多動性障害のチェック方法はあるの?ADHD/ASDの診断基準やテストを紹介

公開日: 2024/01/10 更新日: 2024/05/22
日本では発達障害の人の数が増えており、小中学生の8.8%は注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害の可能性があるというデータが出ています。[1] また、診断やカウンセリング等を受けるために医療機関を受診した人の数も年々増えています。[2] 子供だけに限らず、大人になってから診断される人も少なくありません。 社会にでてから、仕事や人間関係で支障をきたすことが多くなり、周囲から孤立してしまうことが多いです。 発達障害は、それぞれ特徴があり診断基準もあります。人によっては特徴が重なり合っていて、明確に診断することが難しい場合もあります。 本記事では、注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準やテスト(チェック)について解説します。自分自身や自分の子供が発達障害かもしれないと思ったときに、参考にしてみてください。
目次

発達障害とは

発達障害は、発達障害者支援法で、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義さされています。[3]

どのタイプにあたるのか、障害の種類を明確に判断するのは難しいです。

また、障害ごとの特徴が重なっていることも多いです。

年齢や環境によって目立つ症状が違うので、診断された時期によって診断名が異なることもあります。

注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)の特徴は下記になります。

<注意欠陥多動性障害(ADHD)>

注意欠陥多動性障害はADHDと表記されます。

「不注意」と「多動」、「衝動性」を主な特徴とする発達障害です。

それぞれ下記のような症状があります。[4]

不注意・・・うっかりして同じ間違いを繰り返す

多動・・・おしゃべりがとまらない、待つのが苦手でうろうろする

衝動性・・・約束やルールが守れない、せっかちでイライラしやすい

<自閉スペクトラム症(ASD)>

自閉スペクトラム症(ASD)はアスペルガー症候群や自閉症、広汎性発達障害をまとめて表記したもののことです。

ASDは多くの遺伝的要因が関与しておこる生まれつきの脳機能障害です。

重症度は様々で、言語のおくれや反響言語(オウム返し)、会話が成立しないなどの言語やコミュニケーションの障害が起こることが多いと言われています。

ひとつの興味・事柄に関心が限定され、こだわりが強く、感覚過敏または鈍麻など感覚の問題があることも特徴です。[5]

ADHDとASDについて、下記記事で詳しく説明しています。

参考にしてみてください。

発達障害の診断テスト(注意欠陥多動性障害チェック)

発達障害と診断されるにはどのようなテストや基準があるのでしょうか?

発達障害の中でも注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)に絞って解説します。

ADHDの診断テスト(注意欠陥多動性障害チェック)

ADHDの有病率は学齢期の小児の3~7%程度といわれています。[4]

しかし、小児のころに診断されず大人になってから診断されることも少なくありません。子供と大人では環境が異なるので、現れる症状が同じとは限りません。

大人、中学生・高校生、子供と各年齢ごとのADHDの診断基準について解説します。

ADHDの診断テスト(注意欠陥多動性障害チェック):大人

ADHDは従来は子供の疾患だと考えられていました。

しかし、子供のころは気づかずに大人になってから発覚することも少なくありません。

大人になるにつれて、多動・衝動性の行動は目立たなくなってきますが、不注意な面は現れやすいと言われています。

仕事に遅刻したり、予定を忘れたり、同じミスを連発したりなど、日常生活に支障をきたし、診断がつくことが多いです。

大人の発達障害を診断するポイントとして、幼少期からその特性があったのかが重要となります。

大人の場合、ADHDの疑いがあるかどうか調べるためのセルフチェックがあります。

それは、「ASRS v1.1」という、WHO(世界保健機関)が考案した18歳以上を対象とした自己報告式質問票です。

あくまでもスクリーニングに用いられるもので、ADHDと診断が確定するものではありません。

ASRS v1.1

ADHDの診断テスト(注意欠陥多動性障害チェック):中学生・高校生

中学生や高校生になると、授業が難しくなったり定期テストがあったり、部活動などで集団行動が増えたりと、それまでの生活とガラリと変化することが増えます。

そのため、それまで目立たなかった症状が目立つようになり、日常生活で困ることが増えるかもしれません。

下記のような行動が現れたらADHDである可能性があります。

  • 授業に集中できない

  • ずっと座っていられない

  • 忘れ物が多い

  • 提出物の期限が守れない

  • 計画が立てられない

  • 集団行動が苦手

ADHDの診断基準では、「DSM-5」が使用されることが多いです。

DSMは「精神疾患の診断、統計マニュアル」の頭文字を略したものです。

これは、アメリカ精神医学会が出版している精神疾患の診断基準、診断分類のことです。

DSM-5は医師が診断基準のひとつとして使用するものなので、言葉は難しくセルフチェックには向いていないかもしれません。

参考程度に使用するのがいいかもしれません。

診断基準に当てはまっているからといって、ADHDだと自己判断してはいけません。

専門医に診てもらい、診断してもらいましょう。

<ADHDの診断基準「DSM-5」>

  1. 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること

  2. 症状のいくつかが12歳以前より認められること

  3. 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること

  4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること

  5. その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

  上記条件が全て満たされたらADHDと診断されます。[4]

