統合失調症とはどんな病気?症状のセルフチェック方法や特徴を解説

公開日: 2023/12/30 更新日: 2024/05/22
統合失調症という病気を聞いたことはあるけれど、どういう病気か詳しく知らないという方もいるでしょう。 統合失調症は、特別な病気ではなく、うつ病などと並んで代表的な精神疾患です。 およそ100人に1人の割合で発症するといわれています。 自分や家族、同僚など誰もがなり得る病気です。 しかし、統合失調症になっても早期発見・早期治療によって、日常生活を取り戻すことが可能となります。 そのために、統合失調症を知り、セルフチェックや周囲の人が発症のサインに気づき、医療機関へ受診することが重要です。 この記事では、統合失調症の症状や特徴とセルフチェック方法、周囲の人が気づくためのサインを解説します。
目次

統合失調症とはどんな病気?

統合失調症とは、厚生労働省では、以下のように記されています。

“原因不明で幻覚、妄想、まとまりのない思考や行動、意欲の欠如などの症状を示す精神疾患。”

[1]

つまり、心や考えがまとまりづらくなる状態が続き、幻覚や妄想など、さまざまな症状が現れる精神疾患です。

そのため、気分や行動に影響が起こり、人間関係がうまくいかなくなったり、社会生活が困難になったりします。

10~20代の間に発症することが多いといわれており、心の成長期に発病するため、さまざまな課題に直面することになるでしょう。

統合失調症の主な症状には、健康なときと比較して症状が表れる「陽性症状」と、機能が失われる「陰性症状」があります。

早めに治療すれば症状は軽く済むため、早期発見・早期治療が重要です。

統合失調症の症状かどうかセルフチェックしよう

統合失調症の初期症状には傾向があり、セルフチェックが可能です。

統合失調症の症状である、幻覚や妄想は自分自身で気づきにくいものです。

妄想では、他人からの危害や監視といった考えが恐怖や不安を伴って現れます。

幻覚では、自分の悪口を言っている声や自分の考えが声として聞こえることがあります。

頭の中に思ってもいない考えが浮かび上がる感覚や他人の考えが頭に入ってくる感覚、自分の考えが他人に知れ渡っているような感覚もあります。

統合失調症の治療には、早期発見が重要です。

自分が以前となにか違うと感じている方や、思い当たる症状があり、心配な方はセルフチェックしてみてください。

セルフチェックの質問

頭の中で、考えが勝手に次々と浮かび、止められないように感じたことはありますか?

周りに人がいる状況で、見られている、自分のことを悪く言っていると感じたことはありますか?

一人でいる状況で漠然と人に見られているように感じることはありますか?

何かに注意を向けているのに、視界の物や音に気づき、気が散ってしまうことはありますか?

追い詰められている、逃げ場がないなど、緊迫した気分を感じ、戸惑ったことはありますか?

いつもはすぐに理解できていた会話が、外国語のように聞こえたり、簡単な文章が理解できなくなったことはありますか?

周りの人や自分の体が現実のものと思えないように感じたことはありますか?

言葉ではない音が幻聴としてきこえたことはありますか?

[2]

上記の表の質問が、一つでも当てはまる場合は統合失調症の初期症状である可能性があります。

医療機関の受診をおすすめします。

統合失調症の3大症状について解説

統合失調症の症状は主に3つに分けられます。陽性症状・陰性症状・認知機能障害です。この3大症状について解説します。

陽性症状

陽性症状とは、「健康なときになかった状態が現れる」状態です。[3]

心の中にないものが、聞こえたり見えたりすることが、幻覚・妄想につながります。

主な陽性症状は、以下の6つです。

  • 幻覚:現実にないものをあるように感じる

  • 妄想:現実にありえないことを信じ込む

  • 自我意識の障害:誰かに支配されていると感じる

  • 思考の障害:まとまりのない会話や行動になる

  • 行動の異常:極度に興奮したり、奇妙な行動をとる

陽性症状は、発症初期や再発時によくみられます。

陰性症状

陰性症状とは、「意欲や感情表現がへるなど、健康なときにあったものが失われる」状態です。[3]

