SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とは?効果や副作用について解説

公開日: 2024/01/07 更新日: 2024/05/22
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)ってどんな薬?副作用や危険性はある? SSRIは抗うつ作用や抗不安作用を持ち、うつ病や不安障害に対して使われます。 抗うつ薬と聞くと、服用して大丈夫かと不安な気持ちになるかもしれません。 ですが自己判断で薬を増量・中止せずに、医師の指示通り服用すれば、次第に症状の改善が期待できる薬です。 本記事では、SSRIの体内での働きや効果、副作用について解説します。 服用中に注意すべき症状も解説しますので、最後までご覧ください。
目次

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とは?

SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、抗うつ薬として開発された薬です。

治療の第一選択薬の1つとして、うつ病やパニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害に用いられます。

SSRIには、脳内のセロトニンを増やす働きがあります。

セロトニンは脳内でどのような役割があるの?

それではなぜ、脳内のセロトニンを増やす必要があるのでしょうか。

脳内では、神経細胞から神経細胞に向かってさまざまな物質を分泌し、神経伝達を行っています。

以下に示す脳内の神経伝達物質が減ると、うつ病につながるといわれています。

  • セロトニン:気持ちの落ち込みや不安

  • ノルアドレナリン:意欲や興味の低下

  • ドパミン:食欲や気力の低下

セロトニンは、脳の神経細胞から分泌される物質の1つです。

気持ちの落ち込みや不安を感じるうつ病では、神経細胞内のセロトニンが減り、脳の神経細胞間に分泌されるセロトニンが少ない状態であると考えられます。

SSRIの作用機序とは?

SSRIの作用を解説するため、脳内でのセロトニンの動きについて説明します。

神経細胞がセロトニンを放出する

 ↓

十分なセロトニンが神経細胞間に存在している

 ↓

セロトニンの一部は神経細胞へ情報を伝達する

 ↓

残ったセロトニンは、セロトニントランスポーターによってセロトニンを放出した神経細胞へ再び取り込まれる

SSRIはセロトニントランスポーターを阻害し、セロトニンが脳の神経細胞内に再び取り込まれないようにする作用があります。

これにより、脳の神経細胞間にあるセロトニンの量が十分になり、神経伝達がスムーズに行われ、気持ちの落ち込みや不安を改善します。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の効果が出るまで

SSRIの効果が出るまでの期間は、少なくとも2週間、長ければ6週間といわれています。

なぜならSSRIにより神経細胞間のセロトニンが急に増えると、神経細胞からセロトニンの分泌を減らす刺激が一時的に働くためです。

その後ゆっくりと神経細胞が変化し、正常な量のセロトニンを放出するようになると、初めて効果を感じることができます。

効果が現れないからといって、自己判断で薬を中断しないことが重要です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の副作用は?危険性はある?

