認知行動療法とは?カウンセリングで前向きになれる心理療法について、わかりやすく解説

公開日: 2024/01/08 更新日: 2024/05/22
「認知行動療法」というカウンセリングによる心理療法をご存じでしょうか。 うつ病などの精神疾患を和らげることがわかっている、認知行動療法。 その効果は世界でも認められ、幅広く活用されています。 本記事では、認知行動療法の考え方や方法についてわかりやすく解説します。 「認知行動療法をセルフでやる方法はあるの?」「認知行動療法はどこでできるの?」という疑問にもお答えするので、うつ病の治療法の選択肢として興味がある方は参考にしてください。
目次

認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)とは

認知行動療法はCBT(Cognitive Behavior Therapy)ともよばれるカウンセリングによる心理療法で、厚生労働省にもその有効性が認められています。

ここでは以下の2つについて説明します。

  • 認知行動療法とは何か

  • どんなときに取り入れられるのか

認知行動療法についての基本的な情報を確認しておきましょう。

認知行動療法とは

認知行動療法では「物事のとらえかた(認知)」と「行動」を見直すことにより、ストレスを減らすことをめざします。

カウンセリングを通して自分の考え方に向き合い、心理状態を改善することでさまざまな心の病に対して有効性が認められています。

「認知療法」と「行動療法」を組み合わせた認知行動療法は、1990年代から多くの大学や組織によって研究が進められてきました。

日本では2010年にうつ病に対して保険診療が可能となり、その後も対象とする病気の幅を広げながら研究が進められています。(1

認知行動療法はどんなときに行われる?

認知行動療法は、うつ病、パニック障害、強迫性障害、統合失調症などに対する治療効果が確認されています。(2

もともとアメリカでうつ病に対する心理療法として開発された認知行動療法は、うつ病以外にも不安症や強迫症などのあらゆる精神疾患に対して、症状を改善し再発を予防する効果があることがわかってきました。

現在では精神科における治療法としてだけではなく、教育、ビジネス、スポーツなどさまざまな領域で認知行動療法の考え方が取り入れられています。

また自閉症の子どもに対しても、認知行動療法が効果を発揮することがあります。(3

自閉症の子どもに社会的な困難があったときに生じる、不安や抑うつなどの問題に対して認知行動療法が有効な可能性があるでしょう。

認知行動療法は心の病の治療を主な目的として、幅広い分野での応用が期待されています。

認知行動療法の考え方

認知行動療法の考え方について、以下のポイントをおさえましょう。

  • 「認知」とは何か

  • 「認知」「感情」「身体の反応」「行動」が互いに影響しあうこと

  • 認知行動療法では「認知」と「行動」にアプローチすること

治療の効果を上げるためには、認知行動療法の考え方をしっかり理解しておくことが大切です。具体例を想像しながら読み進めてみてください。

感情や行動に影響を与える「認知」とは

「認知」とは、出来事に対する「とらえ方」のことです。また認知のなかでも、出来事があったときに瞬時にうかぶ考えやイメージを「自動思考」といいます。

「私たちの気持ちや行動は、何か出来事があったときに瞬時にうかぶ考え(自動思考)に影響される」と考えるのが認知行動療法です。

自動思考(認知)によって、引き起こされる感情やその後の行動が変わると考えましょう。

たとえば、外出先で財布に現金が5,000円入っているとき。「5,000円も持っている」ととらえるか「5,000円しかない」ととらえるかで随分違いますよね。

前者ではうれしい気持ちになってお出かけを楽しめる可能性が高いのに対し、後者では焦りの感情から早く帰りたくなるかもしれません。

認知行動療法では、このような物事のとらえ方に注目してネガティブな感情を減らすようはたらきかけます。

ストレスに負けない心を育てるためには、考え方のクセに気付くことが第一歩となるでしょう。

出来事に対する4つの反応とは

認知行動療法では、ストレスを感じた具体的な出来事を取り上げます。

その出来事が起きた時の4つの反応

  • 頭の中に浮かぶ考え(認知)