引用:厚生労働省e-ヘルスネット|ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療2023/9/20

ADHDの診断テスト(注意欠陥多動性障害チェック):子供 診断可能なのは4歳から

ADHDの特性は1〜2歳では現れづらく、4歳のころに特性が現れはじめると言われています。

その頃に現れる特性として

  • じっとしているのが苦手で、うろうろする

  • 集団生活の適応できない

  • 伝えたことをすぐ忘れてしまう

  • 物をなくすことが多い

  • 友達とのトラブルが見られる

  • 我慢ができない

  • 感情のコントロールがうまくできず、泣いたり癇癪を起こしたりする

などがあります。

3歳のときは、これらの特性があっても、通常の発達でも起こりうることなので、ADHDだと判断することは難しいです。[6]

日常生活に支障をきたすほどの症状が長期間続くようであれば医師に相談したほうがいいでしょう。

子供の診断基準にも上記で説明したDSM-5を使用します。

ADHDの診断:見た目でわかる?

ADHDは見た目では分かりづらく、行動で発覚することが多いです。

ADHDの特徴である、不注意、多動、衝動性の症状が現れ、日常生活に支障をきたすようでしたら、専門医に相談したほうがいいでしょう。

ASDの診断テスト(自閉スペクトラム症チェック)

自閉スペクトラム症(ASD)は、人口の1%に及んでいると言われています。

ASDの特性として

  • コミュニケーションが苦手

  • 特定のことに強いこだわりがある

  • 感覚過敏または鈍麻など感覚問題がある

が挙げられますが、みんなが同じような症状が出るわけではなく人それぞれ異なります。

そのため、専門医による評価はとても大切です。[5]

ASDの診断にはどのような基準があるのか解説します。

ASDの診断基準:DSM-5

ASDの診断基準には、ADHDと同じくDSM-5が使われます。

<ASDの診断基準「DSM-5」>

  1. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること

  2. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さなど)

  3. 発達早期から1,2の症状が存在していること

  4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること

  5. これらの障害が、知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと

さらに、知的障害の有無、言語障害の有無を明らかにし、ADHD(注意欠如・多動症)との併存の有無を確  認することが重要です。

また、他の遺伝学的疾患(レット症候群、脆弱X症候群、ダウン症候群など)の症  状の一部として自閉スペクトラム症が現れることがあります。[5]

引用:厚生労働省e-ヘルスネット|ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について2023/9/20

ASDの診断テスト(チェック):大人

ASDは多くの遺伝的要因が関与しておこる生まれつきの脳機能障害です。

そのため、子供のころから症状は現れます。

しかし、子供のころは日常生活に支障をきたすほどの症状ではなく、診断されていないことがあります。

大人になってからの社会生活や人間関係で支障をきたすようになり、診断をうけるケースが少なくありません。

相手の気持ちを考えることが苦手であったり、想像力に乏しかったり、言葉を文字通りに受け取ることしかできなかったり、人間関係の面でうまくいかないことが増えます。

また、特定のことに強いこだわりがあるので、仕事のことを忘れてこだわりがあることに熱中してしまうことも少なくありません。

このような行動から、周りから孤立してしまい、うつ病やパニック障害などの2次的な症状を発症してしまうこともあります。

「RAADS-14」という、成人期のASDの自己記入式症状チェックリストがあります。

大人になってから周囲になじめなくなったり日常生活に支障をきたしたりすることが増えて、ASDかもと思ったらこのチェックリストで確認するのもひとつの方法です。

あくまでもチェックリストなので、診断を確定するものではありません。

チェックリストの結果でASDの疑いがあったり、心配な点があったりしたら専門医のいる医療機関を受診しましょう。

<RAADS-14>

 

現在においても、過去(16歳以下)においても、あてはまる

現在においてのみ、あてはまる

過去(16歳以下)においてのみ、あてはまる

現在も過去も、あてはまらない

他の人と話をしている時に、他の人が感じていることを理解するのは難しい。

    

他の人が気にしないような普通の感触のものが肌に触れると、とても不快になることがある。

    

集団で働いたり、活動をしたりすることはとても難しい。

    

他の人が自分に期待したり、望んでいることを理解するのは難しい。

    

社交的な場面で、どのように振る舞えばよいのかわからないことがよくある。

    

他の人と雑談やおしゃべりをすることができる。

    

