ブレインフォグの原因や症状は?新型コロナウイルスとの関係についても解説!

公開日: 2024/01/10 更新日: 2024/05/22
頭がもやもやする、考えがまとまらないといった症状は誰もが経験したことがあるものです。 しかし、その状態が持続していたり、社会生活に影響を与えたりするものであれば、ブレインフォグかもしれません。 ここでは、ブレインフォグの原因や症状、病態について詳しく説明していきます。
目次

ブレインフォグとは?

新型コロナウイルス感染後の後遺症として注目されるようになったブレインフォグ。

ブレインフォグでは、脳に霧ががかったように感じてぼんやりしたり、記憶力が低下したりします。

そして、ブレインフォグが強く出ると物事をうまく処理できなくなって、今まではできていたことが負担に感じるなど生活に大きな影響を与えることがあります。 

ブレインフォグは症状を表す言葉のため、医学的に特定の疾患を指しているわけではありません。ブレインフォグの影には他の病気が隠れている可能性があるのです。

ブレインフォグの原因

ブレインフォグの原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

ここではブレインフォグの原因について解説していきます。

ブレインフォグの原因:脳疲労

ブレインフォグの原因のひとつとして脳疲労が挙げられます。

現代ではスマートフォンやパソコンにより常に大量の情報がやり取りされていますが、これが脳を疲れさせる要因となり脳疲労を引き起こします。

脳は安静時に体の消費カロリーの約20%を消費するほどエネルギーを使う臓器です。

これは物事を考える事に使われるエネルギーだけでなく、無意識での情報処理や自律神経などを介して身体を調節するために使われるエネルギーも含まれます。

つまり、脳は常に活発に活動している状態なのです。

そこにスマートフォンなどで大量の情報が流れ込むと、脳は情報を処理しきれずに疲労が蓄積されて脳疲労になります。

他にも睡眠不足や日常的に複数のタスクをこなす事も脳疲労の原因です。

脳疲労になると、集中力が続かなくなる、情緒不安定になる、自律神経が乱れるなどの症状が現れます。

疲れているときに、ミスが増えたり、怒りっぽくなったりするのは脳疲労が一因と言えるでしょう。

このような脳疲労による症状の一部は、ブレインフォグとして認知されます。

ブレインフォグの原因:ストレス

ストレスは日常生活で避けては通れないものです。

適度なストレスは脳を活性化させる作用がありますが、継続的なストレスや過剰なストレスは脳疲労を招くため、ブレインフォグの原因となるのです。

ストレスがかかると、脳は交感神経を活性化させてストレスに対応しようとします。

身体は常に交感神経と副交感神経でコントロールされていますが、交感神経が活性化されると身体は緊張状態となります。

これは一時的なものであれば問題ありませんが、交感神経が優位な状態が長く続くと身体に不調が出るだけでなく、脳にも疲れがたまるのですります。

また、交感神経が優位だと睡眠障害を引き起こすことがありますが、これも脳を疲労させる一因です。

ストレスと脳疲労には以上のような関係があるため、過剰なストレスはブレインフォグの原因となりまするのです。

ブレインフォグの原因:生活習慣

ブレインフォグを招く生活習慣として不眠や栄養不足、運動不足などがあります。

まずは睡眠不足についてですが、脳を休めるために睡眠はとても重要な役割を果たしています。

人によって必要な睡眠時間は異なりますが日本人の平均は6〜8時間です。睡眠不足が続くと心身の疲労感が増すだけではなく、脳に疲労が溜まっていきます。

また、食生活の乱れや栄養不足も心や身体にとって大きなストレスとなります。