  • 感じる気持ち(感情)

  • 体の反応(身体)

  • 振る舞い(行動)

に注目してください。

たとえば「上司に挨拶をしたが返事がなかった」という場合を考えてみましょう。

  • 「怒っているのかな?私が仕事で何かミスをしたのかな?」と考える(認知)

  • 無視されて悲しい、仕事に関して不安に思う(感情)

  • 焦りから、冷や汗をかいたり下痢をしてしまったりする(身体)

  • 仕事後に予定していた習い事を欠席してしまう(行動)

このようにストレスを感じる出来事が起きたときは、4つの反応が互いに影響しあっています。

認知行動療法では、4つの反応を整理してストレスに対する自分の反応パターンに気付くことで、さらなる悪循環を生み出さないようにすることが大切です。

考え方のクセと行動を改め、ストレスを減らす認知行動療法

認知行動療法では、ストレスを感じた出来事に対する4つの反応のうち「認知」と「行動」にアプローチします。

なぜなら「感情」と「身体反応」を自ら変えることは難しいからです。

「悲しいと思ってはいけない」と言われても悲しいものは悲しいし、冷や汗や下痢を自分の意思で抑えることはできませんよね。

そこで自分で変えられる可能性のある「認知」と「行動」に着目します。

たとえば「ほかの考え方はないかな?」と視野を広げることで認知を変えたり「気分は乗らないけれど、とりあえず行ってみよう!」と行動したりすることで、よりよい心理状態を目指せるでしょう。

