睡眠障害かもと思ったら|症状の原因や種類、治療法をご紹介

公開日: 2024/01/08 更新日: 2024/05/22
「寝つきが悪い」「途中で何度も起きる」「日中もずっと眠い」「朝起きるのがつらい」といった症状でお悩みではありませんか? あなたのその状況は、もしかしたら「睡眠障害」かもしれません。 同じ症状であっても原因が違えば、対処方法も変わります。 この記事では睡眠障害の症状の原因や数多くある睡眠障害の種類、それぞれの治療方法について説明しています。 一日でも早く改善したいのであれば、自分の症状は何が原因で起こっているのかを知ることが治癒への近道です。 睡眠障害の正しい知識を得て、ご自身の症状と向き合ってみましょう。
目次

睡眠障害とは

睡眠障害は、睡眠に関連した問題が何かしらある状態のことです。質の悪い睡眠は生活習慣病やうつ病発症のリスクが高まるとされており、早めに対処をすることが大切です。

睡眠障害の原因は?

参考:相談e-眠り

睡眠障害にはさまざまな要因があります。

平成30年に厚生労働省が発表した調査によると、なんらかの睡眠障害で悩んでいる方は約21%います。

「睡眠障害かも?」と感じている方は、自分に当てはまる要因を考えてみましょう。そうでない方も自分が睡眠障害に陥るリスクがあるか理解しておくことが重要です。

身体的要因(疾患による不快感など)

疾患にともなう痛みやかゆみ、胸苦しさ、頻尿などの症状は起きている時間でも非常に不快ですよね。これが夜間に出現していると睡眠を妨げている可能性が高いです。

薬理学的要因(薬の副作用やカフェインの作用など)

疾患を治療するための薬なのにも関わらず、その副作用で睡眠が妨げられていることもあります。

覚醒および睡眠を促す成分としてして以下があげられます。その効果を弱めたり強めたりすることで、不眠や眠気が引き起こされるのです。

  • 覚醒を促す成分‥ヒスタミン、ノルアドレナリン
    抗ヒスタミン薬:この成分の効果を弱めることで眠気が生じる
    ステロイド:この成分の効果を強めることで不眠が生じる
  • 睡眠を促す成分‥アデノシン
    カフェイン、テオフィリンなどの気管支拡張薬は、この成分の作用を減弱させることで不眠を引き起こす

参考:処方薬の睡眠・覚醒への影響|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター

また、不眠や眠気を引き起こす代表的な薬として以下があります。

【不眠を引き起こす代表薬】

  • プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド
  • テオフィリン(気管支拡張薬)
  • レボドパ、プラミペキソール(ドパミン受容体刺激薬)などのパーキンソン病治療薬

【眠気を引き起こす代表薬】

  • ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン薬)などの抗アレルギー薬
  • バルビツール(GABA受容体作動薬)、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタムなどの抗てんかん薬

参考:処方薬の睡眠・覚醒への影響|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター

自分が内服している薬に、睡眠を妨げる副作用がないか今一度確認してみましょう。

もし内服薬に睡眠障害を引き起こす薬があった場合は、かかりつけ医に相談することが第一です。

そのほかカフェインやニコチンには覚醒作用があるので、カフェインを含む飲料を好む方や喫煙をする方は、それらが夜間の睡眠に悪影響を及ぼしているかもしれません。

精神的要因(精神疾患など)

慢性的な不眠症の1/3〜1/2の割合で、何らかの精神医学的な疾患を持っていると言われています。なかでも不安が強い方や抑うつ状態の方は、不眠になりやすいです。

不安の強い人は、一度不眠などの睡眠障害を経験すると睡眠に対するこだわりが強くなり、さらに眠れなくなることもあります。

パニック障害は夜間に発作を起こすことが多いので、強い不安から眠れなくなることも珍しくはありません。

精神疾患が疑われる場合は、専門医による適切な治療が必要です。

心理的要因(ストレスなど)

まじめで神経質な方は精神的に疲労が大きく不眠になりやすいです。

人生の転機になる身近な人の死や失職、大きな病気などの出来事が起きたときに眠りが妨げられることがあります。

生理学的要因(時差ボケなど)

時差ボケや交代勤務による昼夜逆転、生活サイクルの変化が原因で体内リズムが狂い、睡眠に影響がでやすいです。

アルコール摂取でよく眠れる?