栄養不足が身体の不調や筋肉の減少に影響することは知られていますが、食事は心の状態にも影響を与えるのです。

特に過剰なカロリー摂取やビタミン・ミネラル不足は精神の不調に繋がり、うつ病を引き起こすこともあります。

最後に運動についてです。

運動は筋力を保つことや肥満予防になるだけでなく、精神面を整える作用もあります。

運動不足が続くとことで自律神経やホルモンバランスが乱れやすくなり、脳にも悪影響を与えるのです。

このように、生活習慣の乱れが脳の疲労や精神の不調につながり、結果としてブレインフォグを引き起こす原因となります。

ブレインフォグの原因:薬

抗うつ薬を服用している方がブレインフォグを訴えるケースがあります。

うつ病は、気分の落ち込みや不眠、やる気が出ないなどの症状が現れる精神疾患です。

このうつ病を治療するためにベンゾジアゼピン系やSSRI、SNRIといった抗うつ薬が使用されます。

うつ病の患者さんでは、抗うつ薬を服用している間や、薬の量を変更したときにブレインフォグが現れることがあります。

しかし、うつ病自体でもあたまがモヤモヤするような症状が出るため、薬の服用で起きている症状なのか、うつ病の症状なのかを判断するのは難しいです。

ブレインフォグの原因:PMS・更年期

女性ではPMSや更年期などホルモンの変化によってブレインフォグが現れることがあります。

PMSとは、月経前症候群と呼ばれる生理前の不調を指す言葉です。

生理の1週間くらい前に起きやすいとされ、生理が始まると改善します。

PMSは生理前に黄体ホルモンや卵胞ホルモンの変化が激しくなることが原因です。

このホルモンの変化により、情緒不安定や不眠・眠気、集中力の低下などの精神症状をはじめ、胸の張りや頭痛、むくみなどの身体症状も現れるのです。

また、更年期でもホルモンの変動があるため、ブレインフォグが現れやすくなります。

更年期とは閉経をはさんだ前後10年間を指します。

50歳前後で閉経する方が多いので、45歳〜55歳頃を更年期と呼ぶのが一般的です。

更年期には、エストロゲンの分泌が急激に低下することで頭痛やのぼせ、イライラ、不眠など、心身の不調が出やすくなります。

このように、女性ホルモンは身体や心の状態と密接に関係しています。

ホルモンバランスの変化により引き起こされるPMSや更年期には、症状のひとつとしてブレインフォグが現れることがあるのです。

ブレインフォグの原因:精神疾患

ブレインフォグは、様々な精神疾患に付随する症状として現れることがあります。

ブレインフォグの代表的な症状には、頭にモヤがかかったように感じて考えがまとまらない、集中できないという状態があります。

これは、うつ病やアルツハイマー型認知症など、他の精神疾患でも見られる症状です。

適切な治療のためには、ブレインフォグなのか、他の精神疾患の一部としてブレインフォグが出ているのか、専門医による正確な鑑別が重要です。

ブレインフォグの原因:新型コロナウイルス

新型コロナウイルス感染症は2019年に初めて報告されてから、現在でも流行が続いています。

感染経路は主に飛沫感染で、くしゃみや咳に含まれるウイルスを吸い込むことで感染するのです。

症状は、咳や喉の痛み、鼻水、息苦しさなどがありますが、重症例では肺炎を起こして入院することもあります。

新型コロナウイルスに感染しても症状は徐々に改善しますが、中には罹患後の症状(後遺症)が長期に及ぶ方もいるのです。

後遺症の症状はさまざまですが、疲労感・倦怠感、関節痛、息苦しさ、味覚・嗅覚異常などがあげられます。

この後遺症のひとつとして、ブレインフォグが報告されているのです。

新型コロナウイルス感染後にブレインフォグがおきる原因については、まだ研究段階ではっきりとしたことはわかっていませんが、脳が炎症をおこすためではないかと言われています。

