特徴は、以下の5つです。

  • 活動的で素早く動き回る

  • 衝動的に決断をして、失敗する

  • 自己管理ができなくなる

  • 必要ない出費が増える

  • 他人に批判的になる

躁状態は、このような状態が1週間以上続くため、周囲の人も本人も疲弊していきます。このような状態のとき、本人は病気という自覚はなく、調子が良いと感じています。

そのため、うつ状態では病院に通院しますが、躁状態で通院を止めてしまうこともよくあります。

躁状態では、肯定や否定をせずに、じっくり話を聞くことが大切です。身体の心配をしていると伝え、医療機関を受診するよう促しましょう。

うつ状態のときの話し方や行動の特徴と接し方

うつ状態のときの話し方には5つの特徴があります。

  • 声が小さくなる

  • 口数が減る

  • 返答が遅い

  • 独り言がおおくなる

  • 会話がそっけなくなる

話し相手や周囲の人は、何を伝えたいのかが、わからなくなってしまいます。

また、行動の特徴は、以下の5つです。

  • 物事を始めたり、終わらせたりすることが困難

  • 自己評価が下がる

  • 他人を避ける

  • 遅刻や欠勤が増える

  • 仕事のミスが増える

うつ状態のときは、毎日憂うつな気分が続き、食欲がなくなったり、便秘になったり、身体にも影響をおよぼします。

うつ状態のときに必要なことは休養です。励ますことはせず、緊張を和らげるようにしましょう。なにかを話しているときには、ゆっくりと話を聞いてください。

そして、本人が会話する意志がないときには、適度な距離を保って寄り添いを続けていくことが大切です。

初期症状と再発のサイン

双極性障害の診断は、多くの場合うつ状態のときの受診です。

その後に躁状態を発症して双極性障害と診断されます。躁状態は、本人に自覚がない場合が多いため、医師へ症状として伝えられることが少ないです。

双極性障害の初期症状は、うつ状態の症状がないかを見ていくとよいでしょう。

  • なにも楽しくない日が続いている

  • 食欲がない、眠れないといった身体的な不調がある

  • 周りから様子が違うと心配されることが増えた

このような症状が増えたときには、医療機関を受診するようにしましょう。

双極性障害は、治療によって症状を緩和できる病気です。しかし、再発が多いため、再発予防をしていくことが必要です。

再発の原因は、薬を正しく飲み続けられないことが最も多いとされています。

再発のサインは人それぞれですが、いつもと違うと感じたときは、すぐに受診するようにしましょう。

再発のサインの例を7つ紹介します。

  • 睡眠に変化がある

  • 食欲に変化がある

  • 性格や行動がいつもと違う

  • 思考のスピードや内容がいつもと違う

  • 不安や焦燥感がある

  • 怒りっぽくなる

  • 気分の変化がある

自分で自覚することが難しい場合には、家族や周囲の人にこのような症状がないか、観察してもらえるようにしておきましょう。

双極性障害になりやすい人はどんな人?原因を解説

双極性障害はどんなひとがなりやすいのでしょうか。

ここでは、なりやすい性格や原因について解説します。

なりやすい人・なりやすい性格とは?

双極性障害になりやすい人・なりやすい性格は、社交的で、周囲との調和を大切にしながら生きていこうと努める人といわれています。

具体的には、以下のような人をいいます。

  • 社交的で人付き合いが好き

  • 活動的で熱中しやすい

  • 陽気でおしゃべり

  • 他者からの評価を常に気にする

このような性格やストレス、環境が要因となることがあります。

遺伝が関係するの?

双極性障害は、遺伝することが確認されています。

遺伝の影響をみるために、以前、双子を対象とした研究が行われました。

同じ遺伝子を持つ一卵性双生児と遺伝子が同じではない二卵性双生児を比較すると、一卵性双生児のほうが発症する確率が高いことが明らかになっています。

しかし、遺伝率は100%ではありません。

その他の原因とは?

双極性障害の原因は完全に明らかになっていませんが、性格や遺伝以外にも発症の原因があると考えられています。

双極性障害につながるとされる要因は次の4つです。

  • 養育環境

  • 社会生活のストレス

  • 生活リズムの乱れ

  • 脳内物質のバランスの乱れ

ストレスやトラウマなどが発症の要因です。

特に、幼少期のトラウマや大きなストレスが、のちに双極性障害を引き起こすことがあるとされています。

また、脳内のセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質などの神経伝達物質のバランスが崩れることにより発症に影響を及ぼすと考えられます。

双極性障害の治療とは?