眠れないからといって「寝酒」をする方がいますが、アルコールには中枢神経を抑制する作用があります。確かにアルコールは寝つきが良くなりやすいです。

しかし眠りは浅くなりがちで、利尿作用もあることから睡眠の途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」や朝予定より数時間も早く起きてしまう「早朝覚醒」を引き起こし、睡眠の質を下げます。

日本では、眠れないときに睡眠薬よりもアルコールで対処する方の割合が多く、それが原因で肝障害やアルコール依存症、二次性うつ病を発症することもあります。

睡眠薬に対する抵抗が強いことが原因でアルコールに頼る方が増えているのではないでしょうか。

アルコールを摂取したところで、容易に耐性もできやすく、睡眠障害の根本原因が改善することはありません。

睡眠障害を疑うときは、アルコール摂取よりも専門医のもとでしっかり治療することが症状改善への近道です。

参考:医療法人東横会たわらクリニック

睡眠障害の種類と症状

睡眠障害は実に60種類以上あり、睡眠障害国際分類(ISD-3:2013)で症状別に7つに分類されます。

セルフチェックをしてみましょう

睡眠障害には先述した通りさまざまなタイプがあります。「よく眠れない」=「不眠症」とは言い切れません。

セルフチェックをして自分がどのタイプの睡眠障害にあてはまるか確認してみましょう。セルフチェックのチャートはこちらのリンクから確認できます。

参考:日経Goodday

不眠症

日本では5人に1人は悩んでいると言われています。20〜30代から少しずつ増え始め、加齢とともに増加傾向です。また、女性のほうが多いという統計も出ています。

不眠症は4つの症状にわけられており、同時に複数の障害が現れることもまれではありません。

<不眠症の4つのタイプ>

  • 入眠障害
  • 中途覚醒
  • 早朝覚醒
  • 熟眠障害
 

入眠障害

床についても、30分以上なかなか眠れないことを入眠障害といいます。

中途覚醒

眠りについても、起床するまでの間に何度も目が覚める睡眠障害です。

早朝覚醒

予定している時間の2時間以上前に覚醒し、その後眠れないことを早朝覚醒とよびます。

熟眠障害

眠りが浅く、睡眠時間が長くても熟眠感が得られづらいことが特徴です。

中枢性過眠症

中枢性過眠症は、睡眠時間は十分確保できているにも関わらず日中に強い眠気を感じ、日常生活に支障をきたす睡眠障害の一種です。

症状や原因もさまざまで、それぞれ診断される病名が変わります。

ナルコレプシー

オレキシンという体を覚醒させるのに不可欠なホルモンがうまく作られなくなるのが原因で引き起こされると言われています。

突然眠たくなってしまい食事や歩行中でも数秒から数分ほど眠ってしまう睡眠発作、驚く・笑うなどの感情でいきなり脱力してしまう情動脱力発作、眠りに入るときに起こる睡眠時麻痺・入眠時幻覚などの症状があります。