心にある感情や意欲がない状態になり、無関心になったり、ひきこもったりします。

主な陰性症状は、以下の4つです。

  • 感情の鈍麻:喜怒哀楽の表現が乏しくなる

  • 思考能力低下:言葉の数が極端に少なくなり、薄い内容になる

  • 意欲の減退:意欲や気力が低下する

  • コミュニケーションへの支障:他人との関わり合いを避けてしま

陰性症状は、初期症状の後に多く見られ、長く現れます。

認知機能障害

認知機能障害は、記憶力・注意力・思考力・集中力などの、ものを認識するために必要な能力に問題がある状態です。

この機能が障害されると、日常生活が困難になります。

例えば、判断力が低下すると、朝どんな服を着ようかという判断ができなくなります。

判断力が正常であれば、服を着るときに、その日の天気や気温に合わせて、服を選択します。

しかし、判断力が低下すると、色々な状況を総合的に考えて、「判断して選択し実行に移す」という行動ができません。

また、集中力が低下すると、今までのように仕事や勉強ができなくなります。

何か物事に取り組むときに集中ができなくなると、注意が散漫になり、ひとつも物事を完結できなくなるでしょう。

人との会話に集中できなくなると、コミュニケーションがうまくいかず、トラブルの原因となります。

統合失調症の特徴的な症状は?周囲の人が気がつくためのサインとは?

統合失調症は、さまざまな症状が表れますが、周囲の人がわかる特徴的な症状は、話し方です。

周囲の人は、統合失調症の人と会話することで違和感を感じることがあるかもしれません。

話し方の違和感によって、統合失調症の発症に気づくケースもあるでしょう。

統合失調症は、悪化すると治療が難航し、兆候に早く気づいて治療を開始することが大切です。

ここでは、周りのひとが気づける、特徴的な症状と初期症状や悪化のサインについて解説します。

特徴的な症状|話し方や行動

統合失調症になると、3つの特徴的な話し方になります。

  • 聞いたことに対して明らかに誤った解釈を行う

  • 話に一貫性がない

  • 会話のテンポが悪い

集中力の低下や論理的思考力の低下によって会話がスムーズにできなくなります。

例えば、会話の中で少し注意しただけで「脅迫されている」と感じ、突然会話が噛み合わなくなります。

話が様々な内容になって、何を言っているのか理解できなくなることもあるでしょう。

また認知機能の低下により、話の理解が遅くなったり、話の応答に時間を要したりします。

話し方が今までと変わったと感じたら、統合失調症を発症したサインかもしれません。

初期症状のサイン

統合失調症は発症から早いタイミングで治療を始めると、早期での改善が期待できます。

できる限り早く精神科を受診し、適切な治療を行うことが重要です。

自覚症状は、セルフチェックにもあったような症状です。

  • 眠れない 

  • イライラする 

  • 集中力がない 

  • 過敏になる 

  • 不安になる 

例えば、寝ようとしても頭の中で色々な考えでいっぱいになり、苛立ち眠れなくなります。

自分の症状に心当たりがある人は、医療機関を受診しましょう。

周りの人がわかるサインは、以下の通りです。

  • いつも不安そうで、緊張している

  • 悪口をいわれた、いじめを受けたと訴えるが、現実には何も起きていない

  • 監視や盗聴を受けていると言うので調べたが、何も見つけられない

  • ぶつぶつと独り言を言っている

  • にやにや笑うことが多い

  • 命令する声が聞こえると言う

これらのサインに気づいたら早めに医療機関を受診することが重要です。

本人に病識がなく、病院に連れて行くことが難しいという方も、医療機関に相談するようにしてください。

悪化・再発のサイン

統合失調症は、再発しやすい病気です。

再発を繰り返すと症状が重くなり、回復も難しくなります。

悪化・再発のサインは、人それぞれ違いますが、再発するときはいつも同じパターンで始まることが多いといわれています。

悪化・再発の防止には、家族や周囲の方のサポートが大きな力となります。

「いつもと違う」様子に気がついたら再発の可能性を疑い、すぐに受診しましょう。

周囲の人が気づきやすい再発のサインには次のようなものがあります。

  • よく眠れない日が続いている

  • 受け答えが素っ気ない

  • イライラしている

  • ぼんやりしている、考え込んだりする

  • そわそわして落ち着きがなくなる

家族や周囲の人が悪化・再発のサインにいち早く気づき対処することが、早い回復につながります。

統合失調症の症状の経過|病期と末期症状を解説

統合失調症の症状の現れ方や経過は、人それぞれですが、主に前兆期・急性期・回復期・安定期(慢性期)に分けられます。

それぞれの病期で特徴的な症状がみられますので、解説します。

[4]

