うつ病の旅行は大丈夫?休職中の旅行中について

公開日: 2024/01/09 更新日: 2024/05/22
近年「うつ病」という言葉を聞く機会が多くなってきました。うつ病と聞くとどんな病気と考えるでしょうか。 人によっては「甘えである」「怠けているだけ」などと考えたり、「弱い人がなるもの」などと考えたりすることもあるかもしれません。 しかしながらうつ病とは「風邪のように誰がなってもおかしくない病気」であり、決して「甘え」や「怠け」などではないのです。 うつ病になってしまったとき、気晴らしなどで旅行に行く人もいます。 しかし、うつ病の気晴らし・休職中の旅行はうつ病罹患者にとってどのような影響を及ぼすのでしょうか。 今回はうつ病の人が旅行に行くことによってどのような影響があるのかを解説します。
目次

うつ病とは?

ではうつ病とは具体的にどのような病気なのでしょうか。

うつ病は仕事や家庭、環境の変化などによる強いストレスによって脳のバランスが崩れてしまうことでおこる「脳の病気」です。

うつ病は「一日中ずっと気分が落ち込んでいる」「楽しみが全くない」というような症状、及び睡眠や食欲がなくなってしまう、「少しの動作などですぐに疲れてしまう(易疲労感)」などの身体の症状により日常生活に大きな支障を生じる病気です。

人によっては気分が落ち込むことにより「死にたい」というような考え(希死念慮)が出てくることもあり、それが原因で実際に自殺をしてしまう人もいます。

うつ病の場合、気分の落ち込みにはムラがあり、初めにどんどん気分が落ち込んでしまうことが多くあります。

気分が落ち込むだけ落ち込んでしまって、その後で病気の回復とともに気分も少しずつ上向きに戻ってくるのです。

その気分の回復とともに徐々に体の症状も徐々に回復に向かってきます。

ここで、実はうつ病の場合は最も注意しなければならないのは「気分が少し戻ってきた時」なのです。

気分がどんどんと落ち込んでしまっている時期は、先述のように「死にたい」という考えが出てきてしまっても、それを実行する元気がないためなかなか自殺しにくいのが現状です。

もちろん絶対に自殺しないとも言えませんが、気分がどんどん落ち込んでいる時期よりも、少し気分が回復し始めたと時期の方が自殺が多い傾向があります。

ただし、少し気分が回復してきた状態であれば、どんどん落ち込んでいっている時期に比べて活動することができるので、その「死にたい」という気持ちが強く残っていたり、その時に出てきてしまったりすると、実行してしまう可能性があるのです。

うつ病の時に気晴らしは良いのか?

うつ病になってしまった時にいろいろと考え込んだり落ち込んだりするため、少しでも気分転換、気晴らしをしたいと考える人は多いのではないでしょうか。

その気持ちはとてもよくわかるのですが、うつ病の時は気晴らしに遊びに行ったりするのはあまりお勧めできません。

なぜならうつ病の時は「少しの活動でもかなり疲れやすくなってしまっている」ため、気晴らしのため遊びなどに行ってしまうと、その後で反動で動けなくなるぐらい疲れてしまう、症状が悪化してしまう可能性があるからなのです。

うつ病の時はどう過ごしたら良いのか

では、うつ病の時にはどう過ごしたらいいのでしょうか。うつ病の時は「とにかく休むことが大事」なのです。

うつ病の場合は自身が思っているよりも心身共に限界まで疲れてしまっている状態なのです。

そこまで疲れているのに気晴らしを含めて何か活動をしようとすると、それによりさらに身体も心も疲れてしまいます。

そのため、出来る限りゆっくりと休み、リラックスすることが大事なのです。

ここで「休むこと」が「怠けること」と思うのではなく、「休むことが最も大事な治療である」と考えておくことも大事かと思います。

また、専門医を受診し治療を受ける、主治医指導の下でのカウンセリングを受ける、バランスの良い食事をとり、規則正しい生活を送るなども治療の上で重要です。

うつ病にかかったとき、旅行に行くのは?

うつ病の時は少しの活動でも疲れやすくなっている

先述の通り、うつ病の人は少しの活動でかなり疲れやすくなってしまっています。そのため、旅行などに行くと心身共に考えている以上に疲れ果ててしまうと考えられます。

旅行に行くこと自体もかなりのエネルギーが要ることですので、おすすめはできません。

気分転換に旅行に行きたいと考える気持ちは十分わかります。

そのため、人によっては「旅行で疲れて悪くなるのであれば、温泉でゆっくりすれば大丈夫ではないか」など考えることがあるかもしれません。

ただ、この場合は「旅行に行くこと」自体がエネルギーを必要とすることですし、「温泉に入ること」もそのこと自体が疲労につながってしまうことですのであまりお勧めはできません。

旅行後の状態で懸念されることは?旅行後に悪化することはある?