突発性過眠症

睡眠や覚醒にかかわる遺伝子に問題があると言われていますが、現在は原因不明なことが多いです。

夜に十分な睡眠をとっても日中眠くなってしまうのが特徴で、慢性の睡眠不足との鑑別が必要です。

睡眠不足症候群

日ごろの慢性的な睡眠不足で体の疲れがなかなかとれないことでさまざま症状が現れます。集中力や意欲の低下、倦怠感などが主な症状です。

概日リズム睡眠障害

「概日リズム」とは体内時計によって調整される1日のリズムのことを言います。

概日リズム睡眠障害は、体内時計の周期が昼夜のサイクルと一致していないときに起こりやすいです。

例として、時差ボケ、夜勤などの交代勤務が関係しています。

概日リズム睡眠障害に陥ると極端に入眠時間が遅くなったり、朝の起床時間が遅くなったりと望ましい時間に睡眠や覚醒ができなくなります。

また、これを無理に治そうとすると頭痛や食欲不振などの症状が現れることが最大の特徴と言えるでしょう。

睡眠呼吸障害

睡眠中にさまざまな要因によって酸素の取り込みが妨げられる障害です。

血中酸素濃度が低下し酸素不足を解消しようとして頻回に覚醒する症状が現れることを総称して「睡眠呼吸障害」とよびます。

肥満により首のまわりの脂肪が多いこと、首が短いこと、上気道が狭いこと、下顎が小さいことなどが呼吸障害を引き起こす要因です。

睡眠呼吸障害は主に「閉塞性睡眠時無呼吸」と「中枢性睡眠時無呼吸症候群」の2つにわけられます。

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)

気道が閉塞もしくは狭窄することで生じる呼吸障害です。主な原因として、睡眠中に舌根が喉元に落ち込んでしまうことがあげられます。

いびきや無呼吸、起床時の頭痛、日中の眠気などが主な症状で、事故のリスクや脳心血管系の病気の発症リスクにもなります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)

呼吸中枢は大脳の延髄とよばれる場所にあり、呼吸にかかわる器官に命令を出して呼吸運動をしています。

その脳の呼吸調整システムのエラーが起きている状態のことを中枢性睡眠時無呼吸症候群と言い、呼吸が浅くなったり止まったりするのです。

また、閉塞性睡眠時無呼吸と違い、呼吸しようとする努力が見られません。

中枢性睡眠時無呼吸症候群はアメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-5』により、「特発性中枢性睡眠時無呼吸」「チェーン・ストークス呼吸」「オピオイド使用に併存する中枢性睡眠時無呼吸」の3分類に分けられます。

  • 特発性中枢性睡眠時無呼吸
    原因不明のことがほとんどで、閉塞性睡眠時無呼吸に見られる気道の閉塞も見られません。
  • チェーン・ストークス呼吸
    15~20秒の無呼吸と深く早い呼吸、浅くゆっくりした呼吸が周期的に繰り返されます。夜間に呼吸が苦しくなり、頻繁に覚醒してしまうため、睡眠の質が下がるのです。
    チェーン・ストークス呼吸は主に心不全、脳疾患、腎障害の方で多くみられます
  • オピオイド使用に併存する中枢性睡眠時無呼吸
    オピオイドとは「麻薬性鎮痛薬」のことで痛み止めや咳止めとして使用されます。
    血中のオピオイドの濃度が鎮痛域を超えたり、長期間使用していたりすると起こりやすく、呼吸をするために動いている神経筋がうまく働かなくなることで引き起こされます。

睡眠時関連運動障害

睡眠中および睡眠前後に出現する単純で同じ動きをすることが特徴で、その動きや不快感から眠りが妨げられる障害です。

鑑別疾患として、後述する睡眠時随伴症があり、睡眠時関連運動障害と比較して複雑な行動をともないます。

睡眠時関連運動障害は、主に「むずむず脚症候群」と「周期性四肢運動障害」に分けられ、いずれも鉄不足が起きやすい腎不全や貧血、妊娠を原因として起こることが多いです。

鉄欠乏にともなうドーパミンの産生が少なくなることで引き起こされると言われています。

むずむず脚(レストレスレッグス)症候群(RLS)

下肢の不快感が主な症状で、「むずむずする」「火照る」「針に刺されるような痛みがある」「虫が這う」と個々で表現方法や症状の程度が変わります。

座っているときや横になっているとき、特に夕方〜夜にかけて症状が強く出ることが多いです。

四肢を動かしたり、刺激したりすることで不快感が消失・軽減しますが、安静に戻ると再度症状が出現します。

この不快感から、眠気があっても眠りを妨げられてしまい、非常に強い苦痛をともないます。

周期性四肢運動障害(PLMD)

睡眠中、四肢の筋肉が急速に収縮しては弛緩する周期的な動きにより、深い眠りが妨げられ、中途覚醒が繰り返し起こります。

この周期的な動きは無意識のうちに起こるため、予測ができません。重症例では日中の強い眠気や倦怠感をみとめることがあります。

睡眠時随伴症(パラソムニア)