SSRIは薬の飲みはじめと中止時で、注意する副作用が異なります。

比較的副作用が少ない薬ですが、勝手に薬を増減すると副作用が現れやすくなるため危険です。

必ず医師の指示通り服用しましょう。

SSRIの飲みはじめに多い副作用

SSRIの飲みはじめに最も多い副作用は、吐き気や下痢、腹痛です。

セロトニンは不安や気分の落ち込みだけではなく、脳の吐き気に関わる部分にも作用するためです。

この吐き気に関わる部分が活性化されると、下痢や腹痛を生じます。

吐き気や下痢、腹痛は飲みはじめてから1週間程度で収まることが多いですが、つらい場合は医師に相談しましょう。

飲みはじめや増量時に、まれに起こるセロトニン症候群に注意

吐き気の副作用は、飲みはじめ多くの人に起こりますが、まれに生じるセロトニン症候群には注意が必要です。

飲みはじめや増量時に現れやすいといわれています。

以下の症状が同時に複数現れたら、速やかに医療機関に連絡してください。

  • 不安

  • 混乱する

  • いらいらする

  • 興奮する

  • 動き回る

  • 手足や眼が勝手に動く

  • 震える

  • 体が固くなる

  • 汗をかく

  • 発熱

  • 下痢

  • 脈が速くなる 等

(参考:PMDA セロトニン症候群

これらの症状は、服用開始して数時間以内に生じることが多いです。また、服用を中止すれば24時間以内に症状が消えるといわれています。

SSRIの服用中に気を付けたい副作用

SSRIの服用中に生じるその他の副作用は、以下の通りです。

  • 眠気

  • 不眠

  • だるさ

  • 性機能障害

  • めまい

  • 頭痛

  • 口の渇き 等

これらの副作用も、薬の飲みはじめや増量時に現れることが多いです。生活に支障が出る場合、早めに医師に相談してください。

特に性機能障害は、なかなか相談しづらいかもしれません。

しかし、パートナーとの関係に影響が出る副作用のため、できるかぎり医師に話すようにしましょう。

SSRIをやめるときの副作用(離脱症状)

SSRIの服用を急にやめると「離脱症状」と呼ばれる副作用が現れることがあります。

SSRIを4週間以上服用していると生じやすいです。

主な離脱症状は以下の通りです。

  • 頭痛

  • めまい

  • 吐き気

  • だるさ

  • 不安

  • 焦燥感 等

薬の量を徐々に減らせば、離脱症状が起きづらくなります。

薬の服用をやめたいときは自己判断でやめるのではなく、必ず医師に相談しましょう。

抗うつ剤でハイになるときは要注意

SSRIの服用でハイになることがあります。

ハイとはいわゆる躁状態のことで、以下のような症状が特徴です。

  • 怒りっぽくなった

  • 延々としゃべるようになった

  • ギャンブルや衝動買いが増えた

  • 眠らなくても平気になった

このようにはっきりわかる症状ではなく、いつもより元気で活動的な程度の症状である場合もあります。

SSRIの飲みはじめや増量時に現れやすいです。

このような場合、自殺や自傷行為に走ることがあるため注意してください。自分では気づかないことが多く、家族など周囲の人のサポートが必要です。

また、薬の影響によるハイではなく、双極性障害の可能性もあります。双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す疾患です。

躁状態に気づかず、うつ状態のときだけ受診すると、誤ってうつ病と診断されることがあります。

実際、うつ病と診断された人の約20%が、双極性障害へ診断が変更になったという報告があります。

双極性障害で抗うつ薬を服用し続けると、症状の悪化につながる可能性があるため注意してください。

どちらの場合も、抗うつ剤の服用でハイになるときは注意が必要です。

早めにかかりつけ医に相談しましょう。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の種類と強さについて

SSRIは、現在4種類の成分が承認されています。

薬剤により、適応疾患や用法用量が異なります。

商品名

一般名

適応

レクサプロ

エスシタロプラム

うつ病・うつ状態

社会不安障害

ジェイゾロフト

セルトラリン

うつ病・うつ状態

パニック障害

外傷後ストレス障害

パキシル

パロキセチン

[普通錠]

うつ病・うつ状態

パニック障害

強迫性障害

社会不安障害

外傷後ストレス障害

[CR錠]

うつ病・うつ状態

デプロメール

ルボックス

フルボキサミン

うつ病・うつ状態

社会不安障害

強迫性障害

(参考文献:各薬剤の添付文書)

それぞれの薬について解説します。

レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)

レクサプロは、1日1回10mg(最高20mg)を服用します。

レクサプロ以外のSSRIは、副作用を防ぐため、治療できる量まで段階的に用量を増やします。

一方レクサプロは、最初から治療できる量で服用するため、効果が早い点が特徴です。

効果と副作用のバランスが良いため、最もよく使われています。

(参考:SSRI市場、前回調査で1位となったエスシタロプラムが首位キープ:日経メディカル

レクサプロは、うつ病だけでなく社会不安障害にも用いられます。

副作用として、眠気や吐き気が生じやすいです。またSSRIの中では、離脱症状が比較的起こりにくいといわれています。

QT延長という心臓にリスクのある患者は、服用できないため注意が必要です。

(参考:【精神科医が解説】抗うつ剤の離脱症状と4つの対策 - 【公式】田町三田こころみクリニック|内科・心療内科・精神科

ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)