認知行動療法では、考え方のクセと行動を改めることにより、4つの反応をよい循環にもっていくことを目標に治療を進めます。

認知行動療法の効果

さまざまな精神疾患に対する効果が、世界でも認められている認知行動療法。認知行動療法は心の病をもつ人をよりポジティブな思考に導きます。

また再発を予防する効果が高いことも、大きなメリットといえるでしょう。ここでは、認知行動療法がもたらす効果について解説します。

負の感情やストレスを減らす

認知行動療法による治療をおこなうと、必要以上に落ち込んだり不安になったりする負の感情が軽くなります。

認知を見直すことで、物事に対してよりポジティブなとらえ方ができるようになるからです。

負の感情やストレスを減らすことは、よりよい心理状態にするための大きな助けとなるでしょう。

前向きに考え、行動できるようになる

ネガティブな認知を少しずつ整えて、前向きな行動につなげる効果も期待できます。

認知行動療法では無意識に生じる考え方のクセに気づき、冷静に受け止められるようになることを目標に治療がおこなわれます。

カウンセリングによる治療をしている時だけでなく、日常生活でも些細なことに左右されずポジティブに行動できるようになるでしょう。

精神疾患の再発を予防する

認知行動療法でうつ病やパニック障害などの症状が改善した人は、薬で治療した人と比べて再発することが少ないことがわかっています。(2

無意識にはたらく認知にアプローチして考え方のクセを取り除くため、治療後も効果が継続しやすいといえるでしょう。

認知行動療法のみの場合や薬による治療と併用する場合など、さまざまケースで再発予防効果が期待されています。

認知行動療法の方法・やり方

うつ病患者に対して、実際に医療機関でおこなう認知行動療法のやり方について詳しく説明します。

個人の状態によって変わったり独自の方法でおこなったりする場合もあるものの、基本的な考え方は同じです。

大まかな流れを知っておくことで、安心して治療に挑戦できるでしょう。

認知行動療法の流れ

厚生労働省が示す基準によると、原則として30分のカウンセリングを16〜20回おこないますが、状況に応じて変更することも可能です。

認知行動療法によるカウンセリングは、以下のような流れで実施します。

  1. 自分のストレスに気づき、問題を整理する

  2. 問題がどのような状況で生じ、その結果引き起こされる感情について調べる

  3. 自分の物事に対するとらえ方(認知)が感情や行動にどのような影響を与えるか調べる

  4. 自分の考え方のクセに気づく

  5. 考え方のクセに注目し、より現実的で前向きなものの見方に変える練習をする

  6. 考え方が変わったら、問題を解決する方法や人間関係を改善する方法を練習する

またカウンセリングとカウンセリングの間には、自宅でホームワークをしたり治療ノートに感情や行動を記録したりするなど、自分自身と向き合う必要があります。

ホームワークや治療ノートへ記録する目的は以下の2つです。

  • カウンセリングによる治療と日常生活をつなぐ

  • 話し合った内容について整理したり実際に行動したりする

考えを書き出すことや実際にやってみることなど、アウトプットを積極的におこなうことで治療効果を高めましょう。

認知行動療法の具体的なやり方

実際にどのような方法で認知行動療法がおこなわれるのでしょうか。

認知行動療法のポイントは以下の3つです。

  • 自分をよく観察する

  • 考えを書き出して整理する

  • 解決策を実行する

上記のポイントをふまえて実際にどのように進めていくのか、実施する順に説明します。(4

問題点と治療方法を理解する

認知行動療法ではまず、治したい問題点や治療方法について理解するところから始まります。

治療効果を出すためにも自分の考えをしっかりアウトプットし、疑問点は質問しながら担当医やカウンセラーとコミュニケーションをとりましょう。

活動記録表で考え方のクセや行動の改善点を探る

活動記録表のワークシートを用いて、自分の活動とそのときの気持ちを記録します。これにより、自分の考え方のクセや行動の改善点を探りましょう。

活動記録表のサンプルはこちらのリンクからご覧ください。

参考:厚生労働省|うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)

活動記録表をつけることで「SNSを見たあとに悲しい気持ちになっているな」「同僚とのランチに疲れているな」など、ネガティブな感情を結びつける行動がわかります。

また反対に「運動するとスッキリした気持ちになる」「自宅で料理したあとは、気分が向上する」など、自分にとってポジティブになれる行動を見つけることも可能です。

やりがいのある活動や楽しめる活動を増やしていくことは、うつ病の改善や自信を取り戻すために効果的です。

このように認知行動療法では、ネガティブな感情を引き起こす行動を探ったりポジティブになれる行動を増やしたりすることで、行動面から問題解決へアプローチします。

活動記録表によって生活リズムを見直すことも、前向きな気持ちになるために役立つでしょう。

コラム法でより前向きな認知を身につける

より前向きな「認知」を身につけるために、コラム法という手法を用います。以下のようなワークシートを用いて、つらい出来事があったときの考えを整理しましょう。

書き出して整理することで、気分が改善し今後のプランを考えられるようになります。

7つのコラム

状況

 

気分

 

自動思考(ホットな思考に◎)

(確信度%)

                              

根拠

 

反証

 

バランス思考・プラン

 

心の変化

 

引用:厚生労働省|うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)

7つのコラムについて、具体例をあげて説明します。

  1. 状況

つらい気持ちやストレスを感じた出来事をなるべく具体的に書き出します。

例:友達と食事の約束をしていたが、当日になって「今日は行けない」と連絡があった。

  1. 気分

対象となる出来事が起きたときの気分を書き出し、気分のレベルを%であらわします。

例:悲しい(50%)、不安(80%)、怒り(20%)

  1. 自動思考

そのとき頭に浮かんだ考えをそのまま書き出し、どの程度感じたのかを%であらわします。また、もっとも強い考え(ホットな思考)に◯をつけましょう。

例:自分との約束は優先順位が低い(80%)

  自分は都合のよいときだけ誘われる(60%)

 ◯自分は相手に大切にされていない(80%)