睡眠時随伴症は睡眠中に起きる心身機能異常で、睡眠薬の副作用やストレス、疲労などで引き起こされると考えられています。脳が未発達な子どもに起きやすいです。

しばしば脳機能や自律神経に原因があったり、認知症や遺伝に関係があったりするケースもあります。

睡眠時随伴症は睡眠のどの段階で起きているかによって分類されています。

ノンレム睡眠中に起きるもの

ノンレム睡眠は脳を休める睡眠段階です。この段階で起きる睡眠随伴症は小児期に多く現れ、家族歴との関連があるのではないかと言われています。

ノンレム睡眠中の随伴症には以下のものがあげられます。

<ノンレム睡眠中に起きる睡眠随伴症>

病名

症状

錯乱性覚醒

深いノンレム睡眠から起きた時に、混乱した状態で周囲を見渡すような行動を起こすことが特徴。睡眠の前半に出現しやすく、小児期に発症しやすい。

睡眠時遊行症

いわゆる「夢遊病」で、眠っている最中に無意識下で歩き回ってしまう現象。小児期後半や青年期にもっとも多く出現する。ほとんどの方は自分の行動を覚えていない。

睡眠時驚愕症

「夜驚症」とよばれ、深いノンレム睡眠中に突然悲鳴のような声を出して目を見開き覚醒してしまう症状。子どもに多く、症状の出現中は外部からの反応に乏しい。他の随伴症と同じく、自分の行動を覚えていないことがほとんど。

睡眠関連摂食障害

夜間睡眠中に動き出し、無意識のうちに脂肪分や糖分の多い高カロリーの食事をとっている病気。自ら料理まですることもある。その間の記憶はほとんどなく、食べた形跡や同居者からの指摘で気づくことが多い。

重症例では食べてはいけないたばこやペットフードなどを摂食し、胃腸障害が起きることもある。

参考:パラソムニアの診断と治療|阪野クリニック

レム睡眠中に起きるもの

レム睡眠は、脳は起きていて体は休んでいる睡眠段階で、夢を見やすいといわれています。

レム睡眠は覚醒とノンレム睡眠の間の段階で、レム睡眠の割合が少なくなると老化や脳機能低下が進むと言われています。

そのレム睡眠中に起きる睡眠随伴症として以下があります。

<レム睡眠中に起きる睡眠随伴症>

病名

症状

レム睡眠行動障害

筋肉の緊張を緩和する神経調節機構が障害されることで夢の中での行動がそのまま寝言や行動として現れる。睡眠中に突然大きな声や奇声を発したり、暴力的行為をすることが特徴。

声掛けで比較的容易に覚醒でき、見ていた夢の内容を話すことができる。

50歳以降の男性に多い。

反復性孤発性睡眠麻痺

別名「金縛り」とよばれる。

何かしらの原因でレム睡眠から始まった場合、限りなく覚醒している状態に近くなるため、金縛りとして症状が現れる。

不規則な睡眠リズムや睡眠不足が続くと出現しやすいことがわかっている。

悪夢障害

悪夢の頻度が通常より多く、睡眠を妨げられて日常生活に影響を及ぼしている状態のこと。

夜驚症との大きな違いは、悪夢の内容をはっきり伝えることができるところ。小児期に多く出現するが、ほとんどが成長とともになくなっていく。成人の場合は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などに合併して起きる。

参考:パラソムニアの診断と治療|阪野クリニック

そのほかの睡眠時随伴症

レム睡眠、ノンレム睡眠に関係なく起こる睡眠時随伴症を以下にまとめました。

<そのほかの睡眠段階で起きる睡眠随伴症>

病名

症状

頭内爆発音症候群

寝入るときに突然大きな爆発音が頭の中で鳴り、ときに強い光を感じることもある。原因は明確になっていないが、音をつかさどる神経機能の誤作動ではないかと言われている。

睡眠関連幻覚

寝入りばなや睡眠から覚醒に移行する際に発症する幻覚のこと。

「人や動物などが近くにいる」「体が宙に浮いている」などの鮮明な夢を見る。

睡眠時遺尿症

別名「夜尿症」。5歳以上で週2回以上尿失禁し、3か月以上続くと診断されることが多い。小児に多く発症するが、成人でも夜間の尿量が多かったり膀胱の過活動が原因で起こすことも少なくない。

