全般性不安障害はどんな人がなりやすい?原因と症状、治療法を解説

公開日: 2024/01/10 更新日: 2024/05/22
日々生活を送るうえで、不安や緊張を感じることは自然なことです。 しかし過度な不安と緊張が持続し、人間関係や仕事・日常生活に支障をきたすことがあれば不安障害かもしれません。 不安障害には大きく分けて4つの病気に分類されます。 その中でも様々なことに過度な不安や緊張を感じ、身体や精神に症状が出現する特徴を持つ全般性障害について原因や症状、治療法を解説します。 症状を知ることで全般性不安障害に早く気づくことができ、早期治療につながるでしょう。 最後までお読みいただき、全般性不安障害の早期治療にお役立てください。
目次

全般性不安障害とはどんな病気?

全般性不安障害を知っていますか? 

あまり聞き慣れない病名ですが、WHOによると我が国の推定不安障害患者は約1,000万人以上いるとも言われています。[1]

ここからは全般性不安障害とその原因や、なりやすい性格について解説します。

全般性不安障害とは

全般性不安障害は特定の状況や場所に関係なく、日常生活を送るうえで人間関係や仕事など様々なことが気になり、極度に不安や心配になる状態が半年以上続く状態をいいます。

全般性不安障害の原因

全般性不安障害の原因は、まだはっきりとわかっていません。 

しかし精神的な気質やストレス、遺伝的な要因や環境の変化など複数の要素が重なり、発症すると考えられています。

全般性不安障害になりやすい性格はある?

全般性不安障害になりやすい性格とはどのような特徴があるのでしょうか。 

以下のような特性のある人が、不安障害になりやすい性格の人だといわれています。しかし、全般性不安障害を必ず発症するわけではありません。 

  • 心配性の人 ・完璧主義の人 

  • 神経質な人 

  • 真面目で自分に厳しいタイプの人 

  • 周りの評価を気にする人 

ストレスや環境の変化など、精神的な負担が加わると発症しやすい傾向にあるため、ストレスを溜めないように心がけましょう。

全般性不安障害の症状

全般性不安障害は、さまざまなことへの制御不能で過剰な不安や心配が症状として現れるのが特徴です。

その不安・心配または身体症状が苦痛または社会的、職業的またはその他の領域における機能の障害を引き起こします。 

身体的な症状と精神的な症状の2種類の症状があり、症状が半年以上出現するのが全般性不安障害です。[2] 

身体的症状と精神的症状に分けて詳しく紹介します。

身体的な症状

全般性不安障害の身体的症状は以下の通りです。 

  • 筋肉の緊張 

  • 痛み 

  • うずき 

  • 疲れやすい 

  • 息苦しさ 

  • 動悸 

  • のどの渇き 

  • 発汗 

  • めまい 

  • のどの違和感 

  • 頻尿 

  • 下痢 

身体的な不調から内科などに受診してもとくに異常がみつからず、病院をいくつも受診したあとに全般性不安障害だとわかる方が多いのも特徴です。

精神的な症状

全般性不安障害の精神的症状は以下の通りです。 

  • イライラ 

  • 過度の不安感 

  • 過度の驚愕 

  • 集中困難 

  • 睡眠障害(途中覚醒や入眠困難)

全般性不安障害は緊張が続き、漠然とした過度な不安を感じます。 

睡眠障害も続き、日常生活を送るのが困難になることもあるでしょう。

全般性不安障害の治療法

全般性不安障害の治療には、薬物療法と精神療法の2種類あります。 

不安障害の治療は、不安障害をなくすように治療するのではなく、苦痛な症状を緩和して、日常生活を送ることが目標となります。

薬物療法について

全般性不安障害の薬物治療は診察の結果状態によってかわりますが、よく使われる薬は抗うつ薬(SSRI・SNRI)と抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)です。

全般性不安障害の治療は、一般的に抗うつ薬を使用します。

しかし、抗うつ薬は効果が出るまでに時間がかかるため、効果発現の早いとされる抗不安薬と併用することが多いでしょう。

また、症状により必要に応じて睡眠薬や漢方薬を処方することもあります。 

精神療法について

薬物療法と同様に重要なのが、精神療法です。 

しかし、全般性不安障害は身体的な症状を訴える方が多いため、薬で症状を和らげてたのちに精神療法を行う場合があります。 

精神療法の1つでもある行動認知療法は、全般性不安障害にとって有効な治療法です。 

診断のうえで精神療法が必要な場合は、効果があるとされる行動認知療法を行います。 

行動認知療法はどんな治療法なのでしょうか。くわしく解説します。

  • 認知行動療法 

ストレスなどで固まって狭くなった考えや行動を、自身の力で柔らかくときほぐし、自由に考えたり行動したりするのを手伝う心理療法です。 

認知行動療法は、不安症やうつ病の治療、再発予防に効果があるといわれています。 

認知行動療法は、問題対処の手助けが目的です。 

精神的に不安感が強まると、認知が歪みが生じてきます。 

その結果、状況に合わない行動が強まって、さらに認知の歪みが引き起こされるようになります。

悲観的になりすぎず、現実的でしなやかな考え方をして、いま現在の問題に対処していけるように手助けすることが認知行動療法です。[3] 