  1. 根拠

自動思考を裏付ける具体的な事実を書き出します。

例:断りのメッセージがそっけなかった。

  1. 反証

自動思考と反対の事実を書き出します。

例:いつも相手から誘ってくれる。

  最近、仕事が忙しいと言っていた。

  1. バランス思考

「④の事実がある、しかし⑤である」と考えてみましょう。

自動思考を見直し、バランスの良い考えに導きます。

例:相手は自分と食事をしたいと思っているが、多忙のため叶わなかった。

  断ったところで関係性が崩れないという安心感をもっている。

  1. 心の変化

心の変化を書き出します。

例:悲しい(20%)、不安(30%)、怒り(10%)

このようにコラム法では、ある出来事によって生じる感情について書き出して分析します

これにより感情を落ち着かせて広い視点で物事をとらえることができるようになり、同じ出来事があっても冷静に判断ができるようになるでしょう。

厚生労働省のWebサイトにコラム表の記入用ワークシートがあるので、ぜひ印刷してチャレンジしてみてください。

厚生労働省|自動思考記録表(コラム表)ー 記入用ー

心の法則に気づく

コラム法によって認知のゆがみやネガティブな気分を改善する方法がわかったら、「心の法則」について考えましょう。

「心の法則」は認知をつくるもとになる価値観で、無意識にもっているものと考えられています。

例:

事実

心の法則

自動思考(認知)

食事の誘いを断られた

私は嫌われている

私と食事したくないのだろう

メッセージのやりとりはいつも相手から終わる

私とのやりとりが面倒なのだろう

仕事を他の人に頼んでいた

私に仕事を任せたくないのだろう

「私は嫌われている」というネガティブな心の法則によって、負の感情を引き起こす認知がつくられているのがわかります。

また「元気なとき」と「うつ状態のとき」のそれぞれの心の法則リストをつくりましょう。自分のもつ心の法則に気づき、ネガティブな考え方を見直してみてください。

例:

元気なときの心の法則

うつ状態のときの心の法則

  • 幅広くいろんな仕事ができる

  • 苦手な人もいるが、自分にとって大切な人に愛されている

  • 失敗も経験となり、次に活かされる

  • これといって得意な仕事がない

  • みんなに好かれなければならない

  • 失敗は許されない

無意識にもつ心の法則を整理することでより前向きな考え方が導かれ、うつ症状を改善する効果が期待できます。

問題を解決する行動について考え、実践する

具体的な問題解決方法について考えます。

まず何が問題なのかをはっきりさせるために、今ある問題をノートやシートに書き出します。

ネガティブな状態のときは、思考が混乱して問題点が見えなくなるケースも多いでしょう。

しかし書き出すことで冷静に整理でき、重要な問題点も見えてきます。問題点を整理できたらどんな解決策があるのか考えてください。

できるだけ多くの解決策を書き出して、それぞれのメリットとデメリットを考えてみましょう。

例:頼まれた仕事をこなせるか自信がないとき

解決策

メリット

デメリット

仕事を断る

プレッシャーがなくなる

成長するチャンスを失う

他の人に負担をかける

仕事をこなす

自信がつく

上司に評価される

疲れる

上司に相談する

安心して取り組める体制を整えてくれるかも

上司に負担をかけてしまう

書き出した解決策について、それぞれのメリット・デメリットをもとにどの解決策がもっともよいのか考え、実際におこなう行動を決めます。

解決方法が決まれば実践しましょう。難しい場合は、カウンセリングを通して練習してみることもあります。

問題を解決できないときは

問題を解決できないときは無理に解決しようとせず、つらさを和らげる方法を考えます。

気分転換に読書や運動をしたり、うまくいっている場面を想像したりすることも効果的かもしれません。自分に合う方法を見つけておくことが大切です。

認知行動療法はどこでできる?