参考:パラソムニアの診断と治療|阪野クリニック

睡眠障害の検査・診断方法

眠りにまつわる問題は個別性が強く、経過も人それぞれです。睡眠障害を発症した方のなかで、病院で検査を受けていない方が約6割にのぼることがわかっています。

その一方で、睡眠障害の治療を受けた場合、約7割の方で不眠などの症状が緩和しています。睡眠障害の治療がどんなに効果的であるかがわかりますね。

睡眠障害は、長い間放っておくと事故や病気につながることもあるため、病院での早期治療が大切です。少しでもおかしいなと感じた場合は、悪化する前に検査を受けましょう。

睡眠障害の検査、診断にはさまざまな方法があります。その前に共通して行われるのが「症状の聞き取り(問診)」になります。

お子さんの場合は、親に症状を聞く場合がほとんどなので、動画を撮影することやメモをとることを忘れないようにしましょう。

聞き取りをもとにそれぞれに必要な検査を行い、診断に進むことが一般的です。検査によっては1泊入院を必要とする場合があります。

<睡眠障害の代表的な検査・診断方法>

・睡眠ポリグラフ検査(PSG)

・CPAP圧設定検査

・睡眠潜時反復検査(MSLT)

・覚醒維持検査(MWT)

・下肢不動検査(SIT)

・末梢神経伝達速度検査・H反射検査

・肺機能検査

・鼻腔通気度検査

・脳波検査

・アクチグラフ検査(睡眠-覚醒パターンの測定)

・アクチグラフ検査(周期性四肢運動の測定)

・心電図検査

・血液検査

・睡眠日誌

参考:睡眠障害とは|医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木

  • 睡眠ポリグラフ検査(PSG)

最も多く使われる検査方法で、睡眠の質や呼吸状態、てんかん発症の有無、異常行動の有無を評価するために行われます。1泊入院が必要な場合がほとんどです。

  • CPAP圧設定検査

PSG検査で睡眠時無呼吸症候群が疑われた場合に行うことがほとんどです。CPAPという呼吸機器を主に鼻に装着して1泊検査入院をします。

  • 睡眠潜時反復検査(MSLT)

過眠症の診断および重症度判断に用いられ、日中の睡眠状況を検査します。

昼寝を2時間おきに4〜5回行い、レム睡眠の回数や眠気の程度を調べます。

PSG検査の翌日に実施することが多いです。

  • 覚醒維持検査(MWT)

眠りを誘う状況下で、どれだけ眠気を我慢できるかを検査します。

危険業務や運転の適性、治療効果の評価を判断する材料になります。

  • 下肢不動検査(SIT)

夜間の四肢(主に下肢)の不快感を調べる検査です。

むずむず脚症候群の診断に用いられます。

1時間足を伸ばした状態で過ごし、不快感の有無を記録します。

  • 末梢神経伝達速度検査・H反射検査

足や手の末梢神経に刺激を与えて、正常に機能しているか検査をします。

H反射検査も足に神経刺激を与えますが、脊髄に到達した際の反応を調べることで異常の有無を調べることができます。

  • 肺機能検査

肺の肺活量や換気機能を調べます。

  • 鼻腔通気度検査

睡眠時無呼吸症候群の治療方針を検討するために行われ、鼻腔に空気が通っているかを調べます。

  • 脳波検査

脳波検査を行うことで、てんかんなどの疾患や意識障害と鑑別します。

  • アクチグラフ検査(睡眠-覚醒パターンの測定)

腕時計式の装置を1〜2週間装着し、睡眠と覚醒の日内分布を評価します。

防水ではないので、入浴時などは一時的に外し、それ以外は装着して日常生活を送ります。

不眠症や概日リズム睡眠障害の診断に非常に有効です。

  • アクチグラフ検査(周期性四肢運動の測定)

睡眠時関連運動障害のひとつである周期性四肢運動の診断材料です。

夜間のみ機器を装着し、睡眠中に生じる不随意運動の有無を検査します。

  • 心電図検査

 心臓が正常に電気刺激を送れているか、血流に問題はないかを調べます。

  • 血液検査

何かしらの病気が隠れている可能性を見つけ出すために血液検査を行うことがあります。

睡眠障害の原因がわからない場合は受けた方が安心です。

  • 睡眠日誌

小児の睡眠障害の診断にとても重要です。

毎日の睡眠状況を記録することで、客観的に睡眠状態を把握することができ、治療方針の決定に非常に役立ちます。

睡眠障害の治し方は?