実際に行われている方法を紹介します。

  1. 患者さんを一人の人間として理解し、悩みや問題点、強みや長所を出して治療方針を計画し、患者さんと共有して面接を進めていきます。

  2.  行動的技法を使って使って生活リズムをつけていきます。 毎日の生活を振り返って無理のない形で下記のようにおこないます。
    (a)日常的に行う決まった活動
    (b)優先的に行う必要な行動
    (c)楽しめる活動ややりがいのある活動
    上記を優先順位をつけて行っていく行動活性化という方法があります。
    とくに、楽しめる活動ややりがいのある活動をふやしていくことは効果的です。
    一定の身体活動や運動をして自信やコントロール感覚を取り戻していきます。
    また、他の人との関わり体験を行い、問題解決技法を使って症状に影響していると考えられる問題を解決して適応力を高めるようにしていきます。

  3.  自動思考に焦点をあてて、その根拠と反証を検証することにより、認知の偏りを修正していきます。

  4.  治療終結に進んでいきます。[2] 

上記が、認知行動療法の進め方です。

全般性不安障害に併発しやすい病気とは

全般性不安障害と併発しやすい病気は、他の不安障害(パニック障害・社交不安障害など)やうつ病と同時に症状が出ることがあります。 

また、アルコール依存症とも併発していることが多いともいわれています。 

アルコールが不安な気持ちを軽減させることから、全般性不安障害は、アルコール依存症に陥りやすい原因であると言えるでしょう。

全般性不安障害の診断基準とは

全般性不安障害の診断には、米国精神医学会のDSMー5を一般的に使われています。[1] 

診断基準のポイントを以下に紹介します。

  • 落ち着きのなさ、緊張感、または神経のたかぶり 

  • 疲労しやすいこと

  • 集中困難、または心が空白になること

  • 易怒性

  • 筋肉の緊張

  • 睡眠障害 
    上記の6つのうち、3つ以上伴っている(子どもの場合は1つ以上)ことが診断基準になりますが、その他に以下3つが条件です。 

  • アルコールや薬物によるものではなく、またほかの身体の病気でないこと 

  • 日常生活で過度な不安や心配が、6か月以上続いている 

  • その他の精神疾患(うつ病や統合失調症など)が原因ではない 

以上のことから全般性不安障害を診断します。

全般性不安障害とうつ病の違いは?

全般性不安障害とうつ病には、似たような症状が現れます。 

そして、全般性不安障害とうつ病を併発することも少なくありません。 

では、全般性不安障害とうつ病の違いは何でしょうか。 

全般性不安障害

日常生活を送るうえで、様々なことに過度の不安や心配を示し、身体的な苦痛症状を感じることが特徴

うつ病

悲しみ、喜び、楽しみなどの感情を感じなくなることが多い

 以前は楽しんでいたことも、興味や意欲が無くなるのが特徴

 以上が全般性不安障害とうつ病の違いです。

全般性不安障害とうつ病は、睡眠障害や不安感を感じるなどの共通する部分もあり全般性不安障害とうつ病を併発することもあります。

全般性不安障害に気づくポイントと家族の対応

もし家族が全般性不安障害と診断された場合、家族の対応はどうすればいいのか悩むでしょう。 

家族としての対応方法を紹介します。

家族から見ていつもの様子と違うと思ったら、少し見守ることが大切です。 

こころの不調は、自分で気づかないことも多いものです。 

身近にいる家族だからこそ、「いつもと違う」と感じることがあります。 

この「いつもと違う」状態が、10日〜2週間続いたら、こころの不調のサインかもしれません。[3] 

ここからは具体的な不調のサインと対応方法を解説していきます。

家族が気づく全般性不安障害による不調のポイントとは?

家族がいつもと違う様子であった場合、どのようなことに気をつければいいのかをまとめています。以下の行動がみられた場合はこころの不調かもしれません。

こころの不調のサインとなる行動のポイントは以下の通りです。

からだの不調 

  • 睡眠の変化:睡眠時間が短い、なかなか寝付けない、夜中に目が覚める 

  • 体重の変化:食欲がなく体重が減る、食欲が旺盛でいつもより食べて体重が急に増える 

  • 疲れがとれない:朝から疲れている、ぐったりしていつも疲れている 

  • その他:下痢や便秘、頭痛、肩や首の痛み、脈が速く動悸がある

こころの不調 

  • 物事に集中できない 

  • イライラしていることが多く怒りやすい 

  • 不安感や心配している様子をよく見かける 

  • 緊張していることが多い 行動の異変 

  • 会社や学校を遅刻・休むことが多くなった 

  • 会話の中で不安や心配を口にすることが多くなった 

  • 体の不調を訴えることが多くなった

上記のような様々な不調が長く続く場合には、こころに負担がかかっている状態の可能性があります。

家族の不調に気づいたらどうすればいい?対応を解説

家族の不調に気づいたら、どうすればいいでしょうか? 