認知行動療法を専門家から受けたい場合、治療場所は主に以下の2つから選びます。

  • 医療機関

  • カウンセリング機関

どちらで受ける場合も、認知行動療法をおこなっている機関であるかどうかを事前に調べておくとスムーズに進められるでしょう。

精神科や心療内科などの医療機関

医療機関で認知行動療法をする場合、精神科や心療内科での治療が一般的です。

主治医によって認知行動療法が必要だと判断されたら、院内または院外施設の専門家に紹介されるケースが多くみられます。

ただし、どこの医療機関でも必ず認知行動療法を受けられるわけではありません。

認知行動療法のなかでも、特定の方法を専門にしている場合もあります。

認知行動療法を受けられる医療機関を探したいときは、厚生労働省が発表しているリストが役立つでしょう。

地域ごとに分かれているため、お住まいの地域のものを確認してください。

北海道地方東北地方関東・信越地方東海・北陸地方近畿地方中国・四国地方九州・沖縄地方

認知行動療法を行っているカウンセリング機関

医療機関以外にも、認知行動療法をしているカウンセリング機関があります。Webサイトで情報を得たり、事前に問い合わせをしたりして確認してみましょう。

医療機関以外でする場合は自費診療になるため、料金もあわせて確認しておくと安心です。

日本臨床心理士会のWebサイトでは、抱えている問題や提供している心理療法の種類などからカウンセリング機関を検索することが可能です。

興味がある方は、確認してみてください。

一般社団法人 日本臨床心理士会|臨床心理士に出会うには

認知行動療法を簡単に自分でやる方法・やり方

「認知行動療法をセルフでやってみたい!」と思われる方もいるのではないでしょうか。

本来は専門家による治療が理想ですが、まずは簡単に自分でやってみるのも一つの方法です。

ここでは、認知行動療法を自分でするときのやり方について説明します。興味がある人はぜひチャレンジしてみてください。

ノートに書き出す

自分の考え方のクセや認知のゆがみをとるために、現状を書き出すことが簡単で効果的です。

前述の「コラム法」を参考にノートや紙などに書いてみましょう。

厚生労働省が発行するコラム法のワークシートのほかにも、インターネット上には認知行動療法の考えに基づいて自分の気持ちを整理できるセルフ用ワークシートがあります。

自分にとって使いやすいものを選んで、書き出してみてください。

また、

  • 心の法則を書き出すこと

  • 解決するための行動について考えること

についても、自分でできる範囲でやってみましょう。

自分で書き出して整理するだけでも、思考がスッキリして気分が軽くなるかもしれません。

書籍やアプリを利用する

認知行動療法に関する書籍も自分でおこなうときに役立つでしょう。最近では、セルフでおこなう認知行動療法に特化した医療アプリも出ています。

アプリは簡単に認知行動療法にチャレンジできるため、今すぐやってみたい方におすすめです。

認知行動療法に向かない人とは

認知行動療法に向かない人とはどのような人でしょうか。うつ病や適応障害など、さまざまな精神疾患に対して効果を発揮する認知行動療法。

効果があることはわかっていても「自分にとって合った治療法なの?」「向かない人もいるのでは?」と気になりますよね。

認知行動療法は「するのに適していない状態の人」はいるものの「性格や素質が合わないために実施できない」人はいません。

ここでは「一時的に、認知行動療法に適していない状態にある人」について解説します。

現在、精神状態が悪い人

現在の精神状態がよくない場合、認知行動療法をおこなうことが難しいケースがあります。

うつ症状が悪化していて人と会話するのも厳しい状態では、カウンセリングや前向きな行動をすることは負担になりますよね。

また認知行動療法では、ストレスを感じた出来事を思い出さなければいけません。つらい気持ちを思い出すことは、精神状態が悪い人にとって苦痛の作業となるでしょう。

まずは薬物治療を受けて状態が落ち着いてからが望ましい場合もあります。無理せず自分のペースで実施しましょう。

主体的に今の状況を変えたいと思っていない人

「相談さえすれば、症状を治してもらえる」と考える人は、認知行動療法の効果を得るのは難しいかもしれません。

認知行動療法はカウンセリングで話をするだけでなく、問題について自分で考察し日常生活で実践することが必須です。

積極的に課題にチャレンジしアウトプットすることが、効果的な治療につながります。

主体的に「今の状況を変えたい」と思っておらず、課題にきちんと取り組めない場合は効果を得ることは厳しいでしょう。

Q&A

認知行動療法の簡単なやり方は?