自分の睡眠障害がどのタイプなのかによって治療方針やすべきことが変わってきます。

いずれの睡眠障害のタイプでもまずは生活リズムを整えることが重要です。睡眠習慣をただすだけでも症状が改善されることは少なくありません。

そのうえで睡眠薬などの薬物療法が追加されます。

不眠症などの睡眠障害は自力で治すことはできる?

不眠症は、原因にもよりますが、処方薬がなくとも治癒できることはあります。睡眠障害においてまず大事なのは日々の生活リズムを整えることです。

ただし、精神疾患が隠れていることもあるので注意が必要です。無理のない範囲でできることから始めていきましょう。

<睡眠障害を改善するために自分でできること>

  • 規則正しいリズムで日常生活を過ごす
  • 適度な運動を取り入れる
  • リラックスできる方法を探す
  • 眠前に液晶画面をみない
  • 空腹感がある場合は軽食をとる
  • 眠前のアルコールは控える

参考:睡眠障害|医療法人東横会たわらクリニック

  • 規則正しいリズムで日常生活を過ごす

睡眠時間は人それぞれですが、毎晩ほぼ同じ時間に床につくように努力しましょう。

可能であれば起床時間も固定し、ベッドでだらだら過ごすのではなく、目が覚めたらベッドから離れることを習慣化してください。

  • 適度な運動を取り入れる

睡眠5時間前までに軽いジョギングなどの適度な運動を取り入れることが質の良い睡眠をとるために効果的です。

  • リラックスできる方法を探す

自分がリラックスできる方法を探し、できるだけ安心して眠りにつけるよう工夫しましょう。

湯船につかってゆっくり入浴する、部屋にアロマを使用するなどがすぐに導入できるためおすすめです。

  • 眠前に液晶画面をみない

液晶画面とは携帯、スマホ、テレビ、パソコン、タブレットなどです。

床につく1時間前から避けるようにすると良いです。

  • 空腹感がある場合は軽食をとる

寝床につく数時間前までに消化しやすいものや温かいものを摂取することで、空腹感による入眠障害を防ぐことができます。

  • 眠前のアルコールは控える

前述したとおり、アルコール摂取は睡眠の質を下げます。できる限り控えましょう。

睡眠障害の治療方法

治療方法の一環として内服薬(睡眠薬)の使用ももちろんありますが、あくまでサポートとして考えてください。

睡眠薬の使用に抵抗がある方もいますが、現在の薬は適切に使用すれば過剰に飲む必要もなく、依存性も少なくなっています。

自然に近い眠りを得ることができ、安心して内服できる薬がほとんどです。

「睡眠障害かな?」と思ったら病院に行くべき?

軽い不眠症であれば生活リズムの改善などで自然治癒できることがほとんどです。

しかし週3日以上、3か月以上の不眠が続く慢性不眠症に陥ると治癒が困難といわれています。

不眠で集中力が低下する、注意力が散漫になり事故のリスクが高くなるなど日常生活に支障をきたしている場合は、数か月症状が続いていなくても早めの受診をおすすめします。

医療機関を受診することで睡眠障害の原因が明らかになることが多い上に、ナルコレプシーや睡眠呼吸障害のように、自力ではどうしようもできない睡眠障害もあるため、早めの原因の明確化が大切です。

睡眠で困っていたら、まずは通いなれているかかりつけ医に相談してみましょう。

睡眠障害は何科を受診すればいい?