旅行に行った場合は、うつ病にかかっていない時に比べてかなりの疲れを自覚してしまい、旅行の反動でうつ病の症状が悪化してしまう可能性があります。

「どうしても旅行に行きたい」というのであれば、できるだけリラックスできる環境が作れるブランでかつ近場、観光等はできるだけ省いておき、ゆっくり休めるようなプランのものにすると良いでしょう。

ただし、先述の通り温泉等は「温泉に入ること」自体が疲労につながるので、あまりお勧めできません。

また、旅行にいくこと自体も、できるのであればうつ病が回復した後の楽しみとして置き、ゆっくりと休んで治療に専念するほうが良いでしょう。

うつ病の人を遊びや旅行に誘うのは?

うつ病の人を遊びに誘うのはNG?

家族や知り合いがうつ病になった場合、「気分が落ち込んでいるのであれば遊びに誘って気分転換したらなるのではないか」「遊びや旅行に誘って良くしてあげよう」「ストレスから離れればよくなるのではないか」などと考える人がいるかもしれません。

その気持ちは十分にわかるのですが、うつ病の人は心身共に疲れ果てている状態です。本来であれば旅行などの活動はせずにゆっくりと休むことが治療の近道です。

ただし、うつ病の人を旅行等に誘うと、周りの気持ちを優先させてしまい、かえって本人が「頑張らないといけない」などの気持ちにさせてしまうことがあります。

その本人が無理をして旅行などに行ったとしても、うつ病の症状を悪化させてしまうだけになってしまうことが考えられます。

その人のためにと思ったとしても逆効果になれば意味がありません。そのため、うつ病の人がいるのであれば「ゆっくりと休ませてあげる」ことが最も重要なのです。

あまり周りが関わりすぎると、それを本人が気にして「周りもいろいろとしてくれるのだから自分も頑張って治さないと」と思ってしまい、プレッシャーを与えるなどの結果になってしまうことがあります。

そのため、周囲は心配しすぎずに見守ってあげることが大事なのです。また、本人へ「頑張って」などと励ますことは絶対にしてはなりません。

周囲の意図はどうあれ、「頑張れ」と言われることにより、かえってその本人の負担や励まされることで本人が「自分はダメなんだ」などを考えてしまう可能性もあるため、絶対に励ましてはいけません。

休職中の旅行、職場との問題は?

うつ病など以外の身体的な病気の場合、病気療養中は身体を休ませて病気療養に専念し、そもそも遊びや旅行などには行けませんが、うつ病の場合は身体的、体力的に旅行に行くことが難しいということではありません。

そのため、行動として旅行などに行くこと自体は可能です。

では休職中に旅行に行くことは大丈夫なのでしょうか。

通常、休職中は「病状の回復に努める」ということが大原則となります。

実際に就業規則で「休職中は私傷病の回復に専念する」などといった文言を定めていることも多くあるでしょう。

そのため、私傷病による休業中に旅行などに行くとその就業規則に違反しているのではないかと言われ、処分などにつながるかもしれません。

しかしながらうつ病の場合は「自宅にこもっているだけが回復につながるのか」ということは絶対ではないと判断されます。

そのためうつ病で休職中の時、旅行に行くこと自体が就業規則に触れていると断定できず、職場が処分を行うことは難しいケースが多くあるようです。

ただし、現場にいる上司や同僚などの立場では「休業中の人の分の仕事をしている」「自分はその分しっかり働いているのに」という気持ちもあるでしょう。

そのため反感などトラブルのもとにもなりかねないので注意は必要です。

いわゆる「新型うつ」とは?

うつ病だけど遊びには行ける、これは「うつ病」?

職場等のストレスがかかる状況下では気分が落ち込んだり、「死にたい」等と考えてしまうものの、「自分の好きなことや趣味、旅行等はできる」という人がいます。

これは「うつ病」とは異なる「適応障害」である場合があります。

適応障害とは仕事等のストレスにより起こるストレス障害の一種ですが、うつ病と異なり通常はストレスの原因が遠ざかれば症状は速やかに改善していくのです。

ただし、ストレスの原因が近くにあることが続けば症状も続いてしまいます。

そのため、適応障害では職場などがその原因となった場合、仕事に行くことでストレスに直面してしまうため、気分の落ち込みや不安、意欲がなくなる、集中力の低下、頭痛や吐き気などの症状が出てきます。

一方でストレスの原因から遠ざかると症状もよくなるため、遊びや旅行などには行けるのです。

なお、適応障害ではこのように症状自体はうつ病と似ていますが、ストレス要因がなくなれば、ほとんどのケースで症状は速やかに改善します。

そのため、うつ病とは異なり、ストレス要因の解決や環境調整等が治療の中心となってくるのです。

また一方で近年、今までのうつ病の定義には当てはまらないものの、症状が似ている気分障害を「非定型うつ病」、「新型うつ病」と言うことがあります。

うつ病自体にもさまざまな状況、型がありますが、これは「現代風のうつ病」とも言われ、様々な問題をはらんでいます。

現代のうつ病では軽い躁状態からの鬱状態を繰り返したり、極度の不安を感じたり、また、「自分が悪い」と考えるのではなく「会社や他人が悪い」と考えることもあり、訴訟などのトラブルに発展するケースもあるのです。