セルフで認知行動療法を行うには、コラム法を利用してノートに書き出すことが効果的です。

厚生労働省が発行するコラム法のワークシートを使用し、問題となるできごとやそのときの感情、思考を書いてみてください。

自分の認知の癖に気付き、思考のバランスを整えられるでしょう。また書籍やアプリを利用して簡単におこなうことも可能です。自分に合う方法を見つけて実践してみましょう。

認知療法と行動療法の違いは?

行動療法とは、行動を変えることで不快な感情を減らすことを目指す治療法です。たとえばパニック障害で、電車に乗ることが不安な場合を考えましょう。

まずは駅に向かう、次に電車に乗って1駅で降りる、その次は電車で行けるところまで乗っていく、というようにだんだん慣れていきます。

このように、行動を変えることにより問題を解決するのが行動療法です。

行動療法のメリットの一つに、言葉が使用できない乳幼児・障害児やあらゆる年齢層の患者を対象にできることがあります。

認知行動療法は「認知(ものごとのとらえ方)」と「行動」にアプローチするのに対し、行動療法は「行動」を変えることでより症状の少ない生活を目指す治療法です。

認知行動療法の目的は?

認知行動療法は、ものごとに対するとらえ方(認知)と行動を見直すことによりネガティブな感情を減らすことを目的とした治療法です。

うつ病、パニック障害、強迫性障害、統合失調症などあらゆる精神疾患を治療する目的で実施されており、薬による治療よりも再発を予防しやすいと言われています。

認知行動療法の基本的な考え方は?

認知行動療法では「私たちの気持ちや行動は、何かできごとがあったときに瞬時に浮かぶ考え(認知)に影響される」と考えられています。

ストレスを感じる出来事に対する4つの反応「認知」「感情」「身体の反応」「行動」のうち「認知」と「行動」を変えることで、さまざまな心の病に対して治療効果が期待されています。

考え方のクセや行動を見直して解決策を探り、実践して症状の改善をめざす治療法です。

認知行動療法はどんなことをする?

カウンセリングによって自分の感情について考えたり、ノートやシートに書き出したりして考え方のクセと行動を見直します。

普段の行動や感情を記録するためのホームワークにも取り組むことで、よりよい治療ができるでしょう。

カウンセリングは厚生労働省の基準では30分を16〜20回実施することとなっていますが、状況により変動します。

認知行動療法は保険適用ですか?

適応症に当てはまり、医師または看護師が厚生労働省の示すやり方に沿っておこなう場合は保険が適用されます。(5

現在、認知行動療法が適応となっている疾患は、うつ病、パニック障害、強迫性障害、PTSD、社交不安障害です。

まとめ

うつ病など精神疾患に対して治療効果が認められ、欧米では広く活用されてきた認知行動療法。

日本ではまだまだ知られていないものの、その治療効果の高さ・再発予防効果の高さから近年注目を浴びるようになってきました。

認知行動療法では考え方のクセ(認知)と行動にアプローチして、より前向きな思考ができるようになることをめざします。

モヤモヤと悩み続けている方は、認知行動療法によって思考を整理することが解決のきっかけになるかもしれません。

心の病を治すには多くの期間と労力を要します。自分の力でどうすることもできないときは、専門家を頼ることも大切です。

決して無理をせず、自分自身と向き合っていきましょう。

<参考>

[1]日本認知療法・認知行動療法学会|認知行動療法の発展

[2]厚生労働省|e-ヘルスネット|認知行動療法

[3]桐山佳奈,石川信一.不安症状を中心とした二次障害を抱える自閉症スペクトラム障害の子どもに対する認知行動療法の課題と展望 研究動向.Doshisha Clinical Psychology:Therapy and Research.2014,Vol.4,No.1,pp.39-51

[4]厚生労働省|うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)

[5]厚生労働省|令和2年度診療報酬改定|第8部 精神科専門療法 通則

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