ブレインフォグと精神疾患について

ブレインフォグと精神疾患には密接な関係があります。

ブレインフォグで見られる認知機能の低下は、他の精神疾患でも見られるものだからです。

例えば、次のような精神疾患では、ブレインフォグが見られることがあります。

  • うつ病

  • 双極性障害

  • 認知症

  • ADHD

  • ASD

  • 不安障害

  • 適応障害

集中できない、ぼーっとするなどの症状を訴える患者さんの中には精神疾患が隠れている可能性があります。

適切な治療のためには専門医による正確な鑑別が重要です。

ブレインフォグの症状

ブレインフォグでは具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。

人によって症状の出方はさまざまですが、主に次のような訴えがあります。

  • 頭がぼんやりする

  • 集中できない

  • 必要なことが思い出せない

  • 考えがまとまらない

  • 人の話が理解できない

  • 今までできていたことができなくなる

症状に波が出るケースもあり、、調子の良いときもあれば、症状が強く出て思うように生活できない、という事もあるようです。

いずれにしろ、ブレインフォグは本人の感覚によるところが大きく、周囲の人たちから状況を理解されにくいものです。

これにより、社会生活に大きな影響を与えることもしばしばあるため問題となっています。

ブレインフォグは受診したほうがいいの?何科に行くべき?

実際にブレインフォグのような症状を感じたとしても、受診をした方が良いのか、何科で診察してもらえば良いのか、悩むのではないでしょうか。

ブレインフォグが慢性的に続いていたり、社会生活に影響が出る、コロナ罹患後に症状が出始めたなどであれば受診をお勧めします。

ブレインフォグが一時的なものであれば様子をみても良いでしょう。

睡眠不足や脳疲労、ストレスなど日常的な負荷がブレインフォグの原因となっているかもしれません。まずは生活の改善に取り組んで経過をみてください。

では、実際に受診する際は何科を受診すればよいのでしょうか。

ブレインフォグには他の精神疾患が隠れている可能性があるため、精神科や心療内科の受診をお勧めします。

また、ブレインフォグがコロナ罹患後に発症している場合は、かかりつけ医やコロナ罹患後症状を診ている医療機関でも診療してもらえます。

ブレインフォグの診断

ブレインフォグとは脳にモヤがかかったような症状を表す言葉であり、特定の疾患名ではありません。

ブレインフォグの原因には、さまざまな精神疾患やホルモン異常、ストレスなどがあります。これらの疾患によって引き起こされる症状の一部としてブレインフォグがあるのです。

したがって診断基準はなく、他の疾患と鑑別して当てはまらない場合に「ブレインフォグ」として治療が行われます。

ブレインフォグの治療・解消法はあるの?

ブレインフォグの治療法は確立されていないのが現状ですが、生活習慣の改善やTMS治療で効果が出るケースがあります。

ここでは生活習慣の改善とTMS治療について具体的に説明していきます。

TMS治療

TMS治療とは経頭蓋磁気刺激と呼ばれる方法で、磁気を使って脳を刺激する治療法です。

脳機能の改善を図る治療法のため、ブレインフォグにも効果があるとされています。

TMS治療は、日本では2019年にうつ病の新しい治療法として認可されました。

保険適応は今のところ、うつ病に対してだけですが、アメリカでは強迫性障害の治療にも使われています。

今までのうつ病の治療は薬物療法がメインでしたが、TMS治療は薬物療法と比べて副作用が少ないことがメリットです。

しかし、新しい治療法のため取り入れている病院やクリニックが少ないこと、短期間に複数回の治療が必要なため通院が頻繁であることがデメリットと言えます。

生活習慣の改善

ブレインフォグは脳疲労やストレスが原因となることがあります。そのようなケースでは生活習慣を見直すことで症状の改善が期待できます。

  • 睡眠を十分にとる
    睡眠不足は脳に大きな負担をかけます。脳は寝ているあいだに情報を整理したり、記憶を定着させたりします。
    現代社会では、仕事や人間関係、スマホから受け取る大量の情報により、常に脳が働き続けている状態です。良質な睡眠を十分にとることで、脳を休ませる事ができますが、睡眠不足になると脳がしっかりと休むことができずに疲労が溜まっていきます。

  • 食生活を改善する
    バランスの良い食生活は身体を健康に保つだけでなく、脳に必要な栄養を送るためにも重要です。
    食生活のバランスが崩れている方は、ホルモンや神経の働きに必要な栄養素が不足している可能性があります。
    栄養不足により脳や身体が十分に機能しないと、ブレインフォグや抑うつ症状に繋がりやすくなります。