双極性障害は、長期間症状を繰り返すため、治療も継続していく必要があります。両方の症状をコントロールすれば、日常生活を送ることができるようになります。

代表的な治療は、薬物療法と心理社会的療法です。

ここでは、治療について解説します。

薬物療法と心理社会的療法

双極性障害に対して有効とされている治療は、薬物療法と心理社会的療法です。

薬物療法では、2つの目的で薬が使われます。

  • 躁状態、うつ状態を改善する

  • 気分の波を少なくする

まず、現在発症している症状の改善を行い、家族や仕事でのトラブルをなくしていきます。うつ状態は、本人が苦しみを感じていますので、苦しみの緩和が必要です。

躁状態、うつ状態それぞれが発症する波を少なくしていくことが、再発予防につながります。

心理社会的療法では、病気の理解を深めて、気分のコントロールやストレスの管理、生活リズムを整えていきます。

以下の4つを行うのが心理社会的療法です。

  • 心理療法:本人自身が病気を正しく理解することで、再発予防につなげる

  • 家族療法:家族と共に回復を目指すために、家族の理解を深め、協力体制を整える

  • 認知行動療法:うつ状態の否定的な考えを自覚し、客観的な考え方をできるようにする

  • 対人関係・社会リズム療法:生活リズムを整え、人間関係からのストレスを軽減できるようする

それぞれの心理社会的療法も、専門家がその人に合わせて方法を考え、行われます。

薬物療法で使われる薬

薬物療法では、症状にあわせて効果的な薬を組み合わせて治療を進めていきます。

双極性障害では、以下の薬が使用されます。

  • 気分安定薬:躁状態、うつ状態の治療と予防効果があります

  • 抗精神病薬:気分安定薬と服用すると躁状態に効果がある

気分安定薬の主な副作用は以下のとおりです。

薬名

副作用

炭酸リチウム

手の震え、下痢、吐き気など

バルプロ酸ナトリウム

傾眠、ふらつき、吐き気など

カルバマゼピン

めまい、吐き気、皮膚炎など

抗精神病薬の主な副作用は以下のとおりです。

薬名

副作用

オランザピン

食欲増加に伴う体重増加、血糖値上昇など

クエチアピン

眠気やめまいなど

アリピプラゾール

アカシジアなど

副作用の出やすさは一様ではなく、薬剤の種類や患者ごとに異なります。

薬を使って「何かいつもと違う」「副作用ではないか?」と感じることがあれば、我慢したり恥ずかしがったりせず、すぐに主治医や薬剤師に相談してください。

症状が治まったからといって、薬を飲むことを止めてしまうと再発しますので、正しく服薬を継続していきましょう。

Q&A

ここでは、双極性障害に関する質問についてお答えします。

双極性障害の行動の特徴は?

双極性障害の行動の特徴は、躁状態のときとうつ状態のときで違いがあります。

躁状態では、気分の高揚が持続し、気持ちが大きくなり、無謀な行動を取るようになります。

眠らなくなって、思いつくままに言葉を発し、他人に対して高圧的になるため注意が必要です。

うつ状態では、気分がひどく落ち込み、何も楽しくないと思ってしまい、意欲や興味がなくなります。

誰にも会いたくなくなり、仕事の遅刻や欠勤が増え、全てにおいて悲観的な考え方になります。

双極性障害Ⅰ型とⅡ型の違いは何ですか?

双極性障害Ⅰ型とⅡ型の違いは、躁状態の程度により分けられています。

双極性障害Ⅰ型は、躁状態とうつ状態が交互に現れる状態です。

双極性障害Ⅱ型は、うつ状態と軽い躁状態が交互に表れる状態です。

双極性障害Ⅰ型の躁状態は、社会生活に支障をきたすほどの、極端な興奮や高揚感、無謀な行動、自己肯定感の高まりが現れます。

軽い躁状態は、社会生活に支障をきたさない程度の躁状態のことです。

双極性障害のきっかけは何ですか?

双極性障害のきっかけには、遺伝的要因、脳内物質のバランスの乱れ、環境要因、性格的要因などが関与しているとされています。

遺伝的な要因があることが確認されており、双極性障害を発症している人の家族に、同じ病気を発症している人がいる割合が高いことが報告されています。

ストレスやトラウマなども発症の要因です。特に、幼少期のトラウマや大きなストレスが後に双極性障害を引き起こすことがあるとされています。

双極性障害になりやすい性格は、社交的で、周囲との調和を大切にしながら生きていこうと努める人といわれています。

双極性障害治療しないとどうなる?

双極性障害は、治療しないと再発する病気です。何度も再発を繰り返すと、再発の感覚が短くなり、症状に振り回される人生を送ることになります。

今までの人生で築いてきた大切なものが、失われていく状況になることもあります。

必ず治療を行い、再発予防するようにしましょう。

双極性障害の平均寿命は?

1970〜2012年のデンマークで行われた研究結果では、25〜45歳の双極性障害患者の平均余命は、一般の男性、女性に比べて、8.3〜12. 0年短いとされています。[3]

その原因は、生活習慣病のリスクや内服している薬、自殺のリスクなどが関係していると考えられています。

まとめ

この記事では、双極性障害の症状やセルフチェック法、治療などについて解説しました。

自分や家族が双極性障害ではないか心配な方は、セルフチェックで症状を確認してみてくださいね。

双極性障害で躁状態のときには病識がないことがほとんどなので、病院の受診が難しい場合が多いです。

ご家族や周りの方が双極性障害の兆候に気付き、病院の受診をすすめることが重要です。

気になる症状があるときには医療相談窓口に相談するようにしてください。

参考

[1]銀座心療内科クリニック>躁状態のセルフチェック

[2]ハートクリニック>こころのはなし>双極性感情障害

[3]CareNet>双極性障害、平均余命に大きく影響

FastDoctor
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