前兆期

前兆期は症状が出始め、本人もなんとなく変だと感じるようになります。

眠れなくなったり、漠然とした不安を感じたり、イライラするなどの症状が続くようになる時期です。

症状によって、徐々に社会生活がつらくなり始め、不登校や欠勤が増えていくことにつながります。

精神疾患かもしれないと思い始める人が多い時期ですが、正しい診断が難しい時期でもあります。

急性期と末期症状

統合失調症の末期症状と呼ばれるのは、この急性期のことです。

統合失調症の末期症状とは、幻覚や幻聴、激しい妄想を引き起こしている状態です。

幻覚や妄想など不思議な体験をするので、自分の中で何かが変だと感じながらも、自分が病気だと思えず、他人から見ておかしな行動をすることがあります。

周りの出来事に敏感になり、不安や緊張を強く感じ、不安障害を併発する例もあります。

妄想によって過度なストレスを感じてしまい、統合失調症が重症化するケースも多いです。

幻覚や幻聴、妄想といった症状が出ている場合、薬がなければ症状が収まりません。

なるべく早く病院を受診することが大切です。

消耗期(休息期)

消耗期とは、急性期に見られる幻覚、妄想などの症状が治まっていく時期です。

消耗期は、長期間になることが多く、急性期の状態が長い人は消耗期も長くなる傾向です。

心と体のエネルギーをたくさん使い、脳が疲労を自覚し始めるため、活動が鈍くなっていきます。

陰性症状が中心となり、いつも寝ていたり、疲れやすくなったりします。

この時期は休養をしっかりとり、心と体のエネルギー回復が大切です。

回復期

回復期は、治療によって症状が治まり、段々と心の状態が戻り無気力から脱していく時期です。

周囲への関心が増えてきますが、以前できていたことができなくなって不安を感じているため、周囲のサポートが必要です。

自分の興味のあることから、活動が広がっていきます。

焦らずに生活の範囲を広げ、薬を継続して飲むことが大切になります。

統合失調症になりやすい人とは?遺伝する?原因とは

統合失調症になりやすい人とはどんな人でしょうか?

統合失調症は、原因がはっきりとわかっていない病気です。

原因は、一つだけではなく、複数の要因が複雑に絡み合うことで発症すると考えられています。

主に3つの要因が原因であるとされています。

  • 神経伝達物物質の異常分泌

  • 遺伝子要因

  • ストレスなどの精神的要因

特に、ストレスは発症のきっかけになると考えられています。

複数の要因からストレスを感じると、統合失調症を発症しやすいとされています。

ストレスそのものが直接的な原因にならずとも、ストレスによって他の精神疾患を発症し、統合失調症になってしまうケースもあるので注意が必要です。

統合失調症の治療とは?どんな薬?治る?

統合失調症の代表的な治療としては、薬による治療や精神療法があります。

複数の治療法を組み合わせることが一般的です。

ここでは、治療について解説します。

薬物療法と心理社会的療法(リハビリテーション)

統合失調症に対して有効とされている治療には、薬の服用で症状を抑える「薬物療法」と精神状態の回復を促す「心理社会療法(精神療法)」があります。

薬物療法は、主に抗精神病薬や抗パーキンソン薬、抑うつ薬などを使用して症状の回復を目指す治療法です。

幻覚や妄想といった「陽性症状」の改善に効果的な薬と、気分や意欲の落ち込みといった「陰性症状」、集中力や注意力が低下する「認知機能障害」に効果的な薬を組み合わせ、治療を進めます。

ただし、薬物療法には副作用もあるため、医師の指示を守って慎重に行うことが大切です。

症状や体調で気になることがあったら、すぐに医師へ相談しましょう。

心理社会療法(精神療法)とは、心の悩みに働きかけて脳の不調からの回復を図る治療法です。

具体的には、以下の4つの治療を行うことで脳の働きやモノの捉え方を変えていく治療法を指します。

  • 精神療法:患者さんの気持ちの表出を助け、安全感や自尊感情を向上させるため、日常生活の困りごとにアドバイスをしたり、できているところを認めたりし、支持するかかわりが行う