番外:パニック障害の場合

パニック障害とは、不安障害の一種で突然強い不安とそれに伴う動悸や過呼吸が起こったりする病気です。

さらにこの発作を繰り返すことにより、「○○をしたら発作が起こるのではないか」「○○に行ったら発作が起こるのではないか」などと考えてしまい(予期不安)、飛行機や電車の中など発作が起こると特に困る状況を避けてしまうことがあります(広場恐怖)。

そのため旅行などにも行けないという方もいますが、主治医と相談の上で主治医の許可があれば、対策を行った上で旅行に行くことは可能です。

なお、パニック発作はある程度薬で治療することができます。

さらに、先述の「予期不安」や「広場恐怖」もパニック発作の症状が出るかもしれないという不安から来るため、「パニック障害の発作が出ない」という状況を繰り返せばこれらの恐怖や不安もおのずとなくなることが多いです。

しかしながら、中には発作がなくとも恐怖や不安がなくならない人がいます。そのような状態の場合は行動認知療法、カウンセリングなどを行っていきます。

Q&A

うつ病に旅行は効果がある?

うつ病の場合は旅行に行くことはおすすめできません。うつ病になっている状態は疲れ果てている状態ですが旅行は予想以上にエネルギーを使うものです。

そのため、旅行に行くこと自体でさらに疲れてしまい、動けなくなってしまう、症状がかえって悪くなるなどの状況になる可能性があります。

鬱病でしてはいけないことは?

うつ病の時は気分が落ち込んでしまい、悪い方向に考えてしまうことも多く、物事を正常に判断できないことが多くあります。

そのため、人生における大きな決断(退職、離婚など)をその時に行うことは避けたほうがよいでしょう。

仕事のストレス等によりうつ病になったため退職を、と急いてしまう人もいるかもしれません。

しかしながら、許されるのであれば一旦休職等を行い、病状が回復して正常に判断できるようになってから改めて判断するべきです。

また、うつ病の時は「何かをしなければならない」などと考えあり、無理に活動をしたりすることも、さらに心身を披露させてしまうため症状を悪化させる可能性が高いと考えられます。

そのため、うつ病では何も考えずに「とにかくできるだけゆっくり休むこと」が必要です。

うつ病が悪化するサインは?

うつ病になってきている時は「夜に眠れない」という睡眠障害、「いつもより疲れやすい」という倦怠感、物事に対して今までより興味が持てなくなる、何につけても「自分が悪い」と考えてしまう、集中力の低下などの症状が現れてきます。

自分自身ではあまり自覚できなかったり、おかしいと思っても軽く考えてしまい「もっと頑張らないと」とさらに追い詰めてしまったりということもあります。

そのため周囲から見て「元気がない」「ミスが多くなっている」等が認められたら注意しなければなりません。

うつ病は散歩で悪化しますか?

うつ病の中でもどの時期に散歩をするのかにもよります。

初期の気分がどんどん落ち込んでいる時期では心身共に疲れ切ってしまっており、散歩を含めて活動を行うエネルギーを使うことにより、さらに疲れてしまいます。

散歩の反動により散歩の後に症状が悪化する可能性もあるのです。

ただし、病状が回復してきている時期に様子を見ながらではありますが、疲れない程度の散歩ならできるでしょう。

また、うつ病の発症前にはなりますが、散歩はうつ病の予防に効果的という報告もあります。

旅行がもたらす効果は?

旅行では脳内の神経伝達物質の分泌が増え、ストレスの軽減やリラックスできるという効果があると言われています。

環境庁でも「健康や体調管理に対する意識・意欲」や「移動や外出 に対する自信」といった精神的変化があると報告しています。

ただし、うつ病の場合は旅行に行くこと自体でさらに疲れてしまい、症状が悪化する、最悪しばらく動けないなどの状態になりかねないため、あまりお勧めはできません。

観光が人間にもたらす効果は何ですか?

「歩き回って観光をする」「旅行をして新しい環境や景色に触れる」ということは、ストレスの軽減や心のリフレッシュになるという報告があります。

ただし、これらは思った以上にエネルギーを必要とすることですので、うつ病の場合は観光をするよりも病状回復のためにゆっくりと休むことが大事です。

まとめ

うつ病は本人や周囲が考えるよりも心身ともに疲れ果ててしまっている状態です。そして通常よりもかなり疲れやすくなってしまっています。

気晴らしに旅行や遊びに等と思ってしまう気持ちは十分にわかるのですが、たとえ普段なら気晴らしになることであっても、疲れ果てている状態で行こうとすると、その後で思った以上に疲れ果ててしまい、動けなくなるなど症状が悪化してしまうことが多いのです。

旅行や遊びなどの気分転換はうつ病が治った後の楽しみと考え、治療中はゆっくりと休むことに専念するようにしましょう。

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