近年、睡眠外来を設けていたり、専門医がいたりする病院は増えてはいるものの、身近にない場合もあります。そういったときにどこを受診すればよいのか迷いますよね。

以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

睡眠障害の種類が不明な場合

睡眠障害かもと思った場合や、睡眠に何か問題が発生したが原因に心当たりがない場合は、基本的に内科を受診します。

心身に影響はなく、ただ眠れないというときは内科を受診するケースが多いです。

心身になにかしら症状が出ている場合は精神科や心療内科を受診することも考慮します。精神科はストレスを感じて睡眠障害に陥ってるときに適しています。

心療内科は睡眠障害によって身体に悪影響がでている場合に受診しましょう。子どもは小児科の受診で問題ありません。

睡眠障害の種類がわかる場合

睡眠障害の種類や症状によって診療科が変わります。

<睡眠障害で受診すべき診療科>

睡眠障害の種類・症状

受診する診療科

不眠症

  • 内科

  • 精神科(ストレスが原因の場合)

  • 心療内科(不眠による身体の不調がある場合)

過眠症

  • 内科

  • 精神科

  • 脳神経内科(脳機能に原因があることも多いため)

  • 呼吸器内科(呼吸に原因がある場合も多いため)

  • 心療内科

ナルコレプシー

  • 脳神経内科(神経伝達物質の異常が原因であるため)

  • 心療内科(最寄りに脳神経内科がない場合)

睡眠呼吸障害

  • 呼吸器内科(呼吸の異常であるため)

  • 耳鼻咽喉科

  • 内科

概日リズム睡眠障害

  • 精神科

  • 心療内科

  • 神経内科

睡眠関連運動障害

  • 脳神経内科(神経の伝達に異常がある場合が多いため)

  • 内科(最寄りに脳神経内科がない場合)

睡眠時随伴症

  • 脳神経内科(脳機能や自律神経系に原因があることが多いため)

  • 精神科

そのほか、睡眠が妨げられている要因によって受診する診療科や対処法が変わります。

例えば、もともと飲んでいる薬の副作用が原因の場合は、処方したかかりつけ医に相談をします。

また外部環境(騒音、振動)による睡眠障害の場合もあるので、まずは根本原因を解決しましょう。

その後に睡眠障害の症状や原因に合わせて、上記を参考に受診する診療科を選んでください。

睡眠障害の専門病院やクリニックはあるの?

睡眠障害専門のクリニックや診療科は日本各地にあります。それらは精神科や心療内科に該当し、睡眠にまつわる悩みを全般的に受け付けています。

睡眠に関して少しでも気がかりなことがある場合は、受診してみてはいかがでしょうか。

また、カウンセリングを受けることもおすすめです。専門知識をもった医師やカウンセラーに相談することで、受診の必要性などのアドバイスをもらえます。

睡眠に関するカウンセリングを行っているのは、精神科や睡眠障害の専門病院・クリニックなどです。

オンラインで受けられる場合もあります。医療機関に行くことに抵抗のある方や、通院が負担という方は利用してみましょう。

睡眠障害の専門外来のある、または専門医のいるおすすめの病院は?

睡眠障害の専門外来のある、専門医のいる病院やクリニックは各所にあります。

・日本睡眠学会専門医が所属する病院の一覧(117施設)です。

日本睡眠学会専門医療機関の一覧

・こちらでは口コミを含めて、専門医のいる病院やクリニックを検索することができます。

不眠症・睡眠障害の名医・専門医 35名

上記を参考に自分に合った医療機関を見つけましょう。

Q&A

睡眠障害にまつわるよくある質問にお答えします。

睡眠障害の症状は?

「寝つきが悪い」などの不眠、「日中に強い眠気がある」などの過眠、「寝ている最中に苦しくて目が覚める」などの呼吸異常と、睡眠障害の原因によってさまざまな症状があります。

睡眠障害は睡眠障害国際分類(ISD-3)によって症状別に7つに分類されます。

睡眠障害の初期症状は?

連続睡眠時間が短い、睡眠時間は十分なのに日中に眠くなるなど睡眠に関して何らかの問題が発生することが初期の症状です。

その症状が続いたり悪化したりすると、心身に影響が出始めます。

慢性的な睡眠障害は治癒までに時間がかかってしまいますので、初期の段階で生活リズムの改善や受診行動をとるようにしましょう。

睡眠障害の見分け方は?