ジェイゾロフトは、1日1回25mgから服用します。

段階的に量を増やし、1日の最高量は100mgです。

ジェイゾロフトは、副作用が少なく用量が調整しやすいためよく使われます。

ジェイゾロフトは、うつ病に加え、パニック障害や外傷後ストレス障害にも用いられます。

レクサプロと同様に、眠気や吐き気を生じやすいです。またSSRIの中では、離脱症状が比較的起こりにくいといわれています。

レクサプロと異なり、ジェイゾロフトを服用できない疾患はありません。

パキシル(一般名:パロキセチン)

パキシルには、2種類の製剤があります。

普通錠と、副作用軽減のため薬剤が徐々に放出されるCR錠です。

パキシル普通錠は、1日1回10〜20mgからスタートします。

適応疾患にもよりますが、段階的に増量し1日の最高量は50mgです。

パキシルCR錠は、1日1回12.5mgから始め、段階的に増量し最高量は50mgまで服用できます。

パキシルはSSRIの中で最もセロトニントランスポーターへの親和性が高く、はっきりとした効果が期待できる薬です。

その分、他のSSRIよりも副作用が出やすいため注意が必要です。

また、離脱症状も現れやすいといわれています。

(参考:Connie Sanchez et al. Int Clin Psychopharmacol. 2014 Jul;29(4):185-96.

Giovanni A. Fava et al. Psychother Psychosom. 2015;84(2):72-81. doi: 10.1159/000370338. Epub 2015 Feb 21.

CR錠の適応はうつ病だけですが、普通錠はうつ病に加えパニック障害や強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害に広く使うことができます。

デプロメール、ルボックス(一般名:フルボキサミン)

デプロメール、ルボックスは、適応に応じて初回量が異なります。

1日25mgまたは50mgを2回に分けて服用開始し、1日150mgまで増量可能です。

2つの会社から同じ成分の薬が販売されているため、2種類の名前があります。

SSRIの中で最も古い薬です。

うつ病に加え、社会不安障害や強迫性障害に用いられます。またSSRIの中で、性機能障害の発現頻度が比較的少ないといわれています。

(参考:堀正二ら(2023)「治療薬ハンドブック2023薬剤選択と処方のポイント」p.147 じほう)

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)による不安障害・パニック障害の治療

ある物事に対して心配になったり神経質になったりといった不安は、誰にでも起こりうるものです。

しかし、不安な気持ちが日常生活に支障をきたすほど頻繁に生じたり、長く続いたりすると不安障害となります。

パニック障害は、不安障害の1つです。

強い恐怖や不安に加えて、動悸や息切れ、冷や汗、めまい、寒気などの短時間のパニック発作を伴います。

パニック発作が起きたらどうしようという不安や、パニック発作が起こる状況を回避しようとする行動がみられます。

このような不安障害やパニック障害の第一選択薬として、SSRIが用いられます。

SSRIには、不安を和らげる効果があるためです。

しかし、SSRIの効果が現れるまで少なくとも2週間かかるため、SSRIよりも即効性のあるベンゾジアゼピン受容体作動薬が用いられることがあります。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬も抗不安作用がありますが、SSRIと異なり依存性があるため注意が必要です。

そのため、SSRIの効果が現れるまでベンゾジアゼピン受容体作動薬を短期間服用し、徐々にSSRI中心に変えていく治療が行われます。

(参考:児島悠史(2017)「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100」p.248 羊土社)

Q&A

SSRIの気になる質問について答えます。

SSRIってどんな薬ですか?