実際の方法をお伝えしていきます。

  • 話を聞く 

まずは、本人の話を聞いてみましょう。 

いつもと違う様子に気づいたら、話を聞いてみます。 

中には話したがらない人もいるかもしれません。そのときは「いつでも話を聞くよ」という姿勢で無理に聞きださないようにしましょう。

  • 受診をすすめる 

症状が落ち着かないようであれば、病院の受診をすすめてみましょう。 

精神科や心療内科に行くのは不安な場合も多くありますので、初診時にはできれば付き添うことをおすすめします。

  • 療養できる環境をつくる 

同居する家族にとって、安心して療養できる環境づくりは大切です。 

本人の感じている、つらい気持ちを理解するように心がけましょう。 

不安や心配の訴えに対しても否定せず、根気よく話を聞くようにしてみると、理解してくれていると安心感を感じます。

全般性不安障害と仕事について

全般性不安障害の症状は不安が強く、集中力が続かないのが特徴です。 

働く方にとって、全般性不安障害を持ちながら仕事することは困難な場合があります。 

 ここからは、仕事を続けるためにはどうすればいいか、休息について解説していきます。

仕事を続けるためにできることとは

さまざまなことに対して強い不安や心配を感じ、睡眠障害や身体的な症状(頻脈・動悸・疲れやすさなど)の出現が全般性不安障害の特徴です。

集中力も低下することが多く、症状が重い場合は仕事に支障が出るでしょう。 

仕事を続けるために、3つのポイントを紹介します。 

  • 有給休暇を使って短期的に休む 

  • 負担の少ない業務に変更 

  • 短時間勤務を申請する 

退職や休職をしなくても、業務や勤務時間を変更するだけで負担を軽くすることは可能です。

全般性不安障害と休職

全般性不安障害の身体的・精神的症状が重い場合は、休息が必要です。

短期的な休みでは回復しない場合、退職を考えてしまいますが、まずは一旦休職して治療に専念することをおすすめします。 

症状がつらくて仕事ができない状態であることを、主治医に相談しましょう。 

つらい症状が続くと判断力が低下して、のちに後悔する可能性もあります。 

薬の調整で症状が軽くなり、仕事を負担に感じなくなることもあるので、まずは受診して医師に相談しましょう。

全般性不安障害の方が続けやすい仕事

全般性不安障害の症状を考慮し、続けやすい仕事はどのようなものか紹介します。


一定の業務で変化が少ない仕事

例として工場のライン作業などは、一定の業務でミスが少ない仕事です。 

不安や緊張が強い方にも、比較的しやすい仕事でしょう。


在宅勤務ができる仕事

全般性不安障害の人は通勤時間に不安を感じる人も多いでしょう。 

通勤時間がない分、不安や緊張感を軽減できます。


人との関わりが少ない仕事

職場の人間関係も不安要素の1つになります。 

例として清掃員などは、他の職種に比べて少ないコミュニケーションで業務が可能です。

[4]

 上記のように、仕事によって全般性不安障害の人に負担の少ない業務はあります。 自分に合う職業のポイントを見つけると、仕事が探しやすいでしょう。

Q&A

4つのQ&Aにお答えしていきます。

全般不安障害の症状は?

全般性不安障害は、様々なことに対し過度な不安や心配をします。 

動悸など身体的な不調、不眠やイライラなどの精神的な症状も出現し、社会生活を送るのが困難になります。

全般性不安障害の特徴は?

全般性不安障害の特徴は以下の通りです。 

  • 過度な不安や心配が6か月以上続く 

  • 身体症状の頻脈や発汗、疲れやすさなどを伴う

  • 緊張状態が続き不眠を訴える人も多い 

  • うつ病やアルコール依存症と併発することも少なくない

全般性不安障害とは?

全般性不安障害とは過度な不安や心配、それに伴って緊張状態・頻脈・発汗・疲労しやすいなどの身体症状も出現します。 

上記の症状が6か月以上続くのが特徴です。

全般性不安障害を治す方法はありますか?

全般性不安障害の治療には、薬物療法と精神療法があります。 

薬物療法は、抗うつ薬と抗不安薬と併用することもあり、薬物で苦痛を軽減した後に精神療法を行っていきます。

まとめ

全般性不安障害は、不安障害の一種で過度な不安を感じることで心と体にさまざまな症状が現れる病気です。 

全般性障害の原因ははっきりと解明されていませんが、遺伝的な要素もあるといわれています。 

症状は精神的症状とともに身体的な症状を訴える方が多く、動悸や下痢など内科的な症状が現れることもあります。 

そのため、初めは精神的な病気と気づかず内科に受診する方が多いのも全般性不安障害の特徴です。 

過度な不安や心配に伴った身体的症状が6か月以上続く場合は、全般性不安障害の可能性がありますので、精神科や心療内科を受診するようにしましょう。 

参考文献

[1]公益社団法人 日本精神神経学会 こころの病気について

[2]国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法とは

[3]厚生労働省 働く人のメンタルヘルスポータルサイトこころの耳 ご家族にできること

[4]doda チャレンジ 全般性不安障害(GAD)とは?障害と付き合いながら仕事を続けるためのポイント

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