  • 心理教育:者様やご家族を対象に、病気や治療、物事への対処法を学ぶ

  • 社会生活技能訓練(SST):対人関係での問題や服薬との付き合い方、ストレスの対処方法などを学ぶ

  • 作業療法:趣味活動や就労活動のなかで、好きなことやできることを増やす

それぞれの心理社会的療法も、専門家がその人に合わせて方法を考えています。指示に従って治療に取り組みましょう。

薬物療法で使われる薬と副作用

薬物療法は、症状に効果的な薬を組み合わせて治療を進めます。

統合失調症では、主に下記の薬が使用されます。

  • 抗精神病薬:脳内で活動している神経伝達物質であるドーパミンの活動を軽減させる

  • 抗不安薬:極度の不安や緊張を和らげる

  • 睡眠薬(睡眠導入薬):睡眠障害や昼夜逆転に対して睡眠のリズムを整える

  • 抗うつ薬:憂うつな気分を和らげる

抗精神病薬によっては、副作用が生じる可能性があり、副作用に対する薬が処方される場合もあります。

よくみられる副作用は、以下の7つです。

  • 眠気が強い

  • 口が乾く

  • 便秘する

  • ろれつがまわらない

  • 手が震える

  • 体重が増える

  • 立ちくらみがおきる

副作用の出やすさは一様ではなく、薬剤の種類や患者さんごとに異なります。

薬を使って、「何かいつもと違う」「副作用ではないか?」と感じることがあったら、我慢したり、恥ずかしがったりせずにすぐに主治医や薬剤師に相談してください。

薬の量や種類を変更することで、副作用が改善される場合があります。

自分の判断で服薬を中止するのは大変危険ですからやめましょう。

統合失調症を治療しないとどうなる?

統合失調症は放置しても治ることはありません。

放置すると症状が悪化し、社会的な生活が送れなくなることもあります。

治療しないと病状が徐々に進行するのが統合失調症です。

こころの病気は目に見えないことが多く、自然に治るだろうと考えて放置していると、脳の神経機能が徐々に低下してしまいます。

例えば、歯が痛いのを放置し我慢が出来なくなってから歯医者さんに行くと、大切な歯を抜かざるを得なくなるでしょう。

幻覚や妄想といった症状も、日常生活に深く影響してしまってから治療を始めると、早期の治療に比べて改善できる事が限られてしまいます。

病気が深刻化して症状が悪化したり治りにくくなったりする前に、なるべく早く受診し、継続的な治療に取り組むようにしましょう。

Q&A

ここでは、統合失調症に関する質問についてお答えします。

現実感消失症とは?

現実感消失症とは、解離性障害のひとつで、統合失調症に罹患した後に発症します。

この症状は、自分自身や身体、感情、感覚、そして周囲の正解とのつながりが断絶されたかのような感覚となります。

現実感消失とは、自分自身が周囲から世界から離れていったと感じる体験のことです。

濃い霧や夢の中にいる、目に見えない壁で隔離されているような感覚です。

周囲からは、感情の動きが乏しいように感じられますが、本人は大きな精神的苦痛を感じます。

失感情症とは?

失感情症とは、アレキシサイミアという性格特性を日本語に言い換えた言葉です。

自分の感情を認知したり感情を言葉で表現したりすることに対し、障害を抱えている状態です。

失感情症は病気ではなく、一つの症状や性質として捉えられます。

失感情症になってしまうと、本人が抑圧された感情やストレスに気づくことができません。

うつ病や心身症に発展してしまうことや、統合失調症の陰性症状であることも考えられます。

統合失調感情障害との違いは?

統合失調感情障害は、統合失調症と感情障害の症状が同時に生じる障害です。

統合失調症は、うつ病・躁病が同時に起こりません。見分けがつきにくいため、長期的に症状を観察し評価することが必要です。

妄想性障害との違いは?

妄想性障害とは、妄想のみが長時間持続する精神疾患です。

幻聴や陰性症状などが目立たないのが、統合失調症との違いです。

このため、妄想以外の点で、日常生活に大きな支障は目立たず、普通に生活している様に見えることが多くなります。

まとめ

この記事では、統合失調症の症状やセルフチェック方法、治療について解説しました。

統合失調症とは、心や考えがまとまりづらくなってしまう病気で、幻覚や妄想などさまざまな症状が現れる精神疾患のひとつです。

自分が統合失調症の初期ではないか心配な方は、セルフチェックで症状を確認してみてください。

早期発見・早期治療することで早く回復する病気であり、末期症状(急性期)になる前に、治療することが大事です。

しかし、統合失調症は幻覚や幻想、被害妄想の症状により、妄想と現実の境がわからなくなります。

それらの症状によって病識がない場合がほとんどなので、病院を受診することが難しくなります。

家族や周りが統合失調症の兆候に気付き、病院の受診をすすめましょう。

気になる症状があるときには医療相談窓口に相談するようにしてください。

引用

[1]厚生労働省>e-ヘルスネット>統合失調症

[4]奈良市ホームページ>身近な病気、統合失調症とは?>病気の経過(画像引用) 

参考

[2]銀座心療内科クリニック>統合失調症のセルフチェック

[3]厚生労働省>こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~

 

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