睡眠の妨げになる要因は数多くあります。セルフチェックで自身がどのタイプかを予測できますのでチェックしてみましょう。

確実な原因探求には医療機関での問診や検査が必要です。聞き取りにより、症状別に必要な検査を行い、どの睡眠障害なのかもしくは他に病気が隠されているのかを判別します。

また、睡眠は騒音などの外的要因によっても障害されやすいです。根本原因を解決しても睡眠障害が改善されない場合は、受診をおすすめします。

睡眠障害の主な原因は何ですか?

疾患にともなう不快症状により睡眠が妨げられる「身体的要因」、薬の副作用などによる「薬理学的要因」、精神疾患にともなう睡眠障害を呈している「精神的要因」、ストレスなどから睡眠障害に陥る「心理的要因」、時差ボケなどの「生理学的要因」などが睡眠障害の原因としてあげられます。

寝つきが悪いことを理由にアルコールの摂取をする方もいますが、寝つきは良くなるものの睡眠の質は下がり、根本原因の解決には至りません。

アルコール依存症のリスクも高まりますので、「寝酒」は避けましょう。

まとめ

睡眠障害を引き起こす原因や症状にはさまざまなタイプがあります。

良質な睡眠を得るためにはその原因を明確にし、早めの対処が重要になります。

早期の受診が早期の治癒につながることは明らかです。

少しでも睡眠に気がかりなことがある場合は、セルフチェックをしたり受診をしたりカウンセリングを受けたり、できることから行動に移していきましょう。

睡眠障害の中には、生活リズムを改善することで治癒できるものもあります。今一度、自身の生活を振り返り、質の高い睡眠が得られるように改善していきましょう。

参考資料

睡眠障害とは|健康長寿ネット 

睡眠や不眠について知る|Suimin.net 

症状解説 睡眠障害|医療法人東横会たわらクリニック 

むずむず脚症候群|医療法人東横会たわらクリニック 

睡眠障害の原因|相談e-眠り

どうやって睡眠障害を診断するかを解説します|阪野クリニック

睡眠障害は何科を受診する?症状ごとの治療内容・検査方法など徹底解説|健達ネット

全国の日本睡眠学会専門医のいる病院・クリニック(450件) 口コミ・評判|caloo

日本睡眠学会専門医療機関 117機関 

不眠症・睡眠障害の名医・専門医35名|名医検索 

岐阜市で「むずむず脚症候群」の病院なら当院へ|阪野クリニック 

睡眠障害|医療法人 心翠会 

睡眠時随伴症|睡眠・覚醒障害研究部 

処方薬の睡眠・覚醒への影響|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター

睡眠トピックス|Suimin.net 

睡眠医療|睡眠・覚醒障害研究部 

概日リズム睡眠障害|e-ヘルスネット 厚生労働省 

こころのはなし|ハートクリニック 

睡眠関連運動障害|睡眠・覚醒障害研究部 

レム睡眠とノンレム睡眠の違いについて 起きやすいのはどっち?|サントリーウエルネスOnline 

寝ぼけの症状と対処法について|阪野クリニック 

睡眠時随伴症|MSDマニュアル

夜驚症(睡眠時驚愕症)の症状・診断・治療|田町三田こころみクリニック

睡眠関連摂食障害|なんばみなとメンタルクリニック 

金縛りの特徴と対処法|阪野クリニック 

睡眠障害を検査するには?病院検査の方法やセルフ検査について紹介|健達ねっと

睡眠障害とは|医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木

パラソムニアの診断と治療|阪野クリニック

異常呼吸の種類と原因|チェーンストークス呼吸・クスマウル呼吸・ビオー呼吸など|ナース専科

FastDoctor
ドクターの往診・オンライン診療アプリ
往診もオンライン診療も
アプリから便利に相談
App Storeからダウンロード
Google Playで手に入れよう
TOP医療コラム睡眠障害かもと思ったら|症状の原因や種類、治療法をご紹介