SSRIは、脳内のセロトニンを増やす作用を持つ薬です。

セロトニンは不安や気分の落ち込みに関わっており、うつ病や不安障害などに用いられます。

効果が現れるまで2〜6週間を要するため、勝手に薬をやめないことが大切です。

また、SSRIの服用し始めに吐き気や下痢、腹痛を生じることがありますが、1週間程度で落ち着きます。

SSRIの代表薬は?

現在4成分のSSRIが承認されています。

商品名

一般名

適応

レクサプロ

エスシタロプラム

うつ病・うつ状態

社会不安障害

ジェイゾロフト

セルトラリン

うつ病・うつ状態

パニック障害

外傷後ストレス障害

パキシル

パロキセチン

[普通錠]

うつ病・うつ状態

パニック障害

強迫性障害

社会不安障害

外傷後ストレス障害

[CR錠]

うつ病・うつ状態

デプロメール

ルボックス

フルボキサミン

うつ病・うつ状態

社会不安障害

強迫性障害

(参考文献:各薬剤の添付文書)

有効性と副作用のバランスから、レクサプロの処方頻度が多いです。

SSRIとSNRIの違いは何ですか?

SNRI(Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitor)とは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。

SSRIは脳内のセロトニンを増やします。

一方、SNRIは脳内のセロトニンだけでなく、ノルアドレナリンも増やします。

セロトニンが不安に関わる物質であるのに対し、ノルアドレナリンは意欲や興味関心に関わる物質です。

したがって、不安感が強いうつ病の場合はSSRIが用いられ、やる気が出ないうつ病の場合はSNRIが用いられます。

SSRIは危険ですか?飲まない方がいいですか?

SSRIに限りませんが、薬は医師の指示通りに使わないと危険を伴います。

特にSSRIは、急に服用をやめたり量を増やしたりすると、副作用が現れたり症状が悪化したりする危険性があります。

正しく服用すれば、次第に効果が現れる薬のため、自己判断で薬の服用を中止しないでください。

とはいえ、薬の服用に不安を感じることもあるかもしれません。

治療を続けるには医師との信頼関係が重要なため、不安なことは遠慮なく医師に質問するようにしましょう。

SSRIは性格が変わりますか?

SSRIによって根本的な性格は変わらないと考えられます。

しかし、急に怒りっぽくなったり、衝動的になったりした場合は注意が必要です。

薬の副作用によって、性格が変わったように見える可能性があるためです。

もしくはうつ病ではなく、双極性障害の症状であることも考えられます。

最悪の場合、自殺や自傷行為に至る危険性があるため、性格が変わったように見えるときは早めに医師に相談しましょう。

健康な人が抗うつ剤を飲んだらどうなりますか?

健康な人が抗うつ薬を飲んだらどうなるかは、人によるといってよいでしょう。

1、2回飲んだ程度では何も起こらないことがほとんどだと考えられます。

なぜなら、抗うつ薬は即効性のある薬ではなく、効果が現れるまで時間がかかる薬だからです。

人によっては抗うつ薬の副作用である、眠気や吐き気を生じるかもしれません。

まれに、セロトニン症候群が現れる可能性もあります。

セロトニン症候群は、不安やいらいら、混乱、震え、発熱などの症状が複数現れますが、基本的に薬を飲まなければ消える症状です。

薬は処方された人だけが服用するようにしてください。

まとめ

本記事では、SSRIについて解説しました。

SSRIは、不安やうつを改善する作用を持つ抗うつ薬です。

効果が出るまで2〜6週間かかりますが、次第に効果が現れます。

急にやめると離脱症状が現れるので、医師の指示通り服用しましょう。

また、飲みはじめに副作用を生じることがありますが、多くは1週間程度で落ち着きます。

セロトニン症候群や、躁状態には注意してください。

うつ病や不安障害は、医師とのコミュニケーションでよりよい治療効果が期待できます。気になる副作用や今後の治療方針などは、こまめに医師と相談するようにしましょう。

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