  • 適度な運動を取り入れる
    適度な運動には、脳を活性化させて気持ちを前向きにする効果があります。これは運動することでストレス解消に役立つホルモンが分泌されるためです。
    運動で特に重要なのは、継続的に行うことです。ハードな運動をする必要はありませんが、ウォーキングや筋トレなど、軽く息が上がる程度の運動を日常的に取り入れると良いでしょう。

  • ストレスを解消する
    過剰なストレスはブレインフォグの原因となるため注意が必要です。
    ストレスにより胃腸の調子が悪化したり、考えがまとまらなくなったりする経験があると思います。このように、ストレスは心身に大きな負担をかけることがわかります。

新型コロナウイルスとブレインフォグ

ブレインフォグは新型コロナウイルス感染症の後遺症として一般に広く知られるようになりました。

ここでは新型コロナウイルスとブレインフォグについて説明していきます。

新型コロナウイルスとブレインフォグの関係

新型コロナウイルス感染後の後遺症として、倦怠感や呼吸苦、脱毛、味覚・嗅覚異常など様々なものが知られていますが、その中のひとつとしてブレインフォグも挙げられます。

新型コロナウイルス感染後に、なぜブレインフォグが現れるのか、そのメカニズムは未だに明確ではありません。

可能性のひとつとして、脳内に炎症がおきることが原因ではないか、と言われています。

新型コロナウイルス感染後のブレインフォグはどれくらいで回復する?治療法は?

新型コロナウイルス感染症の後遺症としてのブレインフォグは、通常であれば時間とともに改善していきます。

しかし、罹患後半年から1年ほど経っても症状を訴えるケースもあります。

後遺症としてのブレインフォグは、原因が明らかではないため確立された治療法はありません。

しかし、生活習慣の改善や十分な休息で症状が改善することがあります。

また、TMS治療が有効であったとする報告もあります。

Q&A

頭にモヤがかかった感じの原因は?欝ですか?

頭に霞がかかったように感じて考えがまとまらない、集中できないなどの症状がある場合、ブレインフォグかもしれません。

ブレインフォグは様々な原因により引き起こされますが、鬱もブレインフォグの原因となります。

他にもストレスや脳疲労、鬱以外の精神疾患なども原因として挙げられます。

ブレインフォグの副作用は?

ブレインフォグの代表的な症状として、集中できない、物忘れがひどい、今までできていた事ができなくなるなどが挙げられます。

このような症状により仕事に大きな影響を与えることがあります。

また、ブレインフォグは本人にとっては辛い状態ですが、周りからは理解されにくいことがあるのです。

そのため、さぼっている、やる気がないなどと判断され、人間関係に影響を及ぼすことも問題となります。

頭が回らない時の対処法は?

頭が回らない、もやもやするといった症状であればブレインフォグかもしれません。

ブレインフォグは脳疲労やストレスが原因となることも多々あります。

まずは、生活習慣を整えて、脳疲労やストレスを解消することが有効です。

まとめ 

ここまでブレインフォグの病態について解説してきました。

ブレインフォグは精神疾患や新型コロナウイルス感染症の後遺症が原因となることもありますが、脳疲労やストレスによるものもあります。

ブレインフォグの対処法は原因によって変わりますが、頭がもやもやする症状で悩んでいる方は、まず生活習慣の見直しから始めてみましょう。

生活習慣を見直しても改善しなかったり、ブレインフォグ以外の症状がある、コロナ後に症状が出始めたなどであれば早めの受診をお勧めします。

頭がもやもやする症状で受診してもよいか悩むこともあるでしょう。しかし、ブレインフォグは仕事や人間関係に影響を与えることもある症状です。

早期に治療を開始することが症状の悪化を防ぎ、早期の回復につながります。

FastDoctor
ドクターの往診・オンライン診療アプリ
往診もオンライン診療も
アプリから便利に相談
App Storeからダウンロード
Google Playで手に入れよう
TOP医療コラムブレインフォグの原因や症状は?新型コロナウイルスとの関係についても解説!