自分の感覚に圧倒されてしまう時は、落ち着くために一人になる必要がある。

    

どのように友達を作るのかや、人と社交的に付き合うのかは、自分にとって謎である。

    

誰かと話をしている時に、自分が話をする番なのか、話を聞く番なのかがわからないことが多い。

    

煩わしい音(掃除機の音、人の大声や過度なおしゃべりなど)をさえぎるため、両耳をふさがないといけないことが時々ある。

    

他の人と話をしている時に、相手の表情を読んだり、手や体の仕草の意味を理解することが、とても難しいことがある。

    

全体像よりも細部に注目する。

    

言葉通りに受け取りすぎて、他の人が意図していることに気がつかないことが多い。

    

突然、(物事が)自分の思い通りのやり方でなくなると、非常に動揺してしまう。

    

引用:岩波明 (2019) うつと発達障害 青春出版社

隠れアスペルガーの診断テスト(チェック)

ASDの症状はあるものの、診断基準を全て満たしておらずASDと確定診断ができないことがあります。

ASDと診断できないけど、ASDの傾向である状態を隠れアスペルガーと言います。

診断基準を全て満たしていないからといって、症状が軽いわけではありません。

発達障害は年齢や受診した時期によって、診断が異なることは少なくありません。

ASDと診断されなくても日常生活に困ることが多いようであれば、再度受診してみたり病院を変えてみたりすることをおすすめします。

Q&A

大人が多動性障害かどうかチェックするには?

大人が多動性障害をチェックするには、「ASRS v1.1」という、WHO(世界保健機関)が考案した18歳以上を対象とした自己報告式質問票を使用します。

ASRS v1.1

ASRS v1.1はあくまでもスクリーニングに用いられるもので、多動性障害と診断を確定するものではありません。

子供が多動性障害かどうかチェックするには?

多動性障害の特性は4歳のころには現れだすと言われています。

その頃に現れる特性として

  • じっとしているのが苦手で、うろうろする

  • 集団生活の適応できない

  • 伝えたことをすぐ忘れてしまう

  • 物をなくすことが多い

  • 友達とのトラブルが見られる

  • 我慢ができない

  • 感情のコントロールがうまくできず、泣いたり癇癪を起こしたりする

などがあります。

また、中学生・高校生であれば、下記症状が出たら多動性障害かもしれません。

  • 授業に集中できない

  • ずっと座っていられない

  • 忘れ物が多い

  • 提出物の期限が守れない

  • 計画が立てられない

  • 集団行動が苦手

これらの症状が現れたからといって多動性障害だと自己判断するのはやめましょう。

専門医に診てもらい、正確な診断をしてもらいましょう。

医師はDSM-5という診断基準をもとに、評価し診断します。

<多動性障害の診断基準「DSM-5」>

  1. 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること

  2. 症状のいくつかが12歳以前より認められること

  3. 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること

  4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること

  5. その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

上記条件が全て満たされたらADHDと診断されます。[4]

多動の子供はどんな特徴がありますか?

多動性の子供には、下記のような特徴があります。

  • じっとしているのが苦手で、うろうろする

  • 集団生活の適応できない

  • 伝えたことをすぐ忘れてしまう

  • 物をなくすことが多い

  • 友達とのトラブルが見られる

  • 我慢ができない

  • 感情のコントロールがうまくできず、泣いたり癇癪を起こしたりする

子供の場合、一時的にこのような症状が起こることは多いでしょう。

しかし、長期間続いたり、家や他の場所でも起こしたりするような場合は医師に相談してみましょう。

多動 何歳でわかる?

多動は4歳ごろからわかると言われています。

1〜2歳では症状は現れずらく、3歳では症状があっても通常の発達でも起こりうることなので、ADHDだと判断することは難しいです。

まとめ

注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)の診断テスト(チェック)について解説しました。

周りが普通にできていることが、どうして自分にはできないのかと悩んでしまうかもしれません。

そんなときは、本記事で紹介した診断テスト(チェック)を参考にしてみてください。

自分ができない理由が発達障害によるものかもしれないとわかれば、不安が減って解決策も見つけやすくなります。

発達障害と診断される人は増えているので、あなただけではありません。

自分だけかもと悩む必要はありません。

あくまでもチェックで診断を確定するものではないので、もし疑いがあるようだったら専門医がいる医療機関を受診しましょう。

参考文献

[1]小中学生の8.8%に発達障害の可能性 文科省調査

[2]厚生労働省|発達障害の理解

[3]厚生労働省|発達障害の理解のために

[4]厚生労働省e-ヘルスネット|ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療

[5]厚生労働省e-ヘルスネット|ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について

[6]MSDマニュアル 家庭版| 23. 小児の健康上の問題 | 学習障害と発達障害 |注意欠如・多動症(ADHD)

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